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BACK TO THE OCEAN Chapter2
第18章 民衆の街【8】
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ロベルトは僕に呼び止められ、厨房へと向かう足を止めると、振り返ること無く、僕にその答えを返してきた。
「……ええ、そうです。わたしは元海賊です。ですが……」
すると彼は一時の間を空けてから、更にこう続けた。
「海賊は数年前の海賊狩りで滅びました。だからわたしも、今やハンバーガーショップを経営するただの一般市民です。なのでそんな、賊っぽい、やましいことは決して致しませんので、どうぞ安心して、ごゆっくり御寛ぎください」
彼はその間、僕の方へと一度も振り向くこと無く、話を終えたと同時に、厨房へと静かに戻って行ってしまった。
ロベルトの表情を窺えなかったから、確かなことは言えないが、しかし彼の言葉や、その一瞬空けた間、そしてあの大きな背中からは、どこか寂しさのようなものを僕は感じた。
「海賊……か……うぐっ! そ、そうだ! トイレっ!!」
物思いにふけよう……かと思いきや、直後、今まで抑え込んでいた便意が、まるで自分の存在感を僕に向けて訴えるかのようにして、腹を痛ませてきたのだ。
僕はたまらずトイレの扉を開け、駆け込み、急いで用を足す。
あともう少し遅れてたら、本当にその言葉通りの糞野郎になってしまうところだった。
「ふう……スッキリした」
僕は手を洗いながらそう独り言を呟き、そしてみんなが座っている席へと戻って行った。
「コヨミ、変な奴らに絡まれとったようだが、あいつらは何者だ?」
席へ戻るなり、マジスターに訊かれ、僕は椅子に腰を掛けてから答える。
「さあね。ただ、どうやら普通のチンピラってわけでも無さそうだ。奴らはマグナブラの兵士のことを、どうやら侵略者と呼んで敵視しているみたいだった」
「マグナブラの兵士を敵視している……か。もしかしたら、マグナブラとの統合に反対している連中が、そうやって集まって、デモを起こしておるのかもしれんな」
「デモ……ねぇ……マグナブラじゃ、そんなの見たことも無かったけどな」
「このアクトポートはマグナブラと違って、民主主義の政治形態をとっている街だからな。だから絶対王政であるマグナブラとは異なり、民衆の力というものが強固な場所なのだ。だから民衆の中から選ばれたトップが、民意にそぐわない政治方針を執ったら、人民にはそれを反発することができる権利があるのだ」
「なるほど……だから統合を勝手に行った、ここのトップに対して、そしてその相手であるマグナブラの人間に対して、彼らはデモを起こしているというわけか」
「そういうことだろうな」
自分達の意思を反映させるための行為……彼らのやっていることは、まさに今、僕達がやろうとしていることと、規模は異なるが、同じだということか。
そう考えれば、親近感が湧かないことも無いのだけど、しかしだからといって、彼らは僕らの仲間というわけでも無いし、このままマグナブラの制服を着ていれば、またどんな難癖を着けられるか分かったもんじゃない。
「マジスター、とりあえずこの服を着て、このアクトポートを歩くのは止めた方がいいかもしれない」
「うむ、確かに……どこかで代わりの服を調達する必要があるということか」
マジスターも未だにマグナブラの兵士の制服を着用しているから、決して他人事というわけにはいかないからな。
「それにコヨミ、お前の場合は服を変えるだけでなく、ちょっとしたカムフラージュも施しておいた方が良いかもしれんな」
「カムフラージュ?」
マジスターに言われ、僕は首を傾げる。
マグナブラの兵士だと、アクトポートの住人に誤解されないようにするのだったら、服を取り換えるくらいで事は済みそうなものだが……それに僕だけというのは、どういうことだろうか?
「うむ。アクトポートでこのようなデモが起こっているとなると、マグナブラがそれを黙って見過ごすわけがない。おそらく、兵士を増員して鎮圧にかかるだろう。だからこの街には既に、マグナブラの兵士が多く派遣されているかもしれない」
「なるほど。だからマグナブラで指名手配にされている僕は、兵士にも見つからないように擬装する必要があるというわけか」
「そういうことだ」
マジスターは腕を組み、頷く。
まったく……変なヤカラに絡まれないようにするだけかと思いきや、更に兵士の目まで気にしなければならないのか……肩身の狭い思いをさせられるっていうのは、まさにこのことだよな。
僕にとっては生き辛い世の中だよ、ホントに。
「でもマジスター、どうやって服を探しに行くよ? もうここの外を出れば、僕達にとっては敵地のど真ん中に放り込まれたようなもんだぜ?」
「そうだなぁ……はてさてどうしようか……」
うーん、と低い声で、まるで牛の鳴き声のように唸るマジスター。
策が浮かばない中、しばらく静寂の時が流れると、その沈黙を破るように、ルーナが手を挙げた。
「はいっ! わたし良いこと考えた! マジスターさんとロクヨウがここから出られないんだったら、わたしとゼロとマンハットさんで二人の服を買って来るっていうのはどうかしら?」
「なるほど……まあ、その方法が最も安パイだろうな。コヨミもそれでいいか?」
「そうだね……もう変なのに絡まれるのは嫌だし」
「それじゃあ決まりね! じゃあゼロ、マンハットさん行きましょ!」
何故かルーナはテンションが高く、イケイケモードになって席を立つが、しかしあとの二人はどうにも乗り気で無いような表情を浮かべて、渋々といった感じで立ち上がり、彼女の後に着いて行く。
「あはは……僕服装のセンスが皆無なんだけど大丈夫かなぁ……」
「うむ、我も人間の服装に興味など持ったことが無いからな。正直選べれる自信は無い!」
「まあ、ここはルーナさんに任せちゃおっか?」
「その方が良いだろうな」
などと、服選びに自信の無いマンハットとライフ・ゼロは、二人でルーナの背後でヒソヒソ話しながら、店の出入口に向かって歩いて行ってしまった。
ちなみにその二人のヒソヒソ話は、僕とマジスターには聞こえていた。
「……マジスター、もしかして僕達、トンデモナイ恰好をさせられるってことはないよな?」
「……仲間を信じるしかない」
言って、腕を組んで目を瞑っているマジスター。
その姿は、どんな服が来ても、その事実を受け止められるよう、寛大な心を無理やり開こうとしているように、僕には見えた。
僕はマジスターのように、どんなに瞑想をしたところで、寛大な心など持てそうになかったので、戦々恐々、怯えながら待つこと約一時間、大量の紙袋を持ったルーナ達が店に戻って来た。
ちなみに僕達は待つ間、さすがに一時間も何も注文せずに店に居座るのも気まずかったので、ドリンクを追加オーダーして、それを飲んでいた。
出発時と変わらず、ルーナはニコニコ笑顔。マンハットは乗り気でない表情から、何だか気まずそうな、苦々しい笑いを浮かべており、そしてライフ・ゼロは何故か、僕の顔を見てプッと笑ってきやがった。
元魔王が笑った時点で決定。今日は仮装大会だ。
「いやぁ、服を探すのに結構手間取っちゃって。待たせたわね」
ルーナはさっきまで自分が座っていた座席に、手に持っている荷物をどっかりと置いた。
「それじゃあまずはそうね……マジスターさんからトイレで着替えてもらいましょ」
「おっ、わしからか」
「……ちょっと待ったルーナ」
僕はこの流れに、果てしない嫌な予感を察し、待ったをかける。
「なによロクヨウ?」
「ちゃんとした服を買ってきたんだよな?」
「ええ、れっきとした洋服よ」
「人が着るような?」
「なにを不安になってるのよ? はいマジスターさんのはこれね」
「う、うむ……」
僕に返事をしながら、ルーナはマジスターの分の洋服が入っている紙袋一式を彼に渡し、そしてマジスターはそれを持ってトイレの方へと歩いて行った。
「ただ、カムフラージュをするってことだったから、ロクヨウの服は、ロクヨウだって分かりにくくなるような服装にはしてきたわよ?」
「あ、ああ……そうか……うん、分かった」
うーん……至って真面目に返答してくるところを見ると、ルーナは多分、大真面目に僕の服を選んできてくれたんだろうな。
……ここはルーナのセンスを信じることにしよう。彼女ならきっと、僕に似合いそうな服を選んでくれたはずだ!
僕はそう自分に言い聞かせ、マジスターが出てくるのを、そしてその後に僕の順番が回ってくるのを、それでもやっぱり、ビクビクしながら、何も起こらないことを必死に祈りながら、その時を待った。
「……ええ、そうです。わたしは元海賊です。ですが……」
すると彼は一時の間を空けてから、更にこう続けた。
「海賊は数年前の海賊狩りで滅びました。だからわたしも、今やハンバーガーショップを経営するただの一般市民です。なのでそんな、賊っぽい、やましいことは決して致しませんので、どうぞ安心して、ごゆっくり御寛ぎください」
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「海賊……か……うぐっ! そ、そうだ! トイレっ!!」
物思いにふけよう……かと思いきや、直後、今まで抑え込んでいた便意が、まるで自分の存在感を僕に向けて訴えるかのようにして、腹を痛ませてきたのだ。
僕はたまらずトイレの扉を開け、駆け込み、急いで用を足す。
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「ふう……スッキリした」
僕は手を洗いながらそう独り言を呟き、そしてみんなが座っている席へと戻って行った。
「コヨミ、変な奴らに絡まれとったようだが、あいつらは何者だ?」
席へ戻るなり、マジスターに訊かれ、僕は椅子に腰を掛けてから答える。
「さあね。ただ、どうやら普通のチンピラってわけでも無さそうだ。奴らはマグナブラの兵士のことを、どうやら侵略者と呼んで敵視しているみたいだった」
「マグナブラの兵士を敵視している……か。もしかしたら、マグナブラとの統合に反対している連中が、そうやって集まって、デモを起こしておるのかもしれんな」
「デモ……ねぇ……マグナブラじゃ、そんなの見たことも無かったけどな」
「このアクトポートはマグナブラと違って、民主主義の政治形態をとっている街だからな。だから絶対王政であるマグナブラとは異なり、民衆の力というものが強固な場所なのだ。だから民衆の中から選ばれたトップが、民意にそぐわない政治方針を執ったら、人民にはそれを反発することができる権利があるのだ」
「なるほど……だから統合を勝手に行った、ここのトップに対して、そしてその相手であるマグナブラの人間に対して、彼らはデモを起こしているというわけか」
「そういうことだろうな」
自分達の意思を反映させるための行為……彼らのやっていることは、まさに今、僕達がやろうとしていることと、規模は異なるが、同じだということか。
そう考えれば、親近感が湧かないことも無いのだけど、しかしだからといって、彼らは僕らの仲間というわけでも無いし、このままマグナブラの制服を着ていれば、またどんな難癖を着けられるか分かったもんじゃない。
「マジスター、とりあえずこの服を着て、このアクトポートを歩くのは止めた方がいいかもしれない」
「うむ、確かに……どこかで代わりの服を調達する必要があるということか」
マジスターも未だにマグナブラの兵士の制服を着用しているから、決して他人事というわけにはいかないからな。
「それにコヨミ、お前の場合は服を変えるだけでなく、ちょっとしたカムフラージュも施しておいた方が良いかもしれんな」
「カムフラージュ?」
マジスターに言われ、僕は首を傾げる。
マグナブラの兵士だと、アクトポートの住人に誤解されないようにするのだったら、服を取り換えるくらいで事は済みそうなものだが……それに僕だけというのは、どういうことだろうか?
「うむ。アクトポートでこのようなデモが起こっているとなると、マグナブラがそれを黙って見過ごすわけがない。おそらく、兵士を増員して鎮圧にかかるだろう。だからこの街には既に、マグナブラの兵士が多く派遣されているかもしれない」
「なるほど。だからマグナブラで指名手配にされている僕は、兵士にも見つからないように擬装する必要があるというわけか」
「そういうことだ」
マジスターは腕を組み、頷く。
まったく……変なヤカラに絡まれないようにするだけかと思いきや、更に兵士の目まで気にしなければならないのか……肩身の狭い思いをさせられるっていうのは、まさにこのことだよな。
僕にとっては生き辛い世の中だよ、ホントに。
「でもマジスター、どうやって服を探しに行くよ? もうここの外を出れば、僕達にとっては敵地のど真ん中に放り込まれたようなもんだぜ?」
「そうだなぁ……はてさてどうしようか……」
うーん、と低い声で、まるで牛の鳴き声のように唸るマジスター。
策が浮かばない中、しばらく静寂の時が流れると、その沈黙を破るように、ルーナが手を挙げた。
「はいっ! わたし良いこと考えた! マジスターさんとロクヨウがここから出られないんだったら、わたしとゼロとマンハットさんで二人の服を買って来るっていうのはどうかしら?」
「なるほど……まあ、その方法が最も安パイだろうな。コヨミもそれでいいか?」
「そうだね……もう変なのに絡まれるのは嫌だし」
「それじゃあ決まりね! じゃあゼロ、マンハットさん行きましょ!」
何故かルーナはテンションが高く、イケイケモードになって席を立つが、しかしあとの二人はどうにも乗り気で無いような表情を浮かべて、渋々といった感じで立ち上がり、彼女の後に着いて行く。
「あはは……僕服装のセンスが皆無なんだけど大丈夫かなぁ……」
「うむ、我も人間の服装に興味など持ったことが無いからな。正直選べれる自信は無い!」
「まあ、ここはルーナさんに任せちゃおっか?」
「その方が良いだろうな」
などと、服選びに自信の無いマンハットとライフ・ゼロは、二人でルーナの背後でヒソヒソ話しながら、店の出入口に向かって歩いて行ってしまった。
ちなみにその二人のヒソヒソ話は、僕とマジスターには聞こえていた。
「……マジスター、もしかして僕達、トンデモナイ恰好をさせられるってことはないよな?」
「……仲間を信じるしかない」
言って、腕を組んで目を瞑っているマジスター。
その姿は、どんな服が来ても、その事実を受け止められるよう、寛大な心を無理やり開こうとしているように、僕には見えた。
僕はマジスターのように、どんなに瞑想をしたところで、寛大な心など持てそうになかったので、戦々恐々、怯えながら待つこと約一時間、大量の紙袋を持ったルーナ達が店に戻って来た。
ちなみに僕達は待つ間、さすがに一時間も何も注文せずに店に居座るのも気まずかったので、ドリンクを追加オーダーして、それを飲んでいた。
出発時と変わらず、ルーナはニコニコ笑顔。マンハットは乗り気でない表情から、何だか気まずそうな、苦々しい笑いを浮かべており、そしてライフ・ゼロは何故か、僕の顔を見てプッと笑ってきやがった。
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ルーナはさっきまで自分が座っていた座席に、手に持っている荷物をどっかりと置いた。
「それじゃあまずはそうね……マジスターさんからトイレで着替えてもらいましょ」
「おっ、わしからか」
「……ちょっと待ったルーナ」
僕はこの流れに、果てしない嫌な予感を察し、待ったをかける。
「なによロクヨウ?」
「ちゃんとした服を買ってきたんだよな?」
「ええ、れっきとした洋服よ」
「人が着るような?」
「なにを不安になってるのよ? はいマジスターさんのはこれね」
「う、うむ……」
僕に返事をしながら、ルーナはマジスターの分の洋服が入っている紙袋一式を彼に渡し、そしてマジスターはそれを持ってトイレの方へと歩いて行った。
「ただ、カムフラージュをするってことだったから、ロクヨウの服は、ロクヨウだって分かりにくくなるような服装にはしてきたわよ?」
「あ、ああ……そうか……うん、分かった」
うーん……至って真面目に返答してくるところを見ると、ルーナは多分、大真面目に僕の服を選んできてくれたんだろうな。
……ここはルーナのセンスを信じることにしよう。彼女ならきっと、僕に似合いそうな服を選んでくれたはずだ!
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