The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第3章 アンダーグラウンド

008【1】

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「ヘッヘッへッ着いたぜ、ここがオイラの隠れ家さ」

ジャックに連れられ、キョウスケとグレイがやって来たのはアンダーグラウンドのスラム街のような市街地のさらに裏。そこにジャックの隠れ家は存在していた。

「こんなことを言うのもなんだが、思った以上にボロボロだな」

グレイが言う通り、建物はまるで廃墟のようなものであり、とても人も魔物も住むような場所ではなかった。

「まあまあこれにはちょっとカラクリがあってね。こっちに来てよ」

ジャックは二人を廃墟の中へといざなう。すると、廃墟の真ん中辺りで急にジャックは足踏みをし始める。

「なにやってるんですかジャックさん?」

キョウスケがジャックの謎の動作について問いかけると、ジャックはいつもの笑い声で返してくる。

「ヘッヘッへッまあ見てなって……おっここか!」

今までジャックの足踏みにカツンカツンと高い音をたてていた床だったが、一箇所だけゴッという鈍い音が聞こえ、そこでジャックは足踏みを止める。
ジャックはその場に屈み込み、床を触るとレバーのようなものを見つけ、それを握る。

「よいしょっと!ここだここだ!」

レバーを一気に引き上げると床の一部分が外れ、その下には地下へと続く階段が隠されていた。 

「おおおっ!!まるで秘密基地みたいですね!!!」

地下への階段を見て、キョウスケは大興奮する。
地下階段、廃墟、秘密基地、小学六年生の少年心をくすぐるワードがジャックの隠れ家にはどんどん飛び出てきた。

「ヘッヘッへッ!まぁ隠れ家だからね。だけど中を見たらもっと驚くと思うよ?」

ジャックは階段の最初の段の壁に着いているスイッチを押す。すると地下への階段はマジックバルブという、魔力を使って灯りををともす電球のようなものによって明るく照らし出された。
三人がしばらく階段を下っていくと、扉の前へと到達し、ジャックが扉の鍵を開くとそこには地下とは思えない大部屋が広がっていた。

「すごい……ホントに秘密基地だ!!!!」

そんな大部屋を見て、キョウスケは更に胸を踊らせる。
部屋には大きなソファやベッドが置いてあったり、壁には魔界の地図が貼ってあったり、はたまた大きなモニターが設置され、そこにはアンダーグラウンドの市街地が映し出されていた。
まさに秘密基地。ロマン溢れる空間がそこにはあった。

「フフン!まあ座ってゆっくりしてよ」

ジャックは冷蔵庫を漁り、飲み物とハムなどのちょっとした食べ物を取り出す。

「それじゃあ遠慮なく……おおっ!」

キョウスケがソファに座ると、体が沈んでしまうほどフカフカなソファだった。
その隣にグレイも座り、キョウスケと同じように驚きの反応をする。

「ヘッヘッ、オイラ盗賊だから色んな魔界に行ってて実はここにはあんまり帰って来ないのよ。だけどたまに帰ってきた時に癒やされる場所にしようって改装してたらこんなんになっちまってたんだよね」

ジャックはキョウスケ達の正面のソファに腰掛け、持ってきた飲み物と食べ物をテーブルに広げる。

「ほら食べていいよ。ここに来て何も食べてないだろ?」

「そういえば……」

キョウスケのお腹が大きな音をたてる。考えたらその日の夕方にグレイと出会い、夜にはこの魔界へ来ていたためキョウスケが最後に食べ物を口にしたのはお昼の学校の給食のみだった。

「じゃあいただきます!」

キョウスケは食べ物にがっつく。まさに成長期の少年らしい姿だった。

「ヘッヘッへッ、んじゃあ食べながらでいいからお前の親父さんについてオイラが調べたことを聞いてくれよ」

「うん……」

キョウスケは食べながらも背筋が自然と伸びる。
今までまったく知らなかった父親の素性。それを知る時がついに来たのだ。

「お前の親父さんはな、当時の魔王ルシファーによって魔界保安官ってのに正式に選ばれていたそうなんだよ。つまり魔界の平和を守っていたってことだな」

「えっ!父さんがそんなことを!?」

キョウスケは驚愕する。
父親がデビルサモナーだったことはグレイによって伝えられ知っていたが、まさか魔界を守る保安官になっていたなど知る由もなかった。

「ほ……ホントなのグレイ?」

半信半疑でグレイに尋ねると、グレイは首を縦に振る。

「あぁ、俺とシュンジは魔王ルシファーの直々の命によって色んな魔界を旅し、魔界の平和を維持してたんだ。大きい事件にも挑んだし、シュンジのお節介のおかげでしょうもない痴話喧嘩にも巻き込まれたがな」

グレイはシュンジと旅した記憶を思い出し、思わず微笑する。
そんなグレイの表情を見て、キョウスケは羨やましく思う。一度でもいいから、そんな父親の姿を見てみたかったと。

「ヘッヘッ……でもそんな旅も長くは続かず、当時副魔王だったベルゼブブのクーデターがデモンズスクエア内で起き、ルシファーはベルゼブブの罠にかかって体と魂を分裂され、散り散りにされちまったんだ。当然お前の親父さんもその現場に駆けつけたそうだよ?」

ジャックが飲み物を片手に語る。
ベルゼブブのクーデター事件。当時、絶対揺るがないとされていた魔界の地位が動いた歴史的大惨事であり、この後、魔界は強い者が生き残るという下克上、弱肉強食の世界になった元凶でもあった。

「そして……父さんはベルゼブブに殺されたんだね……」

食べ物を食べていた手が止まり、キョウスケの表情に影が差す。

「あぁ、クーデターの勢いに乗ってハルマゲドンまで起こそうとしたベルゼブブに立ち向かってな。それでもお前の親父さんがベルゼブブを止めていなかったら、今頃この世界は無くなっちまってたかもしれない。間違いなくデビルサモナーシュンジはこの世界を救った英雄だよ」

ジャックはそんなキョウスケを見て、気を遣う。
誰だって親が殺された話をされたら嫌な思いをするものだ。その思いを少しでも緩和しようと、フォローを入れた。

「ありがとうございますジャックさん……そう言ってくれるとやっぱり父さんはすごい人だったんだなって思います。でも僕はこんなんだし……とても父さんには敵わないや」

そう言って、自分を悲観するキョウスケ。
まともに戦えもせず、臆病で、親衛隊に捕まり牢獄へ入れられ、挙句の果てにはミレイとは離ればなれ。
自分の情けなさと、父親の背中の大きさにキョウスケは打ちひしがれていた。
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