21 / 71
第3章 アンダーグラウンド
008【1】
しおりを挟む
「ヘッヘッへッ着いたぜ、ここがオイラの隠れ家さ」
ジャックに連れられ、キョウスケとグレイがやって来たのはアンダーグラウンドのスラム街のような市街地のさらに裏。そこにジャックの隠れ家は存在していた。
「こんなことを言うのもなんだが、思った以上にボロボロだな」
グレイが言う通り、建物はまるで廃墟のようなものであり、とても人も魔物も住むような場所ではなかった。
「まあまあこれにはちょっとカラクリがあってね。こっちに来てよ」
ジャックは二人を廃墟の中へといざなう。すると、廃墟の真ん中辺りで急にジャックは足踏みをし始める。
「なにやってるんですかジャックさん?」
キョウスケがジャックの謎の動作について問いかけると、ジャックはいつもの笑い声で返してくる。
「ヘッヘッへッまあ見てなって……おっここか!」
今までジャックの足踏みにカツンカツンと高い音をたてていた床だったが、一箇所だけゴッという鈍い音が聞こえ、そこでジャックは足踏みを止める。
ジャックはその場に屈み込み、床を触るとレバーのようなものを見つけ、それを握る。
「よいしょっと!ここだここだ!」
レバーを一気に引き上げると床の一部分が外れ、その下には地下へと続く階段が隠されていた。
「おおおっ!!まるで秘密基地みたいですね!!!」
地下への階段を見て、キョウスケは大興奮する。
地下階段、廃墟、秘密基地、小学六年生の少年心をくすぐるワードがジャックの隠れ家にはどんどん飛び出てきた。
「ヘッヘッへッ!まぁ隠れ家だからね。だけど中を見たらもっと驚くと思うよ?」
ジャックは階段の最初の段の壁に着いているスイッチを押す。すると地下への階段はマジックバルブという、魔力を使って灯りををともす電球のようなものによって明るく照らし出された。
三人がしばらく階段を下っていくと、扉の前へと到達し、ジャックが扉の鍵を開くとそこには地下とは思えない大部屋が広がっていた。
「すごい……ホントに秘密基地だ!!!!」
そんな大部屋を見て、キョウスケは更に胸を踊らせる。
部屋には大きなソファやベッドが置いてあったり、壁には魔界の地図が貼ってあったり、はたまた大きなモニターが設置され、そこにはアンダーグラウンドの市街地が映し出されていた。
まさに秘密基地。ロマン溢れる空間がそこにはあった。
「フフン!まあ座ってゆっくりしてよ」
ジャックは冷蔵庫を漁り、飲み物とハムなどのちょっとした食べ物を取り出す。
「それじゃあ遠慮なく……おおっ!」
キョウスケがソファに座ると、体が沈んでしまうほどフカフカなソファだった。
その隣にグレイも座り、キョウスケと同じように驚きの反応をする。
「ヘッヘッ、オイラ盗賊だから色んな魔界に行ってて実はここにはあんまり帰って来ないのよ。だけどたまに帰ってきた時に癒やされる場所にしようって改装してたらこんなんになっちまってたんだよね」
ジャックはキョウスケ達の正面のソファに腰掛け、持ってきた飲み物と食べ物をテーブルに広げる。
「ほら食べていいよ。ここに来て何も食べてないだろ?」
「そういえば……」
キョウスケのお腹が大きな音をたてる。考えたらその日の夕方にグレイと出会い、夜にはこの魔界へ来ていたためキョウスケが最後に食べ物を口にしたのはお昼の学校の給食のみだった。
「じゃあいただきます!」
キョウスケは食べ物にがっつく。まさに成長期の少年らしい姿だった。
「ヘッヘッへッ、んじゃあ食べながらでいいからお前の親父さんについてオイラが調べたことを聞いてくれよ」
「うん……」
キョウスケは食べながらも背筋が自然と伸びる。
今までまったく知らなかった父親の素性。それを知る時がついに来たのだ。
「お前の親父さんはな、当時の魔王ルシファーによって魔界保安官ってのに正式に選ばれていたそうなんだよ。つまり魔界の平和を守っていたってことだな」
「えっ!父さんがそんなことを!?」
キョウスケは驚愕する。
父親がデビルサモナーだったことはグレイによって伝えられ知っていたが、まさか魔界を守る保安官になっていたなど知る由もなかった。
「ほ……ホントなのグレイ?」
半信半疑でグレイに尋ねると、グレイは首を縦に振る。
「あぁ、俺とシュンジは魔王ルシファーの直々の命によって色んな魔界を旅し、魔界の平和を維持してたんだ。大きい事件にも挑んだし、シュンジのお節介のおかげでしょうもない痴話喧嘩にも巻き込まれたがな」
グレイはシュンジと旅した記憶を思い出し、思わず微笑する。
そんなグレイの表情を見て、キョウスケは羨やましく思う。一度でもいいから、そんな父親の姿を見てみたかったと。
「ヘッヘッ……でもそんな旅も長くは続かず、当時副魔王だったベルゼブブのクーデターがデモンズスクエア内で起き、ルシファーはベルゼブブの罠にかかって体と魂を分裂され、散り散りにされちまったんだ。当然お前の親父さんもその現場に駆けつけたそうだよ?」
ジャックが飲み物を片手に語る。
ベルゼブブのクーデター事件。当時、絶対揺るがないとされていた魔界の地位が動いた歴史的大惨事であり、この後、魔界は強い者が生き残るという下克上、弱肉強食の世界になった元凶でもあった。
「そして……父さんはベルゼブブに殺されたんだね……」
食べ物を食べていた手が止まり、キョウスケの表情に影が差す。
「あぁ、クーデターの勢いに乗ってハルマゲドンまで起こそうとしたベルゼブブに立ち向かってな。それでもお前の親父さんがベルゼブブを止めていなかったら、今頃この世界は無くなっちまってたかもしれない。間違いなくデビルサモナーシュンジはこの世界を救った英雄だよ」
ジャックはそんなキョウスケを見て、気を遣う。
誰だって親が殺された話をされたら嫌な思いをするものだ。その思いを少しでも緩和しようと、フォローを入れた。
「ありがとうございますジャックさん……そう言ってくれるとやっぱり父さんはすごい人だったんだなって思います。でも僕はこんなんだし……とても父さんには敵わないや」
そう言って、自分を悲観するキョウスケ。
まともに戦えもせず、臆病で、親衛隊に捕まり牢獄へ入れられ、挙句の果てにはミレイとは離ればなれ。
自分の情けなさと、父親の背中の大きさにキョウスケは打ちひしがれていた。
ジャックに連れられ、キョウスケとグレイがやって来たのはアンダーグラウンドのスラム街のような市街地のさらに裏。そこにジャックの隠れ家は存在していた。
「こんなことを言うのもなんだが、思った以上にボロボロだな」
グレイが言う通り、建物はまるで廃墟のようなものであり、とても人も魔物も住むような場所ではなかった。
「まあまあこれにはちょっとカラクリがあってね。こっちに来てよ」
ジャックは二人を廃墟の中へといざなう。すると、廃墟の真ん中辺りで急にジャックは足踏みをし始める。
「なにやってるんですかジャックさん?」
キョウスケがジャックの謎の動作について問いかけると、ジャックはいつもの笑い声で返してくる。
「ヘッヘッへッまあ見てなって……おっここか!」
今までジャックの足踏みにカツンカツンと高い音をたてていた床だったが、一箇所だけゴッという鈍い音が聞こえ、そこでジャックは足踏みを止める。
ジャックはその場に屈み込み、床を触るとレバーのようなものを見つけ、それを握る。
「よいしょっと!ここだここだ!」
レバーを一気に引き上げると床の一部分が外れ、その下には地下へと続く階段が隠されていた。
「おおおっ!!まるで秘密基地みたいですね!!!」
地下への階段を見て、キョウスケは大興奮する。
地下階段、廃墟、秘密基地、小学六年生の少年心をくすぐるワードがジャックの隠れ家にはどんどん飛び出てきた。
「ヘッヘッへッ!まぁ隠れ家だからね。だけど中を見たらもっと驚くと思うよ?」
ジャックは階段の最初の段の壁に着いているスイッチを押す。すると地下への階段はマジックバルブという、魔力を使って灯りををともす電球のようなものによって明るく照らし出された。
三人がしばらく階段を下っていくと、扉の前へと到達し、ジャックが扉の鍵を開くとそこには地下とは思えない大部屋が広がっていた。
「すごい……ホントに秘密基地だ!!!!」
そんな大部屋を見て、キョウスケは更に胸を踊らせる。
部屋には大きなソファやベッドが置いてあったり、壁には魔界の地図が貼ってあったり、はたまた大きなモニターが設置され、そこにはアンダーグラウンドの市街地が映し出されていた。
まさに秘密基地。ロマン溢れる空間がそこにはあった。
「フフン!まあ座ってゆっくりしてよ」
ジャックは冷蔵庫を漁り、飲み物とハムなどのちょっとした食べ物を取り出す。
「それじゃあ遠慮なく……おおっ!」
キョウスケがソファに座ると、体が沈んでしまうほどフカフカなソファだった。
その隣にグレイも座り、キョウスケと同じように驚きの反応をする。
「ヘッヘッ、オイラ盗賊だから色んな魔界に行ってて実はここにはあんまり帰って来ないのよ。だけどたまに帰ってきた時に癒やされる場所にしようって改装してたらこんなんになっちまってたんだよね」
ジャックはキョウスケ達の正面のソファに腰掛け、持ってきた飲み物と食べ物をテーブルに広げる。
「ほら食べていいよ。ここに来て何も食べてないだろ?」
「そういえば……」
キョウスケのお腹が大きな音をたてる。考えたらその日の夕方にグレイと出会い、夜にはこの魔界へ来ていたためキョウスケが最後に食べ物を口にしたのはお昼の学校の給食のみだった。
「じゃあいただきます!」
キョウスケは食べ物にがっつく。まさに成長期の少年らしい姿だった。
「ヘッヘッへッ、んじゃあ食べながらでいいからお前の親父さんについてオイラが調べたことを聞いてくれよ」
「うん……」
キョウスケは食べながらも背筋が自然と伸びる。
今までまったく知らなかった父親の素性。それを知る時がついに来たのだ。
「お前の親父さんはな、当時の魔王ルシファーによって魔界保安官ってのに正式に選ばれていたそうなんだよ。つまり魔界の平和を守っていたってことだな」
「えっ!父さんがそんなことを!?」
キョウスケは驚愕する。
父親がデビルサモナーだったことはグレイによって伝えられ知っていたが、まさか魔界を守る保安官になっていたなど知る由もなかった。
「ほ……ホントなのグレイ?」
半信半疑でグレイに尋ねると、グレイは首を縦に振る。
「あぁ、俺とシュンジは魔王ルシファーの直々の命によって色んな魔界を旅し、魔界の平和を維持してたんだ。大きい事件にも挑んだし、シュンジのお節介のおかげでしょうもない痴話喧嘩にも巻き込まれたがな」
グレイはシュンジと旅した記憶を思い出し、思わず微笑する。
そんなグレイの表情を見て、キョウスケは羨やましく思う。一度でもいいから、そんな父親の姿を見てみたかったと。
「ヘッヘッ……でもそんな旅も長くは続かず、当時副魔王だったベルゼブブのクーデターがデモンズスクエア内で起き、ルシファーはベルゼブブの罠にかかって体と魂を分裂され、散り散りにされちまったんだ。当然お前の親父さんもその現場に駆けつけたそうだよ?」
ジャックが飲み物を片手に語る。
ベルゼブブのクーデター事件。当時、絶対揺るがないとされていた魔界の地位が動いた歴史的大惨事であり、この後、魔界は強い者が生き残るという下克上、弱肉強食の世界になった元凶でもあった。
「そして……父さんはベルゼブブに殺されたんだね……」
食べ物を食べていた手が止まり、キョウスケの表情に影が差す。
「あぁ、クーデターの勢いに乗ってハルマゲドンまで起こそうとしたベルゼブブに立ち向かってな。それでもお前の親父さんがベルゼブブを止めていなかったら、今頃この世界は無くなっちまってたかもしれない。間違いなくデビルサモナーシュンジはこの世界を救った英雄だよ」
ジャックはそんなキョウスケを見て、気を遣う。
誰だって親が殺された話をされたら嫌な思いをするものだ。その思いを少しでも緩和しようと、フォローを入れた。
「ありがとうございますジャックさん……そう言ってくれるとやっぱり父さんはすごい人だったんだなって思います。でも僕はこんなんだし……とても父さんには敵わないや」
そう言って、自分を悲観するキョウスケ。
まともに戦えもせず、臆病で、親衛隊に捕まり牢獄へ入れられ、挙句の果てにはミレイとは離ればなれ。
自分の情けなさと、父親の背中の大きさにキョウスケは打ちひしがれていた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる