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第4章 エキドナの遺跡
002【1】
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キョウスケとグレイはシンアルの市街地にある、エルフの治療施設にいた。
エルフの治療施設とは、エルフが得意とする癒しの魔法や回復魔法で病気や怪我を治療する、言わば魔物達にとっての病院のようなところであり、魔界の街には必ず一軒は存在している施設である。
先のアスタロトとの戦いで、グレイは右後ろ足を怪我していたため、その治療に来ていたのだ。
「はいこれでキッチリ治りましたよ~」
若い女性のエルフが治療を終えると、グレイが負っていた深い傷は丸々消え、痛みも全く無くなっていた。
「わぁすごい!あの傷が一瞬で治った!!お医者さんなんかよりずっとすごいかもっ!」
キョウスケはその治療の早さと出来の良さに感動する。人間だったら全治一週間はするだろう怪我を一瞬で治したのだから、彼が驚くのも無理はない。
「ふふふ……魔獣の方は特に怪我が治りやすい体質なので、回復魔法をかけてあげればこの程度の傷すぐに治すことができますのよ?」
「へぇ……頑丈なんだねグレイって」
「フッ……生まれつき頑丈だったからこの程度で済んだのかもな」
グレイは治療台から立ち上がり、すとっと飛び降りてみせる。どうやら本当に完治したようだった。
「でも頑丈だからって無理はいけませんよ!傷で済んでいたとはいえ、少量の毒も残ってましたから、危うく治療が遅かったら壊死していた可能性もあったんですからね」
「そ……そうなのか……うむ……気をつけるよ」
「気をつけるじゃなくて、わたくしが言いたいのはやっちゃいけないってことですよ?油断大敵、分かりましたね?」
「……はい分かりました」
エルフの指摘にグレイは大人しく応じる。それはまるで、入院している子供が体の調子がいいからと無理をして回り、それを見て叱るお医者さんのようだった。
「はい、では治療は終わりです。お大事に」
「ありがとうございました!」
キョウスケとグレイはエルフに一礼してから、治療室を出て行く。
「でもあんな攻撃を受けたのに、この程度で済んで良かったよね」
「あぁ……下手したら壊死なんかまだ可愛いくらいだったかもしれんしな」
アスタロトの放ったデス・ベノム・インパクト。大地をも腐らせ、生きとし生けるものの命を奪い取る程の技だ。
それを後ろ足の傷程度で済ませる……まさに奇跡の範囲の出来事であったのだ。
「……エルフさんの言う通り、無理しないようにしようねグレイ」
キョウスケはあの光景を思い出し、今頃になって怖気付く。
「あのなぁ……俺だって無茶したくないさ。だけど相手が相手なんだから仕方ないだろ?」
「うぅん……確かに」
キョウスケはグレイに諭される。
これから相手にするのは魔界の中でも役職を持つ強者ばかり。
ちょっとやそっと無茶をしたからと言って、勝てる相手では無かった。
「おう、治療は終わったようだなグレイさんよぉ」
キョウスケとグレイは治療施設を出ると、そこではジャックが腕を組んで待ち構えていた。
「あぁ、この通りピンピンさ。エルフからは無茶するなと言われた」
「ヘッヘッ!ちげぇねぇや!あんな戦い何度もしてたら命が幾つあっても足りないや」
ケタケタと相変わらずの笑い声で愉快に笑うジャック。
「あのジャックさん、それでバベルの塔の方はどうだった?」
「ん?あぁ……なんかベリトが急に魔王に呼び出されたから入場出来ないって、騎士に門前払いされちまったよ」
ジャックは溜息をつく。
魔界将官ベリト、魔界の西端であるシンアルの守護を任された優秀な悪魔である。
このシンアルの地は首都であるデモンズスクエアより遥か離れており、一見そこを守るのは閑職であるように見えるが、ここには魔界から天界へ向かうことの出来る唯一の手段、天の扉がある。
魔物にとって天使は何よりも警戒しなければならない相手であり、それ故にここには優秀な者を置き、守護に当たらせる。
つまり、ベリトはそれだけ魔王に信頼された強者なのだ。
「緊急召集されたということか……もしかしたらアスタロトのことかもしれんな」
「多分そうかもしれないねぇ……オイラ達スッパリ倒しちゃったけど、アイツああ見えて魔王の側近だったからね。そりゃあ幹部全員召集されますわな」
「もしかしたら指名手配どころの話じゃなくなるかもしれないな……これからはより用心していこう」
「うん……そうだね」
キョウスケは固唾を呑み、二人の話を聞いていた。
今まではグレイのみが指名手配を掛けられ、そのついでで追われていたキョウスケだったが、これからは違う。魔王に反逆を企てる賊という名目で、キョウスケそしてジャックをも個別で指名手配に掛けられることは目に見えていた。
こうして三人共仲良く、魔界の兵士に追われる身となったのだ。
エルフの治療施設とは、エルフが得意とする癒しの魔法や回復魔法で病気や怪我を治療する、言わば魔物達にとっての病院のようなところであり、魔界の街には必ず一軒は存在している施設である。
先のアスタロトとの戦いで、グレイは右後ろ足を怪我していたため、その治療に来ていたのだ。
「はいこれでキッチリ治りましたよ~」
若い女性のエルフが治療を終えると、グレイが負っていた深い傷は丸々消え、痛みも全く無くなっていた。
「わぁすごい!あの傷が一瞬で治った!!お医者さんなんかよりずっとすごいかもっ!」
キョウスケはその治療の早さと出来の良さに感動する。人間だったら全治一週間はするだろう怪我を一瞬で治したのだから、彼が驚くのも無理はない。
「ふふふ……魔獣の方は特に怪我が治りやすい体質なので、回復魔法をかけてあげればこの程度の傷すぐに治すことができますのよ?」
「へぇ……頑丈なんだねグレイって」
「フッ……生まれつき頑丈だったからこの程度で済んだのかもな」
グレイは治療台から立ち上がり、すとっと飛び降りてみせる。どうやら本当に完治したようだった。
「でも頑丈だからって無理はいけませんよ!傷で済んでいたとはいえ、少量の毒も残ってましたから、危うく治療が遅かったら壊死していた可能性もあったんですからね」
「そ……そうなのか……うむ……気をつけるよ」
「気をつけるじゃなくて、わたくしが言いたいのはやっちゃいけないってことですよ?油断大敵、分かりましたね?」
「……はい分かりました」
エルフの指摘にグレイは大人しく応じる。それはまるで、入院している子供が体の調子がいいからと無理をして回り、それを見て叱るお医者さんのようだった。
「はい、では治療は終わりです。お大事に」
「ありがとうございました!」
キョウスケとグレイはエルフに一礼してから、治療室を出て行く。
「でもあんな攻撃を受けたのに、この程度で済んで良かったよね」
「あぁ……下手したら壊死なんかまだ可愛いくらいだったかもしれんしな」
アスタロトの放ったデス・ベノム・インパクト。大地をも腐らせ、生きとし生けるものの命を奪い取る程の技だ。
それを後ろ足の傷程度で済ませる……まさに奇跡の範囲の出来事であったのだ。
「……エルフさんの言う通り、無理しないようにしようねグレイ」
キョウスケはあの光景を思い出し、今頃になって怖気付く。
「あのなぁ……俺だって無茶したくないさ。だけど相手が相手なんだから仕方ないだろ?」
「うぅん……確かに」
キョウスケはグレイに諭される。
これから相手にするのは魔界の中でも役職を持つ強者ばかり。
ちょっとやそっと無茶をしたからと言って、勝てる相手では無かった。
「おう、治療は終わったようだなグレイさんよぉ」
キョウスケとグレイは治療施設を出ると、そこではジャックが腕を組んで待ち構えていた。
「あぁ、この通りピンピンさ。エルフからは無茶するなと言われた」
「ヘッヘッ!ちげぇねぇや!あんな戦い何度もしてたら命が幾つあっても足りないや」
ケタケタと相変わらずの笑い声で愉快に笑うジャック。
「あのジャックさん、それでバベルの塔の方はどうだった?」
「ん?あぁ……なんかベリトが急に魔王に呼び出されたから入場出来ないって、騎士に門前払いされちまったよ」
ジャックは溜息をつく。
魔界将官ベリト、魔界の西端であるシンアルの守護を任された優秀な悪魔である。
このシンアルの地は首都であるデモンズスクエアより遥か離れており、一見そこを守るのは閑職であるように見えるが、ここには魔界から天界へ向かうことの出来る唯一の手段、天の扉がある。
魔物にとって天使は何よりも警戒しなければならない相手であり、それ故にここには優秀な者を置き、守護に当たらせる。
つまり、ベリトはそれだけ魔王に信頼された強者なのだ。
「緊急召集されたということか……もしかしたらアスタロトのことかもしれんな」
「多分そうかもしれないねぇ……オイラ達スッパリ倒しちゃったけど、アイツああ見えて魔王の側近だったからね。そりゃあ幹部全員召集されますわな」
「もしかしたら指名手配どころの話じゃなくなるかもしれないな……これからはより用心していこう」
「うん……そうだね」
キョウスケは固唾を呑み、二人の話を聞いていた。
今まではグレイのみが指名手配を掛けられ、そのついでで追われていたキョウスケだったが、これからは違う。魔王に反逆を企てる賊という名目で、キョウスケそしてジャックをも個別で指名手配に掛けられることは目に見えていた。
こうして三人共仲良く、魔界の兵士に追われる身となったのだ。
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