The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

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第4章 エキドナの遺跡

003

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「おおっ!すんごい人だかりだっ!」

エキドナの遺跡へ着いたキョウスケ一行は、遺跡へ入るためのチケット売り場で並んでいた。
チケット売り場の列は長蛇になっており、遺跡であるのにも関わらず、まるで人気のテーマパークのような光景になっていた。

「けどあれだな、なんと言うか獣が多いような気がするな……」

ジャックが隣を見ると、四足歩行の魔物が並んでいたり、二本足で歩く犬のような魔物が歩いていたりと観光客には魔物の中でも、魔獣と呼ばれる種族が多かった。

「なんか動物園みたい……」

キョウスケがぼそっと言うと、それを聞いたジャックは大笑いし始めた。

「ヘッヘッヘッ!そりゃいいやキョウスケ。遺跡に入る前にここで無料で見放題ってか」

「……お前らそんなこと言ってると尻を噛まれるぞ」

自らも魔獣であるグレイが二人に注意を促す。ジャックが隣の魔物を再び見てみると、心なしかこちらを睨んでいるような気がした。

「おお恐ろしや恐ろしや……でもなんでここの遺跡ってこんなに魔獣が多いんだろうな?」

「えっ……お前そんなことも知らずにエキドナの遺跡へ行くと言い出したのか……」

グレイは軽蔑の目でジャックを見つめる。そんなグレイの目を見て、ジャックはムッと腹を立てた。

「ケッどうせスラム育ちのオイラには学はねぇよ!そんなもん習える場所もなかったしさ!いいよな勉強できる奴は!!」

「別に俺はそういう意味で言ったわけじゃない。ただエキドナのことを知ってるから来たのかと思っただけだ……」

二人の間に嫌な空気が流れる。とても気まずい、重い空気が。
それを見ていたキョウスケはすぐさま仲立ちに入った。

「二人とも喧嘩はやめなよ……周りに人もいるんだし、今喧嘩しても何も良いこと無いでしょ?せっかく楽しく遺跡を見ようとしてたのに……ね?」

「む……そうだな……すまなかったジャック」

「……うん、オイラもちょっとムキになっちまった」

「ふぅ……」

なんとか仲が険悪になる前に、二人の仲を繋ぎ止めることに成功したキョウスケは安堵の溜息をついた。

「それでグレイ、エキドナってどういう魔物なの?」

先程ジャックが知らなかったことを、今度はキョウスケが改めてグレイに尋ねる。

「うむ……エキドナっていうのは魔獣の母だと言われている程、多くの魔獣を生み出した魔物なんだ。俺の祖先であるケルベロスもこのエキドナによって生み出されたと言われてる」

「へぇ~……じゃあグレイの祖先のお母さんってことなんだね」

「まあ平たく言えばそういうことだ」

「はぁ~なるほどなぁ。だからこんなに魔獣が多いのか」

ジャックはグレイの説明でやっと合点がいき、一人頷いた。

「そういえばジャックさんはどんな種族なんですか?」

「えっオイラかい?」

唐突なキョウスケからの質問に、ジャックは意表を突かれる。

「オイラは一応霊なのかな?なんせジャック・オー・ランタンってのは元々地獄にも天国にも行けない魂がカブに憑依したってのが始まりだからな」

「えっ!じゃあジャックさんは幽霊なのっ!?」

すると急にキョウスケの表情が強張る。ダイミョウ小学校の屋上の時の話もそうだったが、キョウスケは何よりも幽霊が一番苦手なものだった。
キョウスケはそそくさとグレイの背後に回り、グレイを盾にする。

「おいおいそんなに怖がるなって!例え霊であっても今は魔物として実体があるんだ。普通幽霊なら触れないだろ?ほれ触ってみろ」

「…………」

「ほらキョウスケ触ってやれ。ジャックが泣きそうな顔してるぞ」

「おいグレイデタラメ言うな!泣きそうになんてなってねぇよ!切ない時に出る水玉がちょろちょろっと出てるだけだ!!」

「それを泣いてるって言うんだよ……」

いつも陽気であるジャックだが、ここまで嫌われるとショックを受けざるを得ない。
キョウスケはグレイに言われるがまま、恐る恐るジャックに触れてみる。
体幹、手、足どれも触れることが出来たのだ。

「なっ?触れるだろ?そう、お前の嫌いな幽霊は触れないけどオイラは触れる!だからキョウスケ嫌いにならないでおくれよぉ~!!」

「……随分と必死だなお前」

グレイはじとっと、流し目でジャックを見る。

「これから一緒に旅するのに、歩く度にこうやって距離をとられるのがどんなに辛いか……お前はいいよな犬みたいな見た目だから……オイラなんか出会うたび出会うたびに化け物扱いだぜ?魔物の子供なんか、オイラの顔を見て泣き叫ぶからな」

複雑な表情をしながらジャックは言う。どうやら過去にも、こうやって恐れられて傷ついた経験があるようだった。

「犬じゃないケルベロスだ!……まあこのままギクシャクした関係を保つのもチームとして足並みが狂うからな。キョウスケ恐れるな、そいつを幽霊だと思わずにただのカボチャ頭のお調子者だと思え」

「誰がカボチャ頭のお調子者だ!……でもそれで変に距離取らないでいいなら、それでもいいけどさぁ……」

ジャックは目を伏せ、キョウスケの方をチラ見する。そんなジャックを見て、キョウスケも申し訳なくなってしまった。

「……ごめんなさいジャックさん、僕ホントに幽霊が苦手で……でももう大丈夫、ジャックさんはジャックさんだもんね!」

キョウスケが謝ると、ジャックはホッとしたのか、その顔に笑みが戻ってきた。

「ヘッヘッ!そうだ!オイラはオイラだからな!それに誰にでも苦手なものはあるさ。ちなみにオイラはカブが大の苦手だ!!」

「それ先祖の全否定になってないか?」

「ヘッ!もう先祖に顔向けできない程のバチあたりなことはやり尽くしたさ!それにこうやって良い悪友とも出会えたんだ。今更バチなんか怖かねぇ!!」

「もうジャックさん……でも僕たちにとばっちりが来るのだけはカンベンしてくださいよ?」

三人は周りに観光客がいることを忘れ、笑い合う。ギクシャクすることはあれど、この短い期間でこれだけ互いを信頼し合える仲間に彼らはなっていた。
そして何よりも、その輪の中心はデビルサモナーであるキョウスケであり、彼にもリーダーとしての自覚が僅かだが芽生えつつあった。

「おいお前ら!前空いてるだろ!笑ってないで先に進め!!」

「あっ!す……すいません!」

後ろに並んでいた魔物から注意され、三人とも肩をすくめて前に進む。
こういう時でも、真っ先に謝るのはリーダーであるキョウスケだった。
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