The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

文字の大きさ
3 / 71
第1章 魔物を操る者

002【1】

しおりを挟む
夕方、ホームルームが終わりダイミョウ小学校に放課後がやってくる。
他の子供達はさっさとランドセルに荷物を詰め込み、あるいは友達と話しながら、あるいはかけっこをしながら教室を出て行く。
その中で一人、キョウスケはゆっくりと帰り支度をする。まるでナマケモノを見てるかの如く、ゆっくりと。

「おっそ~い!荷物入れるくらいパッパと終わらせなさいよ!!」

腕を組み、キョウスケを催促するのはミレイだ。
パタパタと小刻みに足を揺らし、キョウスケを急かす……がキョウスケはそれでも荷物をゆっくりと詰め込む。

「アンタねぇ……いくら屋上に行きたくないからってそんなことしてたら夜になって余計怖くなるわよ。あたしそうなったらさっさと帰っちゃうからね」

「えっ……」

今までミレイがどんなに催促しても、心を不動にしてきたキョウスケだったが、これには反応せざるを得なかった。

「どっちがマシかなぁ~?明るい内に屋上に行っちゃうか、くら~い校舎に一人取り残されちゃうか?」

「うぅ……分かった!分かったよ!」

ついにキョウスケは観念し、ナマケモノのようなスピードで荷物を詰めていたのを、人並みのスピードまで加速させる。
夜の校舎は、何もいないと思っていてもやっぱり怖い。一人でとも言われると尚更だ。
キョウスケの中の究極の選択は、何かいるかもしれないがミレイが隣に居て、明るい内に帰れる屋上を選んだのだ。

「よし終わったわね。じゃあ屋上にしゅっぱーつ!」

そしてその時はやって来た。
ダイミョウ小学校は三階建ての校舎となっており、六年生の教室は最上階の三階にある。つまり一つ階段を上ればそこは屋上だった。
二人は教室を出て、屋上に続く階段の前に立つ。

「……まだ何も聞こえないわね」

「……うん、そうだね」

階段の前では何も物音などしない。しん、と静まり返っているただの階段だ。

「じゃあ行くわよ……!」

ミレイは一歩、二歩と階段を上って行く。その後ろにベッタリ張り付くようにキョウスケも階段を上った。
しかし階段を上っても、やはり何も物音はしない。二人はついに屋上への階段を全て上りきり、屋上へと続く扉の前に立っていた。

「なんだ何もいないじゃない……」

「ホッ……」

物音など全くしなかったことに拍子抜けし、ガッカリするミレイと、胸を撫で下ろすキョウスケ。
結局のところ、噂はあくまで噂だけだったという話だ。

「ほらこれで納得しただろミレイ?じゃっ、サッサと家に帰ろうよ」

「…………」

何とも不服そうな表情を出すミレイ。まだ合点がいかないようだ。

「……そうだ!」

するとミレイは急に屋上の鍵を開ける。屋上の鍵は上げ下げで開けることの出来る鍵になっており、開けようと思えば誰でも開けられるようになっていた。

「ちょっとミレイ!!」

「本当に何もないか、この目で確かめないと気が済まないわ!」

その刹那、ガラリと屋上の扉は開かれた。
何もない、あるのは夕日で赤く染まる空があるだけ……そう思っていたのだが。

「キョ……キョウスケあれ!!」

ミレイの指差した先に、それは居た。
屋上の日陰になる場所で、一匹丸まって目を閉じている灰色の犬のような何かが。

「あれって……犬じゃない?」

「……そうみたいだね」

灰色の犬は二人には気づいてなく、静かに目を閉じている。

「でも何でこんなところに犬がいるんだろう……」

キョウスケの疑問はもっともだった。
そこら辺の街路にいるならまだしも、ここは誰も立ち入らぬ学校の屋上。常識的に考えると、犬などいようもない場所なのだ。

「もしかしたら誰かがイタズラでここに閉じ込めたのかも……酷いことするわね!」

ミレイはカッと怒りを爆発させる。
犬が一人でにここまで辿りつけるはずがない。そうなると、誰かのイタズラでここに連れて来られたと考えるのが妥当だ。

「ちょっと近づいてみましょうよ」

「うん……」

二人は屋上に踏み入れ、一歩、二歩と灰色の犬に近づいて行く。
キョウスケも犬と分かれば、先程までの恐怖は無くなっていた。
はずだったのだが。

「……やっと人間が現れたか」

二人の声以外の別の声がし、二人の足は止まる。
しかし二人以外に喋れる者などここにはいない。

「その扉を開けてくれたことに感謝する。何度体当たりしても今の俺では開けられなかったからな」

そう、話しているのは二人の目の前にいる灰色の犬だった。

「う……う……うわあああああああああああ!!!」

沈黙を先に破ったのはキョウスケだった。
物音の正体が幽霊の仕業では無かったにしろ、喋る犬を前にして冷静でいられるはずなど無い。

「い……犬が喋ってる……!」

さすがに肝のあるミレイでも、目の前の摩訶不思議に戸惑いを隠せなかった。

「俺は犬じゃない、ケルベロスだ。……と言っても今はこんな体だしそう思われても仕方ないか」

灰色の犬、いやケルベロスはそう言って立ち上がり、二人の元へ歩んでくる。
それと同時にキョウスケとミレイは一歩下がる。

「怖がることはない、何もしないさ。それより俺は人探しをしてるんだ」

「ひ……人探し?」

キョウスケが聞き返す。どうやらケルベロスが何かをしてくる様子はなかった。

「そうだ。人間の男の子どもを探していたのだが、子どもを探すなら学校がいいとやって来たのはいいものの、まさかこんな場所に降りるとは思わず、立往生していたんだ」

ケルベロスはそれまでの経緯を軽く話し、それからこう続けた。

「カンダ シュンジの息子、カンダ キョウスケを探している。何か心当たりはないだろうか?」

「カンダ キョウスケって……」

ミレイは自然と目線をキョウスケに持って行く。
カンダ キョウスケ、隣にいるくせ毛の多い男の子こそがまさにそれだった。

「ぼ……僕を探してたってこと……?」

キョウスケは正直に答え、ケルベロスの前に出る。
変に嘘を吐いても見破られる、そう思ったからだ。

「そうか……お前がシュンジの息子か。シュンジの話で聞いていた時よりも随分と成長したみたいだな」

「……父さんを知ってるの?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...