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第1章 魔物を操る者
002【2】
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カンダ シュンジはキョウスケの父親で、今はもうこの世にはいない。
キョウスケの母親いわく、キョウスケが小さい時に事故で亡くなったそうだ。キョウスケもその頃は物心などついてなく、父親の死については知らないことが多かった。
「あぁ……シュンジは俺の相棒だったんだ。ベルゼブブとの戦いであいつは死んじまったがな」
キョウスケの知らないことを次々とケルベロスは話す。
ケルベロスの相棒?ベルゼブブとの戦い?
分からないワードが多すぎて、キョウスケの頭は今にもパンクしそうだった。
「その表情からすると、どうやらお前は何も知らないようだな。……分かった教えてやろう、真実をな」
ケルベロスは語り始める。キョウスケの知らない、本当のことを。
「お前の親父、シュンジはデビルサモナーと呼ばれる魔物を操る召喚士だったんだ。お前の家系の古くは陰陽道に通じていて、式神を操る能力がそのままデビルサモナーの力となったんだ」
「ちょ……ちょっと待って!魔物なんて、そんなものがこの世にいるの!?」
キョウスケはケルベロスの説明に割って入るが、ケルベロスは溜息をつく。
「キョウスケ、お前が目の前にしてる俺だって魔物だろ?」
「あっ……」
ケルベロスも間違いなく魔物だ。こんなに話せる犬など他にいるはずもない。
「続けるぞ……ようはシュンジがデビルサモナーだったように、キョウスケお前も魔物を操る能力をもっているんだ。しかもシュンジよりも才能はあるかもしれん」
「僕に才能が?」
「あぁ……だから俺はお前がここまで成長するのをずっと逃げながら待ったんだ。ベルゼブブが魔界の王に君臨してからはずっと命を狙われていたからな」
よく見るとケルベロスの小さな体には至る所に傷が見られた。その壮絶な逃走劇はこの傷からも見て取れるものだった。
「……それで、君は僕に何をしろって言うんだい?」
自分がデビルサモナーであることや、父親の正体を教え、命を狙われてまで逃げ続けたケルベロス。しかしそれだけを伝えるためにここに来たとは、キョウスケには到底思えなかった。
何かもっと大きな訳がある。そう察していた。
「フッ……さすがはシュンジの息子だ。察しが早くて助かる。俺がここに来たのはキョウスケ、俺と共に魔界へ行きベルゼブブを倒すんだ」
「ベルゼブブ……父さんを殺したヤツなんだよね」
「そうだ。ベルゼブブは本来の力を取り戻し、魔界の王となって今はこの人間世界を破滅させようと企んでいる」
「人間世界!?僕たちのこの世界をってこと!」
キョウスケは愕然とする。
父親を殺した、いわば仇が今度は世界を崩壊しようと目論んでいる。あまりにも壮大な話だった。
「ベルゼブブは一度最終戦争、ハルマゲドンを起こそうとし失敗している。俺とシュンジによってな。だがあの時とは違い、ヤツは魔界の王になり今度はもっと大規模なハルマゲドンを起こそうとしているんだ。悪魔の都合のいい世界に造り替えるためにな」
「悪魔の都合のいい世界にするために、この世界を壊す……滅茶苦茶な話じゃないか」
あまりにも自己中心的な発想。しかし悪魔とはそういうもの。人間の裏の心理を写し出したものが悪魔なのだ。
「ベルゼブブを倒せるのはシュンジの血を流しているお前しかいない。子供のお前にこんなことを願うのは酷なのも分かっているが、請け負ってはくれないか……」
ケルベロスは精一杯頭を下げ、乞う。
その姿を見て、キョウスケは承諾しようとするが、その時一人の人物が頭をよぎる。
「あっ……でも母さんがなんて言うか……」
キョウスケには一緒に暮らしている母親がいる。父親が亡くなってから女手一つでここまでキョウスケを育てた唯一の親だ。
「あぁ……カコさんのことか」
「母さんのことも知ってるの?」
「まあな……あの人にも苦労をかけている。そうだ、俺をカコさんに会わせてくれないか?」
「えっ母さんに?」
突然のケルベロスからの提案に、キョウスケは戸惑う。
言ってしまえば、ケルベロスは得体の知れない生物である。そんなものを母親に会わせてもいいものなのかと。
「フッ……俺みたいなワケのわからないヤツを母親には会わせたくない、そんな顔をしているな」
ケルベロスは笑い、思っていることを見透かされたキョウスケはギョッとする。
「いや……別にそういうワケじゃ……」
「いいんだ。人間の常識的に考えて、俺が胡散臭いことを言っているのは分かっている。だが心配するな、カコさんは俺のことを知っている。それよりも俺が心配なのは……」
一度、ケルベロスは口をつぐみ、間を置き。
「お前が辛い現実に向き合えるかどうかだ。カコさんに俺を会わせたら、多分あの人はお前に全てを語るだろう。だが子供のお前には酷な現実だ……それを知らずに魔界へ旅立つのも一つの手だと思ったのだがな」
知らない方がいい現実。
しかしキョウスケには何のことかまったく検討がつかなかった。
だが、小学生の彼にも一つ分かったことがある。母親は自分に言えない何かをずっと隠している。
それが何なのか、またどれ程のことなのかは理解できないが、キョウスケは一つの答えを自分の中で出す。
「ありがとう。だけど僕は大丈夫……それよりも何も知らないで、モヤモヤしたまま母さんの元を離れる方がツライから」
「そうか……立派な心掛けだ。やはり人間とは奥深く、俺たち魔物より豊かなものを持っているんだな」
「どういうこと?」
「いや独り言だ。では……カコさんのところへ向かおうか」
ケルベロスはそう言って、一歩キョウスケの前に踏み込む。
すると、キョウスケは急に思い立ったようにケルベロスに尋ねた。
「そうだ!君名前は?」
キョウスケの言葉に、ケルベロスは首を傾げる。
「名前?名前など無い。ケルベロスとしか呼ばれたこともない」
「じゃあ僕がつけてあげるよ。そうだなぁ……今日から君はグレイだ!」
「グレイ……体が灰色だからか?」
「そうそう!」
あまりにも単純な名前だったが、初めて名前というものをもらったケルベロスにとってはそれは新鮮なものだった。
「……分かった、俺は今日からグレイだ。よろしく頼むキョウスケ」
「僕の方こそよろしくグレイ!」
二人はパートナー同士、視線を合わせる。
こうしてここに、一人のデビルサモナーが誕生した。
今までの現実とは異なる、キョウスケのデビルサモナーとしての新たな現実が始まったのだ。
キョウスケの母親いわく、キョウスケが小さい時に事故で亡くなったそうだ。キョウスケもその頃は物心などついてなく、父親の死については知らないことが多かった。
「あぁ……シュンジは俺の相棒だったんだ。ベルゼブブとの戦いであいつは死んじまったがな」
キョウスケの知らないことを次々とケルベロスは話す。
ケルベロスの相棒?ベルゼブブとの戦い?
分からないワードが多すぎて、キョウスケの頭は今にもパンクしそうだった。
「その表情からすると、どうやらお前は何も知らないようだな。……分かった教えてやろう、真実をな」
ケルベロスは語り始める。キョウスケの知らない、本当のことを。
「お前の親父、シュンジはデビルサモナーと呼ばれる魔物を操る召喚士だったんだ。お前の家系の古くは陰陽道に通じていて、式神を操る能力がそのままデビルサモナーの力となったんだ」
「ちょ……ちょっと待って!魔物なんて、そんなものがこの世にいるの!?」
キョウスケはケルベロスの説明に割って入るが、ケルベロスは溜息をつく。
「キョウスケ、お前が目の前にしてる俺だって魔物だろ?」
「あっ……」
ケルベロスも間違いなく魔物だ。こんなに話せる犬など他にいるはずもない。
「続けるぞ……ようはシュンジがデビルサモナーだったように、キョウスケお前も魔物を操る能力をもっているんだ。しかもシュンジよりも才能はあるかもしれん」
「僕に才能が?」
「あぁ……だから俺はお前がここまで成長するのをずっと逃げながら待ったんだ。ベルゼブブが魔界の王に君臨してからはずっと命を狙われていたからな」
よく見るとケルベロスの小さな体には至る所に傷が見られた。その壮絶な逃走劇はこの傷からも見て取れるものだった。
「……それで、君は僕に何をしろって言うんだい?」
自分がデビルサモナーであることや、父親の正体を教え、命を狙われてまで逃げ続けたケルベロス。しかしそれだけを伝えるためにここに来たとは、キョウスケには到底思えなかった。
何かもっと大きな訳がある。そう察していた。
「フッ……さすがはシュンジの息子だ。察しが早くて助かる。俺がここに来たのはキョウスケ、俺と共に魔界へ行きベルゼブブを倒すんだ」
「ベルゼブブ……父さんを殺したヤツなんだよね」
「そうだ。ベルゼブブは本来の力を取り戻し、魔界の王となって今はこの人間世界を破滅させようと企んでいる」
「人間世界!?僕たちのこの世界をってこと!」
キョウスケは愕然とする。
父親を殺した、いわば仇が今度は世界を崩壊しようと目論んでいる。あまりにも壮大な話だった。
「ベルゼブブは一度最終戦争、ハルマゲドンを起こそうとし失敗している。俺とシュンジによってな。だがあの時とは違い、ヤツは魔界の王になり今度はもっと大規模なハルマゲドンを起こそうとしているんだ。悪魔の都合のいい世界に造り替えるためにな」
「悪魔の都合のいい世界にするために、この世界を壊す……滅茶苦茶な話じゃないか」
あまりにも自己中心的な発想。しかし悪魔とはそういうもの。人間の裏の心理を写し出したものが悪魔なのだ。
「ベルゼブブを倒せるのはシュンジの血を流しているお前しかいない。子供のお前にこんなことを願うのは酷なのも分かっているが、請け負ってはくれないか……」
ケルベロスは精一杯頭を下げ、乞う。
その姿を見て、キョウスケは承諾しようとするが、その時一人の人物が頭をよぎる。
「あっ……でも母さんがなんて言うか……」
キョウスケには一緒に暮らしている母親がいる。父親が亡くなってから女手一つでここまでキョウスケを育てた唯一の親だ。
「あぁ……カコさんのことか」
「母さんのことも知ってるの?」
「まあな……あの人にも苦労をかけている。そうだ、俺をカコさんに会わせてくれないか?」
「えっ母さんに?」
突然のケルベロスからの提案に、キョウスケは戸惑う。
言ってしまえば、ケルベロスは得体の知れない生物である。そんなものを母親に会わせてもいいものなのかと。
「フッ……俺みたいなワケのわからないヤツを母親には会わせたくない、そんな顔をしているな」
ケルベロスは笑い、思っていることを見透かされたキョウスケはギョッとする。
「いや……別にそういうワケじゃ……」
「いいんだ。人間の常識的に考えて、俺が胡散臭いことを言っているのは分かっている。だが心配するな、カコさんは俺のことを知っている。それよりも俺が心配なのは……」
一度、ケルベロスは口をつぐみ、間を置き。
「お前が辛い現実に向き合えるかどうかだ。カコさんに俺を会わせたら、多分あの人はお前に全てを語るだろう。だが子供のお前には酷な現実だ……それを知らずに魔界へ旅立つのも一つの手だと思ったのだがな」
知らない方がいい現実。
しかしキョウスケには何のことかまったく検討がつかなかった。
だが、小学生の彼にも一つ分かったことがある。母親は自分に言えない何かをずっと隠している。
それが何なのか、またどれ程のことなのかは理解できないが、キョウスケは一つの答えを自分の中で出す。
「ありがとう。だけど僕は大丈夫……それよりも何も知らないで、モヤモヤしたまま母さんの元を離れる方がツライから」
「そうか……立派な心掛けだ。やはり人間とは奥深く、俺たち魔物より豊かなものを持っているんだな」
「どういうこと?」
「いや独り言だ。では……カコさんのところへ向かおうか」
ケルベロスはそう言って、一歩キョウスケの前に踏み込む。
すると、キョウスケは急に思い立ったようにケルベロスに尋ねた。
「そうだ!君名前は?」
キョウスケの言葉に、ケルベロスは首を傾げる。
「名前?名前など無い。ケルベロスとしか呼ばれたこともない」
「じゃあ僕がつけてあげるよ。そうだなぁ……今日から君はグレイだ!」
「グレイ……体が灰色だからか?」
「そうそう!」
あまりにも単純な名前だったが、初めて名前というものをもらったケルベロスにとってはそれは新鮮なものだった。
「……分かった、俺は今日からグレイだ。よろしく頼むキョウスケ」
「僕の方こそよろしくグレイ!」
二人はパートナー同士、視線を合わせる。
こうしてここに、一人のデビルサモナーが誕生した。
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