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第3章 アンダーグラウンド
001【2】
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「えっ……」
庇っていた腕を下ろす。
するとそこには、キョウスケを背で庇うジャックの姿があった。
ジャックが短剣で切っていたのは、飛んで来た黒い邪気の塊だった。
「キョウスケあれ!」
ミレイが指差す先には、三体ほどの亡者にも見え、鬼のようにも見える魔物が立っていた。
「ヘッヘッ……ありゃ餓鬼だよ。このアンダーグラウンドにはよくいるんだ、ああいう亡者がね」
「あれも……魔物なの?」
「ありゃ魔物と言えるのかねぇ……少なくとも、オイラはあんなハシタナイ奴らとは一緒にして欲しくないね」
短剣を構え、餓鬼を見据えるジャック。
餓鬼は再び口を大きく開いて、先程ジャックが切り捨てたものと同じ邪気を放とうとする。
「キョウスケ!俺の魔札を出すんだ!!」
直後、グレイが大声をあげる。
グレイの呼びかけに、キョウスケは急いで自分のポケットをあさった。
「これか……!」
キョウスケは一枚の魔札をポケットから引っ張り出す。それはケルベロスの刻印が記されている魔札だった。
「うわっ!!!」
するとケルベロスの魔札はキョウスケが握った途端、強力な光を放つ。
真っ赤な、業火の如く赤い光を。
「よしキョウスケ、その魔札を使って俺に指示を出すんだ!そしてお前なら唱えられるはずだ……俺の魔技を!!」
「魔技……?!」
魔技とは、デビルサモナーが契約した魔物にのみ使えるようになる特殊な技である。
普通の魔物には魔法が使えるが、それとは別にその魔物が個々に持っている特殊な技をデビルサモナーは引き出すことができるのだ。
「よし……行くよグレイ!!」
「おうっ!!」
グレイとキョウスケは餓鬼に向け構える。
魔札は赤い強い光を放ち、キョウスケの頭に魔技が浮かび出る。
「ヒートブレス!!」
キョウスケが唱えると、グレイの腹の中から火炎が溢れ出し、それは口元で球状に形成される。
「消え去れ亡者よ!!」
グレイは火炎の玉を勢いよく飛ばした。
火球は一体の餓鬼に当たり、その体を炎は焼き尽くす。
まさに地獄の業火だ。
「す……すごい……」
キョウスケはその光景を見て、腰が引ける。
自分の唱えたもの、そしてグレイにこんな力があったこと。それら全てが、キョウスケには驚きであるとともに恐怖でもあった。
「ヒュー……こりゃすげぇや!これがデビルサモナーの力ってやつか」
ジャックは燃える餓鬼を見ながら、笑う。
たとえ亡者といえども、ジャックの持っている短剣では一撃で沈めることはできない。
しかしそれをグレイはたった一発の火球で仕留めたのだ。
「ヒ……ヒィ!!」
残りの二体の餓鬼は、グレイのその力を見て怯え、逃げ去って行く。
物言わぬ亡者といえども、力の圧倒的な差は感じ取ったようだった。
「ふん……逃げたか。キョウスケ、ミレイ無事か?」
グレイは戦闘態勢を解き、キョウスケとミレイの元に近寄って来る。
「うん……あたしは大丈夫だけどキョウスケが」
ミレイとグレイは共にキョウスケの方へ振り返る。キョウスケは開いた口が塞がらず、放心状態のままその場に突っ立っていた。
「……餓鬼一体倒しただけでこれでは先が思いやられるな」
「キョウスケには刺激が強過ぎたみたいねぇ……」
やれやれと二人とも同時に首を横に振る。
それを見兼ねたジャックは振り返り、キョウスケの肩を揺する。
「おいしっかりしろ!」
「はっ!……夢?」
「夢って……お前さん寝てなかっただろ!」
「あっ……そ、それもそうだね」
えへへ、とキョウスケは苦笑いを浮かべ頭を掻く。
キョウスケが見たものは紛れもなく現実そのもの。今までの人生、普通の人間、普通の小学生として生きてきた彼が、他の人とは異なる力を持っていることを実感した瞬間だった。
「ヘッヘッ……しかし面白いもんを見せてもらったよ。その力があれば荒れてるこの魔界でも通用するかもしれねぇな」
ジャックはそう言うと、キョウスケに背を向け立ち去って行く。
「ジャックさん!」
すると、立ち去ろうとするジャックをキョウスケは呼び止めた。
「あの……ジャックさんもしよかったら僕たちの仲間になってくれませんかね?」
キョウスケは臆病な自分を精一杯押し殺して、願い出る。
グレイが仕留めたとはいえ、ジャックは三体もの餓鬼が放った邪気を短剣で一瞬にして全て切り落とした。その実力は見てキョウスケは感服し、仲間に引き入れたいと思ったのだ。
「仲間ねぇ……しかしキョウスケ、オイラは盗賊だぜ?いつお前を裏切って、殺して金を盗み取って行くか分からない連中なんだぜ?」
ジャックは振り返ることなく、キョウスケには背を向けたまま笑ってみせる。
「確かに盗賊は恐いけど……でもジャックさんはそんなことしないと思うんだ。それに襲うならさっきの魔物から守ってくれるようなことしないでしょ?」
賊とは気まぐれな生き物だ。自らが不利になったり窮屈になったりすると平気で裏切り、逃げ去って行く。
それはキョウスケも重々承知だった。
だが、そんな賊とはジャックは違う。先程のジャックの行いを間近で見ていたキョウスケにはそれが分かったのだ。
庇っていた腕を下ろす。
するとそこには、キョウスケを背で庇うジャックの姿があった。
ジャックが短剣で切っていたのは、飛んで来た黒い邪気の塊だった。
「キョウスケあれ!」
ミレイが指差す先には、三体ほどの亡者にも見え、鬼のようにも見える魔物が立っていた。
「ヘッヘッ……ありゃ餓鬼だよ。このアンダーグラウンドにはよくいるんだ、ああいう亡者がね」
「あれも……魔物なの?」
「ありゃ魔物と言えるのかねぇ……少なくとも、オイラはあんなハシタナイ奴らとは一緒にして欲しくないね」
短剣を構え、餓鬼を見据えるジャック。
餓鬼は再び口を大きく開いて、先程ジャックが切り捨てたものと同じ邪気を放とうとする。
「キョウスケ!俺の魔札を出すんだ!!」
直後、グレイが大声をあげる。
グレイの呼びかけに、キョウスケは急いで自分のポケットをあさった。
「これか……!」
キョウスケは一枚の魔札をポケットから引っ張り出す。それはケルベロスの刻印が記されている魔札だった。
「うわっ!!!」
するとケルベロスの魔札はキョウスケが握った途端、強力な光を放つ。
真っ赤な、業火の如く赤い光を。
「よしキョウスケ、その魔札を使って俺に指示を出すんだ!そしてお前なら唱えられるはずだ……俺の魔技を!!」
「魔技……?!」
魔技とは、デビルサモナーが契約した魔物にのみ使えるようになる特殊な技である。
普通の魔物には魔法が使えるが、それとは別にその魔物が個々に持っている特殊な技をデビルサモナーは引き出すことができるのだ。
「よし……行くよグレイ!!」
「おうっ!!」
グレイとキョウスケは餓鬼に向け構える。
魔札は赤い強い光を放ち、キョウスケの頭に魔技が浮かび出る。
「ヒートブレス!!」
キョウスケが唱えると、グレイの腹の中から火炎が溢れ出し、それは口元で球状に形成される。
「消え去れ亡者よ!!」
グレイは火炎の玉を勢いよく飛ばした。
火球は一体の餓鬼に当たり、その体を炎は焼き尽くす。
まさに地獄の業火だ。
「す……すごい……」
キョウスケはその光景を見て、腰が引ける。
自分の唱えたもの、そしてグレイにこんな力があったこと。それら全てが、キョウスケには驚きであるとともに恐怖でもあった。
「ヒュー……こりゃすげぇや!これがデビルサモナーの力ってやつか」
ジャックは燃える餓鬼を見ながら、笑う。
たとえ亡者といえども、ジャックの持っている短剣では一撃で沈めることはできない。
しかしそれをグレイはたった一発の火球で仕留めたのだ。
「ヒ……ヒィ!!」
残りの二体の餓鬼は、グレイのその力を見て怯え、逃げ去って行く。
物言わぬ亡者といえども、力の圧倒的な差は感じ取ったようだった。
「ふん……逃げたか。キョウスケ、ミレイ無事か?」
グレイは戦闘態勢を解き、キョウスケとミレイの元に近寄って来る。
「うん……あたしは大丈夫だけどキョウスケが」
ミレイとグレイは共にキョウスケの方へ振り返る。キョウスケは開いた口が塞がらず、放心状態のままその場に突っ立っていた。
「……餓鬼一体倒しただけでこれでは先が思いやられるな」
「キョウスケには刺激が強過ぎたみたいねぇ……」
やれやれと二人とも同時に首を横に振る。
それを見兼ねたジャックは振り返り、キョウスケの肩を揺する。
「おいしっかりしろ!」
「はっ!……夢?」
「夢って……お前さん寝てなかっただろ!」
「あっ……そ、それもそうだね」
えへへ、とキョウスケは苦笑いを浮かべ頭を掻く。
キョウスケが見たものは紛れもなく現実そのもの。今までの人生、普通の人間、普通の小学生として生きてきた彼が、他の人とは異なる力を持っていることを実感した瞬間だった。
「ヘッヘッ……しかし面白いもんを見せてもらったよ。その力があれば荒れてるこの魔界でも通用するかもしれねぇな」
ジャックはそう言うと、キョウスケに背を向け立ち去って行く。
「ジャックさん!」
すると、立ち去ろうとするジャックをキョウスケは呼び止めた。
「あの……ジャックさんもしよかったら僕たちの仲間になってくれませんかね?」
キョウスケは臆病な自分を精一杯押し殺して、願い出る。
グレイが仕留めたとはいえ、ジャックは三体もの餓鬼が放った邪気を短剣で一瞬にして全て切り落とした。その実力は見てキョウスケは感服し、仲間に引き入れたいと思ったのだ。
「仲間ねぇ……しかしキョウスケ、オイラは盗賊だぜ?いつお前を裏切って、殺して金を盗み取って行くか分からない連中なんだぜ?」
ジャックは振り返ることなく、キョウスケには背を向けたまま笑ってみせる。
「確かに盗賊は恐いけど……でもジャックさんはそんなことしないと思うんだ。それに襲うならさっきの魔物から守ってくれるようなことしないでしょ?」
賊とは気まぐれな生き物だ。自らが不利になったり窮屈になったりすると平気で裏切り、逃げ去って行く。
それはキョウスケも重々承知だった。
だが、そんな賊とはジャックは違う。先程のジャックの行いを間近で見ていたキョウスケにはそれが分かったのだ。
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