The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

文字の大きさ
11 / 71
第3章 アンダーグラウンド

001【2】

しおりを挟む
「えっ……」

庇っていた腕を下ろす。
するとそこには、キョウスケを背で庇うジャックの姿があった。
ジャックが短剣で切っていたのは、飛んで来た黒い邪気の塊だった。

「キョウスケあれ!」

ミレイが指差す先には、三体ほどの亡者にも見え、鬼のようにも見える魔物が立っていた。

「ヘッヘッ……ありゃ餓鬼だよ。このアンダーグラウンドにはよくいるんだ、ああいう亡者がね」

「あれも……魔物なの?」

「ありゃ魔物と言えるのかねぇ……少なくとも、オイラはあんなハシタナイ奴らとは一緒にして欲しくないね」

短剣を構え、餓鬼を見据えるジャック。
餓鬼は再び口を大きく開いて、先程ジャックが切り捨てたものと同じ邪気を放とうとする。

「キョウスケ!俺の魔札を出すんだ!!」

直後、グレイが大声をあげる。
グレイの呼びかけに、キョウスケは急いで自分のポケットをあさった。

「これか……!」

キョウスケは一枚の魔札をポケットから引っ張り出す。それはケルベロスの刻印が記されている魔札だった。

「うわっ!!!」

するとケルベロスの魔札はキョウスケが握った途端、強力な光を放つ。
真っ赤な、業火の如く赤い光を。

「よしキョウスケ、その魔札を使って俺に指示を出すんだ!そしてお前なら唱えられるはずだ……俺の魔技まぎを!!」

「魔技……?!」

魔技とは、デビルサモナーが契約した魔物にのみ使えるようになる特殊な技である。
普通の魔物には魔法が使えるが、それとは別にその魔物が個々に持っている特殊な技をデビルサモナーは引き出すことができるのだ。

「よし……行くよグレイ!!」

「おうっ!!」

グレイとキョウスケは餓鬼に向け構える。
魔札は赤い強い光を放ち、キョウスケの頭に魔技が浮かび出る。

「ヒートブレス!!」

キョウスケが唱えると、グレイの腹の中から火炎が溢れ出し、それは口元で球状に形成される。

「消え去れ亡者よ!!」

グレイは火炎の玉を勢いよく飛ばした。
火球は一体の餓鬼に当たり、その体を炎は焼き尽くす。
まさに地獄の業火だ。

「す……すごい……」

キョウスケはその光景を見て、腰が引ける。
自分の唱えたもの、そしてグレイにこんな力があったこと。それら全てが、キョウスケには驚きであるとともに恐怖でもあった。

「ヒュー……こりゃすげぇや!これがデビルサモナーの力ってやつか」

ジャックは燃える餓鬼を見ながら、笑う。
たとえ亡者といえども、ジャックの持っている短剣では一撃で沈めることはできない。
しかしそれをグレイはたった一発の火球で仕留めたのだ。

「ヒ……ヒィ!!」

残りの二体の餓鬼は、グレイのその力を見て怯え、逃げ去って行く。
物言わぬ亡者といえども、力の圧倒的な差は感じ取ったようだった。

「ふん……逃げたか。キョウスケ、ミレイ無事か?」

グレイは戦闘態勢を解き、キョウスケとミレイの元に近寄って来る。

「うん……あたしは大丈夫だけどキョウスケが」

ミレイとグレイは共にキョウスケの方へ振り返る。キョウスケは開いた口が塞がらず、放心状態のままその場に突っ立っていた。

「……餓鬼一体倒しただけでこれでは先が思いやられるな」

「キョウスケには刺激が強過ぎたみたいねぇ……」

やれやれと二人とも同時に首を横に振る。
それを見兼ねたジャックは振り返り、キョウスケの肩を揺する。

「おいしっかりしろ!」

「はっ!……夢?」

「夢って……お前さん寝てなかっただろ!」

「あっ……そ、それもそうだね」

えへへ、とキョウスケは苦笑いを浮かべ頭を掻く。
キョウスケが見たものは紛れもなく現実そのもの。今までの人生、普通の人間、普通の小学生として生きてきた彼が、他の人とは異なる力を持っていることを実感した瞬間だった。

「ヘッヘッ……しかし面白いもんを見せてもらったよ。その力があれば荒れてるこの魔界でも通用するかもしれねぇな」

ジャックはそう言うと、キョウスケに背を向け立ち去って行く。

「ジャックさん!」

すると、立ち去ろうとするジャックをキョウスケは呼び止めた。

「あの……ジャックさんもしよかったら僕たちの仲間になってくれませんかね?」

キョウスケは臆病な自分を精一杯押し殺して、願い出る。
グレイが仕留めたとはいえ、ジャックは三体もの餓鬼が放った邪気を短剣で一瞬にして全て切り落とした。その実力は見てキョウスケは感服し、仲間に引き入れたいと思ったのだ。

「仲間ねぇ……しかしキョウスケ、オイラは盗賊だぜ?いつお前を裏切って、殺して金を盗み取って行くか分からない連中なんだぜ?」

ジャックは振り返ることなく、キョウスケには背を向けたまま笑ってみせる。

「確かに盗賊は恐いけど……でもジャックさんはそんなことしないと思うんだ。それに襲うならさっきの魔物から守ってくれるようなことしないでしょ?」

賊とは気まぐれな生き物だ。自らが不利になったり窮屈になったりすると平気で裏切り、逃げ去って行く。
それはキョウスケも重々承知だった。
だが、そんな賊とはジャックは違う。先程のジャックの行いを間近で見ていたキョウスケにはそれが分かったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...