10 / 71
第3章 アンダーグラウンド
001【1】
しおりを挟む
「こ……ここは?」
先程までキョウスケの目の前にはダイミョウ小学校の屋上の風景があったが、それは一変する。
そこは人間世界の曇りの日の昼間よりも薄暗く、遠くには刺々しい山が無数に並んでいた。
とても人の住むような場所ではない。
そこは明らかに魔界。魔の住むところだった。
「ここは……どうやらアンダーグラウンドに飛ばされちまったみたいだな」
「アンダーグラウンド?」
「あぁ……いわゆる地下世界だ。ここは魔界の中央であるデモンズスクエアのちょうど地下にある……が非常に厄介な場所でな。かなりガラの悪い魔物が集まる、いわばスラム街ってやつだな」
グレイは辺りを見渡しながら、キョウスケに言う。
その言葉に、キョウスケは背中をゾクッとさせる。普通の魔物ですら彼にとって恐ろしいというのに、ガラの悪い魔物ともなるとなおさら恐怖を感じずにはいられなかった。
「なに怯えてるのよキョウスケ!あんたにはグレイがいるじゃない。あたしなんか相棒もいないから丸腰よ?あんたがしっかりしないとあたしまでやられちゃうんだからもっとちゃんとする!!」
「ひいいい……」
相変わらずミレイはしっかりしていたのだが、心の底では不安を感じていた。
今まで踏み入れたことの無い世界に踏み出す。それは大きな一歩であると同時に、勇気のいる一歩でもあるのだ。
それは小学生だからという意味ではなく、人間として怯え、不安を抱くのは当然であった。
「とにかくこの先にアンダーグラウンドの市街地があるはずだ。そこに行ってデモンズスクエアに向かう世界の鍵がどこで手に入るか情報を手に入れないとな」
「情報収集ってやつね!キョウスケ行くわよ!」
「う……うんそうだね。それに魔王を倒すのならここで仲間を増やしてはおきたいし」
キョウスケの手元には五枚の空の魔札が残っている。魔札には契約した魔物を召喚できるようになる力があり、それこそがデビルサモナーの特権だ。
それに人間の、しかも小学生のキョウスケ自身が戦っても魔物に勝てるはずもない。
だからこそ仲間を増やす必要があった。
「キョウスケの言う通りだな。今の俺ではベルゼブブに挑んでも捻り潰されちまう……そう考えるとデモンズスクエアじゃなくアンダーグラウンドに飛ばされたのは救いだったかもな」
グレイは長年自分の力を抑えていたせいか、本来の力は発揮できずにいた。
それを徐々に解放していく。その手順も必要なのだ。
キョウスケ達はアンダーグラウンドの異界の門を後にし、市街地へと入っていく。
市街地は人間の世界のような整備された市街地ではなく、建物は所々崩れており、道もガタガタになってヒビが入っていた。
「気をつけろよ二人とも……ここはならず者の街だからな」
「うん……」
市街地とはいえ、ここはスラム街。どんなならず者がいてもおかしくない場所だ。
「襲ってこようもんならあたしのドロップキックで返り討ちにしてやるわ!」
フンと、鼻息を鳴らしてやる気満々のミレイだが。
「フッ……だがやめておけ。ドロップキックで倒せるほど魔物はやわじゃない」
「うぅ……あたしも魔物が使えたらなぁ……キョウスケあたしにグレイ貸しなさいよ!」
「そんなメチャクチャな……」
好戦的なミレイに対して、相変わらず臆病なキョウスケ。
そんなやりとりをしていると、一体の魔物がキョウスケ達の元に近づいて来た。
「……何だお前は」
グレイはキョウスケと近づいてきた魔物の間に割って入る。
「ヘッヘッ……まあそんなに警戒すんなよ。ケルベロスに人間なんて珍しい組み合わせだからよ、ちょっと気になって話しかけてみただけさ」
魔物は怪しく笑ってみせる。魔物は黒いバンダナをしており、カボチャに穴を開けたものを被っていた。
「お前……ジャック・オー・ランタンか」
グレイは魔物の外見を見回すと、魔物は再び笑った。
「ヘッそうさ。オイラはジャック・オー・ランタンのジャック。盗賊をやってるんだ……おっと!お前らからは何も盗まんから警戒せんでおくれ。オイラは汚いカネを持ってる連中からしか盗みはしないからな」
「ほう……いわゆる義賊というやつか。珍しいな」
「そんな綺麗なもんじゃねぇよ。ところでケルベロスさんよ、その人間どこから連れて来たのさ?魔界に人間はいないはずだぜ?」
疑ぐるような視線でジャックはグレイを睨む。
しかしグレイはいつもの鼻笑いで返した。
「フッ……疑ってるようだが別にさらって来たわけじゃない、連れて来たのさ。あの少年は俺の契約者だからな」
「契約者!?ってことはあの子供が噂のデビルサモナーってことなのかい……」
「そういうことだ」
グレイの言葉にジャックは驚愕する。
噂でしか聞いたことのない、ベルゼブブの軍団を殲滅寸前にまで追い込んだ人間、デビルサモナー。
その存在が今、ジャックの目の前にいたのだから。
「ヘッヘッ……まさかこんなところであの伝説の存在に出会えるとはなぁ。オイラ感動したよ」
「で……でもジャックさんの知ってるデビルサモナーは僕の父さんのことだと思うんだ……僕はまだ戦ったこともないし」
キョウスケは俯き、答える。
キョウスケの父、シュンジは魔物達から伝説と呼ばれるほど有名で強いデビルサモナーだった。
だがキョウスケはまだビギナーどころか、実践経験すら全くない。
あまりにも大き過ぎる遺功だった。
「へぇそうかい。じゃあ君は伝説のデビルサモナーの息子さんってことか」
「そ……そうですね」
キョウスケの表情を見て、ジャックはニタリと笑う。その怪しい表情に真っ先に気づいたのは隣で成り行きを見ていたミレイだった。
「キョウスケ気をつけて……何か企んでるかも」
「う……うん」
ミレイの耳打ちを受け、キョウスケは身構える。
その姿を見て、ジャックは再び笑った。
「ヘッヘッヘッヘッ!なかなか良い目をしてるみたいだ!そんじゃあ……」
すると次の瞬間、ジャックは懐にしまっていた短剣を取り出した。
「その度胸、ここで試させてもらうよ!」
ジャックは短剣を振り上げる。
「うわっ!!!!!」
キョウスケは反射的に腕で自身を庇う。
ジャックの短剣がヒュッヒュッと空を裂く音がする。しかし、キョウスケに切られたような痛みはなかった。
先程までキョウスケの目の前にはダイミョウ小学校の屋上の風景があったが、それは一変する。
そこは人間世界の曇りの日の昼間よりも薄暗く、遠くには刺々しい山が無数に並んでいた。
とても人の住むような場所ではない。
そこは明らかに魔界。魔の住むところだった。
「ここは……どうやらアンダーグラウンドに飛ばされちまったみたいだな」
「アンダーグラウンド?」
「あぁ……いわゆる地下世界だ。ここは魔界の中央であるデモンズスクエアのちょうど地下にある……が非常に厄介な場所でな。かなりガラの悪い魔物が集まる、いわばスラム街ってやつだな」
グレイは辺りを見渡しながら、キョウスケに言う。
その言葉に、キョウスケは背中をゾクッとさせる。普通の魔物ですら彼にとって恐ろしいというのに、ガラの悪い魔物ともなるとなおさら恐怖を感じずにはいられなかった。
「なに怯えてるのよキョウスケ!あんたにはグレイがいるじゃない。あたしなんか相棒もいないから丸腰よ?あんたがしっかりしないとあたしまでやられちゃうんだからもっとちゃんとする!!」
「ひいいい……」
相変わらずミレイはしっかりしていたのだが、心の底では不安を感じていた。
今まで踏み入れたことの無い世界に踏み出す。それは大きな一歩であると同時に、勇気のいる一歩でもあるのだ。
それは小学生だからという意味ではなく、人間として怯え、不安を抱くのは当然であった。
「とにかくこの先にアンダーグラウンドの市街地があるはずだ。そこに行ってデモンズスクエアに向かう世界の鍵がどこで手に入るか情報を手に入れないとな」
「情報収集ってやつね!キョウスケ行くわよ!」
「う……うんそうだね。それに魔王を倒すのならここで仲間を増やしてはおきたいし」
キョウスケの手元には五枚の空の魔札が残っている。魔札には契約した魔物を召喚できるようになる力があり、それこそがデビルサモナーの特権だ。
それに人間の、しかも小学生のキョウスケ自身が戦っても魔物に勝てるはずもない。
だからこそ仲間を増やす必要があった。
「キョウスケの言う通りだな。今の俺ではベルゼブブに挑んでも捻り潰されちまう……そう考えるとデモンズスクエアじゃなくアンダーグラウンドに飛ばされたのは救いだったかもな」
グレイは長年自分の力を抑えていたせいか、本来の力は発揮できずにいた。
それを徐々に解放していく。その手順も必要なのだ。
キョウスケ達はアンダーグラウンドの異界の門を後にし、市街地へと入っていく。
市街地は人間の世界のような整備された市街地ではなく、建物は所々崩れており、道もガタガタになってヒビが入っていた。
「気をつけろよ二人とも……ここはならず者の街だからな」
「うん……」
市街地とはいえ、ここはスラム街。どんなならず者がいてもおかしくない場所だ。
「襲ってこようもんならあたしのドロップキックで返り討ちにしてやるわ!」
フンと、鼻息を鳴らしてやる気満々のミレイだが。
「フッ……だがやめておけ。ドロップキックで倒せるほど魔物はやわじゃない」
「うぅ……あたしも魔物が使えたらなぁ……キョウスケあたしにグレイ貸しなさいよ!」
「そんなメチャクチャな……」
好戦的なミレイに対して、相変わらず臆病なキョウスケ。
そんなやりとりをしていると、一体の魔物がキョウスケ達の元に近づいて来た。
「……何だお前は」
グレイはキョウスケと近づいてきた魔物の間に割って入る。
「ヘッヘッ……まあそんなに警戒すんなよ。ケルベロスに人間なんて珍しい組み合わせだからよ、ちょっと気になって話しかけてみただけさ」
魔物は怪しく笑ってみせる。魔物は黒いバンダナをしており、カボチャに穴を開けたものを被っていた。
「お前……ジャック・オー・ランタンか」
グレイは魔物の外見を見回すと、魔物は再び笑った。
「ヘッそうさ。オイラはジャック・オー・ランタンのジャック。盗賊をやってるんだ……おっと!お前らからは何も盗まんから警戒せんでおくれ。オイラは汚いカネを持ってる連中からしか盗みはしないからな」
「ほう……いわゆる義賊というやつか。珍しいな」
「そんな綺麗なもんじゃねぇよ。ところでケルベロスさんよ、その人間どこから連れて来たのさ?魔界に人間はいないはずだぜ?」
疑ぐるような視線でジャックはグレイを睨む。
しかしグレイはいつもの鼻笑いで返した。
「フッ……疑ってるようだが別にさらって来たわけじゃない、連れて来たのさ。あの少年は俺の契約者だからな」
「契約者!?ってことはあの子供が噂のデビルサモナーってことなのかい……」
「そういうことだ」
グレイの言葉にジャックは驚愕する。
噂でしか聞いたことのない、ベルゼブブの軍団を殲滅寸前にまで追い込んだ人間、デビルサモナー。
その存在が今、ジャックの目の前にいたのだから。
「ヘッヘッ……まさかこんなところであの伝説の存在に出会えるとはなぁ。オイラ感動したよ」
「で……でもジャックさんの知ってるデビルサモナーは僕の父さんのことだと思うんだ……僕はまだ戦ったこともないし」
キョウスケは俯き、答える。
キョウスケの父、シュンジは魔物達から伝説と呼ばれるほど有名で強いデビルサモナーだった。
だがキョウスケはまだビギナーどころか、実践経験すら全くない。
あまりにも大き過ぎる遺功だった。
「へぇそうかい。じゃあ君は伝説のデビルサモナーの息子さんってことか」
「そ……そうですね」
キョウスケの表情を見て、ジャックはニタリと笑う。その怪しい表情に真っ先に気づいたのは隣で成り行きを見ていたミレイだった。
「キョウスケ気をつけて……何か企んでるかも」
「う……うん」
ミレイの耳打ちを受け、キョウスケは身構える。
その姿を見て、ジャックは再び笑った。
「ヘッヘッヘッヘッ!なかなか良い目をしてるみたいだ!そんじゃあ……」
すると次の瞬間、ジャックは懐にしまっていた短剣を取り出した。
「その度胸、ここで試させてもらうよ!」
ジャックは短剣を振り上げる。
「うわっ!!!!!」
キョウスケは反射的に腕で自身を庇う。
ジャックの短剣がヒュッヒュッと空を裂く音がする。しかし、キョウスケに切られたような痛みはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる