The Devil Summoner 運命を背負いし子供達

赤坂皐月

文字の大きさ
26 / 71
第3章 アンダーグラウンド

009【2】

しおりを挟む
「……もう少しヘタれたりすると思ったんだけどね」

「フッ……今のあいつなら火の中だろうが水の中だろうが飛び込んで行くよ」

「ヘッヘッ、愛の力は無限大ってか?」

「おい二人とも!聞こえてるからなああああ!!」

「ヘッヘッへッ!残念だったなキョウスケ~聞こえるように言ってんのさこっちは!」

「うううう……!」

ハシゴを登りながら、顔を真っ赤にして必死に大声をあげるキョウスケに対して、グレイとジャックは意地の悪そうに笑っていた。
嫌な先輩達である。

「……むっ!あれは兵士じゃないか!?」

すると突然グレイは立ち上がり、一人の兵士がこちらに向かってくる姿が見えた。

「まっず!キョウスケちょっとの辛抱だ、しっかりハシゴに掴まっとけよ!」

「えっ!えっ!?」

キョウスケが困惑してる中、ジャックは土のブロックを地面にはめ込む。
グレイはその隙に顔が見えないように丸まった。

「ん?お前こんな所で何してるんだ?」

やって来た兵士がジャックに話しかける。

「いやいや……ここ数日何も食べとらんでなぁ……誰かに恵んで貰おうとここで座ってたんですぅ」

ジャックは腹を空かせた演技をし、兵士を欺く。さすがは盗賊、なかなかの演技力を持っていた。

「フン、ただの乞食かイヤラシイ奴らめ。我々なんかどれだけ使いっ走られてるか分からんというのに……」

見ず知らずの相手だというのに、兵士はぐちぐちと愚痴を零す。どうやらかなり鬱憤が溜まっているようだと、ジャックは感じた。

「兵士殿も大変そうですなぁ……」

「まぁな……そうだ食料だったな!パンのかじりかけだがお前にやるよ。言っておくが、これが最後の乞食としての食べ物にして、これからはしっかり励めよ!」

そう言って、兵士はジャックにパンを渡し、去って行く。

「……なあグレイ、オイラにはあいつらは悪い連中に見えなくなっちまったよ」

「……部下自体は元々悪くない。こういう時悪い奴ってのは大抵上にいる連中なのさ」

「そっか、ならアスタロトを倒してあの兵士も自由にしてやんねぇとな!」

そう言って、ジャックはグレイに兵士のかじりかけのパンを渡す。

「オイラ誰かが食べた後の物は食べれねぇんだ。どうにも気持ち悪くてな」

「……お前は鬼か」

グレイは呆れながら呟き、かじりかけのパンをモソモソと食べた。

「おっといけね!キョウスケを忘れてた!」

ジャックは思い出し、土のブロックを引っこ抜く。
そこには必死な形相で縄ばしごを掴んでいるキョウスケの姿があった。

「大丈夫かキョウスケ~?」

心配になり声をかけると、キョウスケは必死に涙を堪えながら。

「なんとか……でもさすがに怖かったかも……」

光も何もない真っ暗な場所に、足場の悪い縄ばしごに掴まっていれば誰だって恐怖するものだ。
それでも泣かなかったキョウスケは、やはり以前より微かに成長していた。

「ヘッヘッそうかそうか。いやさっきまで兵士がこっちに来ていてな、もういなくなったから登って来ていいぞ」

「うん……分かった!」

そう言って、キョウスケは再び縄ばしごを登って行く。相変わらず登りにくいことこの上ない縄ばしごだが、なんとか上り詰めてキョウスケは地上に出て来た。

「おう、お疲れさん。どうだったよ初縄ばしごの感想は?」

「暗くなった時は怖かったけど……でもできるなら木梯子のほうがよかったかな……」

「ヘッヘッ!ちげぇねぇや!そりゃオイラだって木梯子の方が登りやすいと思うもん」

ケタケタと愉快に笑うジャック。それだったら何故木梯子にしなかったのか……とキョウスケは思ったが、それを聞くのはあまりにも野暮なことだった。

「さて、そんじゃ全員揃ったし、まだ兵士の大多数は駐屯施設に戻ってないみたいだし、今の内に乗り込んじまおうぜ!」

「うん……なるべく戦うのは避けたいし、急ごう!」

三人は親衛隊の駐屯施設の方へ向かって歩き出す。
その途中、ふとジャックは思いついた。

「そういやオイラの魔技って何なんだろうな?」

ジャックはキョウスケと契約しパートナーとなった。そうなると、デビルサモナーの力によってその魔物が元々から持っている技、魔技を使うことができるようになる。

「そういえば……ちょっと待って」

キョウスケはポケットからジャックの刻印が入った魔札を取り出す。
しかし、何も反応は無い。グレイの時は赤い光を放ち反応したのに、そのような兆しすらまったく無かった。

「あれ……何も起こらない……」

「おいおい!もしかしてオイラには魔技は無いってことじゃ無いだろうな?」

何の反応も起こらない魔札に対して、呆然とするキョウスケと焦るジャック。
しかしそのカラクリを、グレイは知っていた。

「魔技が無い魔物なんか存在しない、多分あの餓鬼にもあるだろうからな。おそらく魔札自体が順応してないか、キョウスケの力がまだジャックを操るまで追いついてないかのどっちかだろう」

「えっ僕の力が?」

「ああ。前者なら時間が経てば使えるようになるが、後者ならキョウスケが成長しない限りジャックの魔技は使えん。実は俺も使えるのはヒートブレスだけじゃないんだ」

「そ……そうだったの!?」

初めて知った事実に、キョウスケは目を丸くする。

「魔技はべつに一人の魔物に一つだけいうわけではないからな。その魔物が強ければ強い程、三つも四つも持っている魔物だっている。ただしそれが使えるかはデビルサモナーの力次第だがな」

「僕の力次第か……」

キョウスケはジャックの魔札を握り締める。自分の力が及ばず、ジャックの本当の力を引き出せないのは彼にとって悔しいことでもあり、この先のアスタロトとの戦いを考えると痛手でもあった。

「ふい~……なんだそういうことか。でも今のキョウスケに扱えれないってことはそれだけ強いものかもしれないってことだろ?だったらそれはそれで楽しみだぜ!」

とにかく自分にも魔技があることを知り、ジャックは安堵の溜息をついた。

「まっそうとも考えられるな。もしかしたらアスタロトと戦う中で、キョウスケが成長して魔技を使えられるようになるかもしれないし……こればかりはその時にならないと分からないな」

「……僕が強くなったらみんなも強くなるってことか……分かった!もっと強くなるよ!」

キョウスケは握り締めていた、今は使えないジャックの魔札をポケットに直す。
次これを取り出す時は、きっとジャックの魔技が使えられるようになっていることを信じて。

「そうだキョウスケ!強くなれ!!ってことで今日から腹筋、腕立て、スクワットをそれぞれ百回ずつな?」

「フッ……ムキムキになってミレイと再会したらさぞ驚くだろうよ?」

「そんなサプライズ再会、僕も多分ミレイも望まないと思うよ……」

「ヘッヘッへッそんなこと無いと思うぜ?ムキムキになったらお姫様抱っこもできるようになるし、女の子なら一度はされてみたいことって何処かで聞いたことあるぜ?」

「そ……そうなんだ……うぅん……そうなんだ」

割と本気で悩み始める、純粋無垢な十二歳の少年。
そんな少年を惑わせて、面白がる魔物が二体。
どちらが主人で、どちらが使い魔か分かったものじゃなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

処理中です...