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第4部 連なってゆく青春篇
序章・夏【2】
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「おい元、てめぇ何がさっきから言いたいんだ?小馬鹿にしてるだけなら、俺だって容赦しねぇぞ」
「はぁ……別に小馬鹿にはしてねぇよ。つか、兄貴のことなんかどうでもいいんだよ。ただ、こんな男と付き合ってるあの人が不憫だなって思っただけだよ」
「不憫?何がだよ?俺のなにが天地を不憫にさせてるってんだよ!」
怒りというマグマが溜まりに溜まり、ついに噴火直前となりかけた俺だったが、しかし元はそんなことはものともせず、いかにも冷静に、沈着に、冷めたように俺にこう投げかけた。
「兄貴、なんでデートに誘わねぇんだ?」
「…………えっ?」
まるで拍子抜けしたような返事を、俺はしてしまう。
そんな俺の姿を見て、我が弟は呆れたように、大きな溜息を吐いて首を横に振った。
「あーあ、天地さんっていうのあの人?可愛そうだなホント。折角の夏休みだってのに、デートにも誘われないんだからさ」
「…………」
「夏っていえば海もプールもあるし、祭もなにも、デートに誘えそうなキッカケなんて腐るほどあるってのに、何の音沙汰もないってことだからなぁ」
「………………」
「誘われはするけど、誘ってこないなんて、ホント薄情な彼氏を持ったもんだよなぁ~!」
「ガッデム!!!!」
卒倒。
俺は両手で頭を抱え、その場に、後ろ向きに、真っ直ぐと勢いよく倒れた。
幸い、俺の背後には何も無かったため、頭を思いっきりぶつけるという災難免れたわけだが、しかし本当の災難からは、逃げられていなかった。
やってしまった、やってはならぬことを。
せっかくの青春を棒に振るうかのような、夏の一ページを埋められる条件を持っていながらも、それを埋め無いような愚行を、俺はしてしまった。
思い出せば、俺は天地とデートをしたことが、もう付き合って四ヶ月近く経とうとしているというのに、三度しかない。
一度目は、父の日のあの日のこと。しかしあれは、街でばったり天地と遭遇して、ただその流れでデートみたいになったというだけであり、デートと言えるかどうかは甚だ疑問である。
そして二度目は、七夕の日のこと。あれはまあ、デートらしいデートだよな。
三度目はあの合宿だろうか……しかしあれは、別件で忙しかったし、正直あれを数に入れるのはどうかと思ってしまう。
しかし、それらのことをよくよく考えてみたら、どれもこれも、あれもそれも、俺から誘ったものは一つたりとも無く、全て天地から仕掛けられたものであり、つまりは俺は、一度として天地をデートに誘ったことが無かったのだ。
草食系男子どころではない、断食系男子。
食べれるものがあるとしても、それを意図的に食べようとはしない。
デートに誘える相手がいるというのに、それをしようとしない。
この言葉を何にでも使おうとする人間は、俺は嫌いなのだが、というよりも、そんなのその人の使い様、勝手なのだから一々口出しするなよと言いたくなるような言葉なのだが、しかしここは自分を諫めるためにも、あえて使わせてもらおう。
勿体無い。
非常に勿体無い。
「兄貴、俺が言いたいこと分かったか?」
「…………ああ、痛いほどに」
屈服した。というか、腕っ節の喧嘩なら実は俺の方が強いのだが、口喧嘩では弟に勝った試しがない。
弁の立つ男だからな。憎たらしいほどにこいつは。
「まあでも、別にそんなに後悔することじゃねえんじゃねえの?」
すると元は、再び俺から目を反らし、またテレビの方に視線を向けながらそう言った。
「まだ夏は終わってないんだぜ、兄貴」
「夏は終わってない……そうか!そうだな!」
その一言で、俺はポケットにしまっていたスマートフォンを手に取る。
連絡先から探し出したのは、勿論天地魔白の名前。
その時テレビの画面、おそらく阪神甲子園球場で絶賛青春を貫いている青年。
その一人の青年の渾身のストレートがストライクゾーンへと入り、そしてその試合の勝負は決したのだった。
「はぁ……別に小馬鹿にはしてねぇよ。つか、兄貴のことなんかどうでもいいんだよ。ただ、こんな男と付き合ってるあの人が不憫だなって思っただけだよ」
「不憫?何がだよ?俺のなにが天地を不憫にさせてるってんだよ!」
怒りというマグマが溜まりに溜まり、ついに噴火直前となりかけた俺だったが、しかし元はそんなことはものともせず、いかにも冷静に、沈着に、冷めたように俺にこう投げかけた。
「兄貴、なんでデートに誘わねぇんだ?」
「…………えっ?」
まるで拍子抜けしたような返事を、俺はしてしまう。
そんな俺の姿を見て、我が弟は呆れたように、大きな溜息を吐いて首を横に振った。
「あーあ、天地さんっていうのあの人?可愛そうだなホント。折角の夏休みだってのに、デートにも誘われないんだからさ」
「…………」
「夏っていえば海もプールもあるし、祭もなにも、デートに誘えそうなキッカケなんて腐るほどあるってのに、何の音沙汰もないってことだからなぁ」
「………………」
「誘われはするけど、誘ってこないなんて、ホント薄情な彼氏を持ったもんだよなぁ~!」
「ガッデム!!!!」
卒倒。
俺は両手で頭を抱え、その場に、後ろ向きに、真っ直ぐと勢いよく倒れた。
幸い、俺の背後には何も無かったため、頭を思いっきりぶつけるという災難免れたわけだが、しかし本当の災難からは、逃げられていなかった。
やってしまった、やってはならぬことを。
せっかくの青春を棒に振るうかのような、夏の一ページを埋められる条件を持っていながらも、それを埋め無いような愚行を、俺はしてしまった。
思い出せば、俺は天地とデートをしたことが、もう付き合って四ヶ月近く経とうとしているというのに、三度しかない。
一度目は、父の日のあの日のこと。しかしあれは、街でばったり天地と遭遇して、ただその流れでデートみたいになったというだけであり、デートと言えるかどうかは甚だ疑問である。
そして二度目は、七夕の日のこと。あれはまあ、デートらしいデートだよな。
三度目はあの合宿だろうか……しかしあれは、別件で忙しかったし、正直あれを数に入れるのはどうかと思ってしまう。
しかし、それらのことをよくよく考えてみたら、どれもこれも、あれもそれも、俺から誘ったものは一つたりとも無く、全て天地から仕掛けられたものであり、つまりは俺は、一度として天地をデートに誘ったことが無かったのだ。
草食系男子どころではない、断食系男子。
食べれるものがあるとしても、それを意図的に食べようとはしない。
デートに誘える相手がいるというのに、それをしようとしない。
この言葉を何にでも使おうとする人間は、俺は嫌いなのだが、というよりも、そんなのその人の使い様、勝手なのだから一々口出しするなよと言いたくなるような言葉なのだが、しかしここは自分を諫めるためにも、あえて使わせてもらおう。
勿体無い。
非常に勿体無い。
「兄貴、俺が言いたいこと分かったか?」
「…………ああ、痛いほどに」
屈服した。というか、腕っ節の喧嘩なら実は俺の方が強いのだが、口喧嘩では弟に勝った試しがない。
弁の立つ男だからな。憎たらしいほどにこいつは。
「まあでも、別にそんなに後悔することじゃねえんじゃねえの?」
すると元は、再び俺から目を反らし、またテレビの方に視線を向けながらそう言った。
「まだ夏は終わってないんだぜ、兄貴」
「夏は終わってない……そうか!そうだな!」
その一言で、俺はポケットにしまっていたスマートフォンを手に取る。
連絡先から探し出したのは、勿論天地魔白の名前。
その時テレビの画面、おそらく阪神甲子園球場で絶賛青春を貫いている青年。
その一人の青年の渾身のストレートがストライクゾーンへと入り、そしてその試合の勝負は決したのだった。
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