紡ぐ猫

布袋 梅太郎

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「いってきます!」

「…」

僕が挨拶をしても決して返ってくることはない。誰もいない訳じゃないのにだ。

どうやら僕の親は僕に何の興味もないようだが、僕には関係ない。 もっともつい最近までそのことを悲しく感じてはいたが。

これは仕方ないことなのだ。だって僕は見た目も悪くて頭も悪くて運動神経も悪い。昔はかなり構ってくれたのに中学校に入ってから全く構ってくれないのはこのせいに違いない。

因みにこんなだから友達もいない。彼女なんているわけがない。

でも僕、水沢みずさわ 宏太こうたにも構ってくれるやつがいるのだ。 残念ながらそいつは人間ではないが、愛嬌もあってかわいいやつだ。


「ニャー!」

そう、こいつだ。向こうから僕の方にやってくるなんて人間じゃあり得ないが、こいつは嬉しそうに来てくれるのだ。

「今日もおはような!」

そう言って僕がなでるとこいつは本当にいい顔をする。 これを見るだけで僕は親が構ってくれなかったり友達がいなかったりすることも吹き飛んでしまう。

「今日もかわいいお前にえさを持ってきたからな!」

そう言って僕はキャットフードを出した。こいつのためにわざわざ買ったものである。

「じゃあ僕はこれで行くからね!」

えさを食べている間に僕は学校へ走っていく。ここまでが僕の毎朝の楽しみで、一日の元気がもらえるのだ。


……………


「はあ、疲れた…」

私が独り言を言ってため息をする。毎日こうだ。

疲れている理由は私がいじめられているからだ。 私は不幸にも親が早く亡くなってしまい、そのことで小中高といじめられ続けていた。

昔は親戚のおじさんの家にいさせてもらったのだが、いじめの対応が面倒くさかったのか、ある日テーブルにお金だけを残して家を出ていってしまった。

そのお金は大金で、授業料とかはしっかりと払われているみたいなので私は学校に行っているのだが、はっきり言ってもう行きたくない。

でも学校に行かないと中卒になっちゃうし、いじめっ子は変わらず家にやって来るから仕方なしに学校に行っている。

まあ、最近はこんな私、野間のま 成美なるみにもひとつのたのしみがあるのだ。 あ、来た!


「ニャー!」

この子は野良猫だが愛嬌があってとても可愛い。 誰も構ってくれない私は唯一構ってくれるこの子を半ば飼っているのだ。

「じゃあ、家まで行こっか!」

いじめは辛い。親がいないのも辛い。でも私にはこの子しかいない。 この子が生きる限りは私もしっかり生きてやる!
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