不老不死のお姫様と執事の日常

ぶー

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雨はもう上がっていた。
森の中、小さくうずくまってブルブル震えているかわいそうな子。服もボロボロで痩せこけてて、私には無い「死」を持っている子。人は死を拒む、怖がる。

「かわいそうに……」

私を見つめる目は…その目は…………。


「生きるって、何をしたらいいのかしら?」

魔法で空き部屋に運んだベットに腰掛け、上を見上げながら考える。あの子供は用意した椅子に腰掛けさせている。体はキズだらけ泥だらけで、髪も本当は綺麗な青なのだろう。それならば……。

「貴方、お風呂に入りましょう」
「………」

返事はない、ならば否定権はない。手をひいて浴槽に連れていく。

「お風呂は入ったことある?」
「………」

子供は俯いたままで少し首を縦に振った。

「そう、良かったわ。ここのお風呂は温かいわよ。
着替えは……これを着なさい」

青いネクタイのタキシードを渡す。

「ズボンとシャツはとりあえず自分できてみなさいね」



お風呂、着付けも終わり夕飯の時間になる。
本当はいつも紅茶で終わらせるけど、今日はそうにはいかない。綺麗なだけの厨房で自分なりにスープを作ってみた。食堂に子供を座らせスープを目の前に置く。

「私なりに作ってみたんだけど………」

藍色の瞳はスープを捉えているが食べようとはしない。警戒しているようだ。 

「毒なんか入れないわよ。ここ、どこだか分かってるの?リンゼム国の皇居よ。まぁ、詳しく言うと別荘ですけど」

子供は目を見開いてこっちを見る。しばらく硬直した後、スープに向き直り勢いよくかきこんだ。

「あらまぁ……」

私は頬杖をつきながらそれを見つめていた。

「貴方、名前はあるの?」
「………な…」
「?」
「ないです……」

これまでの事から予想するに奴隷だったのだろう。きっと辛くて逃げ出して来た奴隷。お金のために親に売られた奴隷。

「しかたない…私がつけてあげましょう」
「…!」
「そうねぇ………うーん…モーント……モーントはどう?」
「モーント………ありがとうございます」
「別にいいわ」
「あの……あなたの名前は……?」
「私?私はメミロンよ。メミロン・デトリクト」
「デトリクト家………」
「モーント、ここに居る代わりに私直属の執事にならない?皇居にいるには理由が必要ですから」
「どうしてそこまで……?」
「なんとなくよ」
「……そんなんでいいんですか?」
「あっちは私に興味無い、ましてや怖がってるぐらいだから大丈夫よ」


不老不死のお姫様と執事の日常
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