上 下
1 / 1

No.0 女の子になりたかった男の子の話。

しおりを挟む
ひらひら舞うスカート、小さくて可愛い体つき、高くて透き通る声、女の子にはいいものがいっぱい詰まってる。
「いいなぁ…」
声にでてたのかな?横にいた友人のかなでが「ん?どした?」と僕の顔を覗いてきている。
「いや、なんでもないよ。」
「そっか...ねぇあおい、最近いつにも増して元気無いけどどうしたの?」
しまった。奏にこんな顔させるとは。
罪悪感で押しつぶされそうになる。
その眼で、顔で僕のことを見ないでくれ。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがと。」
奏とは小学生の頃からの付き合いで家も隣。
これを幼馴染と呼ばずしてなんと呼ぶと言わんばかりの分かり易い関係。
ひらひらスカート、小さくて可愛い体つき、高くて透き通る声、僕の理想の女の子僕のなりたい女の子は11年経ったらいつの間にか奏になっていた。
奏との出会いは小学1年生の頃僕の名前を女の子と間違えたらしい。
「蒼ちゃん...?私奏!!よろしくね!」
名前が蒼な上に小学生の頃はまだ僕の顔つきは中性的で女の子と間違えられることは多々あった。
「ごめんね、僕男の子なんだ。」
この頃はまだ女の子になりたいとは思ってなかったけど、今思うとあの頃の顔に戻りたい。
「えっ!男の子なの!?ごめんね女の子と間違えちゃって...でもその...お友達にはなってくれないかなぁ?」
今と変わらないふにゃっと崩れた笑顔。僕は未だにこの笑顔に弱い。
「ん。いいよ。」
正直奏は初めての友人という存在で素直に嬉しかった。
それ以降も僕の友人は奏だけだったが…
奏は人懐っこくて、可愛くて話しやすくて友人もいっぱいいた。
なのに小学校からずっと登下校は一緒に行ってくれてる。
このthe女の子のような存在と何年も一緒にいた僕には、奏のような女の子になりたいという気持ちがいつの間にか芽生えていた。
この気持ちに気づいてからと言って奏の話すことは絶対にしない。
そう決めて、何事も無く奏と過ごしている。
ただ、姉がいない隙に姉のスカートを勝手に履いてみるとか、ちょっとだけ化粧してみたり、プレゼントだと言ってワンピースを買ってみたり、奏のようになりたくて色々やって見ているがやってみる度にの自分は奏のようにはなれないんだと幻滅している。
そして、奏のようになりたい僕の意志とは反対に僕の体はどんどん男らしくなっていた。それはもう昔の面影が無いくらいに。筋肉もつきやすくてたいした運動もしてないのにお腹や腕、足とかの筋肉がすごいついてしまった。声もだんだん低くなって言って今はもう小学生の頃より2オクターヴ位低くなったと思う。
「いいな」「羨ましいな」「眩しいな」
こんな気持ちばっかり成長してる気がする。
オネェやオカマになりたいって言うか、奏になりたい。
中途半端じゃなくて、完璧な女の子になりたい。
こんな悩み打ち明けられる人も場所もなくて、このまま1人で抱えて絶望して幻滅してくんだろう。
「魔法とかって、存在しないものなのかな?」
奏がいきなり喋るからびっくりした。
魔法...か。
「魔法とかあったらさ!蒼が悩んでること助けられるのかな?」
僕が大好きなあの笑顔がだんだんだんだん曇っていく。
ファンタジーな話が好きな奏が話す魔法って存在があるなら、女の子になれるのかな。
「どうかな…僕の悩んでることなnt」
「変なこと言っちゃってごめんね蒼...」
僕の声にかぶさってごめんねと言った奏にを言っておくべきだったんだ。
「じゃ!またあした!」
泣きそうな顔で笑いながら言ったまたあした。
なんで返せなかったんだ。
「またあした。」と。
「僕は君に伝えなければいけないことが2ある。」と。
家のドアを開けたのが全ての始まりだったのだろうか。
もうかなり前から始まっていたのだろうか。
わからない。
ただ、この時は何も考えていなかったことだけはわかるんだ。
「ただいま。」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...