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おおみそかのふしぎなネコ
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12月31日がまだ始まったばかり、お日さまもまだ顔を出さないすごく早い時間、
チクチクふわふわしたものが、ベッドで寝ているボクのほっぺをくすぐった。
パチッと目を開けてびっくり。
「ネコがいるよ!」
ねぼけまなこで部屋に駆け込んできたママがぼくをじろっと見る。
「やだ、ノラネコだわ。いつ拾ってきたの! ダメでしょう」
パパは大あくびしながら、ネコをつまみ上げた。
「まだ赤ん坊だな。しかしブサイクな面(つら)だなあ」
う~ん、そうかも。
パパの手のひらにちんまり乗った子ネコは体は茶色で小さな頭のてっぺんに白い毛が生えている。だけど毛虫みたいな眉がその下にあるし、鼻のかたちはなんだかブタみたい。
「困ったわねぇ。おおみそかじゃどこにも持っていけないわ」
ママはブツブツ言いながらも、温めたミルクをお皿に入れて持ってきた。
そっとおろすと子ネコはピチャチャ小さなピンクの舌でなめている。
ボクはそっと小さな背中にさわってみた。子ネコはミュ―と一声鳴いてボクの指に顔をすりよせてきた。ふわふわあったか、気持ちいい。お腹いっぱいになったのか子ネコはボクの両手の中で小さなあくびをするとそのまま丸くなる。
「うちのネコにしちゃだめ?」
そのあと、ボクもネコと一緒に眠ってしまったみたい。次に目が覚めた時、カーテンのすき間からお日さまの光が差し込んでいた。ボクは子ネコを見てアレッと思った。
子ネコ、大きくなった? 見つけた時はパパの手のひらの上に乗るくらいだったのに、今はボクの両手からもあふれそう。
「ねぇママ―。ネコの体が」
でもママは玄関のところでバタバタしてる、外では車のエンジンの音がする。
「パパとお正月のお買い物に行ってくるからね、子ネコがうんちしたらティッシュでつまんでごみ箱に捨てるのよ」
誰もいないおうちの中、ボクは子ネコを抱っこしてリビングのソファの上にそっとおろした。子ネコは黒い毛虫みたいな眉毛の下の大きな目でボクをじーっと見上げている。
「ホットケーキ、食べれる?」
子ネコはうれしそうにホットケーキを半分、それにウィンナーまでむしゃむしゃ食べた。
大きくなったからお腹がすくのかなぁ。 お前はどこから来たの?
今日は大みそか。今日だけは遅くまで起きてていいよってママが言った。ゲームも今日だけはいくらやってもいいって。夜中におそばを食べて温まったらパパとママとで初もうでに行くんだ、サイコー。
去年はね、眠っちゃって初もうでに行けなくて、すごくくやしかった。今年はちゃんとお昼寝をして絶対初もうでに行くつもり。
ボクは子ネコをひざにのせてテレビを見て、ゲームも思いっきりたくさんやったんだ。
そしてソファの上で夜に備えてお昼寝もちゃんとしたのだけど。
目が覚めた時、今年最後のお日さまがもうオレンジ色の光になってるし、部屋もちょっとうす暗くなってきてる。。パパとママはまだ帰ってきてない。ボクは目をこすりながら明かりをつけた。
「わぁっ!」
思わず大声をあげちゃった。だって子ネコはすっかり変わっちゃたから。もう子ネコには見えない。
動物園のライオンみたいに大きい。頭のてっぺんの白い毛はもしゃもしゃとつっ立って、黒い眉はますます太くなってるし、パパがブサイクと言ってた鼻は、ますます広がってブタかカバみたい。口の中には大きくて黄色い歯がたくさん見える。
ボ、ボクを食べたりしないよね?
大きくなった子ネコは背すじをピンと立ててボクをじーっと見つめている。おそるおそる手を出してみたら、ボクの手を大きなベロでペロッと舐めて「ニャー」と鳴いたんだ。
だ、だいじょうぶみたい。
「遅くなってごめーん、スーパーが混んでて大変だったの」
「やれやれ、疲れたよ」
玄関からパパとママの声と重い荷物をドサッと置く音が聞こえる。
どうしよう、二人が見たらなんていうだろう。危ないとか言っておまわりさんを呼ぶかもしれない。ボクはお座りしている大きな子ネコと、こっちにやってくるパパとママをかわるがわる見つめた。
「ごめんね、寂しかったでしょう、あらっ」
ママがリビングに入って来て立ち止る。パパも重そうに買い物袋を両手にぶら下げたままポカンとしてる。ボクはネコを守るようにあわてて言った。
「こ、これね、子ネコなの。ボクがたくさん食べさせたから大きくなったの」
ちょっとの間、パパとママは黙ってネコを見つめていたけれど、二人ともニコッと笑う。
ちっともあわててないみたい。なんで? なぜパパもママも大さわぎしないんだろう。
「さ、夕ご飯の準備をしなくちゃね」
ママはいそいそとキッチンに向かった。
夜はごちそうだった。ピザに、トリのから揚げ、ボクの大好きなモノばかり。大きくなったネコも一緒、から揚げもピザも大きな口でパクパク食べる。パパとママは嬉しそうにネコをながめている。
「こいつがいるから今夜はこっちだな」
パパはひょいと立ち上がってお酒のビンを大切そうに持ってきた。もったいないといつもはちょぴッとしか飲まないお酒を大きなお皿にとくとくと注いで、ネコに「どうぞ」と差し出している。
ママはママでお正月に出すはずのごちそうを別のおさらにたっぷり盛りあげている。
パパもママもネコが好きになったのかな? うちのネコにしてくれるのかもしれない。
夜も遅くなってきたころ、ネコはなんだかそわそわと落ち着かなくなった。体は大きくてもやっぱり子ネコだから眠くなってきたのかな?
「そうか、そろそろ行くんだな」
パパはパシッとひざをたたいて立ち上がる。ボクは心配になってきた。
「行くってなんで? どこに行くの?」
パパはニッコリ笑ってボクをのぞきこむ。
「このネコはな、神様のお使いなのさ。お正月に獅子舞(ししまい)という大切なお仕事があるんだよ」
パパは窓を大きく開けた。外から冷たい風がピューッと吹き込んでくる。ネコはのしのしとボクのところにやってきて、ゴロゴロと言いながら大きな体をすり寄せてきた。ボクはネコをぎゅっと抱きしめる。ネコは両手が回らないほど大きくなっていた。ネコはやさしい目のまま、大きな口をぱっくり開けてボクの頭をそっと嚙んだ。ちょっとこわかったけれど、甘っぽいお酒のにおいがした。ママはとてもうれしそう。
「獅子(しし)様に噛んでもらったからいい年になるわよ」
獅子になった子ネコは背すじをピンと伸ばして外を見上げた。頭のてっぺんの白い毛がふわふわと風に吹かれている。獅子は大きくジャンプするとあっという間に真っ暗な空の中にかけあがり、あっという間に見えなくなった。
チクチクふわふわしたものが、ベッドで寝ているボクのほっぺをくすぐった。
パチッと目を開けてびっくり。
「ネコがいるよ!」
ねぼけまなこで部屋に駆け込んできたママがぼくをじろっと見る。
「やだ、ノラネコだわ。いつ拾ってきたの! ダメでしょう」
パパは大あくびしながら、ネコをつまみ上げた。
「まだ赤ん坊だな。しかしブサイクな面(つら)だなあ」
う~ん、そうかも。
パパの手のひらにちんまり乗った子ネコは体は茶色で小さな頭のてっぺんに白い毛が生えている。だけど毛虫みたいな眉がその下にあるし、鼻のかたちはなんだかブタみたい。
「困ったわねぇ。おおみそかじゃどこにも持っていけないわ」
ママはブツブツ言いながらも、温めたミルクをお皿に入れて持ってきた。
そっとおろすと子ネコはピチャチャ小さなピンクの舌でなめている。
ボクはそっと小さな背中にさわってみた。子ネコはミュ―と一声鳴いてボクの指に顔をすりよせてきた。ふわふわあったか、気持ちいい。お腹いっぱいになったのか子ネコはボクの両手の中で小さなあくびをするとそのまま丸くなる。
「うちのネコにしちゃだめ?」
そのあと、ボクもネコと一緒に眠ってしまったみたい。次に目が覚めた時、カーテンのすき間からお日さまの光が差し込んでいた。ボクは子ネコを見てアレッと思った。
子ネコ、大きくなった? 見つけた時はパパの手のひらの上に乗るくらいだったのに、今はボクの両手からもあふれそう。
「ねぇママ―。ネコの体が」
でもママは玄関のところでバタバタしてる、外では車のエンジンの音がする。
「パパとお正月のお買い物に行ってくるからね、子ネコがうんちしたらティッシュでつまんでごみ箱に捨てるのよ」
誰もいないおうちの中、ボクは子ネコを抱っこしてリビングのソファの上にそっとおろした。子ネコは黒い毛虫みたいな眉毛の下の大きな目でボクをじーっと見上げている。
「ホットケーキ、食べれる?」
子ネコはうれしそうにホットケーキを半分、それにウィンナーまでむしゃむしゃ食べた。
大きくなったからお腹がすくのかなぁ。 お前はどこから来たの?
今日は大みそか。今日だけは遅くまで起きてていいよってママが言った。ゲームも今日だけはいくらやってもいいって。夜中におそばを食べて温まったらパパとママとで初もうでに行くんだ、サイコー。
去年はね、眠っちゃって初もうでに行けなくて、すごくくやしかった。今年はちゃんとお昼寝をして絶対初もうでに行くつもり。
ボクは子ネコをひざにのせてテレビを見て、ゲームも思いっきりたくさんやったんだ。
そしてソファの上で夜に備えてお昼寝もちゃんとしたのだけど。
目が覚めた時、今年最後のお日さまがもうオレンジ色の光になってるし、部屋もちょっとうす暗くなってきてる。。パパとママはまだ帰ってきてない。ボクは目をこすりながら明かりをつけた。
「わぁっ!」
思わず大声をあげちゃった。だって子ネコはすっかり変わっちゃたから。もう子ネコには見えない。
動物園のライオンみたいに大きい。頭のてっぺんの白い毛はもしゃもしゃとつっ立って、黒い眉はますます太くなってるし、パパがブサイクと言ってた鼻は、ますます広がってブタかカバみたい。口の中には大きくて黄色い歯がたくさん見える。
ボ、ボクを食べたりしないよね?
大きくなった子ネコは背すじをピンと立ててボクをじーっと見つめている。おそるおそる手を出してみたら、ボクの手を大きなベロでペロッと舐めて「ニャー」と鳴いたんだ。
だ、だいじょうぶみたい。
「遅くなってごめーん、スーパーが混んでて大変だったの」
「やれやれ、疲れたよ」
玄関からパパとママの声と重い荷物をドサッと置く音が聞こえる。
どうしよう、二人が見たらなんていうだろう。危ないとか言っておまわりさんを呼ぶかもしれない。ボクはお座りしている大きな子ネコと、こっちにやってくるパパとママをかわるがわる見つめた。
「ごめんね、寂しかったでしょう、あらっ」
ママがリビングに入って来て立ち止る。パパも重そうに買い物袋を両手にぶら下げたままポカンとしてる。ボクはネコを守るようにあわてて言った。
「こ、これね、子ネコなの。ボクがたくさん食べさせたから大きくなったの」
ちょっとの間、パパとママは黙ってネコを見つめていたけれど、二人ともニコッと笑う。
ちっともあわててないみたい。なんで? なぜパパもママも大さわぎしないんだろう。
「さ、夕ご飯の準備をしなくちゃね」
ママはいそいそとキッチンに向かった。
夜はごちそうだった。ピザに、トリのから揚げ、ボクの大好きなモノばかり。大きくなったネコも一緒、から揚げもピザも大きな口でパクパク食べる。パパとママは嬉しそうにネコをながめている。
「こいつがいるから今夜はこっちだな」
パパはひょいと立ち上がってお酒のビンを大切そうに持ってきた。もったいないといつもはちょぴッとしか飲まないお酒を大きなお皿にとくとくと注いで、ネコに「どうぞ」と差し出している。
ママはママでお正月に出すはずのごちそうを別のおさらにたっぷり盛りあげている。
パパもママもネコが好きになったのかな? うちのネコにしてくれるのかもしれない。
夜も遅くなってきたころ、ネコはなんだかそわそわと落ち着かなくなった。体は大きくてもやっぱり子ネコだから眠くなってきたのかな?
「そうか、そろそろ行くんだな」
パパはパシッとひざをたたいて立ち上がる。ボクは心配になってきた。
「行くってなんで? どこに行くの?」
パパはニッコリ笑ってボクをのぞきこむ。
「このネコはな、神様のお使いなのさ。お正月に獅子舞(ししまい)という大切なお仕事があるんだよ」
パパは窓を大きく開けた。外から冷たい風がピューッと吹き込んでくる。ネコはのしのしとボクのところにやってきて、ゴロゴロと言いながら大きな体をすり寄せてきた。ボクはネコをぎゅっと抱きしめる。ネコは両手が回らないほど大きくなっていた。ネコはやさしい目のまま、大きな口をぱっくり開けてボクの頭をそっと嚙んだ。ちょっとこわかったけれど、甘っぽいお酒のにおいがした。ママはとてもうれしそう。
「獅子(しし)様に噛んでもらったからいい年になるわよ」
獅子になった子ネコは背すじをピンと伸ばして外を見上げた。頭のてっぺんの白い毛がふわふわと風に吹かれている。獅子は大きくジャンプするとあっという間に真っ暗な空の中にかけあがり、あっという間に見えなくなった。
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