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期末テスト編
28話 真意
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突如暴走を始めたルネスとの戦闘で、アンリはだいぶ疲弊していた。
「はぁ…、はぁ…、ああくそッ!」
苛立ちを隠そうともせず、アンリはルネスの猛攻を防ぐ。しかし完全には防ぎきれずに、所々にダメージを負ってしまう。
(このままじゃ死ぬな…。)
ルネスのパンチによって潰された内臓の様子を確かめるように腹をさすりながら、アンリは自身へのダメージ量が思いの外大きい事に舌を打つ。
(仕方がないか…。)
アンリは懐から一つの指輪を取り出すと、右手の中指にそれをはめた。
「ルネス、少し先生と遊ぼうか。」
ニッコリと笑いながら、アンリが指輪に魔力を注ぐ。すると指輪に嵌め込まれた赤い宝石が徐々に発光し始める。
指輪に集められた魔力を元手に、アンリが魔法を発動させる。するとアンリとルネスを囲うように透明な壁が2人を包み込む。
「……。」
ルネスは周りで起こる異変を察知したのか、逃れるために上へとジャンプする。
「逃がさねぇよ、ルネス。」
しかしアンリによって、ルネスの行動は阻まれてしまった。ルネスの足には薔薇の蔓のような植物が絡み付いていた。
「悪いなルネス、これでお前はもう逃げられない。」
獰猛な笑みを浮かべるアンリ。
「この壁は、周りの認識を阻害して見えなくする効果がある。そのおかげで、周りには私とお前の姿は見えない。だから、私がどんな姿になっても周りの奴には見えない。」
アンリの身体に魔力が纏わりつく。
「だから私も、本気でお前と戦おう。」
アンリの身体が変化する。背中からは蝙蝠のような翼が生え、全身に何かの紋章のようなタトゥーが浮かび上がる。髪の色は赤髪から金髪へと色を変え、瞳の色も指にはめている指輪と同じ真紅に染まる。
「さあ、二回戦と行こうか。ルネス。」
妖艶な笑みを浮かべるアンリは、サキュバスの血族だった。
アンリが真の姿になってからは、圧倒的だった。
ルネスの攻撃はアンリには全く届かず、逆にアンリの攻撃は着実にルネスを追い詰めていった。
「ルネス、お前に何が起こっているのかは知らん。お前がそう無闇に人を殺すような奴じゃないと私は思っている。
だがな、流石に今回の一件を見逃すわけにはいかない。未遂とは言え、お前がメルトを殺そうとした事実は変わらない。」
アンリはルネスを殴りながら、尚も喋り続ける。
「私の計画の為にも、今ここでお前に学園から居なくなられるのは困るんだ。だから今は眠っていてくれ。」
アンリがルネスに向けて催眠魔法を放つ。ルネスは糸が切れた人形のようにパタリとその場に倒れ伏した。
「…後で調べる必要がありそうだな。」
1人呟くアンリは、その後いつも通りの姿に戻ると、結界を解除する。
次の瞬間、アンリの身体を魔弾が貫いた。
「———!?」
アンリが大きく目を見開き、穴の空いた心臓を見つめる。そこからは血がドクドクと溢れ出している。
「なんで…私の催眠魔法が聞いていない。」
アンリが後ろを振り向くと、そこには指を銃の形に構えるルネスの姿があった。
「敵性個体の生命維持活動レベル、急速に低下。このまま殲滅します。」
ルネスはアンリの問いに答えることはなく、再びアンリを殺す為にアンリへと詰め寄る。
(クソっ!結界を解いた後だから、もう一度変身はできない…。)
心臓の傷を癒しながら、アンリは今後の対策を考える。通常結界の構築には大掛かりな準備が必要になるが、アンリはそれを指輪という魔道具を使うことでカバーしていた。
しかし指輪の魔道具は一度しか使えないため、もう一度あの結界を貼り直すのは不可能だった。
心臓の修復に大分魔力を使ってしまった為、身体強化も思うように使えない。先程までは微不利だった勝負も、今では完全にアンリにとって劣勢な状況だった。
(身体が、思うように動かない…。まさか!?)
徐々に体の自由が奪われていく感覚。アンリは自身の体に異変が起きていることに気づく。
「あの魔弾、只の魔弾じゃ無かったのか!」
アンリの問いに答える声はない。代わりに飛んでくるルネスの拳が答えを物語っていた。
(これはもう、潮時か…。)
———おい、起きろ。
誰だようるさいな。
———おい、起きろって。
もう寝かせてくれよ、俺は疲れたんだ。
「起きろって言ってんだろ!」
バチン!と頬を叩かれ、ルネスは飛び起きる。辺りをキョロキョロと見回すと、そこはもはや見慣れた真っ白な部屋だった。
「なんでまたここに…。」
「そりゃあ、俺が呼んだからだよ。」
声のする方にルネスが顔を向けると、そこにはラーが腕を組んで立っていた。
「…なんでまたあんたがここに?」
「俺が助けてやったからに決まってんだろ?お前、あのまま放っておいたら完全に死んでたぞ。」
「あのままって…ああ。」
ラーに言われて漸く、ルネスは自分の身に何が起こったのかを思い出した。
「もういいんだよ。」
「何?」
「俺はあいつらに幾ら謝っても許されないことをしてきた。それなら消えてしまうのは当然の報いだ。」
自嘲気味に笑うルネス。地べたに座り込み、俯きながら話すルネスに、ラーは自身の苛立ちを隠すことなくルネスに怒る。
「お前さん、そんなんでいいと思ってんのか?確かに俺はお前に自分と向き合えと言ったが、そのまま消えろなんて一言も言ってないだろ。
お前さんがするのは諦めることじゃねえ。反省して、受け入れて、前に進むことだ。
いいか、逃げんな。」
ルネスの胸ぐらを掴み、無理やり立たせて怒鳴るラー。ルネスはラーから目をそらしながら、尚も言い訳を続ける。
「俺は今まで逃げて逃げて、逃げ続けてきたんだ。あいつらに俺の嫌なこと全部押し付けて、俺はそこから目を背けながらのうのうと毎日を過ごしてきた。だから、俺がここで消えるのは仕方ないことなんだ。」
「そうやって、また逃げるのか。」
ラーの一言に、ビクッと震えるルネス。
「お前はまた、なんだかんだと言い訳つけて逃げてるだけじゃねえか。
お前はあそこで何を思った。お前自身が生み出したあいつらに、何を思った?」
「…申し訳なかったって。」
「だったら、それをあいつらに伝えるべきなんじゃないのか?」
ラーの真っ直ぐな瞳。ルネスはそれを見て何も言えなくなってしまう。
「お前は、どうするべきだと思うんだ?」
「はぁ…、はぁ…、ああくそッ!」
苛立ちを隠そうともせず、アンリはルネスの猛攻を防ぐ。しかし完全には防ぎきれずに、所々にダメージを負ってしまう。
(このままじゃ死ぬな…。)
ルネスのパンチによって潰された内臓の様子を確かめるように腹をさすりながら、アンリは自身へのダメージ量が思いの外大きい事に舌を打つ。
(仕方がないか…。)
アンリは懐から一つの指輪を取り出すと、右手の中指にそれをはめた。
「ルネス、少し先生と遊ぼうか。」
ニッコリと笑いながら、アンリが指輪に魔力を注ぐ。すると指輪に嵌め込まれた赤い宝石が徐々に発光し始める。
指輪に集められた魔力を元手に、アンリが魔法を発動させる。するとアンリとルネスを囲うように透明な壁が2人を包み込む。
「……。」
ルネスは周りで起こる異変を察知したのか、逃れるために上へとジャンプする。
「逃がさねぇよ、ルネス。」
しかしアンリによって、ルネスの行動は阻まれてしまった。ルネスの足には薔薇の蔓のような植物が絡み付いていた。
「悪いなルネス、これでお前はもう逃げられない。」
獰猛な笑みを浮かべるアンリ。
「この壁は、周りの認識を阻害して見えなくする効果がある。そのおかげで、周りには私とお前の姿は見えない。だから、私がどんな姿になっても周りの奴には見えない。」
アンリの身体に魔力が纏わりつく。
「だから私も、本気でお前と戦おう。」
アンリの身体が変化する。背中からは蝙蝠のような翼が生え、全身に何かの紋章のようなタトゥーが浮かび上がる。髪の色は赤髪から金髪へと色を変え、瞳の色も指にはめている指輪と同じ真紅に染まる。
「さあ、二回戦と行こうか。ルネス。」
妖艶な笑みを浮かべるアンリは、サキュバスの血族だった。
アンリが真の姿になってからは、圧倒的だった。
ルネスの攻撃はアンリには全く届かず、逆にアンリの攻撃は着実にルネスを追い詰めていった。
「ルネス、お前に何が起こっているのかは知らん。お前がそう無闇に人を殺すような奴じゃないと私は思っている。
だがな、流石に今回の一件を見逃すわけにはいかない。未遂とは言え、お前がメルトを殺そうとした事実は変わらない。」
アンリはルネスを殴りながら、尚も喋り続ける。
「私の計画の為にも、今ここでお前に学園から居なくなられるのは困るんだ。だから今は眠っていてくれ。」
アンリがルネスに向けて催眠魔法を放つ。ルネスは糸が切れた人形のようにパタリとその場に倒れ伏した。
「…後で調べる必要がありそうだな。」
1人呟くアンリは、その後いつも通りの姿に戻ると、結界を解除する。
次の瞬間、アンリの身体を魔弾が貫いた。
「———!?」
アンリが大きく目を見開き、穴の空いた心臓を見つめる。そこからは血がドクドクと溢れ出している。
「なんで…私の催眠魔法が聞いていない。」
アンリが後ろを振り向くと、そこには指を銃の形に構えるルネスの姿があった。
「敵性個体の生命維持活動レベル、急速に低下。このまま殲滅します。」
ルネスはアンリの問いに答えることはなく、再びアンリを殺す為にアンリへと詰め寄る。
(クソっ!結界を解いた後だから、もう一度変身はできない…。)
心臓の傷を癒しながら、アンリは今後の対策を考える。通常結界の構築には大掛かりな準備が必要になるが、アンリはそれを指輪という魔道具を使うことでカバーしていた。
しかし指輪の魔道具は一度しか使えないため、もう一度あの結界を貼り直すのは不可能だった。
心臓の修復に大分魔力を使ってしまった為、身体強化も思うように使えない。先程までは微不利だった勝負も、今では完全にアンリにとって劣勢な状況だった。
(身体が、思うように動かない…。まさか!?)
徐々に体の自由が奪われていく感覚。アンリは自身の体に異変が起きていることに気づく。
「あの魔弾、只の魔弾じゃ無かったのか!」
アンリの問いに答える声はない。代わりに飛んでくるルネスの拳が答えを物語っていた。
(これはもう、潮時か…。)
———おい、起きろ。
誰だようるさいな。
———おい、起きろって。
もう寝かせてくれよ、俺は疲れたんだ。
「起きろって言ってんだろ!」
バチン!と頬を叩かれ、ルネスは飛び起きる。辺りをキョロキョロと見回すと、そこはもはや見慣れた真っ白な部屋だった。
「なんでまたここに…。」
「そりゃあ、俺が呼んだからだよ。」
声のする方にルネスが顔を向けると、そこにはラーが腕を組んで立っていた。
「…なんでまたあんたがここに?」
「俺が助けてやったからに決まってんだろ?お前、あのまま放っておいたら完全に死んでたぞ。」
「あのままって…ああ。」
ラーに言われて漸く、ルネスは自分の身に何が起こったのかを思い出した。
「もういいんだよ。」
「何?」
「俺はあいつらに幾ら謝っても許されないことをしてきた。それなら消えてしまうのは当然の報いだ。」
自嘲気味に笑うルネス。地べたに座り込み、俯きながら話すルネスに、ラーは自身の苛立ちを隠すことなくルネスに怒る。
「お前さん、そんなんでいいと思ってんのか?確かに俺はお前に自分と向き合えと言ったが、そのまま消えろなんて一言も言ってないだろ。
お前さんがするのは諦めることじゃねえ。反省して、受け入れて、前に進むことだ。
いいか、逃げんな。」
ルネスの胸ぐらを掴み、無理やり立たせて怒鳴るラー。ルネスはラーから目をそらしながら、尚も言い訳を続ける。
「俺は今まで逃げて逃げて、逃げ続けてきたんだ。あいつらに俺の嫌なこと全部押し付けて、俺はそこから目を背けながらのうのうと毎日を過ごしてきた。だから、俺がここで消えるのは仕方ないことなんだ。」
「そうやって、また逃げるのか。」
ラーの一言に、ビクッと震えるルネス。
「お前はまた、なんだかんだと言い訳つけて逃げてるだけじゃねえか。
お前はあそこで何を思った。お前自身が生み出したあいつらに、何を思った?」
「…申し訳なかったって。」
「だったら、それをあいつらに伝えるべきなんじゃないのか?」
ラーの真っ直ぐな瞳。ルネスはそれを見て何も言えなくなってしまう。
「お前は、どうするべきだと思うんだ?」
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