✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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序章〜闇のレジェンド〜

序章5話✡︎囚われた女神✡︎

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 溢れる喜びの中…誰も気づいて居なかった、クリタス平原の空間が歪み悍ましい存在が重い足音を立て現れた事を。

 囚われている闇の女神オプスは目の前にある輝きを見る。
 暗い夜の闇の中に宝石の様に輝く首都クリタスを、人々の喜びが溢れている美しい街を……

「ま、まさか…クリタスを……
いやぁぁぁ!
やめて!お願いだからやめてぇぇー‼︎」


 闇の女神オプスは力一杯に叫んだ!
 囚われてしまったオプスの力を使い、自由に地上と冥界を行き来し、タナトスが冥界の力を持って都市を一つ一晩で破壊し尽くす。
 闇の女神オプスが愛し続けた地上を、オプスの力を利用して破壊しているのだ。
 それは最も地上を愛していた闇の女神オプスにとって、耐え難い苦痛でしかなかった。


「だ、だれか…た…た…助けて……
お願いだから……お母様……お父様……助けて……」

 闇の女神らしく無くオプスは心から助けを求めた。


 その時、トールは暗黒に呼ばれた気がして柄に手をかけた。
 民衆の熱狂が更に増す!


(たすけ…て……)


 トールは暗黒を通してオプスの声を聞いた。
 そしてクリタス平原の方から、悍ましい何かが這い出ようとしているのを感じ取る。


「トータリア!
兵を連れ荒野の方に行け!早く‼︎」


 トータリアは何かと思ったが、兄の真剣な顔を見て抱きつき言った。
「死なないで、必ずお救い下さい……お兄様……」
そう呟いた。

 トールは頷き走り出す、祝いの宴の中でトールは商人が連れている馬に飛び乗り叫ぶ。
「借りるぞ!」
そして平原に向け、首都クリタスを駆け抜ける。


 その頃……クリタス平原側の城壁の上にいる見張りが平原に何かを見つける。
 空間が歪みアンデットのドラゴンが、ゆっくりとその歪みから出てくる姿を。

 見張りは敵を報せる鐘を叩く、それに合わせて各所の見張りが鐘を叩き始める。

 街は一瞬静かになり、何事かと人々は騒ぎ出す。
 そこに衛兵達が街中に報せる、


「平原にタナトスが現れた!
速やかに荒野に避難しろ!」


 街中が混乱した、警備兵達が人々の避難の誘導を始めるが、街中がさっきまで祝宴を催していたのだ人々が混乱し避難なんて上手く出来るはずがない、そんな時に声が聞こえた。


「力なき者は逃げよ!

武器を持てる者は!

力無き者を救え‼︎」


凄まじい叫び声が民衆と兵達を一括した。
 トールが暗黒に声を乗せ叫んだのだ、そしてさらに叫ぶ!



「ゴブリンの戦士達よ!


立ち上がれ‼︎


我はこの時を待っていた‼︎

我らの女神オプス様を!
捕らえし憎き死竜タナトスを‼︎

奴がわざわざこのクリタスにっ!
来てくれたではないか‼︎

立ち上がれ!

我らの怒りを見せてやれ‼︎
そして我らの女神を!
オプス様を取り戻せ‼︎

戦士達よ‼︎」

 トールは号令をかけるように叫んだ。
 そしてトールは馬を走らせタナトスに一人で向かって行った。

 その叫びで祝いの席で酔っていた兵達が一瞬で目を覚まし声を上げる!
 すぐに民衆の避難や城壁の守りを固め、迅速に行動しはじめた。

 駐留部隊が城壁の前に展開し突撃体制を取りトールの後を追う。

 その光景をみたトータリアは本当に兄が国の英雄なんだと実感し、更に強く想いを馳せていた。

「会いたかったぞ……」

 トールがタナトスとの距離が僅かになった時トールは呟いた。
 そしてタナトスの胸に太い骨に囚われている少女を見つける。

 髪は紫、その中に星が瞬いてて瞳は瞑っている。
闇の印…オプスの印額に浮き出ている。
 そして涙を流し何かを叫んでいる少女を見つける。


(やめてぇ‼︎もう殺さないで!)

 オプスは自分の力を利用し、タナトスが地上に直接現れ殺戮を繰り返すことに苦しんでいた。

 タナトスがトールに気づいた、口を大きく開き、骨の牙の間から赤黒い炎を吐き焼き払おうとする。

 トールは体が自然に動き馬から飛び降り、その炎を暗黒で受け止めた。
 炎は凄まじい勢いで暗黒に吸い込まれていく、闇の女神オプスの力だ。
オプスはトールが来た事に気付いた。


「トール、来てくれたのですね……」

 タナトスは無駄と知り吐くのをやめ、踏みつぶそうと突進して行く。
 トールはそのタナトスの右足を斬りタナトスを這いつくばらせ、オプスを捉える骨を斬ろうとした時。

 その骨が変形し太く鋭い槍の様になり、トールに無数に襲いかかったその瞬間。
「……」
オプスが何かを囁いた。

 その囁きを聞いた暗黒の鉄の蛇が蠢き、無数に裂け無数の蛇になり、その骨の槍を受け止め砕く。

「これは……」
トールが驚くがそこにオプスが叫ぶ。
「トール!私をタナトスもろとも無に帰しなさい!タナトスを道連れに私を殺して下さい!」


「なっ!」
「タナトスは私の力を使い、地上に現れるのです!
それを止めるには!
タナトスとともに私も無に帰して下さい!」


 トールはその言葉を聞き一瞬ためらった。


 そこにタナトスの再生した右足から、骨の腕が生えてトールを横から殴り吹っ飛ばした。

 後方から来た駐留部隊が、追いつきそれを見てタナトスに攻撃を仕掛ける。
 だが歯が立つはずがない、無残に次々と命を落として行く兵達。


 トールは紫の血を口から吐き立ち上がる。


「誰が殺せるんだよ……
初めて愛した女を!誰が殺せんだよ‼︎」


 トールは叫んだ、心から全てを吐き出すように全身で叫んだ。
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