✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

文字の大きさ
13 / 234
第一章〜ユニオンレグヌス〜

6話✡︎力と責任✡︎

しおりを挟む


「お母さん」
ユリナが驚いた様に言う。
「風の祝福おめでとうユリナ」
そう微笑みながら言い優しくユリナの頭をなでてくれた。
「お母さん、魔力を維持する方法って……」
ユリナは一番知りたかったことを聞く。


「その前に解って欲しいことがあって。
なんて言えばいいのかな……

神様の魔力が強過ぎるってことを覚えていてね。
これはね神官でも、あまり知られてない事なんだけど例えば風が吹くよね?
その風は、風の女神ウィンディア様の吐息なのよ。」

 ユリナは驚いた顔をするが、エレナは話を続ける

「雨が降るときも月が綺麗に見えるときも、空が曇るときも、この世界の全て出来事が天界の神様達のしぐさ一つで変わるの、それだけ神様の魔力が強すぎるのよ……


祝福はその神様の力を借りてると言えばいいのかな?

例えば同じ魔法でも、普通の魔導師が使うのと、私が祝福の力を使って同じ魔法を使うのじゃぜんぜん違うの、魔力自体が神様の魔力だから、私の求める感じになって行くかな……
そもそも魔法自体その人の魔力で強さは変わるけどね。」

ユリナが不思議そうに聞く
「求める感じ?」

エレナは笑みを浮かべて答える。
「そう……
私は水の女神エヴァの祝福を使うでしょ?

強い魔法を使う時、沢山の水が必要になるんだけど、それに合わせて私のいる場所に沢山の雨が降ったり、川が流れを変えて来たり……
その逆で水を引かせたり、津波も押し返したり。
水なら自由に扱えるかな。」


ユリナが何かに気づいて、
「それって…」

「そう、祝福を受ける事は神の化身になる事に等しいの、ただ私は魔力を貯めて魔法を唱えるけど。

神様はそれをしないで出来るかな、だから祝福の力で神様と同じ力を手に入れたと思うのは本当に大きな過ちに繋がるからね。

あと私達が生きているのは天界じゃないから、私達を見守る為に守護竜が来てくれるの、それと……」


エレナは優しい顔のまま話を続けるが、ユリナの瞳を見つめている。
「祝福の力はとても強いから……強すぎるから、それと同じだけの責任があるの……

誰かに利用されたりしてはいけないの、常に正しさが求められるのよ。

例えエルフの国王に命令された事でも、正しさが無ければ断りきる勇気を持ってね。

神々の前では、断れなかった、聞くしか無かったなんて言い訳は聞いて貰えないから……

それは忘れないでね、お願いだから絶対に忘れないでね。

守護竜はユリナを見てるから……何もなければ、ああやって可愛いく私達と過ごしてくれるけど、ユリナがそれを忘れたら……
私でも助けられないからね……
私がユリナをこの手で止めないといけないかも知れないから……

そんなことはさせないでね」


いつの間にかエレナの目に涙がたまっていた。


 ユリナは初めて、母が悲しそうな目をしているのに気づいた、六百歳のユリナもそんな悲しそうな顔をする母エレナを初めて見て、なんて言えばいいのか解らず静かに頷いた。


「あと、魔力を維持する方法は」
エレナが教えようとした。

「魔力修練の最上位、呼吸法……全ての存在に神を感じその魔力を呼吸する事で吸収する、一番難しくて神の技とされる魔力修練……」
ユリナが先に答えた。

「正解!良くわかったねユリナ、だいぶ前に教えたこと、ちゃんと覚えてたんだね。
呼吸法がなんで一番難しいかは、全ての事に神様を感じることなのよ、エルフの高位魔導師、ムーンライトでも多分出来る人は居ないかな……

なんでだと思う?」
エレナはユリナを抱き寄せ頭を撫でながら質問する。


ユリナは少し考えて
「あ……風がウィンディアの吐息だってことを知らないから?
全ての自然の出来事が、全部神様のしぐさってことを知らないから?」


ユリナがそう答えると、エレナはニコニコして、ユリナの額に軽くキスをする。

「そうよ、さっきも言ったけどその神に仕える神官でも大神官ですらそれを聞いて、神が与えてくれた恵と勘違いしちゃってるから、本当のことは理解してないの。

 私達は神々が日々を過ごしてる、しぐさ一つで私達の運命が変わるの、神様が願いを聞いて私達に与えてくれる恵って言うのは、そう考えるととても僅かなものなのよ……

 神々を祀る神殿で時々だけど、農民に沢山の捧げものを要求する神官が居るよね?

 それは只の信仰で何も意味の無いことなの、信仰し過ぎればそれは多くの人を苦しめて、一部の人が豊かになるだけ。
神様はそんなことは望んではいないのよ……」

そこまで聞いてユリナは疑問に思った、大神官は本当に勘違いしてるのかと……


「お母さん、大神官は本当に勘違いしてるの?

それを聞いたら捧げものって要らない気がするんだけど……
だって神様は天界で普通に生活してるだけでしょ?」
エレナはそう言うユリナを本当に鋭いんだからと、関心しながら答える。


「呼吸法は本当に神様を理解してないと出来ない魔力修練なの、でも魔力修練の本に載って無いよね?

でも神々を伝える経典には、似たような事が記されてるけど、魔力修練として書かれないで神々の偉大さを伝える様に書いてるのよ。

 つまりいつ頃からか呼吸法は神官達にとって、自分達が豊かに暮らす為には邪魔な存在になってしまったのよ……

だから呼吸法は神々の偉大さを伝える神の技として扱われ、そして伝えられる様になってしまったの……

それで伝えられてしまって、困った事にそれを学んだ大神官は本当に間違った教えを受けているのよ。」


 ユリナはその神官達の行いを聞いて、それこそ正しく無いと感じたが、全ての神官がそうでは無いと信じることにした。

そう信じようとしたユリナをエレナは察した。
「ユリナ?
神官を信じようとするのは辞めなさい、神官らしい神官は本当に居ないからねっ!

ユリナも感じる様になると思うけど、巫女として神殿に行っても、大体の神殿は神々しく感じるのは建物の雰囲気だけで、神々の気配は全く感じないから。


そう言うところの神官の言ってることは美しく感じるけど、まず神々の気配を感じ無いだけで、その神官の行いがなんとなく解るし、そう言う神殿はまず!

控えの間が豪華すぎるのよ!
沢山の人からどれだけ捧げものを集めてるか直ぐにわかるよ。


それとユリナも美人だから、絶対あると思うけど大体の神官が声かけてくるから、神に見捨てられた神殿の神官が、神に誓ってとか言って来るけど……

リヴァイアサンが私の胸元で、この人天界に行けないよ~って教えてくれる度に、はいはいって思うから本当に嫌になるからね。

紙に誓いでも書くのかなとか思っちゃうくらい呆れるから」


 ユリナはエレナが半分ヤサグレてる様に感じ汗をかいて、神官もエルド宮の高官かどこかの政治家の様に感じた。
 それと同時に信じようとする娘の気持ちに現実を突きつけ、瓜二つの様に見分けのつかない程似ているユリナを、美人と言い自分も美人だと言うユニークな母である。


「うーん、そろそろユリナも起きれるかな?
私もすることがあるから、またサイスで話そうね。
あとユリナにプレゼントがあるから、サイスで渡してあげるね、リヴァイアサン行くよ~」

そう言うとリヴァイアサンに声をかけて、ユリナと一緒に二匹の幼竜の方を見る……


 その視線先は青々とし柔らかな美しい芝が、無惨にも見る影なく荒れ果てていた。

「ちょっと!二人とも芝生どうするのよ‼︎」

ユリナが大きな声でウィンダムとリヴァイアサンに叫ぶ。
 その声を聞いた二匹はアッ…とした顔で目をまんまるにしてユリナを見る、ユリナの目が座っていて殺気を放っているが、いつもの様に優しいそよ風の様な殺気でなく、シンプルに怒っている。


「大丈夫よ、ここはユリナの夢の世界だからすぐに元どおりになるし、本当の世界だったら私も考えるけどね。」
ニコニコしてエレナが言った時、リヴァイアサンが怯えた。

 その様子を見たウィンダムは少しホッとする。

「リヴァイアサン、本当に怒ると私よりユリナの方が怖いからね」

 エレナがそう言うと、ウィンダムは顎が外れた様に大きく口を開けてそのままになり、リヴァイアサンとウィンダムは慌ててエレナのネックレスに入ろうとするが……ユリナはまるでネコのクビを掴む様にウィンダムを捕まえた。

「ちょっとなんで貴方までそっちに行くの?」
ニコニコしながらウィンダムに聞く、ウィンダムはもうアワワッ状態でテヘッと笑ってごまかしている。

エレナがクスクスと笑う。
「ユリナそのくらいにしてあげなさい、じゃあまたね。」

 そう言うと少しづつ薄く透明になり、誰も居なかったかの様に消えていった。
ユリナは母を見送り、しばらくウィンダムに芝生をなおさせる。

「プレゼントって何だろう?」
ユリナはそう呟いた時に目が覚めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...