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第一章〜ユニオンレグヌス〜
6話✡︎力と責任✡︎
しおりを挟む「お母さん」
ユリナが驚いた様に言う。
「風の祝福おめでとうユリナ」
そう微笑みながら言い優しくユリナの頭をなでてくれた。
「お母さん、魔力を維持する方法って……」
ユリナは一番知りたかったことを聞く。
「その前に解って欲しいことがあって。
なんて言えばいいのかな……
神様の魔力が強過ぎるってことを覚えていてね。
これはね神官でも、あまり知られてない事なんだけど例えば風が吹くよね?
その風は、風の女神ウィンディア様の吐息なのよ。」
ユリナは驚いた顔をするが、エレナは話を続ける
「雨が降るときも月が綺麗に見えるときも、空が曇るときも、この世界の全て出来事が天界の神様達のしぐさ一つで変わるの、それだけ神様の魔力が強すぎるのよ……
祝福はその神様の力を借りてると言えばいいのかな?
例えば同じ魔法でも、普通の魔導師が使うのと、私が祝福の力を使って同じ魔法を使うのじゃぜんぜん違うの、魔力自体が神様の魔力だから、私の求める感じになって行くかな……
そもそも魔法自体その人の魔力で強さは変わるけどね。」
ユリナが不思議そうに聞く
「求める感じ?」
エレナは笑みを浮かべて答える。
「そう……
私は水の女神エヴァの祝福を使うでしょ?
強い魔法を使う時、沢山の水が必要になるんだけど、それに合わせて私のいる場所に沢山の雨が降ったり、川が流れを変えて来たり……
その逆で水を引かせたり、津波も押し返したり。
水なら自由に扱えるかな。」
ユリナが何かに気づいて、
「それって…」
「そう、祝福を受ける事は神の化身になる事に等しいの、ただ私は魔力を貯めて魔法を唱えるけど。
神様はそれをしないで出来るかな、だから祝福の力で神様と同じ力を手に入れたと思うのは本当に大きな過ちに繋がるからね。
あと私達が生きているのは天界じゃないから、私達を見守る為に守護竜が来てくれるの、それと……」
エレナは優しい顔のまま話を続けるが、ユリナの瞳を見つめている。
「祝福の力はとても強いから……強すぎるから、それと同じだけの責任があるの……
誰かに利用されたりしてはいけないの、常に正しさが求められるのよ。
例えエルフの国王に命令された事でも、正しさが無ければ断りきる勇気を持ってね。
神々の前では、断れなかった、聞くしか無かったなんて言い訳は聞いて貰えないから……
それは忘れないでね、お願いだから絶対に忘れないでね。
守護竜はユリナを見てるから……何もなければ、ああやって可愛いく私達と過ごしてくれるけど、ユリナがそれを忘れたら……
私でも助けられないからね……
私がユリナをこの手で止めないといけないかも知れないから……
そんなことはさせないでね」
いつの間にかエレナの目に涙がたまっていた。
ユリナは初めて、母が悲しそうな目をしているのに気づいた、六百歳のユリナもそんな悲しそうな顔をする母エレナを初めて見て、なんて言えばいいのか解らず静かに頷いた。
「あと、魔力を維持する方法は」
エレナが教えようとした。
「魔力修練の最上位、呼吸法……全ての存在に神を感じその魔力を呼吸する事で吸収する、一番難しくて神の技とされる魔力修練……」
ユリナが先に答えた。
「正解!良くわかったねユリナ、だいぶ前に教えたこと、ちゃんと覚えてたんだね。
呼吸法がなんで一番難しいかは、全ての事に神様を感じることなのよ、エルフの高位魔導師、ムーンライトでも多分出来る人は居ないかな……
なんでだと思う?」
エレナはユリナを抱き寄せ頭を撫でながら質問する。
ユリナは少し考えて
「あ……風がウィンディアの吐息だってことを知らないから?
全ての自然の出来事が、全部神様のしぐさってことを知らないから?」
ユリナがそう答えると、エレナはニコニコして、ユリナの額に軽くキスをする。
「そうよ、さっきも言ったけどその神に仕える神官でも大神官ですらそれを聞いて、神が与えてくれた恵と勘違いしちゃってるから、本当のことは理解してないの。
私達は神々が日々を過ごしてる、しぐさ一つで私達の運命が変わるの、神様が願いを聞いて私達に与えてくれる恵って言うのは、そう考えるととても僅かなものなのよ……
神々を祀る神殿で時々だけど、農民に沢山の捧げものを要求する神官が居るよね?
それは只の信仰で何も意味の無いことなの、信仰し過ぎればそれは多くの人を苦しめて、一部の人が豊かになるだけ。
神様はそんなことは望んではいないのよ……」
そこまで聞いてユリナは疑問に思った、大神官は本当に勘違いしてるのかと……
「お母さん、大神官は本当に勘違いしてるの?
それを聞いたら捧げものって要らない気がするんだけど……
だって神様は天界で普通に生活してるだけでしょ?」
エレナはそう言うユリナを本当に鋭いんだからと、関心しながら答える。
「呼吸法は本当に神様を理解してないと出来ない魔力修練なの、でも魔力修練の本に載って無いよね?
でも神々を伝える経典には、似たような事が記されてるけど、魔力修練として書かれないで神々の偉大さを伝える様に書いてるのよ。
つまりいつ頃からか呼吸法は神官達にとって、自分達が豊かに暮らす為には邪魔な存在になってしまったのよ……
だから呼吸法は神々の偉大さを伝える神の技として扱われ、そして伝えられる様になってしまったの……
それで伝えられてしまって、困った事にそれを学んだ大神官は本当に間違った教えを受けているのよ。」
ユリナはその神官達の行いを聞いて、それこそ正しく無いと感じたが、全ての神官がそうでは無いと信じることにした。
そう信じようとしたユリナをエレナは察した。
「ユリナ?
神官を信じようとするのは辞めなさい、神官らしい神官は本当に居ないからねっ!
ユリナも感じる様になると思うけど、巫女として神殿に行っても、大体の神殿は神々しく感じるのは建物の雰囲気だけで、神々の気配は全く感じないから。
そう言うところの神官の言ってることは美しく感じるけど、まず神々の気配を感じ無いだけで、その神官の行いがなんとなく解るし、そう言う神殿はまず!
控えの間が豪華すぎるのよ!
沢山の人からどれだけ捧げものを集めてるか直ぐにわかるよ。
それとユリナも美人だから、絶対あると思うけど大体の神官が声かけてくるから、神に見捨てられた神殿の神官が、神に誓ってとか言って来るけど……
リヴァイアサンが私の胸元で、この人天界に行けないよ~って教えてくれる度に、はいはいって思うから本当に嫌になるからね。
紙に誓いでも書くのかなとか思っちゃうくらい呆れるから」
ユリナはエレナが半分ヤサグレてる様に感じ汗をかいて、神官もエルド宮の高官かどこかの政治家の様に感じた。
それと同時に信じようとする娘の気持ちに現実を突きつけ、瓜二つの様に見分けのつかない程似ているユリナを、美人と言い自分も美人だと言うユニークな母である。
「うーん、そろそろユリナも起きれるかな?
私もすることがあるから、またサイスで話そうね。
あとユリナにプレゼントがあるから、サイスで渡してあげるね、リヴァイアサン行くよ~」
そう言うとリヴァイアサンに声をかけて、ユリナと一緒に二匹の幼竜の方を見る……
その視線先は青々とし柔らかな美しい芝が、無惨にも見る影なく荒れ果てていた。
「ちょっと!二人とも芝生どうするのよ‼︎」
ユリナが大きな声でウィンダムとリヴァイアサンに叫ぶ。
その声を聞いた二匹はアッ…とした顔で目をまんまるにしてユリナを見る、ユリナの目が座っていて殺気を放っているが、いつもの様に優しいそよ風の様な殺気でなく、シンプルに怒っている。
「大丈夫よ、ここはユリナの夢の世界だからすぐに元どおりになるし、本当の世界だったら私も考えるけどね。」
ニコニコしてエレナが言った時、リヴァイアサンが怯えた。
その様子を見たウィンダムは少しホッとする。
「リヴァイアサン、本当に怒ると私よりユリナの方が怖いからね」
エレナがそう言うと、ウィンダムは顎が外れた様に大きく口を開けてそのままになり、リヴァイアサンとウィンダムは慌ててエレナのネックレスに入ろうとするが……ユリナはまるでネコのクビを掴む様にウィンダムを捕まえた。
「ちょっとなんで貴方までそっちに行くの?」
ニコニコしながらウィンダムに聞く、ウィンダムはもうアワワッ状態でテヘッと笑ってごまかしている。
エレナがクスクスと笑う。
「ユリナそのくらいにしてあげなさい、じゃあまたね。」
そう言うと少しづつ薄く透明になり、誰も居なかったかの様に消えていった。
ユリナは母を見送り、しばらくウィンダムに芝生をなおさせる。
「プレゼントって何だろう?」
ユリナはそう呟いた時に目が覚めた。
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