✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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第一章〜ユニオンレグヌス〜

12話✡︎大地の使徒✡︎

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 その頃ガーラはサイスに着くが、エレナの張った結界に阻まれていた。
 不思議とサイスの奥から、心地よいヴァイオリンが聞こえてくる。

「あの音色……」
「ガーラ、巫女は祭壇にいるよ、入れるかい?」
ガディアが空で旋回しながら報告してきた。
「あぁ、結界は気にする必要ない時間をかければよい、が、あの音色はどこからだ?」
「多分宿屋の奥だけど姿は見えないんだ」
 そう聞くとガーラは森に入りあぐらをかいて座り、小さな小瓶を取り出しその中の水を飲もうした時。


(やめろ……やめろ……)
亡者の様なおぞましい声が、ガーラの心に聞こえてくる、ガーラはにやりと笑い。

「弱者が」

 そう呟きまた小瓶の水を飲もうとするが、今度は黒いモヤがガーラの腕を押さえつけて、阻もうとし、またおぞましい声が聞こえてくる。
(解らないのか?お前も苦しむぞ、死の苦しみをお前も味わうのだぞ!
命すら……)
「生者はいづれ死ぬ、それに恐れはない……
死ねば、体は地に帰りガイアに抱かれる、何を恐れる必要がある?」
 ガーラとは思えない穏やかな声でその声を遮ると、黒いモヤを感じさせ無い様に一気に小瓶の聖水を飲み干した。


 その直後、ガーラは体の奥底から黒く赤い炎で焼きつくされる様な、熱い激痛、辛痛、苦痛、ありとあらゆる痛みが全身を貫いた、だがガーラは苦しみ悶えるも声を出すことなく、耐え続ける。


「これは……この魔力……なぜ?」


 エレナは感じた神聖なる大地の力を、全て生み育む偉大な力を、そしてそれがあのドルイドから放たれ近づいている。

「なぜ、これ程の者が巨人族の魔法を……」

 エレナはことの重要性を即座に判断した。
 ドルイドがセレティアの祭壇がある神殿の前まで来た時、既にドルイドはガイアの祝福表し神聖な光をまとっていた。
 エレナも祝福の力を解放し、あの美しい女神を思わせる光を放ち、神殿の扉を魔力で開け放つ。
 ドルイドはあの異様な雰囲気はなく、穏やかな顔で神殿にはいり奥へと進み、エレナが居る祭壇の間の扉に手をかけようとした時、その扉もエレナの力でひとりでに開いた。

「親切に痛みいる、話を聞いて頂けるようで、嬉しく思う我は大地の使徒ガーラ、水の巫女エレナよ。」

ドルイドは臆する事なく対等に話してくる。

 ローブのフードをとり、素顔を表すその表情は穏やかでまだ若い顔だが、髪は白髪であった、そのドルイドに対してエレナは強く厳しい口調で言う。

「貴方はそれ程の力を持ちながらなぜ!
闇の力利用したのですか⁈
何故!巨人族の魔法……魂無き心無き科学と言う魔法を求めるのですか!」



「まぁ穏やかに」
ドルイドはそう一言言うと
「貴方様の築かれた平和が崩れようとしているのです。

この二千年間、貴方様が考えた様に、貴方が成し得たエルフ族とヒューマン族の同盟は!
六百年前の第二王子アルベルト卿と貴方様の間に生まれたユリナ様のおかげでより強くなり、それは健在であります。」

「他に何があるのですか?
何が平和を脅かすのですか⁈
もしそうであるなら……
まさか災いの日……」
強い意志と共に言いながらエレナは何かを思い出した。

「ええ、災いの日が近づいています。
おそらく巨人族を追放した光の神々では無く、闇の神々が関わる災いの日が、ですが問題はそれだけでは無いのです。」
「他に?」
エレナは予想していなかった話を聞き、確かめないといけないと思い冷静に聞き返す。

「ヒューマン族の一部がオーク族にそそのかされ、巨人族の魔法を探し動いています。
それだけではなく、褐色のエルフたちも動き出しております。」
 ドルイドがそう言った時にユリナ達は神殿につき、中の様子を伺いながら弓兵を外に残して、ユリナ、カナ、カイナの三人は祭壇の間に向かった。


「悲しいことに二千年と言う平和は長すぎたと、言うべきですか……
ヒューマン族の都市では、命の重さを理解していない若者が目立つ様になりました。

何でも思い通りにしたがる者が、権力を握り、その権力で草木と話すことしか出来ない者がドルイドを名乗る者も現れました。

戦争なんて起きないと、たかをくくり騎士になる様な者も現れています。
それだけならまだしも、善悪を金の重さで計る貴族さえいる始末……
その様な者達の一部が、巨人族の魔法に目をつけ平和の均衡を崩そうとしているのです。」
そう何かを思い出すかの様に話を続ける。

「私は古い友との約束で近づいているが、まだいつ起こるか不確かな災いの日を伝えねばなりません。

ですがそれ以前に巨人族の魔法は闇の神々に対するにも必要なのか、確かめる必要もあります。

心無き魂無き科学と言う魔法。

それ故に絶望や悲しみ恐怖に囚われない力、
無慈悲であり、創造すらしてしまう。
二大神、クロノスとアインに剣を向ける程の罪さえ行わせてしまう力。
無論それが必要無い物であれば、私の力で滅し神話の中の力にでもしてしまおうと考えています。

ただ解っていることは、数万年前に恐怖の女神が率いる数万の闇の軍勢を追い払った……は事実……

その巨人族の魔法を、邪な者達に渡してはならないと言うこと、その為に巨人族の魔法を私は探しているのです」

 その話をユリナ達も聞いていた、カイナはガーラの話を疑うことしか出来なかった。
だが今のガーラは神聖な存在としている。

 エレナもヒューマンの心がエルフ族より弱く欲深い一面を持つ者が多いとは知っていた。その様な腐敗が起きているとは……予想はしていたが、若者まで命の重みを知らない者が増えているとは思ってもいなかった。

 そして巨人族の魔法がその様な者達に渡ってしまったら、そう考えたら恐怖を覚えた。
国々が争い覇権を求め出す。
 魂無き心無き科学と言う魔法は、そう言われるだけあって誰でも使えてしまうに違いない。

 今の世界は本当に強力すぎる魔法や技は巫女や使徒、それかごくごく一部のレジェンドと呼ばれる者達かその種族で最高位のエヴァスやヘブンスと言った称号を持つ者、そして闇を崇拝し神敵とされるイミニー。
 世界全体から見れば僅かな者達だけ、その為保たれてる均衡……
 闇の軍勢すら追い払った、そんな力が世界に溢れたら巫女や使徒で抑えが効かなくなる。
 そうなれば世界が終わってしまう。そうエレナは恐怖した。

 だがこの話はヒューマンの国サランだけの話だろうか……そう心配したがユリナが話に割って入る。


「その話は解りました。
ですがその話では貴方が闇の力を使ったことは説明できないと思います。

私はそちらを聞きたいのですが、話してくれますか?」
単刀直入にユリナは聞きたいことを聞き始める。


「ユリナ!ガーラは私と同等の力を持っています。下りなさい」
(ウィンダム、ちょっと借りるよ)
ウィンダムに心で囁く。
(え?え?何を?)
ウィンダムが慌てるが何を借りられるのか解らなかった。
 その時ユリナの髪があの輝くエメラルドグリーンに変わり始め淡い神聖な光がユリナから放たれ始めた。
 ユリナはウィンダムの魔力を借りたのだった。


これにはエレナもリヴァイアサンも驚いた。
(この子は本当に……
まだ使いこなしてない力でも、これはユリナの魔力じゃない……
ウィンダムの魔力を使ってる……この子にしかきっと出来ない技ね。)
その姿をガーラは驚きながら答える。
「これはユリナ様、エレナ様と並び美しいですね。ですが祝福を解放するのと力を使うことは別のこと、お忘れなく」
ユリナはキッとガーラを睨む。

「なぜ様なの?お母さんをそう呼ぶのは解りますが、私をそう呼ぶのは理解に苦しみます。
あと私が教えを請うのはお母さんだけです。」

エレナはふと思ったそう言えばさっき……
(貴方様の築かれた平和が崩れようとしている、この二千年間、貴方様が考えた様に貴方が成し得たエルフ族とヒューマン族の同盟は、六百年前の第二王子アルベルト卿と貴方様の間に生まれたユリナ様のおかげで、より強くなり、それは健在であります。)
と言った呼び方が変わった。

「私をいくつに思います?」
不意にガーラが変なことを聞いてきた。


 ヒューマンの歳は見た目でストレートにある程度判断できる。
ガーラは見た目三十歳程である……

 エルフ族は長すぎる寿命の影響でカナは約三千歳、ユリナ六百歳でも見た目カナは十八歳くらいユリナは二十歳くらいエレナは約五千歳で見た目二十五歳くらい、完全年齢不詳である。
「私は六百歳を超えましたね。」
エレナだけは即座に理解した。


「まさか闇の力は不死の為?なら……」
エレナはすぐに、ガーラの額に手を当てた。
「お母さん何を?」
ユリナが聞く。
「闇の力で不死を得たなら、闇を浄化したらその対価として、魔力を失ってるかも知れないです。
その状態で祝福の力を解放し続けたら」
エレナが慌ててガーラの魔力を探るが、ガーラは魔力を失うことなく、強い魔力を維持し続けている。

 そして、魔力と一緒にガーラの六百年の記憶がエレナに入り込んで来た。
 ガーラはアルベルト卿と知り合いであった。そして二人だけで、ある事を知りどちらかが先に死に、生き残った方がどの様な手段を使っても後に伝えると言うことを、二人で誓っていた。

 エレナは衝撃を受けた、ガーラは愛するアルベルトの親友であった……
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