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第一章〜ユニオンレグヌス〜
15話✡︎ムーシカ✡︎
しおりを挟む既に村人は騒ぎを聞きつけて、エレナのいる神殿に集まっている。
「巫女様、お救い下さい巫女様!」
村人はエレナに救いを求めているがエレナは動けなかった。ガーラに与えたある水の魔法の影響が、予想よりも大きかった。
今はユリナがウィンダムから魔力を借りて、エレナの結界を支えている。
エレナは膝をつき息を切らして、汗を流し相当疲弊している。
(浅はかだった……
まさかこんなことに……
このままじゃ祭壇を捨てても村人を守れない……ガーラさんもまだ生命の魔法と命をつなげきれていない。
結界を解けばユリナは動けるけど、この闇の魔力……
ユリナじゃまだ防げない)
エレナは必死になって方法を探る。
「伝令!ユリナ様‼︎
カナ様が隊を率いてカイナ殿の死者の騎士約三百と連携し、現在ゴブリンの小隊と交戦中!」
その報せを皆が聞いていた。
(私ってこんなに何も出来なかったんだ……私も魔力が戻りきって無い、カナさんが戦っている……
私の代わりに守ろうとしてくれてる。
私って……私って……)
ユリナは気づいたら涙を流していた。
母エレナが居てのユリナ、姉カナが居てのユリナだったと言うことに気づいたからである。
ガーラはそんな二人を見て、立ち上がり黙って祭壇の間を出ようとする。
「ガーラさん!まだ魔法の反動が……
無茶です」
エレナが止めるがガーラは落ち着いて言う。
「案ずることはない……
私はまだ死ぬ訳にはいかない、アヤ居るんだろう?一曲頼む……」
そう言うと足早に出て行き、カナ達のもとに向かった。
そしてしばらくすると、一人の白いワンピースを着た女性が仕方なく前に出てきた。
「ガーラに頼まれるなんてね、今まで何回かカイナちゃんと追ってたのに。
まぁいっか、みんな困ってるし……」
そう言うとその女性はヴァイオリンを取り出す。
「私はムーシカのアヤ、宜しくね。
ここにはセレティア湖を見に来てたんだけど、気に入って長居してたのこれも導かれたのかな?」
そう言いながら、ヴァイオリンに魔力を貯め始める。
「エレナさんに必要なのは(光の中で)だね」
「アヤさんってムーシカ……光の中で……まさか!」
エレナが辛さを忘れた様な顔で驚いたのを見てアヤはニコッと笑い、ヴァイオリンを弾き始める。
ムーシカはホーリーネクロマンサー並みに特殊な力の持ち主、戦闘は護身程度しか出来ないが、楽器を演奏して曲に魔力を乗せ、選曲によって仲間全体に様々な効果の支援魔法をかける。中でも天界を表した曲は祝福を受けた者しか弾ききれないとされている。
アヤの弾く音色は心地よく神殿の神聖さを増していく……
その音色は聞いてるだけなのに、現実世界を天界にいる様に感じさせた。
その音色はあらゆる物体をすり抜け、音が小さくなる事なく、空に巨大な魔法陣を描き出していく。
そしてアヤの髪が白銀に変わり始めた。
「ミューズの祝福……」
エレナがそう言った時エレナは身体中の疲労感が、羽毛の様に軽くなり消えて行くのを感じ、ネックレスの竜魔石が輝き出す。それはエレナの魔力が急速に回復している証であった。
その効果は無論ユリナにもあり、ユリナの魔力も回復していく。
その穏やかな音色は、その場にいた全ての人々の不安と恐怖を取り除いた。
全ての人々が神聖な光に包まれてるように感じ、慈悲、慈愛、豊穣、多くの神々の恩恵を感じさせる曲だった。
神聖な美しさ、奏でる優しい音色、そして曲が終盤に差し掛かり、カナが舞う時と同じ様に地面から小さな光の玉が、生まれ昇り消えていき、アヤの神秘的であり幻想的な美しさがピークに達して曲は終わりを迎えた。
エレナはアヤの姿を見て一見ヒューマンに見えるが、ヒューマンではない事に気づく、
その違いはアヤがショートカットだったから気づいた。アヤは母親が人間だったのだろう、人間よりのハーフエルフだった。
アヤはヴァイオリンの弓をエレナに向け、円を描いて、魔力がどの位戻ったかを把握する。
「本当に巫女様大丈夫?私の曲で半分くらい戻ったのコレ?」
そうアヤが言う。
エレナはアヤの手を握りアヤの瞳を見つめ魔力の強さを確かめる、それを知らないアヤはビックリしてドキッとした。
(いや私そう言う趣味無い……けど巫女様って結構可愛い……)
内心そう思った所で、エレナはアヤが祝福の力を使いこなしているのを判断した瞬間、アヤの手を引いて走り出す。
「ちょっと巫女様~私は女の子ですよーー‼︎」
アヤは戸惑いながら叫んでいる。
その姿を見てユリナは思った。
(お母さん……また……何かする前にちゃんと言おうよ)
それは自分の非力さを忘れるほど、二人の姿がおかしなものだった。
(あれは昔からだね……)
ウィンダムも困っていた。その訳は単純に……
「巫女様はそう言う方だったんだのぉ……神に使える方はわからん」
村人達に誤解をあっさり招いたからで、ユリナはそれ解くのに苦労する。
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