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第二章〜記憶の石板〜
27話✡︎アルベルトの幸せ✡︎
しおりを挟む「お父さん、来るの遅いよ!」
ユリナがアルベルトに抱きついて言う、アルベルトは笑顔で天井を見ながら言う。
「見てごらん天井を……
ユリナの魔法のであの模様が傷ついたおかげだよ。」
ユリナとカナが天井を見ると、綺麗な装飾の模様が激しく削られている。
「あの模様が?」
カナが聞く。
「あぁ、あれは神の魔力を遮断してしまう模様、どうやって巨人族が作り出したのかは解らないが禁術になっている一つだ。
あれの力で私は出てこれなかった……
ユリナの勇気が奇跡を生み出したんだ。
本当によくやったねユリナ。」
アルベルトがそう言うと模様がゆっくりと再生しているのが解り、ユリナとカナは不気味さを感じる。
「大丈夫、何も怖くない記憶の番人も血の王には困って居たんだろう?
あれを守っていた魔法が解かれている。
なぁそうだろう?」
アルベルトはそう言い入り口を見る。
ユリナもカナも入り口に目をやると、入り口の暗闇の中から二体のスケルトンが、コツコツと言うあの足音を立て歩いて来た。
だがそのスケルトンからは不思議と悍ましさや恐怖は感じられない。
それでもカナはヒィと言う顔をして、ユリナに抱きつく。
アルベルトはそんなカナを笑いながら言う。
「大丈夫だよカナ彼らは記憶の番人、敵ではない。
番人よ!久しぶりだな!
血の王は追い払ってやったんだ別に試練は良いだろ?」
アルベルトが番人に叫ぶと、二体のスケルトンは顔を見合わせ頷き、光り輝きだしユリナの声で言う。
「アルベルトさん、お久しぶりですね。お元気ですか?」
そう言うと光は収まり、二体のスケルトンはユリナとカナの姿になっていた、ドッペルゲンガーだ。
ただ服装は二人とも妖艶な魅力を漂わせる漆黒の闇の法衣を着ている。
ユリナもカナも目をまん丸にして驚き、その姿がとても大人の色を見せていて、少し恥ずかしくなるが、それに御構い無しにアルベルトは言う。
「これを見て元気に見えるか?」
アルベルトは笑いながら言い死者をアピールする。
「生きてた時より元気そうですが……」
カナの番人が言うとユリナとカナが笑い出す。
「あーなるほど、その若さで死んで良かったってことですね。」
ユリナの番人が言うと、ユリナとカナは顔を見合わせ、アルベルトは二人の娘の頭を撫でながら言う。
「そうだ、私はヒューマン、長くても百歳までしか生きれない……
そこまで生きても、歩くこともままならないかも知れない、こんな可愛い娘が二人も居るのに。
その時に人生で最高の時を迎えれば、死者としても老人になってしまう。
全てはカイナと言うホーリーネクロマンサーが私の召喚に初めて成功してくれたおかげで、こうして若い私のまま可愛い娘達と会える。
間違っているかも知れない……
だがエレナを私が愛した時から、私が長く生きられない事を心配していたが今は気にしなくていい……
カイナをユリナ達に導くには悩んだが、今は幸せだ……」
アルベルトは死者になる事で、永遠とも言える、エルフ族の寿命を持つエレナの側で同じ時を過ごせる事に気付いた。
だが、それは本当に強い愛と想いが無いと叶わないことである、それをユリナとカナは気付き嬉しくなった。
「さて、試練は必要無いですね。
血の王には私達も本当に困っていました。
この記憶の棚を救って下さった礼として、記憶の間にご案内しましょう。」
カナの番人がそう言うと、ゆっくりと歩き出し、ユリナ達を奥の通路に案内する。
「そう言えばさっき、ガーラさんの力を感じましたが、ガーラさんもお元気そうですね。」
ユリナの番人がそう言う。
「血の王はきっとガーラに散々に馬鹿にされて、遊ばれたんだろうな……少し哀れに思える……」
アルベルトがそう言う。
「え、本当はそんなに強くないの?私達は……」
ユリナが恐怖を思い出しながら聞いてくる。
「血の王は王であって神ではない、私もそうだが、ガーラやエレナの様に祝福の力を使いこなせる者にとっては、対等に戦える場所なら相手ではない。
だが……
この場所は魔法が制限されすぎている。
つまり神の魔力を借りる祝福が通用しない……
だからこの場所ではヤツの再生能力が本当に強すぎるんだ」
アルベルト難しい顔をしながら答える。
「……巨人族は何を考えてそんな空間を作り出したんでしょう。」
カナが考えながら言う。
「神々との戦いに勝つ為……
そうとしか考えられない、神々は魔力の塊と言っても言い過ぎじゃないくらい、魔力が強すぎるから、魔力を遮ろうと考えたんじゃないかな?」
ユリナが考えながら言うと、ユリナの番人が笑顔で言う。
「なかなか冴えますね、答えは全てあちらにあります。
巨人族の栄華から衰退、追放そして繁栄まで、ただ一度に調べられるのは一つまでです。
良く考えてから見て下さいね。」
その頃エレナは、何かの気配を感じて走りだした、かなり近くだが人気の無い王立図書館の裏手の路地に入り、足を止めクリスタルの小太刀を抜き、一振り闇を切る様に振った。
「……」
その闇から髑髏の仮面が現れ、少女が姿を表す。
「ネクロマンサー……なんで手を貸してくれたの?」
エレナが刃を向けたまま聞いた。
ネクロマンサーはイミニー、神の敵対者であり巫女のエレナからすれば倒すべき敵である……
「……」
ネクロマンサーは応えない。
「あなた……神を憎んでないの?」
エレナが聞く。
ネクロマンサーの少女はエレナに殺気が無いのを読み取り、仮面の下で口だけを動かした。
(私は神を憎んでいます……ですが……
死の女神ムエルテ様は……
地上が滅ぶことを望んではいません。)
そうエレナの頭に文が浮かんで、エレナは驚いた時、ネクロマンサーは闇を生み出し去ろうとした。
「待ちなさい!
それはどう言うこと‼︎」
エレナは引き止め聞こうとしたが、ネクロマンサーは闇に溶け込み消えていってしまった。
エレナはネクロマンサーの言葉を信じられ無かった、それは死の女神ムエルテは冥界の支配者であり、冥界は地上世界に何度か滅ぼそうと攻めて来た古い歴史があるからだ……
それはエレナが生まれるよりも遥か昔の歴史である……
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