✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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第三章〜戦士の国アグド〜

64話✡︎オーバーロード・ダンガード✡︎

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「ベルガル!」
エレナはベルガルを呼んだ、ベルガル黙ってエレナの元に来た。

「ベルガル、あなたが王になりなさい」
 エレナが突然ベルガルに伝えた、ユリナもカナも隊長達も驚いたが、エレナはシェラド達に聞こえない様に説明した。

 ベルガルは少し考えたが納得してくれた、そしてそのベルガルをウィンダムとリヴァイアサンが見つめる。
 欲が産まれてないかを確かめているのだ。
(大丈夫、こいつは思ったより名君なるかも知れないぞ)
そうリヴァイアサンがエレナに伝えエレナはホッとする。


二人は激しく戦っている。
(ウィースガルムよ、かつてお前以外の相手で、これだけ打ち合えた奴は居なかったな……

そしてこいつは王になるべきでは無い……
残念だが……
王と同じくらい大切な役目を持っている。

わしも老いたな……)
ダンガードは激しく打ち合いながら、心で囁いていた。


(ダンガード様、貴方の最後のお力でベルガルを王にして下さい。)
 シェラドがヴァラドを通して、ダンガードの心に話しかけて来た。
(私に王は向きません!
ですがベルガルなら!
彼はウィースガルム様に長く仕えウィースガルム様の意志を継ぐ事が出来る者です‼︎)
シェラドがそう続ける。


「この愚か者が‼︎」
ダンガードはそう叫ぶ。

シェラドの斬馬刀を弾かずに受け止める。
「一度しかやらんよく見ておけ!」
 そうシェラドに言うと、今まで遊んでいたのかと思う程の力で、シェラドを押し返したダンガードは下から上に切り上げる。


 だが一瞬、ダンガードの刃が揺らめいた様にシェラドが見えた瞬間!
 ダンガードの斬馬刀は上から振り下ろし、シェラドの肩を確実に捉えて寸止めしたが……勢いあまり僅かにシェラドの肩に触れ、僅かに血が垂れる。

「わしは老いたな……
僅かに狂ったか」
ダンガードが寸止め出来なかった事を、言っているが…


 誰もが目を疑った、誰もが下から上に切り上げた刃しか見えなかった。
だがシェラドが負けた事実がいきなり目の前に現れた。
 祝福の力を使わず戦士として挑み、シェラドは敗れたのだ。


「シェラドよ、そして水の巫女よお前達は祝福の力に頼り過ぎている。
言ってる事が解るであろう……

我が振るう偽りの劔それを見抜けたのはユリナ殿だけでだろう……」
ダンガードはそう言う。

「風の精霊……」
ユリナが驚きながら呟いた……
 風の女神の祝福を持つユリナだけには見えていた、彼を取り巻く小さな風の精霊達がユリナには見えていた。

 ダンガードは全ての攻撃に速さを求めた、純真に子供の様に、その心は激しく厳しい修練の中でも変わる事なく邪な心が芽生えず、ひたすらに求め続けた。

 それ故に風の精霊がいつしか彼を取り巻く様になった、速さを極めようとし達人の域を超えダンガードは風の精霊を友とした。
 速さでは無く力を追い求めたウィースガルム無き今、最強のオークの戦士の姿がそこにあった。


「祝福の力は確かに強大で責任が問われる……

だからそなた達はそれに頼ろうとしない、それは正しいと余は思う……
だが……綺麗事だけで国は纏まっても世界は纏まらない……」
ダンガードは正に長老の様に語る。


「それでもそなたらがユニオンレグヌスを、神々に見せても恥ずかしく無い、美しい物にしたければ……
己を磨き続ける事を忘れるな!」
「な…何故それを」
 エレナが驚く、ダンガードが知るはずないからだ……


「わしを誰だと思っているのだ?
オーバーロード・ダンガードだぞ」
 そう言いながら首から下げてる大きなクリスタルを取り出し、エレナ達に見せる

 そのクリスタルの中には炎が揺らめいていた……オーク族の最強の証オーバーロードの証である。

 その瞬間エレナは思い出した。

 三千年前に学びだした時の事を、あの時誰よりも努力し続けた。
 戦術も戦略も剣や弓、経済まで学ぼうとした。
 だが……ユリナが産まれてから、いや……サランとの同盟が成立してから、学ぼうとしなくなり、平和な時代に羽を休めていた。

 そしてその時からエレナの剣も弓もそのままであり言わば止まっている。
 ダンガードは老齢でも日々の鍛錬を怠らず、今でも己と戦い磨き続けている。

 エレナがベルガルに敗北したのは日々鍛錬している彼に負けたのだ……
決して祝福の力を使わなかったからでは無い、エレナがこの平和な時代に学ぶこと、鍛錬する事を疎かにしていた結果だとダンガードに気付かされた。


「この先、そなた達の前に祝福の力を使わずに勝たねばならぬ者達が現れよう……
それを自らの力だけで、乗り越えなければならぬ……

そなた達が神の力に頼り続ければ、必ずそなた達の想いは届かぬ、知っているであろう巨人族の教えを?


奇跡を信じるのではなく、目の前の真実を見つめよ、
奇跡は求めるものではなく、信じるものでもない
自ら生み出すものだから


良く学ぶが良い……」


そうダンガードが言うと深く深呼吸をして叫ぶ!
「ベルガル!ベルガルよ前に出よ‼︎」
ベルガルが驚きながら前に出る。

 ダンガードは腰にぶら下げている小さな袋からネックレスを取り出し、ベルガルに投げ渡す。

 そのネックレスには水晶がついていて、中には炎が揺らめいている。
オーク族の王の証である。

「これは…王の証……何故これを‼︎」
ベルガルが驚き叫ぶ様に聞く。

「それはな……
ウィースガルムがわしに預けたのだ……
奴は敗北を察したのであろう。
それでわしに預けに来たんだ……

その巻物と一緒にな……
王の証を守る為に、そして自らが描いた夢を守る為に!
ベルガルその意味を解るか?」



ベルガルは汗を一筋流す。
「このオーバーロード・ダンガードの名において、今この時より……
ベルガルを王とする‼︎
異論のある者はわしと剣で語るが良い‼︎」
ダンガードがそう叫ぶと一斉に歓声が上がる!



 今の戦いを見て、ダンガードに挑もうとする者は誰も居るはずがない、そして多くの者がこの反乱の終結を見て納得した。


 そしてノウムの月をエレナが見上げるが、まだ輝きを取り戻さない。

「まだ……居るな……」
 カイナが呟いた、えっと言う顔でユリナがカイナを見る。



 皆が争い王が定められた、そのバータリスの広場脇の街並みの暗い路地、その暗闇にそれは潜んでいた。


そしてその正体が姿を現し始める。

「五長老どもめ……役立たずが……」
暗闇の中からダンガードの声がする、エレナもユリナもその場の全ての者が動揺し武器を持ち身構える。


「まっまさか……」
ピリアが声を漏らし意識を強く持ち、ダンガードの前に出て叫ぶ!
「下がれ!我が一族の者よ‼︎なぜアグドに災いをもたらす⁈」


「ほう…ドッペルか我が一族の者がなぜアグドを庇う?」
 やはりダンガードの姿をしたドッペルであった……だが、ウィースガルムに化けたドッペルとは違い真紅の瞳をしている。


 闇の眷属で赤い瞳はゴブリンだけ……それ以外で姿を変えた者の瞳と違い赤い瞳をしているのは、闇を裏切り冥界に落ちた者の証……


「なぜ?…」
ピリアがその質問に疑問を持つ、ダンガードのドッペルが言う。
「アグドは我らの同胞ゴブリン達を攻め続けている!
オーク供は我ら闇の眷属の敵ではないか‼︎」
ピリアが怒りを現し叫ぶ!
「お前もオプス様の言葉を忘れたのか⁉︎
ドッペルなら聞いてる筈だ!
愛を忘れるなと!聞いてる筈だ‼︎」


 ピリアは戦いたい気持ちで溢れた……だがこのドッペルはダンガードと魂を繋いでいる、傷を与えればダンガードが傷つく。
 オプスの姿になろとしても、怒りで心が溢れたせいかオプスになる事も出来ない……

「可愛い勇者よ下がるが良い」

そう言いダンガードが前に出る。
「だめ!ダンガードさん!あいつは……」
ピリアが引き留めるが、それにダンガードは優しい笑顔で答え前に出る、それは我が娘を見るような優しい笑顔であった。


「ドッペルよ我が一族に恨みがあるのは解った……

今後はクリタスのゴブリン達と話し合うことを約束しよう。
それで引いてくれぬか?」
ダンガードがそう言う。

 ドッペルは聞く耳を持たずに斬馬刀を抜きダンガードに斬りかかる!
 ダンガードは素早くそれを斬馬刀で弾きタックルを入れて距離を取り、腰にかけていた太刀を抜く……

「聞く耳持たぬか……
皆見ておけ‼︎愚かなドッペルの苦しむ姿を‼︎」
そうダンガードが言うと、その太刀を自らの腕に突き刺した!

ダンガードの赤い血が勢いよく流れ出す!


「グギャーー‼︎」
ドッペルは尋常ではない悲鳴を上げた!

 ドッペルは相手と魂を繋ぐ、その為に生きようとする者の痛みは僅かしか感じないが、逆に死のうとする者の痛みはその本人の数十倍の痛みを受ける。
 その為に自傷行為をされたら、その苦痛は凄まじい物があり、たまったものではない。

 その痛みに耐えきれず、ドッペルは魂の繋がりを自ら断ち切る。

次の瞬間!
「貴様が我に成り代るなど千年速いわ‼︎」
そうダンガードが叫び、太刀を腕に刺したまま斬馬刀を両手で渾身の力で振り下ろし、ドッペルを両断した。

 そして太刀を抜き、腰の鞘におさめ歓声があがる。
 エレナは魂の断ち切り方は知っているがダンガードのやり方は、強引過ぎて圧倒されていた。


 ピリアはダンガードの前で、ひれ伏し涙を流し頭を下げて詫びの言葉を必死に探していた。
 ウィースガルムに続きダンガードまでドッペルが狙ったのだ。
 もうどう謝っていいのか解らなかった……

 立場が無い……

 どうしようもない孤独感がピリアを襲っていた。


 エレナがピリアの横に同じ様にそっと静かにひれ伏した……
ピリアは驚く、だがそれに続いてユリナとカナが続きアヤとカイナが続いてひれ伏した……

「エレナさん、みんななんで……」
「静かに、みんなの気持ちだから……」
エレナが囁く。

 ピリアは感じた、立場がなくなった訳では無い、みんなが居てくれる。
 種族なんて関係ない、苦しみを分かち合おうとしてくれる仲間がいることを、ピリアは思い出した。



「ベルガル!王よこの者達を責めるか⁈」
ダンガードが叫び聞く。

「ピリアがしたことでは無い……

我らにも非が有るはずだ‼︎
よって罪は無い!」
そうベルガルが悩まず叫ぶ。



その場に居た全てのオーク達が、歓声を上げた、長老院側もシェラドの兵も、全てのオーク達が一つになり声を上げた!

 数千年ぶりにオーク達が一つにまとまり声を上げた、一つの許すと言う神聖な行いの元に一族が纏まったのだ。


 そして誰もが気付かぬ内に……ノウムの月は輝きを取り戻していた。
 美しく美しく二つの月が彼らを見守っているようであった。



 その頃クリタス山脈にある、ゴブリンの地下都市トールからゴブリンの軍、一個師団が見事にオーク達の目を盗み静かに動き出していた……
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