✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜アブソルートゥス〜

4話✡︎産まれた愛✡︎

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 その翌日サイス周辺に検問を張った事が功をそうし始める、難を逃れた大臣の何名かが検問で追い返される。
 
「一兵士が何様のつもりだ」
 大臣達が叫ぶ、だがシンシル直筆の命令書の前にどうする事も出来ない。
 だが不満を抱く大臣達は王宮と対立を考え始める。

 その知らせはシンシルにいち早く届くが、シンシルは葛藤する。
 力に対し力で対抗しては歴史を繰り返してしまう……そう悩んでいた。
 そこにサランからの使いが来た……シンシルは会見する前に、機転を利かしエルド宮で会見する事になった。

 エルド宮に、エルド宮と王宮の大臣が集められた。
 たかが使いにそれだけの大臣を集めたのは異例の事だ、エルド宮の大臣達はシンシルの意図が読めず困惑しながらも集まる。


 そして会見が始まる。

「まさか使いの私如きにこの様な計らい、誠に恐縮の至り……」
 使いはアルベルトの使いであったが、緊張しすぎて正に硬直している。

「硬い挨拶は良い、何用かはよう申せ」
シンシルは穏やかに話す。

「ではお伝え致します。
我が主人、サラン王国第二王子アルベルト様からのお言葉をお伝え致します。

 訳あってサイスに滞在しており、弓兵師団の検問有り難く、お受け致します。
おかげで権力から離れセレスの美しい自然を堪能し、水の巫女様ともお会い出来、幸福の至り深くお礼を申し上げます。

とのこと確かにお伝え致しました」


 それを聞いたエルド宮の大臣達は驚いた……
 その言葉はサイスの検問はセレスの王権だけでなく、サラン王国の王権までもが関わった……それを否定する事は簡単に国家間の問題に発展する。
 そして第二王子アルベルトとエレナが今、近い存在になりつつある事も、遠回しに言っている……

 アルベルトはエレナと剣を交えて、エレナの悩みを深くでは無いが理解し……直ぐに早馬を飛ばし考えうる良い手を一手打ったのだ。
 アルベルトに欲は無い、エレナに対して邪な気持ちは抱かず、ただエレナが持つ本当の力を戻してあげたかっただけである……

 そしてシンシルはその言葉に救われた。
その言葉は大臣達に対してエレナは手が届かない存在であると、王族であると言う事を知らしめた。
 セレスでは無く同盟国サラン王国が言ったのと同然の意味があった。
 アルベルトの打った一手は絶妙な一手であり如何様にも受け取れ大臣達の邪な野心を見事に封じた。

「はははっ、礼は良い、気に入ったのなら暫くサランに連れてやっても良いぞ、サラン王国との良縁であればそれも良かろう」
 シンシルはアルベルトの使いにそう言うと流石に大臣達が慌てた。

「シンシル様!エレナ様はエヴァスであり我が国の英雄でありますぞ!
不在の間にアグドが攻めてきましたら何としますか⁈」
そう強く言うがシンシルは動じずに言う。

「そなた達が悪いのであろう?
そう思うなら国の為によう働けば良かろう?」
 シンシルはそう笑いながら言うと、大臣達はそれ以上言えなくなってしまう。
 王宮の大臣の一人コールスが笑い始める。
 エルド宮の大臣達はその笑い声に救われ、それに便乗して多くの大臣が笑い会見の場は一見すると和やかな空気だが、多少のぎこちなさを醸しだしていた。


 その時、記憶の間でミーシュとミーシェは驚く物を目にする。
 それは王家の棚の石板と岐路の棚の石板の霧が晴れていったのだ。
 その霧が石板に吸い込まれて仕舞えば、その石板と同じことが繰り返される、だが霧が晴れたと言うことは、それが回避された事を意味し二人はほっと息をついた。



 その様な事がエルド宮で起きてるとは知らず、エレナはカナを連れてアルベルトが泊まっている宿に向かった。
 アルベルトは宿に居なかった、セレティア湖に居るらしく、二人はそこに向かった。

 宿の主人がタオルを手渡してくれた、二人は?と思いながらセレティア湖に向かう。

 アルベルトは泳いでいた、遠目で見てもその鍛えられているのが良く解り、エルフから見て短命なヒューマンにしてはあれだけの剣が使える、毎日修練をしているのが容易に想像出来た。

「……」

 エレナが何かを囁いた。するとセレティア湖が激しく波打ちだし、アルベルトは必死に泳いでいる。
 アルベルトはおかしい!と感じ岸を見るとエレナとカナが目に入った。

「ウオォォー!」

アルベルトは全力で泳ぎ死力を尽くして岸に向かう!

「……」

 エレナがまた囁くと今度は渦が出来て、アルベルトは必死に抵抗する!
「ウオォォォ……」
「お母様……ちょっとやり過ぎでは?」
「いい修練になるかと思って」
エレナは微笑んで言う。
(お母様ってそう言う人だったのですか⁈)
 カナはエレナのもう一つの姿を知るが、まだ少し病んでいるのだと心に言い聞かせる。


「おまえらぁぁぁぁ!」
アルベルトはそう叫び渦に飲まれて行った……


 あれ?こんなものなのと言う顔でエレナは湖畔を見つめる、カナは汗をかきながら笑顔で湖畔を見つめる。

 そして暫くして、バシャ!と言う音を立てて勢い良くアルベルトが岸に立ち上がり。
「貴様らぁーー‼︎」
アルベルトは殺気を込めてそう叫ぶがそれと同時に、エレナとカナは赤面する……
下が脱げていたのだ……そして次の瞬間!

「キャァァァァァ‼︎‼︎」

 二人の美女の叫び声が響き渡り、エレナが手をかざすと大波が起こり、アルベルトを一瞬で飲み込んだ……

「ウアァァァァーー‼︎」
アルベルトは悲鳴を上げてセレティア湖に引きずり込まれて行った。

 エレナとカナは顔を抑えて走り去る、程なくしてアルベルトは浮き上がり……

「もう二度と泳がん……」
 そう空を見つめて呟くサラン王国の第二王子がそこに居た。


 その後、護衛達が湖畔に浮かぶアルベルトを見つけ、何故下着を身につけていないのかを尋ねるが……アルベルトは答えなかった。


 翌日、アルベルトは湖畔を恐れたのか、少し離れた場所で剣を振っていた。
 サイスの方からエレナ達が近づいて来るのが見えた……アルベルトは剣を鞘に収め距離を取ろうと、気付かぬふりをして走り出す。

 エレナは左手の人差し指にはめている魔法輪から弓を出し、そのまま無駄な動き一つなく、弓を引くと同時に矢をつがえていた。

 英雄と言うだけあり、矢をつがえるのと弓を引く動作を一緒に行いアルベルトの足元でなく、後ろから急所を狙い矢を放った!

(!殺気‼︎)
 アルベルトは一瞬で判断し、振り向きながら剣で矢を払いのける!
 その矢は、エレナが放った矢は凄まじく速かった……

 振り向いた先にはエレナとカナが居た、もう気付かないフリは出来ない……
 エレナが笑顔で手を振っている、カナは汗をかきながら笑顔である。

 アルベルトも昨日の一件があり、このセレティア湖の近い場所であからさまに走って逃げれば、何が起きるか解らない……

「エレナ殿、私に何か恨みでもあるのですか?」
 アルベルトはエレナのリヴァイアサンが止めないために悪気は無いと判断しているが限界を感じる。

「え?そんなことは無いですよ。
私から逃げようとしたので引き止めたのです。」

 引き止め方に問題があるのは明白だ……だがエレナはアルベルトに話を聞いて欲しかったのだ……
エレナはアルベルトに何でも話せる気がして居た。

「カナ、神殿に戻ってていいわよ、二人にしてくれる?」
 カナはそれを聞き、アルベルトを色んな意味で信頼しその場を去る。

 エレナは湖畔に座りアルベルトを誘う、仕方なくアルベルトが座ると、エレナは祝福を授かってからの事を打ち明け話し出した。

 アルベルトはエレナの話を聞いて悩みが自分と同じだと言う事を更に理解した。
 そして暫く静かな時が流れエレナが涙を流しながら語りだす。


「私は解らないの……
カナと出会って騒乱の時代を終わらせる事に頑張ったけど……
祝福を授かってから……
私の幸せが奪われていった……
あの時代の時の方が、私らしく居れた気がするの……

ここに来る前に私が死のうとした時カナが止めてくれたけど、私もうどうしていいのか解らないのよ……」

 エレナは泣いていた……大粒の涙を流して、アルベルトもそれを聞いてカナがエレナの側から離れないのを理解した。
 そして今カナが離れたことはエレナを任された事だと気付く……


「剣を信じればいい……
俺も似た様なもんだが剣は裏切らない……
物かも知れないが、剣を振っていると迷いがあっても……
俺が信じた道に引き戻し教えてくれる……

王族で英雄、そしてヘブンスまで手に入れると時期国王に上げられてな、めんど臭くて仕方ない……

今じゃ俺の本当の友は一人しか居ない……
どこで誰と会っても、あいつ以外は本当の事を話しやしない……

そんな時にな俺は剣を振って使命を心に刻み続けているんだ……
祝福を持つヘブンスとしてな。

寂しい奴なんだ俺は……
上り詰めると言うのは、寂しくなるって意味なんだ……
皮肉なものだ……」

 エレナはそれを聞きアルベルトが、本当に理解してくれてると思った。
 そしてこの世界で私の孤独を、本当に解ってくれる唯一の存在だと信じた、そして胸の奥が熱くなるのを感じる。


だがアルベルトは……
「悪いが俺はお前を、最後まで守ってやれない、ヒューマンだからな後百年も生きられない……
それは解ってくれるな」

 エレナは産まれて初めて突き放された、今までこの状況になる以前から王族であり、美しさと愛らしさを兼ね揃えたエレナはどこに行っても暖かく迎えられていた。
 その衝撃はエレナにとっては、とてつもない物だった。
 エレナの胸の奥の熱さが確かな物になり身体中に広まって行った。


 愛が産まれたのだ……


 エレナはなぜか解らないが思わず抱きついて叫んだ……


「百年でもいい!

どんなに短くてもいい‼︎‼︎

私のそばに居て!

お願いだから……

お願いだから‼︎‼︎

アルベルトが!アルベルトが!
生きている間に沢山沢山の思い出を作って……

あなたの子供も産んで大切に大切にするから‼︎

たった百年でも……

綺麗な綺麗な思い出を沢山作って!
絶対に忘れない‼︎‼︎

本当に綺麗な1ページにするから!
お願いだから……
私のそばにいて……お願いだから……」


 エルフ族は何も無ければ三万年程生きる……
 だがその中で一生に一度一人しか本当に愛せない、アルベルトはヒューマンで長くて百年程しか生きられない……
 この愛はアルベルトにとっても、エレナにとっても最後は苦しい愛になり兼ねない……


 だがエレナは全て覚悟していた。それだけアルベルトを深く愛していた……
 もう引き返せない自分に気付いていた、エレナの涙は先程よりも多く溢れ出すように流れ、英雄では無く一人の少女がそこにいた……

 アルベルトも解っていた、故郷サランの女達とは違いエレナは本当に愛してくれていることを、深く理解していた……
 エルフとヒューマンの愛は受命の違いがあり過ぎる、それがアルベルトを強く引き止めていた。



 しばらく辺りにはエレナのシクシクとした泣き声だけが静かに響く……
 既に夕暮れになりセレティア湖はオレンジ色に輝いていた。


「みじかく僅かな時だぞ……」
アルベルトが囁きエレナが静かに頷く……

 アルベルトの胸に顔を埋めて泣くエレナの顎に指を当て、顔を優しくあげさせ静かに優しくキスをした、最初は優しく唇を交わらせる。
 エレナは瞳を一瞬見開き静かにまた瞳をとじて全てを委ねる……


 その口付けはしだいに深いものに変わり、舌を絡め合いほとばしる程に熱くそして長く続いた……

 二人は抱きしめ合い、そのまま倒れこむ様に横になる。
「俺の命をくれてやる、だから自分を忘れるな、いつまでも……俺が居なくなった後も……お前らしくいろよ」
「ありがとう……ありがとう……」
エレナは感情的になり強く強く抱きしめる。

 日が沈み辺りが暗くなり始める、今宵の星々は二人の愛を邪魔しない様に気を使っているのか、星が中々顔をださない……

程なくしてエレナが夜空を見上げ。
「やっと見つけたよ、一番星」
「あぁ……エレナにとって、俺はあの星だったのかもな」

「??」

「エレナが真っ暗な世界にいたから……
俺を見つけることが出来た。

暗闇が無ければ光は輝かない……
エレナが暗闇にいたから俺と出会えたんだ」

 アルベルトがそう言うと不思議と夜空の星々が顔を出しはじめ、美しい銀世界の様に輝き出した。
 エレナが最初に見つけた星が解らなくなってしまった、だが最高に美しい夜空が二人を祝福している様で二人は肩を寄せ合い静かに眺めていた。

 エレナは最初に見つけた星を探すが解らない様だ、そしてアルベルトが言った言葉を深く理解して今までの辛かった日々が、全てこの出会いのためにあったのだと心から想った……


「どうしたもう探さないのか?」
「うん、だって……
すぐそばに居るんだもん」

そうエレナは言いアルベルトに可愛くキスをする。

「もう溺れさせないでくれよ本当に死ぬかと思ったんだからな」
「えーどうしようかなぁ」


 二人を心配して様子を見に来たカナは、二人が仲良くしているのを遠くから夜目を聞かせて見つけ、邪魔しないように笑顔で神殿戻って行き、兵達に二人がいる方には見張りに行かない様に指示をだしていた。


 

「どうした?エレナ」
 アルベルトがトールとオプスの二人を見つめるエレナが美しく思え、声をかけて来た。

「ううん……オプス様にもちゃんと一番星が来てくれたんだな……って思えたのよ」
エレナが言う。

「ふっ……懐かしいな……
久しぶりに今夜はゆっくりしようか……」
「えぇ……」

 アルベルトがエレナの腰に手を当て、抱き寄せながらエルフの野営地に戻って行った。




~アブソルートゥス~ 完
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