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〜第四章 変わりゆく時代〜
72話✡︎上り詰めた者✡︎
しおりを挟むその二日前、トールとオプスは天界のアインの屋敷に居た。
あの戦いの後ゴブリンの陣に行き、エレナ達の元には戻らず。
翌日には天界に行き、クロノスとアイン、そして全ての六大神に戻って来た事を伝えに、そして心配をかけた事を詫びに行ったのである。
トールは相変わらずの態度で神々に頭を下げようとしない。
「トール……お母様とお父様にはお辞儀くらいしてよ……」
そうオプスが言うと、流石のトールも仕方なくお辞儀する。
それを見てウィンディアは微笑みながら言う。
「ありがとうトール、あなたは私との約束を果たし、お姉様を救って下さいましたね。
これでまた天界にも地上にも六つの星が輝きます」
「そなたの神はオプスだけか、それでも良いだが約束してくれ……
何かあれば、オプスを必ず守ってやってくれ」
そうクロノスがトールに伝える。
「言われなくとも、守って見せる」
そうトールはクロノスに言い放つ。
それを聞きクロノスは微笑みながら言う。
「トールよ、ここに来る前にオプスと美しい愛の花を咲かせて来たのだろう?
我々もお前達二人は認めている。
祝って欲しければ、言葉を選べ」
クロノスの声には既に家族の様な温もりと穏やかさ、そして全てを見通している……
闇の女神オプスの両親の威厳をトールに感じさせた。
オプスもそこまで言われて流石に恥ずかしくなる。
(バカ……)
心で呟きトールもその声を暗黒を通して聞き慌ててトールは礼儀を正した。
「以後、正していきますのでお許しを……」
そう言うとアインも含め、他の神々も声に出して笑った。
「オプス、トールは十万年前も、父親にしか頭を下げませんでした。
風の女神ウィンディアにすら礼を取らなかったのです。
あなたの声には耳を傾けてくれますから、よく教えてあげなさい」
アインも暖かくそう言う。
「はい、お母様申し訳ありません」
オプスが頭を下げる。
だがトールのその態度は、逆に神々に気に入られていた。
普通の者なら、最高神と言える創世二大神を前に頭を下げ続け、機嫌を伺う様な話し方をする、最上位の存在であるクロノスとアインはそれに時折寂しさを感じる。
だがトールは一切その様な態度は取らず、対等に話をしようとする。クロノスもアインもその寂しさを全く感じなかった。
そしてオプスの言葉に対しては慌てる様子も伺える……
トールがいかにオプスを想っているのかも容易に解り可愛らしく思えた。
オプスはトールと共に天界で募る話と、救い出された喜びを神々と分かち合い四日間過ごしていた。
ウィンディアはトールとオプスの仲を見つめていた。
(やっぱり私はお姉様に敵わないですね、お似合い過ぎですよ、二人とも……)
そう心の中で呟いていた。
そして地上では、エレナ達がベルリス温泉で準備を始めて三日目ほぼ支度は整っていた。
エルミダスの部隊が参加してくれたおかげで十分な支度は出来た。
後は細かな所を修正してより完璧に整える。
エルミダスも、次々にエレナが出す指示に驚く、カナは手際よくこなしユリナも手伝い作業は進んで行く。
エレナの屋敷にシンシルが来た時も屋敷は完璧に整えられていた。
エレナはそう言ったことは完璧主義なのかも知れない……
そして翌日に、ゴブリンの一行が来る日にユリナが何かに気付いた。
一頭の馬が、こちらに向かってくる、トールとオプスが帰って来たのだ。
「トールとオプス様が帰って来たよ!」
ユリナが叫ぶ、実に五日……トール達が天界に居たのは四日だが、ユリナから離れて五日間、まだ遠くに居る二人をユリナは目を凝らして見ると、仲が良いのがよく解る……
しばらくして二人はユリナの元に来た。
「悪いなユリナ、天界まで行って来た。」
「天界?二人で式でも挙げる挨拶?」
ユリナが白い目で聞く。
オプスがクスクス笑いながら。
「似たようなものです。
最初は私が助かった事を知らせに行ったのですが、そんな流れになりましたね。
何故ここに皆さん居るのですか?」
と逆に聞いて来た。
そこにエレナが事の次第を説明しはじめてしばらくすると、ふっとピリアが現れひざまづいて丁寧に話しに割り込んで来た。
「オプス様、ドッペルのピリアです。
ご無事でなにより……」
ピリアは挨拶をするが、嬉しすぎて言葉が想い浮かばない、そのピリアにオプスは誰?と言う顔をして、ピリアに向けて手を優しくかざすと……
ピリアの額に漆黒の霧が現れ、その霧がオプスのかざした手に触れまたピリアに戻って行った。
「ミーシュ!」
そう言いながらオプスはピリアに抱きついた!
「元気でしたか?ミーシェはどこに?
ミーシェも名前を貰えたのですか?」
「はいオプス様、エレナ様に名前を頂きました……
私はピリアにミーシェはフィリアと名付けて頂きました。」
「ピリアにフィリア、愛ですか良い名ですね、大切にしなさいね」
「ミーシュ?ミーシェ?どういう事ピリア?」
エレナが聞く、トールがウィンダムの時に言っていた、ドッペルは名前を送ってくれた人に心を尽くすと最初は名前も何も無いと……
「エレナさん、水の巫女エヴァの祝福を持つ方ですね。
そしてユリナちゃんのお母さんですよね?
エヴァスであり、セレスの英雄……
ピリア、素晴らしい方にお名前を頂きましたね。」
オプスがそう言いながら、エレナの方を見るとエレナは一瞬、魂を覗かれた気がした。
「うん、美しい方ですね。
エヴァも良い方を見つけましたね」
そう言いながら自らの髪をさわり語る。
「ピリアもフィリアも親はドッペルでは無いのです。
私のこの髪に輝く星から産まれたのです。
私の魂をよく知り、私とともに良く遊びました、ドッペルの中で、遠く離れていても私の姿になれるのは二人だけなのです。
ピリアは暗黒の瞳、フィリアは漆黒の霧を私から受け継いだ、私の娘の様な大切な子達なのですよ。」
そう語りながらオプスはピリアの頭を撫でた、するとピリアは嬉しさが増し思わずオプスの姿に変わる。
「影の女王になれたのですね……
おめでとうピリア」
ピリアは泣いてしまった。嬉しくて嬉しくてたまらなくなり子供の様に泣いてしまった。
「トール、気が変わりました。
私が天界に帰るのは、ここでの大切な話し合いを見守ってからにします。
それまでは私のこと頼みますね。」
「天界に帰られるのですか?
暗黒世界では無く……天界に帰られるのですか?」
ピリアが驚いて聞く。
「私の体にタナトスのコアが埋め込まれてしまってから、タナトスの意思が私の意思に入り込もうとしていたのです。
私は持てる闇の力でそれを封じていたのです……
それで力をだいぶ使い続けてしまったので、休むために天界に暫く帰ります。
今日はトールを送りに来ただけででしたが、ピリアを見たらもう少し地上に居たくなりました。」
「今は!今はもう大丈夫なんですか⁈」
ピリアが必死に聞く。
「ピリア?瞳を開いてごらんなさい」
そうオプスに言われ静かに瞳を開く。
ピリアの瞳は綺麗な紫色で、冥界に侵された気配は一切無かった。
オプスも瞳を開き美しい瞳の輝きを見せ、二人は見つめ合った。
「大丈夫、トールが暗黒でコアを全て無に帰してくれましたね」
オプスがそう言い、ピリアは瞳を閉じ元の姿に戻る。
ピリアが何故ベルダ砦でオプスの姿になれたのかが明らかになった。
オプスの一部から生まれたピリアとフィリアなら確かに離れていても、その姿になれても、オプスの教えを理解していても不思議では無かった。
その日の夕食は大いに賑わう。
オプスが天界でのトール態度を話のネタにしユリナがそれに食いつく。
オプスも女神としてでは無く、一人の女性として過ごしている。
皆がオプスのその振る舞いに魅力を感じているが、エレナだけは何となくオプスの気持ちを察していた。
上り詰めた存在とは意外と寂しいのである。
エレナもセレスの英雄で、エヴァの祝福を持ち現在時期国王の最有力者である、いや既に発言力は国王シンシルを上回っている。
名声と権威をセレス国内で上り詰めていると言っても過言では無い……
人は寂しい存在である
本当に力のある人の前で
人々はどうであろうか?
大臣はどうであろうか?
恭しく話すだろう……
顔色を伺いながら
話題を探すだろう……
何か贈り物をして良い話を
引き出したがるだろう……
それが続くのだ……
永遠と……
共に食事をしても
腹の探り合いの様な
寂しい食事になる
酒を酌み交わしても
本心を言い合えない……
人と言うのは欲があり
それを捨てると言うのは……
できてる様で出来てない
それが人と言う存在
本当に上り詰めた人は
その寂しさを知る……
そして人が恐る力を失った時
本当の友人とは何人居るのだろう?
そう考える者である……
エレナはその寂しさを痛い程知っている。
エレナが英雄になった時、平和をもたらした時、僅かにそれを感じ、エヴァの祝福を授かった時……
エレナ自身が王族であることと重なり、果てしなく広く深い人々の欲望がエレナを取り巻き精神的に病みそうになった事がある。
その時カナだけが、エレナの支えになり……アルベルトと出会いエレナは救われたのだ……
オプスは女神である……
地上を最も愛した女神である、その彼女へ寄せられる、欲望や願いはエレナにまとわりつくそれの比では無い……
死を基本迎えない神と言う存在は、それが本当に永遠と続くのだ……
エレナはリヴァイアサンを通して周りの兵達の様子を伺い見つめていた。
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