106 / 234
〜第五章 ファーブラ・神話の始まり〜
95話✡︎✡︎師弟✡︎✡︎
しおりを挟むエレナがセレス女王になり二年が経とうとしていた。
クリタス平原は約束通り、パルセスから再興したクリタス王国に返還され、ベルリス温泉の都市開発は全てパルセスに受注され、まだ予定の三分の一程度の完成度だが既に賑わいを見せ始めている……
クリタス王国の首都は、返還されたクリタス平原にある、過去の首都クリタスに戻され、一部の遺跡を残し都市開発がゆっくりと進められている。
ここには記憶の棚がある為に、地下都市トールからわざわざ首都を移しているのだ。
パルセスもベルリス温泉開発の代金……セレスからの金塊が流入し以前よりも、賑わい活気が溢れている。
ドワーフ達も次から次へと舞い込む仕事に慌ただしく、稼ぎ時と見て商売根性を見せ次々と仕事をこなしていく。
アグドはベルリス平原の農地開拓が進み食料生産量が増加し始める。
食料不足はまだ見られるが、セレスからの支援量も以前より少なく済むようになり、鉱山開発も進められ、確実に国として立ち直りつつある。
エレナは女王としての責務に追われるが、その仕事ぶりは今まで手をこまねいていた国内の問題にも積極的にこなしている。
ベルリス温泉に出資している膨大な資金を感じさせない程、セレスは国として更に輝きを増して行く……
無論、過去にユリナとカナが想像した通り大臣達の仕事も増えた事は言うまでもない。
こうして新しい時代は各国に富をもたらし、国を豊かにし平穏な時を迎えていた……
そしてエレナの娘ユリナが、女神への道を歩み始める。
「ウァァーーーー‼︎」
ユリナがエルドの王宮の庭で、星屑の劔を振りそれをトールが普通の斬馬刀で受け止め激しい音が響き渡る……
トールが力強く押し返し、素早く下から上に切り上げるが、ユリナは身軽にかわし鋭い突きを入れ僅かに届くかと思ったが、トールはその瞬間ニヤッと笑みを見せ、かなり早く跳び星屑の劔の上に跳び乗り、ユリナの首に斬馬刀の刃を寸止めした。
「今日も俺の勝ちだな」
そう言い余裕の笑みを見せる、ユリナは悔しそうな顔をしながら言う。
「ちょと重いんだけど早く降りてくれない?」
かなり悔しそうだ……
トールは降りることなく、そのままウィンダムになりパタパタと跳びながら、暗黒の持ち手に止まると暗黒が消えた、トールの魂に納められたようだ。
「でも、ユリナ本当に大剣使える様になったね、それは先生が良いからかな?」
エレナが紅茶を飲みながらそう聞いて来た、確かにある程度ならトールと斬りあえる程の腕前に成長している。
「まだまだよ、一回も勝ったことない……」
「そう言わないの、ユリナはまだ練習して二年ちょとだよ、トールは二千年近く振り続けたんだから、ユリナもこれからだよ」
「ユリナはかなり筋がいいよ、グーダよりいいと思うよ。」
ウィンダムが言う。
「グーダってトールの時代のオーバーロードだよね?」
ユリナが聞く。
「そうだよグーダの剣は俺に届かなかったよ。
あいつはオークなのにかなり社交的だったな……ユリナの剣は俺に届きそうって事だよ」
そんな話をしながら時が経ちユリナは屋敷に帰る事にした。
ユリナも今では姫君であり僅かな護衛だけ連れて屋敷に帰る、
今エレナの屋敷はユリナの物になっている、ガーラはサランに帰り、ピリアと召使いと警備兵がいる。
ユリナが帰宅してピリアと食事をしている時にふとユリナが思い出した。
「ピリア、明日記憶の棚に行ってみようか?」
「え?……あ!」
この二年間エレナの手伝いが忙しくて、クリアスの石板まで気が回らなかった……
ベルリス温泉の開発、セレスの新しい制度、新しい鉱山開発、アグドの農地開発支援と食料支援の調整、クリタス王国の訪問……
アグド国王ベルガルの訪問などなど……
極め付けは、二月に一度くらい記憶の棚を使いパルセスのフェルミン女王が遊びに来る……
ユリナにもお見合いの話が何度かあったが、それはエレナが一方的に全て断った。
過去にエレナ自身が苦しんだ為に、ユリナに同じ想いはさせたく無く、ユリナが本当に愛せる人に出会えるのをエレナはゆっくり待ってくれている。
最近やっと余裕が出てきたので、二年前に出来なかった事を考えていた。
「お母さんが居なくても、トールが居るしピリアも居るから大丈夫だよ」
「そうですね、私も何かあれば戦えますから」
ピリアがそう言い久しぶり記憶の棚に行く事にした。
これが新しい冒険の始まりになる事を、まだ誰も知らなかった……
0
あなたにおすすめの小説
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
追放令嬢と【神の農地】スキル持ちの俺、辺境の痩せ地を世界一の穀倉地帯に変えたら、いつの間にか建国してました。
黒崎隼人
ファンタジー
日本の農学研究者だった俺は、過労死の末、剣と魔法の異世界へ転生した。貧しい農家の三男アキトとして目覚めた俺には、前世の知識と、触れた土地を瞬時に世界一肥沃にするチートスキル【神の農地】が与えられていた!
「この力があれば、家族を、この村を救える!」
俺が奇跡の作物を育て始めた矢先、村に一人の少女がやってくる。彼女は王太子に婚約破棄され、「悪役令嬢」の汚名を着せられて追放された公爵令嬢セレスティーナ。全てを失い、絶望の淵に立つ彼女だったが、その瞳にはまだ気高い光が宿っていた。
「俺が、この土地を生まれ変わらせてみせます。あなたと共に」
孤独な元・悪役令嬢と、最強スキルを持つ転生農民。
二人の出会いが、辺境の痩せた土地を黄金の穀倉地帯へと変え、やがて一つの国を産み落とす奇跡の物語。
優しくて壮大な、逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる