✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第六章 ファーブラ・巨人族〜

115話✡︎✡︎使徒シェラド✡︎✡︎

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 その晩のことカナは月を背に舞っていた。
二年前と変わらず、美しい舞を一人で舞っている、カナも舞の練習は体調を崩さない限り、毎晩欠かさずに続けていた。

 ユリナは少し離れて舞が終わるのを待っていた、いや待っているつもりが鑑賞してしまう……相変わらず目を奪う程美しくカナは舞っている。

 カナが気づいたのかユリナの方を見て僅かに微笑み、そして流れる様にユリナに舞いながら近づいて来た。
 そこまでの動きに不自然さは無く、まるでそんな舞なのかと思うほど自然に流れる様であった。

「ユリナ、どうしたの?」
 カナが目の前まで来て剣をしまい笑顔で声を掛けてきた。
 ユリナは見惚れてボーッとしていた自分に気づいた、まるで夢の中にいる様な錯覚までしていた。
「えっ……お姉ちゃんが綺麗でその……」

 カナがクスクスと笑う、その笑い方も変わらず可愛らしい、その笑顔を見て二年前、カナがアグドから帰らなかった事をセレスの男達が嘆いていたのを思い出した……
 ユリナとは違いカナはそう言った面でも魅力的で人気者であった。


「話してくれるの?」
「うん……」


 二人は草原に座りユリナは一部始終をカナに伝えた。


「そっか……そんな気がしていたんだよね……」
カナは知っていた様に言う。

「えっ?」
ユリナは驚いた。

「二年前さ……
メトゥスが叫んでいたよね……


これで終わりでは無いって……


いつ幸せになれるのか、いつ争いが無くなるのかってずーっと考えてたの、でも今度は冥界が相手じゃ無いってだけで一緒だよね。

もっと苦しくなったって事かな……
なんでなの……この世界が無くならない限り争いが無くならない気がしちゃう」

カナが悲しそうに言っている。


「この世界が……無くならない限り……」
ユリナが呟く。

 気付けばカナが涙を流している。
 あまりの事か、目の前の幸せが幻になってしまった様に、儚い幸せだと言う事にカナは気付いた。
 この世界が無くならない限り……この言葉がユリナには何故か大切な事に思えた。


翌朝。


「おはよう!」
明るいカナの声でユリナは起こされる。
「お姉ちゃん……?」
「早くお母様の所に帰りましょ、昨日の事もお母様はきっと戦いの準備をしてるんだと思うから、私達も手伝いにいこ」
カナはふりきったようだ。

「ちょっとお姉ちゃん、シェラドさん心配じゃないの?」

「心配?この位で死んじゃう人なら結婚なんて考えられません」
カナは明るく言う。

「って相手は!ガーラさんでも!」
ユリナがそう言うと、カナがユリナに向けて手のひらを向けて言った。

「あの人の為でもあるの……あの人は戦士として死ねる事を誇りに思ってる。

私が近くに居たら、本気を出せないかも知れない……お父様だって私とお母様を庇って死んだけど私達に言ってくれたよね?

騎士として最高の死を与えてくれたって……」


 確かにシェラドもアルベルトと同じ様に戦場での死を望むかも知れない……
 馬鹿な男に惚れて泣くのは女ばかりである、アルベルトの時から見て何百年も経つが時代は変わってもそれは変わらない、そうユリナは思った。


「じゃあ、お父さんの時みたいに死んでの再会だったら、お母さんみたいに引っ叩いて問い正さないとね」
「ふふっ、そうしましょ。」
カナが可愛く笑って明るく答えた。

 カナもユリナも明るく振る舞うのに必死であった……。




その頃……
「ジェネラル、こちらです。」
 ベルダ砦の地下にある玉座の間に、騒ぎが起きていた……勇猛なオークの兵が二十名は命を落としている。
 この場が戦場になったのは二年前のあの日以来で修復も終えたばかりであった。


「やはり来たか、戦士の一族……力を見せれば簡単によって来る。容易いな」


 玉座の前に黒い人の影だけがある……だが、床ではない影が立っているのだ。

「貴様、死にたいのか?」
シェラドが言う。

「死ぬのは貴様らだ‼︎」

 影が叫び凄まじい速さで飛びかかって来た!
 シェラドは斬馬刀を抜き、その影を両断するが手答えが無い!

 だが実態があるのは感じとった。

 黒い影から伸びた鋭い刃がシェラドを貫いた……


「ジェネラル!」
「ジェネラル!」

周りの兵が叫びシェラドを助け様とした。

「案ずるな」

シェラドの声が響く……

「お前!何故‼︎」
 影が驚きの声を上げ離れようとするが、シェラドはそれを逃さない。

「貴様、知らんようだな……
炎の使徒の恐ろしさを
ならば教えてやろう」
 シェラドがそう言うと、シェラドの全身が炎に包まれた、いや炎そのものと化していた。

 刃で炎を切る事は出来ない、影が突き刺した刃はすり抜けた様に思えたが炎に掴まれていた!

 影は刃を離した様で今度は殴りかかって来たが、シェラドはそれを払いナックルを装備した右手で腹の部分を殴りつけるが、やはり手答えは無かった。


「これで右腕は貰った!」
影が笑うが……
「ハッハハハ‼︎」
シェラドがさらに高く笑った。
「‼︎」

 なんとシェラドの拳が燃え盛り、影を中から焼き尽くしていく。
「グッあぁ!」


「イグニスの炎を甘く見ていたな小僧……」


 影は内部から焼かれ、次第に影では無く人の姿になって行くそして、それが姿を表すと同時に巨大化していった。

 シェラドの三倍は背丈がある……
 そしてそれは暴れはじめる、シェラドはすぐに離れ斬馬刀で右足を切り裂くと、赤い血が吹き出しそれは倒れ、シェラドは素早く首を切りそれは絶命した。

「ジェネラル、これは……」

「巨人族だ……」


 シェラドが静かにそう言い、砦の外に出て炎の鳥をカナに飛ばした。

「この亡き骸を砕いて埋めよ
そして一切他言するな!
他言した者はこうなると知れ!‼︎」


 シェラドは伝説の巨人族が敵である事を、すぐにカナに知らせた。
 それは数日前に、エレナから戦の支度と各国の国王を集めて話す必要があると、ベルガル国王にエレナから水の鳥が来たからである……シェラドはすぐにベルダ砦から、アグド首都バータリスに向かった。
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