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〜第十一章 メモリア・黒い天使〜
187話❅過去へゆく者❅
しおりを挟む「メーテリアありがとうね」
その夜パリィは屋敷でメーテリアにお礼言った。
「パリィ様?気にしないで下さい
ガイザスだから私は助けたのですから」
メーテリアが言う。
「それって?」
パリィが興味ありそうに聞く。
「勘違いしないで下さいね
私がふった相手が
目の前で自殺とかされたら
いくら千年前の相手でも
気が重くなるじゃないですか
それが嫌だから助けたのです」
メーテリアが当たり前のことを言った。
「…………」
確かに重くなる……。確かに気が重くなるだろうが、ガイザスはメーテリアの気持ちを解っているのだろうか?とパリィは汗を流しながら考えた……。
メーテリアは、パリィに気を遣わせない様に振る舞い可愛く微笑んでいた。
それから数日が経ち、ガイザス達はカルベラの村に住む事になったが、ガイザスの率いるカルベラ第一軍だった者達はねじろに居る家族を含め、合わせて千名を軽く超えていた。
グラム達と違い農耕もある程度していた、それはもはや街の規模である。
その知らせをパリィは聞き悩んでいた。
出来る事なら現状の本拠地と言えるセクトリアに全て呼び寄せたい。
だがその規模になれば、その土地での生活があり生産力もある。
そもそもカルベラ隊第一軍は、かつてマルティア時代に三千名を越える部隊であった。
今どれ程の者達が極北地域に居るのか解らない。
そこでパリィはクイスの元に行き、クイスに駐留部隊の増員を頼んだ。
クイスはテリングで三千名の部隊を持つ、今そのうちの五百名が、セクトリアに駐留している。
全て今後、残りのカルベラ隊がどう動くか解らない為の備えである。
「では
こちらに向かう交易の輸送に五百名向かわせるつもりでしたが、千五百名として、千名をセクトリアに駐留させましょう
それと家族の移住も
希望があればそうさせましょう」
クイスは微笑んで言う。
「ご家族も?それでは……」
パリィは少し躊躇うように言う。
「パリィ様
既に此方に駐留している兵も三十名程
セクトリアの人と
良い仲になっている者達がおります
中には永住したいと願っている者さえ居ます
やはりここにはテリングには無い
温かさがあるのでしょうな」
クイスが穏やかに、セクトリアの人々を褒めてくれていた。
「……もし兵の家族までと言うならば
マルティアの民としてならお迎え致しますが……
食料の生産が本当に間に合いません……
今でさえ
支援して頂いてるのに
兵千名の家族となれば
全ての方々が来ないにしても
少なくても三千名にはなるでしょう
その上に……
ガイザス達の分までとなれば……」
パリィは様々な可能性を考えて言う。
「ならば先ずは兵千名のみに致しまして
開発の進み具合で考えてみませんか?」
クイスが穏やかに言う。
「はい
そうして頂けると助かります」
パリィは食料よりも一つ懸念した事がある。
先ず極北地域の人々でしっかりと地盤を固めたかったのだ、それをせずにテリングの民が極北地域の人々と、同じ程の人数が移住して派閥の様な物が出来ないだろうかと。
もしそうなれば、厄介な事になり兼ねない、パリィは冷静にそう考えていた。
話はまとまりパリィは屋敷に帰り決断した、勿体ない気はするが、カルベラ第一軍の根城にしていた街の人々をセクトリアに移住してもらう事にした。
まずは現状の本拠地、セクトリアを発展させる事が優先であった。
翌日パリィはガイザスを屋敷に呼び、決めた事を伝えた、意外とあっさりガイザスは承諾してくれた、訳は街の女性達もマルティアが再興するならば首都に住みたいと、ガイザスに言っていたらしい、とても解りやすい理由であるが念の為にパリィは聞いてみる。
「まだ街は大きくなくて
昔のセディナには程遠いのですが
大丈夫なのですか?」
「人に恨まれる仕事をしない様になって欲しいと願ってる女達もいる
最初の苦労は何とも思わないだろう?」
そう言いながら、ガイザスはメーテリアを探す様に辺りを見回すが、たまたまメーテリアは出かけていた。
「ふふっ
メーテリアは今出かけていますよ」
パリィが微笑んで言い、ガイザスは顔を赤くしている。
「では私はこれで……」
ガイザスは丁寧に挨拶をしカルベラに帰って行った。
パリィはガイザスを見送っていると、何か別の場所で厄介な事が起こる様な予感がして沈む夕日を眺めていた。
その数日後の夜にパリィは夢を見ていた、見たと言うより聞いたと言うべきだろう、ただ真っ暗の中で声だけが聞こえてきたのだ。
「建国って言うの?
国を作るの?
急いだ方がいいよ・・・・・」
そうパリィは聞いたが、いいよの後が聞き取れなかった、パリィは目覚めたあと不思議な感覚が残った、その声がパリィの声だったからだ。
(それは……あえて言いますが
近いうちか先の未来か解りませんが
パリィ様が気付かれるかも知れません
パリィ様の夜目は
千年前も素晴らしかったですが
生まれ変わられた後は如何ですか?)
メーテリアが言っていた言葉を思い出し、夜目に関係あるのかと思った。
そんなパリィを黄泉の国から見ている者がいた。
「婆さん
そろそろ行くよ……」
若者が何か思い詰めたように言う。
「良いのだな……
戻れなくなるかも知れんぞ」
フローディアが老婆の姿でその若者に聞く。
「あぁ……
だが戻ったら約束通り
この姿のまま地上に返してくれよ」
若者が言った。
「記憶の扉……
その先に待つ絶望に光を刺せ
キリング・フェルトよ
この世界はかつて
偉大な女神によって救われた
だがその女神が思い残す事があっての
その過去を変えてくるのだ
絶望に光を刺すだけでは救えない
偉大な女神を救って参れ……」
フローディアが教えるように言う。
「だが何故俺にやらせてくれるんだ?
英霊と言える者は他に居るだろう……」
キリングが黄泉の老婆、フローディアに聞いた。
「兄貴が姉上を思い出したからだよ」
サルバが優しい顔で言いながら現れる。
「忘却の水は神々が作りし物
それを兄貴の姉上への愛が
超えたからだよ」
サルバが説明してくれる、サルバはベルス帝国を滅ぼすきっかけを生み出し、神々の期待に応えた、そのため恐怖の女神メトゥスがサルバから死の渇きを取り去り、忘却の水を飲まずに過ごせる様にしてくれたのだ。
「サルバ、お前……」
キリングがサルバに驚いている。
「ほら!行ってこいよ
姉上の為に
自慢の剣を振ってこいよ兄貴!」
サルバが明るく言ってくれる。
キリングはサルバに言われ鼻で笑い、過去の扉に手をかけ、力強く押し開け漆黒の闇が広がる扉の中に入って行った。
そしてキリングの姿が、闇に溶け込む様に消えてゆくのと同時に、扉は重い音を立てて閉まって行く。
「フローディア様……
兄貴戻って来るよな?」
サルバは老婆の本当の姿を知っていた。
「わかりません
でも望みはあります
キリング・フェルトは
この世界が生まれ変わってから
最も罪深き人
大罪を犯した人でしか解らない何かが
女神を救うはずです……」
フローディアが女神の姿になりそう言うと、気高い声が背後から聞こえて来た。
「行ったのか?
妾が見込んだ通りに
働いてくれれば良いのだか……」
ムエルテが言う、サルバから見れば、ムエルテは白い肌に幼い姿で黒い瞳をしている少女であったが、フローディアは美しく礼をしている。
「誰だ!」
サルバが叫びながら聞く。
ムエルテはサルバにリンゴを投げ渡した、サルバはそれを受け取ると、少女はニヤッと笑い嘲笑う様に言った。
「死の女神からの褒美だ
食うが良い」
そう言いながらムエルテは黒い霧を放ち消えていった。
「死の女神……まさか神話の……
黄泉の支配者……」
サルバは驚き唖然としていた。
死の女神はサルバに名を名乗らなかった、そして黄泉の別の場所に現れ地上世界を眺めて懐かしむ様に呟いた。
「パリィ・メモリア
二つの死を持っておったか……
産めなかった娘の命と自らの命
二つも持っていたとは
気付かなかったのぉ……
それにしても
キリングを妾が送り込んでいたとは
ユリナよ妾すら未来で操るとはな
全く妾を超えおって……」
ムエルテはそう呟き微笑んでいた。
パリィは知らない、キリングの魂が全てを思い出して、生き返る為に危険な旅に出た事を、黄泉の世界での出来事をパリィが知るはずもなかった。
ムエルテもキリングには顔を合わせてはいない、ユリナもキリングには合わない様にしたのだ、過去の世界でキリングはユリナに手を貸してくれたこともある、ムエルテの指示でダークエルフの一族の中で暗躍もした。
重要な役割を果たすが、肝心なことは出来なかったように見えるが、キリングの想いがパリィを過去の世界に呼び寄せていたのだ。
それが無ければこの世界は無かったかも知れない、ムエルテもユリナも過去と今を考えあえてそうしたのだ。
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