✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第十二章 メモリア・時の女神

220話❅壁画を描く者❅

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 ユリナ達がいる神殿で聞かれてる事を、ムエルテもオプスも気付いていなかった。


「今ムエルテ様はなんて言ったの?」


ユリナが言った。


「モニョモニョ言ってましたが……」

メトゥスが言う。

「好きだって言ってたよ」

パリィが言う。


「違いますよパリィ様」

サクヤが微笑みながら言う。


「ありがとう……ムエルテ」

 オプスがクスクス笑いながらそう言い、ムエルテに抱きしめられながら言う。


「ムエルテ……あたたかいよ……」

オプスは静かに呟いていた。

 ユリナは少し考えていたが、パリィに聞いてみる事にした。


「お姉ちゃんごめん
ムエルテ様が今マルティアの
守護神だと思うんだけど
他の神様にお願いして
ムエルテ様に休んで貰うのどうかな?」

「ユリナ
それって出来るの?」

パリィが聞いた。

「もう一人の守護神様がいれば
出来るんじゃないかな?」

ユリナが考えながら言う。


「それって誰がなってくれるの?」

パリィが素朴に聞く、ユリナはメトゥスを見る。

「……わっ私ですか⁈」


メトゥスは尋常じゃない戸惑いを見せる。

「メトゥスさんって
神様なんですか?」

 パリィとサクヤが不思議そうな顔でメトゥスをみる。


「あの私……
こんなんですが……
一応神様です」

メトゥスが困りながら言う。

「一応……?
なんの神様なんですか?」
パリィが突っ込んで聞く。

「メトゥス、メトゥス……」
サクヤが考えている。


「恐怖の女神です!」

メトゥスは思い切って言うが……。

それを聞いてパリィは頭を抱えた。

「恐怖……」

パリィとサクヤは同じ事を思っていた。


(怖くない……
ムエルテ様の方が怖いよね)

 ユリナは心で全て聞いて頭を抱えると、神殿の奥で神聖な気配を感じとる。


「ちょっとみんなここに居てね」

 ユリナはそう言い神殿の奥に走って行った。


「メトゥス様ユリナさんは
どう言う方なんですか?
神様のメトゥス様より
偉そうですが……」

 サクヤが不思議そうに聞く、確かに女神相手に態度が大きい、その接し方でパリィとサクヤの前では既に恐怖の女神の威厳は消し飛んでいる、メトゥスもユリナに頭が上がらないので気にせずに接していたので、それは確実な物であった。


「い…いやあの……
私はあまり気にしてないので
大丈夫ですよ」

 メトゥスは一人困っていた、パリィはユリナの姉で、想像と破壊を司る女神エレナの娘でその天使であるが、地上に降りて今は一人のエルフであった。
 立場的に言えばユリナの影響でその辺の神より上である、だからパリィに普通に話かけられても普通に受け答えする。


「ふーん……」

 パリィとサクヤはメトゥスを色んな角度から見つめる。

 今のパリィはその記憶が無く一人のエルフである、ようやくそれにメトゥスは気づいたが既に遅かった。

(ユリナさん、わ、私、ど、どうすれば……)


 一番奥の祭壇その奥にある石像の裏に、その存在は居た、天界を統べる女神エレナがそこに居た、エレナは壁画を見て悩んで居た。

 ユリナは少し離れて気づかれない様にしていた、そしてエレナが天井の空いてるスペースに何かを描き始める、そして難しい顔をして悩んでから描き終える。

 その絵を眺めてから消そうとした時、エレナは肩をちょんちょんと突っつかれて、ふいに突かれた方を見ると、そこにエレナが居た空色の髪、空色の瞳をし美しいエレナがそこにいた。

 だがエレナは静かに微笑んで言った。


「ユリナ……
やっ気付いてくれたわね」

 そう呼ばれユリナは一瞬で涙が溢れた。


「お母さん!」

 ユリナはエレナに抱きつき、エレナもユリナを抱きしめた、エレナとユリナは双子の様に似ている、そしてそれを利用して二人は髪の色を変えて良くふざけて楽しんでいた。


 屋敷の者達はよく二人におどかされて、それをクスクスとカナが笑いながら見ていた。


 エレナの屋敷、そこには暖かく楽しい思い出が溢れていた、そして哀しい思い出も、辛い思い出も全てが溢れていた。

 今はもう無い世界で、新しいこの世界では今まで親子の絆が無くなっしまっていた。
 だがそれはエレナが記憶を取り戻していた事に、ユリナが気付いていなかっただけであった。

「ユリナ覚えてる?
はじめてそのイタズラした時のこと
あの時私を驚かせたよね?」

エレナが優しく聞いた。


「うん……覚えてるよ」

ユリナが優しく言う。


「私もあの時
ここに鏡あったっけ?って悩んだのよ」

エレナがそう言った。


「お母さん……ありがとう……」

 ユリナは本当にエレナが記憶を取り戻してくれたと、そう思いお礼を言った。

「お母さん……
何を書いてたの?」

 そしてユリナが聞いた。


「記憶よ……
あの世界で何があったか
ちゃんと伝えないと
繰り返したら……
ユリナの今までの苦しみが
無駄になっちゃうからね

それに寂しいじゃない

フィリアとフェルミン

それにアルベルト……

トールも私達と戦ってくれた

みんな今の世界で誰も知らない……
それは良くないとお母さんは思うの……
だから描いてるのよ」


 エレナは優しくそう言った、とても長い間家族としての会話をしていなかった、ユリナは嬉しかった、ユリナはやっぱりお母さんはすごいと思い、昔と同じ様に安心を覚える。

「じゃあお姉ちゃんを
ここに導いたのはお母さんなの?」

ユリナが聞いた。


「えぇ……
そうだけどユリナ一つ約束してね
今描いた記憶を見ても追いかけないでね

今の貴方は大切な
やらなきゃいけない事が
本当に沢山のあるからね……」

エレナがそうユリナに教えるように言った。


「どう言うこと?」

ユリナが聞くとエレナは頭をかきながら言う。

「どうせ消しても
ユリナなら見えちゃうんでしょ?」


「もちろん
時間を戻してしっかり見るよ」

 ユリナはそう言いその壁画を見た、ユリナは呆然としている。


「これ……本当なの?」

ユリナが疑いながら呟く。

「えぇ……
彼は生きていたのよ

あの時……

瞬時にウィンダムになったけど
クリアスの威力が凄すぎて
竜の姿を維持できなくて
風になったみたいなの

この壁画を書いてから
ウィンダムの魂を
ずっと探してるけど
ウィンダムの魂を追えないのよ

だから風になって生きてるはずなの
まだ何処かで」


「トールが……生きてる……」


 エレナは、ユリナがトールを愛している事を知っていた。
 だが哀しい結末であった、だからこれを伝えるべきであると知っていたが、悩んでいたのだユリナがどう思うか解らない、昔の世界と違いユリナが飛び出してしまったらエレナでも止める事は出来ない。


 だが、あの戦いから一万年と言う時の中でユリナが成長していると信じていた、ユリナは涙を溜めた様な仕草を見せたが、優しい瞳でそれを見つめていた。

「大丈夫だよお母さん
私からは追わない……本当に……

あんな思いを……
私やオプス様にさせたんだから!

早く謝りに来なさいよ!

ウィンダム‼︎」

ユリナがそう大きな声で言った。


「そうだね……

本当に謝りに来るかな?
あの子は」

 エレナもユリナもやんちゃな幼竜のウィンダムを思い出し、二人は微笑んで壁画に描かれたウィンダムを見つめていた。





~第十二章 時の女神~ 完
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