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✯第一章 西の国〜前編〜✯
18話✯えっ……1分もですか?✯
しおりを挟むその後二人は一緒にセリアを着替えさせる。
「ところでアイリは悪いこと何をしたの?」
ロアが聞く。
「悪い事?私は何もしてないですよ?」
アイリが言う。
「じゃあ、好きな事はなに?」
ロアは聞く。
罪なくして魔女には成り得ないからだ、大体の魔女は興味ある事からそれに対しての欲望が無限に広がり、魔女になって行く。
「私はお花が好きです。
蕾をみると、どんなお花なのかな?って魔法で咲かせたり。
でも一面の花畑をみると、ぽーってなってずっと咲いてて欲しいから咲き続けるようにお祈りしたり。
冬まで咲き続けるようにいっぱいいっぱいお花を咲かせました」
花の魔女アイリは可愛く言うが……
ロアは気付いた、それは祈りと言うより咲き続ける呪いだと、そして一つ聞く。
「それって、お花が咲く子全部かな?」
優しく聞く。
「はい!」
花の魔女アイリは最高の笑顔で答えた。
ロアはアイリの多くを理解した、花が咲く植物全てに対してそうした場合、まずその花を咲かせる植物は種を残せない、そうしたらその花は絶滅してしまう。
それ以外にも人々の生活にもつながる……アイリは可愛らしい笑顔でそれを知らない様だった。
(この子が厄介なくらい無知なのは解ったわ、いえ……
よく言って無知ってとこね)
ロアは心で囁きながら笑顔のままで、セリアを着替え終わらせた。
「うん、二人ともよく似合うわね。
アイリちゃんのもサイズ合ってて良かったわ」
「この服、ロアさんのじゃないですよね?」
「えぇ、ウィンに似合うかな?って思ったけどセリアにも似合いそうだから買っておいたのよ」
「ウィンさん?」
アイリは聞くと。
「えぇ、近いうちに会えると思うわよ」
そう言いながら、紅茶を用意してから二人の服を庭で魔法をかけて洗濯する。
ロアの家は城壁で囲まれたシャーゼンの街の端にあり、家の周りも壁で囲まれては居るが、家自体はそこまで広くはない。
その為に庭もあるのだ、シャーゼンで庭付きの空き家は他にもあったが、そんなに大きく無い可愛いこの庭をロアは気に入ったのだ。
ロアは庭の端に小さなテーブルと椅子を三つ用意して、先程入れた紅茶を用意してアイリを誘い、ゆっくりと紅茶を楽しむ。
「ロアさんって素敵ですね。
凄い大人っぽいです!」
「大人ですけど……」
「そっそうですね……魔鏡の魔女の伝説は一万年前からですからね……ってことは今お幾つなのですか?」
「そうねぇ……一万八千歳くらいかな、もう忘れちゃった……
奇術の方がちゃんと覚えてるわよ」
ロアは少し洗濯物を気にしながら聞いている。
「奇術?あのもう一人の魔女様ですね。」
アイリは興味深々と聞く。
「ざんねん、奇術はもう魔女じゃ無いわ、元に戻れたから今はエルフよ」
「お噂は聞いております」
アイリは目をキラキラさせて聞いている。
「でも奇術様は今どちらに……
精霊達が言う奇術の森で、それらしい結界を見つけたのですが、悪魔と邪神がいて……‼︎」
アイリはそう言い思い出したように、慌てて話す。
「そうです!魔鏡様、その邪神にセリアさんは声を奪われてしまったのです‼︎」
ロアは紅茶を吹き出しそうになる。
「魔鏡様の力で取り返してあげれないですか?
私ではとてもあの邪悪な力には勝てません、魔鏡様の伝説の力で助けてあげて下さい‼︎」
アイリは熱く語るが、ロアには何か違う世界を見てきたような、そんなふうにしか思えなかった。
ロアはスッと手を振るだけで、洗濯物は、程よく絞られて干されて行く。
鮮やかな魔法を使い手際良く進んでいく。
ロアは少しからかおうと思ったが辞めた、アイリの誤解を深めてしまう気しかしなかった。
「とりあえずね、さっき言った邪神に見えたのが奇術よ、それで悪魔に見えたのが、そこで気絶してるセリアのお姉ちゃんでセリエって言うのよ」
「……」
アイリは固まる。
「アイリちゃん?」
ロアが呼ぶ……
「私ってなんて事をしてしまったの……
邪神の手下を拐って来てしまったのね……」
アイリは暗い顔で囁く様に言う。
「どうしよう……
この街が消されちゃう……」
(あなたが消えなさい……)
ロアは心で呟いたが、表示は優しく微笑んでいる。
そうしてる間に、セリアが起きて来た。
「セリア、そこに座って紅茶飲む?」
ロアが促すが、アイリはビクッとする。
(ほい……)
セリアは元気無く座り紅茶を、自分でカップにそそいで、砂糖を少し入れる。
「ロアさんって、邪神の手下とも仲がいいんですね……」
アイリが聞くと。
(邪神?何の話?)
セリアが聞く。
(この子がね、シャルルとセリエをとっても誤解してるのよ、セリア何とかならない?)
(ロアさん……無理だよ、悪い子じゃないけどズレて行くんだよきっと!)
(きっと頭の中もお花が咲いてるのね、差し詰め今はマリーゴールドかしら……)
(花言葉は絶望!)
(あらセリアお利口ね、他は何か知ってる?)
(知らないよー!)
(あなたの頭にもマリーゴールドを咲かせてあげようかしら)
セリアは元気を取り戻している。
ロアは紅茶に気分を軽くする魔法をかけていたのだが、それはともかく、他の花言葉を知らないセリアを白い目で見ていた。
「セリア、お花の本がそこの棚にあるからお勉強しなさい」
(はーい)
ロアが言うとセリアは元気に返事をした。
「私が教えましょうか?」
「アイリ?これは修行の一つなのよ、セリアも勉強しないと、立派なマエストロになれないからね」
ロアが言うと、アイリは不思議そうな顔をした。
「奇術は今マエストロとして、アーティファクトを作ってるのよ。
魔女だった時の強い魔法の一部を、優しい良心を持つ人だけが使える、特別なアーティファクトを作ってるのよ。」
ロアは説明しはじめる。
「ふむふむ、やっぱり奇術様も凄い魔女だったんですね。」
「えぇ、それに優しい子よ、そこに貴方が行って騒いだから、奇術が怒ったのよ」
ロアはここぞとばかりに誤解を解こうとする。
セリアはお花の本を読んでいる、珍しく見せる少女っぽい姿に誰も気づかない。
「うん?どう言うことですか?」
「いい?アーティファクト作ってる時は、声を出しちゃいけないのよ。
セリアが声を出さないのは、アーティファクト作りに今関わってるからよ、あんなに明るい子が喋らないなんて、それしかないもの……」
ロアは瞳を瞑りながら、紅茶を優雅に一口飲み話を続ける。
「つまり、アイリちゃんが見たのは怒った奇術で、襲って来たのは弟子のセリエって事なのよ、それでアイリちゃんが勘違いして、セリアを拐って来ちゃったのよ」
「じゃあ……弟子のセリエ様って……」
「うん?」
「気が短いのですね」
(お前が言うな!)
セリアとロアは思った心から……
「いい?ドアをノックしたら、1分は待ちなさい、それでも待ってない方よ。
あなたは特にそれを覚えなさい」
ロアが言う。
「えっ……1分もですか?」
アイリは驚き全ての時が止まった……
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