アーティファクト

〜神歌〜

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✯第一章 西の国〜前編〜✯

21話✯おぉまえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ✯

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「なんで私達だけで行くのー」
セリアが叫んで愚痴る。
「仕方ないでしょ!
セリアがあんなの手掴みしたんだから!」
セリエが叫ぶ!
「なんで虫なの?
なんで?虫を愛した女の子がいたの?
黒くてツヤツヤした子も愛せるの?

どんな人なの……
なんで?なんで?
なんで虫なのーーーー‼︎」
セリアがつべこべ叫ぶ。



 そうセリアとセリエが東の国で、災いを振りまく虫を操る魔女をなんとかしに行く事になったのだ。
 理由は単純に黒くてツヤツヤした生き物でウィンを気絶させた事だ。
 ウィンはセリアより強いが、セリアがそのウィンを気絶させた。
 意味不明な最強をシャルルに言われて押しつけられたのだ。


 二人はそれぞれの天使の姿で空を飛び、東の国に向かっていた。
「ちょっと……あれ……」
セリエが気付いた。
「あれ全部……」
セリエが止まったが、セリアは突っ込んで行った。


「おい……あれを見ろ‼︎」
東の国の人々がセリア達の姿を見た。
「天使様だ!天使様が助けに来てくれたぞ‼︎」
東の国の人々が喜び祈り始めた。



「ほえ?……えぇ‼︎」
セリアが気付いた、赤く見えた雲は全て赤虫だったのだ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
セリアの悲鳴が広がる!
大量の赤虫がセリアの全身にまとわりつく様にくっついたのだ!

「‼︎」
東の国の人々が驚いた、空から広がる恐怖に怯えた天使の悲鳴に!


「あなたも虫、苦手だったのね……」
セリエは汗をかいてセリアの元に飛んで行く。
「ちょっとセリア!
あんなの掴めたんだから大丈夫でしょ!」
セリエが叫ぶ。
「いやぁぁぁぁぁぁ」
セリアは叫びながら、赤虫を焼き払って行く。
「ちょっと危ないじゃない!」
セリエも巻き添いを喰らいそうになる。
「だってお姉ちゃんの傷治してもらいたかったんだもん‼︎」
セリアが何故か黒くてツヤツヤした生き物を、素手で捕まえた訳をイキナリ言った。

「……」
セリエは気持ちは解ったが思った事を言う。
「そんなので治して貰えたら……
私だって考えるわよ!」
生涯ものの顔の傷……セリエも気にしてたようだ。
 セリエは何とも言えない感情を赤虫にぶつけはじめる。


 赤虫を駆除して行くうちに辺りに花の魔女アイリの魔力が僅かに漂う。
 ウィンが予想した通り、赤虫達はアイリが振り撒いた呪いを食べて変化したのにセリアとセリエは気づき始めた。
 二人は理不尽な後始末をさせられてる気分になる。


「アイリィィィィィィィィィ‼︎」
セリアが叫んだ。



「?魔鏡様、今呼びました?」
その叫びは遠く離れロアと呪いを練習していたアイリだけには聞こえていた。
「うん?呼んでないわよ、次始めましょう。」
ロアは笑顔で言う。
「はい、魔鏡様!」
何一つ知らない二人であった。



 東の国の空は二人の苛立ちが、いや……セリアの苛立ちが頂点に達し凄まじい勢いで害虫が駆除されていく。
 セリアが炎の魔法で一掃し、逃げ出した赤虫をセリエが闇に引き摺り込み、一匹も逃そうとしない。
 ただセリアは炎の天使の力を使い暴れまくっているが……何かがセリアを貫いた。
「⁈」
セリアは体を炎に変えていたので何も無かったが、飛んできた方を見ると魔女がそこにいた。
 虫の魔女だ、巨大な動物も即死させる毒虫を飛ばしたのだが、全く効かないセリアを見て一瞬戸惑ったのかその異形な姿を現した。


「おぉまえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
セリアは凄まじい勢いで突っ込みいきなり斬り裂いた!
 目は座っていて殺意の塊の様なセリアにセリエも驚き、虫の魔女も怯んでいた。

 その魔女はばらばらになる、小さい虫の集まりの様な体をしていたのだ。
 その魔女はもう既に人の姿はしていなく、悍しい虫の悪魔と言った姿をしていて誰もが恐れるだろう、そんな姿であったが……


 セリアには関係無かった、そんな事はセリアにはどうでも良かった。


「お前が居なければウィンが知らせに来る事も無かった!
そうすればおうちにいる黒くてツヤツヤした生き物を素手で捕まえた事も無かった‼︎
それを見た皆んなからドンびきされる事も!
こんな嫌で苦手な虫退治を押しつけられる事も無かった!
さっき赤虫の大群に突っ込む事も全てが無かった‼︎

全部お前のせいだぁぁぁぁぁぁ‼︎」
セリアが全力で叫んだ。

「セリア、それって……」
セリエは戸惑いながら呟いた。



 サラリと言えば……



ただの八つ当たりである。



 その虫の達があつまり、また姿を現し始めた時に、セリアは無言でその魔女を浄化の炎で圧倒的な火力で焼き尽くし、空の上で全ての虫を灰にした。

 その魔女は名乗る事も、声を出す事もセリアの前では許されなかった様に見え、セリエから見れば哀れに思えた。


「セ、セリア?」
セリアの八つ当たりは魔女ですらどうにもならないのだとセリエはただ思った。
 そして東の国の人々は天使の姿のセリアを見て、神罰がいかに恐ろしいかを知り信仰を大切にする様になる。

何も知らずに……

 東の国々の人々が信仰を大切にしようと心から誓ったことを神々は知り、神々は今回のセリアの八つ当たりを見なかった事にした。


「ふぅ……終わった終わった。
お姉ちゃん帰ろう」
「う、うん帰りましょう。」
セリアの苛立ちは解消された様だが、セリエは気になった。
(セリア………もうちょっと落ち着こうね……)
だが何故かそれを言えなかった。


 そしてその姿を、ロアの家で水晶を通して見ていたシャルルは……
「二人とも本当に姉妹ね。
一緒じゃない……」
そう呆れながら呟いた。
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