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✯第一章 西の国〜前編〜✯
23話✯えっ‼︎アクア……✯
しおりを挟むバルゲルから遠く離れたシュルツヘルトの街、ここは海から近く海の国と西の国の交易拠点であり、大陸から様々な物が集まりお買物好きなウィンもお気に入りの街である。
そこに水色の長い髪の背の高い女性がいた。
彼女は本屋に入り恋愛小説などを探している。
「ア~クア」
ウィンが親しげにその女性に声をかける。
「……」
静かに戸惑いながらアクアはそーっと声のする方を見た。
「相変わらずつまらなそうな本を探してるのね?」
「ウィン……久しぶりね、いいのよ私は恋愛に興味があるの、あなたは宝石やアクセサリー、美容関係の本しか最近送って来ないじゃない、その前は……確か……
鳥の図鑑や鳥の飼い方、鳥のしつけの本で、その前は怪談ものばかりが二十年くらい続いたわね……
貴方の好みを押し付けないでくれない?」
アクアは冷たくウィンをあしらう……
「アクア~これなんてどう?
今年の各国のワンピース特集……
可愛いの乗ってるよ」
ウィンは話を聞いていない、いや無視している。
「……」
アクアはスルーし、何冊かの本を買い店を出る、ウィンはもちろんその本を買う。
「アクア~前から思うけどさ、ちょっとは笑ったら?
そんなんだから彼氏出来ないんだよ」
「……」
アクアは無言でカフェに入りコーヒーを頼む、ウィンはミルクを甘めで頼み静かに二人は席に座る。
そしてメーンスの魔法を使い話し始めた。
(それになんで来たの?私に内緒で来るなんて初めてじゃない?)
ウィンから聞いた。
(私の好みの買い物をしに来たのよ、悪い?)
(恋愛小説?買うためにわざわざ海を渡って来たの?)
(えぇ……ウィンにお願いしたら十冊中、九冊は貴方の好みですから)
(でも、全部読んでるのよね?
そのアイラインと化粧の組み合わせはあの本のよね?
サンダルも先月送った本に乗ってるやつだよね)
(……私だって女よ、綺麗になろうとして何が悪いの?)
アクアが認めようとしない、今ウィンが強制的に送りつけてる、ファッション誌や美容関係の本には少しでも興味ある事を……
(何かあったの?天使でも好きになったの?)
(あら?察しがいいわね……
でも探しているのよ、あの人が住んでいた森に居なくなってもう百年経つわ……
何処に居るのかしら……)
そうアクアは思い詰めた様な表情をする。
ウィンもそう言われて大天使ソテリアを思い出す。
とても笑顔の素敵な人だったと思うと何故かセリアの笑顔が浮かんで来て、懐かしんだ気持ちを台無しにされた。
「はぁ……」
ウィンがため息をつく、アクアが不思議そうに聞いて来た。
(そう言えば、なんで私がここに居るって解ったの?
私が気配を消せばあなたでも見つけにくいと思うんだけど)
(うん?聞いたのよ精霊と仲がいい知り合いが居てね。
その子が教えてくれたのよ)
ウィンが話すと……
(へ~破滅とも言われた貴女に天使の知り合いが出来たの?
気徳な……いや気の毒な天使ね……)
(いや……人間よ)
ガタ!
アクアがその一言で驚いて立ち上がる、カフェに居た他の客が驚いた。
最初からメーンスの魔法で話してた為に側から見れば二人は無言で、今までウィンがため息を一度ついただけである。
周りの客の目をアクアは引いた……
(どうしたのアクア?)
(そんな……水の精霊が私のことを人に話した?
その人は本当に人なの?)
(そうだよ)
アクアは魔女になってから初めて水の精霊が人にそれを話したと言う事を聞いた。
周りの客はヒソヒソ話し出す。
(その子は何処にいるの?)
アクアがセリアに興味を持ったらしいが……
(関わらない方がいいわよ、変わってるから……それに関わったら貴女も懐かしい人にあっちゃうから、やめといた方がいいわ)
ウィンは真剣に言う。
アクアは真剣に話すウィンを何万年ぶりに見た……そしてアクアは決めた、何かあると思った。
ウィンは真剣に本当にアクアを心配して言ったが、魔女同士である為にアクアは確認する必要があると思ったのだ。
それはウィンが破滅の魔女と呼ばれるほどに、一度世界を滅ぼそうとしたからで何を隠そうとしたのか心配したのだ。
「そう言うことよ、ようが終わったら国に帰る方が身のためよ。」
「そう……解ったわ……」
アクアとウィンが勝手に話を成立させるが、周りの客は不気味がり二人は生暖かい視線に気づいて、そそくさと代金を払ってカフェを出た。
「ちょっとウィン、なんでメーンスで話したのよ……
私が変な人みたいだったじゃない」
「はい?あなたと一緒に居た私も同じよ!
私のせいにしないでよ!
だいたい貴方があそこで立ったから注目を集めたのよ!
あの手の話はコソコソ話すのが普通でしょ!」
ウィンが怒って言うが、普通かどうかは定かでは無い、二人とも魔女と言う単語は一切口にはしていない。
「あーもう解ったわ!
私は帰るからまたね!」
そう言ってアクアは港に向かって行った。
アクアはウィンを怒らせたが、たいして気にしていなかった、昔から続くやり取りでウィンも気にして無かった。
本当に二人が喧嘩すると、暴風と豪雨が起こり二人が喧嘩してる周辺では大きな嵐が発生し、過去に自然の地形を変えたこともある。
それ以来二人は友達だが、離れて住んでいるのだ……喧嘩すると果てしない迷惑を振り撒くことを二人は自覚した結果である。
「おいで」
アクアは海につき水の精霊を呼んだ。
「誰か人間の友達がいる子はいる?」
アクアが聞くと数多くの水の精霊が輝く……
(こんなに沢山の子が……いったいどんな子なのその人間は……)
「その人の名前を教えてくれない?」
アクアが聞くと、輝く精霊達だけが集まり文字を作り出した、その文字は……
『金色と呼ばれる人 セリア』
そう浮かび上がる。
(こんじき……人間にしては褒められ過ぎじゃない?
セリア……会ってみようかな)
その後アクアは水の精霊から何処に住んでるのかだけを聞き、霧になって一旦その場を離れた。
ウィンに気付かれないように遠回りする事にしたのだ。
アクアの霧は静かに空に舞い上がり雲になってシュルツヘルトを離れて行った。
それから数日後、アクアはウィンの言葉が引っかかっていた。
貴女も懐かしい人にあっちゃうから……
その言葉が引っかかっていた、何故かと言えばアクアの想い人はウィンと同じ大天使ソテリアで、百年ももう会って無い、まさかウィンがソテリアを隠してるのかと、そう考えたのだ……
(ソテリア様が人間に成り変わってるなら、精霊達と仲良くなってもおかしく無いわね……
でもウィンがソテリア様を隠すなんて有り得ないわね……
なんなのかしらその子は……)
そうアクアは考えていた。
一方セリアは、シャルルの森で隠れんぼしていた。
相手は森に住んでいる狼で、最近シャルルの小屋の周りをうろついて居たのだ、精霊と遊んでいたセリアが気がつき一緒に遊びはじめ懐いている。
(絶対に今度は見つからない、うん見つからない……)
セリアは自信を持って木の上に隠れている。
何故自信を持っているかと言えば水の天使になって水の力で匂いを消しているのだ。
何度も匂いを嗅がれて見つかってしまい、セリアは反則的な手段を使っている。
空の上では雲になっているアクアがセリアを探していた、シャルルの小屋の上空でふわふわしてながら探している。
(?あそこに水の精霊が集まってる……
ちょっと聞いてみよう。)
アクアはそう思い、森の中で水の精霊がコソコソしてる場所に行こうとした時、シャルルが小屋から出て来て、神罰の剣を空にかざした。
すると剣から光線が放たれアクア目掛けて飛んで行く……
アクアはシャルルの無機質な魔力に気付かず。
「なっ‼︎」
当たる直前で気づき直撃した。
「人の家の上で何してたのかしら、誰か知らないけど、手加減したからちゃんとノックしてから来なさい」
シャルルはアクアの存在に気付いてたようだが、誰か気付かずに撃ち落とした。
アクアはそのままセリアが隠れている場所に落ちていく。
ガサッバサバサバサ!
「?……ギャッ‼︎」
木の上に隠れていたセリアに直撃、アクアはセリアを巻き込み派手に落下する。
「セリアにぶつかったのかな?」
シャルルはその悲鳴を聞いたが、まぁセリアに絡まれたら並大抵の魔女も退散するだろうと思い、小屋に入っていった。
落下した場所ではセリアが目を回し無様に倒れている。
「イタタッ……なんなのよいったい私に気付いて撃ち落とした?
もう物騒なとこね……」
アクアは気絶せずに起き、倒れているセリアに気づく少し離れた場所に狼が座っている。
「あなたこの子知ってる?」
アクアは狼に聞くと、狼はセリアの住んでる小屋の方に歩き出した。
「そう、あそこに住んでるのね。
水よ力を貸しなさい」
アクアはそう言うと、セリアの身体の下から少量の水が湧き出し、セリアを浮かせる……とても不思議な水でセリアの衣類は濡れていない。
アクアが歩き出すと、セリアもその水に運ばれて後をついてくる。
「なかなか、いい結界ね……
この魔力むかし……」
アクアはそう思いながら結界を魔力でノックすると、通れるようになり何も疑わずにアクアはシャルルの小屋に向かって行く、小屋の扉をノックすると……
「はーい」
シャルルが出て来た。
(えっ‼︎アクア……)
シャルルはそう心で驚いた。
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