とろけてなくなる

瀬楽英津子

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2、少年は無理やり受け入れる

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 半分まで埋まった男根が、その更に奥の肉壁をじわじわと掻き分けていた。

「んっ……くぅッ……」

 強烈な圧迫感に息が詰まる。
 内臓が口から飛び出してしまいそうな衝撃に、反射的にお腹を守ろうと手が伸びる。
「このほうがラクだから」と、四つん這いの肘を崩してお尻だけを高く上げさせられ、後ろから尻肉を開かれて挿入された。

「息を止めるな」

 言われ、堅く結んだ唇を開いて、ヒッ、ヒ、と小さく呼吸する。

「もっと大きく吸って長く息を吐け」

 内臓を押し上げられる苦しさに喉が引き攣って上手く息が吸い込めない。
 みぞおちの辺りまで突っ込まれていると思うのは気のせいか。お腹に当てた手のひらに、逢坂おうさかの硬い男根が当たっているような気がして思わず輪郭を確かめる。
 身体の中に別の生き物がいる感じ。
 押し込まれた部分が火を噴いたように熱く、どこがというわけでなく身体の内側全部がジンジン痺れる。

「息を吐くタイミングで入れるからじっとしてろ……」

「やぁッ……む、無理ッ! そんな、おっ、き……ぃ……のッ……入らな……いッ……」

「いいから……俺に合わせてゆっくり息を吐け」

 背中に覆い被さるように身体を重ねた逢坂が、枕に埋もれたみやびの両肩を外側から掴んで胸の中に抱き竦める。
 逢坂の逞しい胸板が背中に触れる。生温かい汗の感触。
 うなじに顎を乗せられたと思ったら、ふうぅぅぅぅーッ、と、耳元に湿った息を吐きかけられ、雅はビクンと背筋を震わせた。

「はぁっ……や、やめ……」

「言われた通りにしねぇと、ツライのはお前だぞ?」

 誘導されるまま、逢坂に合わせて、ふうぅぅぅぅッ、と息を吐く。
 逢坂の肉塊が、受け入れたことのない部分にじわじわと侵入する。
 圧倒的な存在感。
 肉壁をこじ開け、狭い隙間を無理やり広げて奥へ、ズン、と突き入れる重い痛み。尋常でない圧迫に全身が総毛立ち、雅の口から絞り出すような呻き声が漏れる。

「あああああっ……」

「全部……入った……」

「ぜん……ぶっ……」

「そうだ。ちゃんと全部入ったぞ」

 深い部分に埋められた男根がドクドクと脈を打ち、雅の腹部を波立たせる。

「あっ、熱い……熱くて……おっきいのが……入ってるッ……」

「ああ。……俺も熱いぜ……てか、やべぇな、これ……」

「やっ……んっ……硬い……熱いのが……当たってる……」

「ーーーックショウ」

 ふいに、逢坂のくぐもった声が湿った吐息とともにうなじにかかり、雅は肩を竦めた。
 狭くて身動きが取れないのか、逢坂は、一番奥に男根を埋めたままピクリとも動かない。

「動か……ない……の……?」

 聞いたのは、逢坂を気遣ったからではない。雅自身の、いさぎよいとも言える諦めの早さと、嫌なことを先延ばしにしたくないという思い切りの良さが自然とそうさせた。
 どうせ逃れられないのなら、さっさと終わらせてしまいたい。
 遅かれ早かれ、いつかは逢坂のモノを完全に受け入れなければならないことは解っていた。その、いつか、が訪れただけのことだ。このまま挿入された状態で放っておかれるほうがかえって辛かった。 

「俺なら……へい……き……だから……」

 雅の問い掛けに、逢坂は、「うるせぇ」と、くぐもった呻き声を上げた。

「言われなくてもちゃんと動くから大人しく待ってろ……。てか、喋んな……」

「え……」

「言っとくが、動けねぇわけじゃ無ェからな。誰がこんぐらいでビビるか。腰が抜けるまで突きまくってやっから覚悟しとけ……」

 自分自身を奮い立たせるように言うと、逢坂は、雅の背中に密着した身体を滑らせ、奥まで入れた腰を少し引き戻した。

「ァはぁぁぁっ!」

 内臓ごと引きずり出されるような感覚に、雅の口から、聞いたこともないような声が漏れる。
 堪らずシーツを掴むと、背中に貼り付いた逢坂の腹筋がビクリと波を立てた。

「クソッ……喋んなっつったのに、なんて声出しやがる……」

「だって……」

「うるさい喋んな。喋ると腹に響く……」

「そんな……ぁッ……」

 逢坂は、引き戻した位置でまたじっと動きを止めている。
 興奮を鎮めているかのようだ。
 押し殺したような吐息が、抱き竦めらた背中に湿った熱気となってへばり付く。
 そのまましばらく静かな呼吸を繰り返すと、逢坂は、ふいに、雅の肩をギュッと握り直し、ゆっくりと腰を突き入れた。

「ひッ……っぁあッ……」

 再び強烈な圧迫感。
 圧倒的な異物感に後孔の肉ヒダという肉ヒダがキュッと締まる。
 
「じっとしてろよ……」

「あっ、やっ……待ってぇッ……」

 抵抗しようにも、背中に覆い被さられた状態で両肩を押さえ付けられているせいで身動きが取れない。
 そうでなくても、硬くて太い男根を身体の中心に杭のように打ち込まれ、身を捩ることすら出来なかった。

「そのまま、息を止めずに……力を抜け……」

「はっ……はぁッ……」

 最初は、奥まで入れて少し引き戻し、だんだんと引き戻す長さを伸ばして行く。
 いつもの性急な動きとは打って変わり、逢坂は、張り詰めた男根を雅の後孔の深い部分にゆっくりと挿入し、じわじわと引き戻す。
 奥に入れられる時の息が止まりそうな圧迫感と、引き戻される時の、内臓が引きずり出されるような排出感。逢坂が腰をスライドさせるたび、逢坂の硬く腫れた男根の先端が感じる部分を抉りながら内臓を突き上げ、肉ヒダを貼り付かせながらズルリと戻る。

「奥まで入ってるの……解るか……?」

「いや……あっ……ァはッ……」

 粘膜が焼き切れてしまいそうな感覚。なのに、痛くない。ただ、身体の中が異様に熱い。
 想像を超えた衝撃に感覚がバカになってしまったかのように、痛みを感じるはずの痛点が快感のスイッチに切り替わり、熱い痺れと切ない疼きを巻き起こす。

「少し早くするぞ……」

「……あぁ、そんな……う……動いちゃ…いやッ……」

「動けっつったのはテメェだろ」

「ぃやぁ……ダメぇッ……」

 言葉では騙せても身体は騙せない。
 拒む言葉に甘い吐息が混じり出す。たかが吐息。しかしそれは、雅の声を艶かしく湿らせ、逢坂の欲情を煽り立てた。

「気分出てきたみてぇじゃねぇか……」

「ちがっ……もっ……やめてぇッ……」

「この状態で止められるわけねぇだろ……」
 
 肩を押さえていた逢坂の手がいつの間にかお腹の下に回り、雅の腰をガッシリと抱え込む。この状態で引き寄せられたら逃れようが無い。
 逢坂は、雅の不安などお構いなしに、雅の中に埋めた男根を先が抜けてしまいそうなほど引き戻し、感じる部分を擦りながら根元まで突き入れる。

「くふぅッ……」

 苦しい。けれど泣いている暇はない。
 ずっぽりと引き抜かれる感覚に、身体の奥がぞわぞわと波を立てる。

「嫌っ! いゃぁ……あっ! あ!」

「嫌じゃねぇだろ。お前の奥、俺に吸い付いて離れねぇ。ここもこんなに硬くなってるし……」

 身体の奥が痺れすぎて、ペニスがこんなにも敏感な性感帯であることをすっかり忘れていた。
 逢坂に硬くなった竿を握られ、雅は反射的に背中を仰け反らせた。

「力むな。力むと、めちゃめちゃ絡み付く……」

 逢坂のざらついた指が裏筋をなぞり先端の割れ目をグリグリと擦る。
 敏感な部分を刺激されたことで、抑えていた欲求がストッパーを突き破った。

「ぃやぁぁぁっ! 嫌だっ! これ、嫌だッ! 離してッ!」

 枕におでこを擦り付けながら、片手で、お腹を抱える逢坂の腕を叩く。

「じっとしてろって!」

 逢坂は構わず雅の腰を抱え直した。

「あうッ!」

 股間に引き寄せた反動で、奥の奥の狭い部分に男根の先が滑り込み、雅の身体に電気が走った。
 雅は途端に悲鳴を上げ、逢坂も、グッ、と眉を顰めた。

「ちょっ……力、抜け……」

「嫌ッ! 嫌ッ! 出る……出ちゃうからぁッ!」

「だから力むな! ーーーッ、クソやべぇ。お前……マジで……」

「あぐっ! 嫌だぁッ! 出ちゃうッ! ダメッ! もっ、漏らしちゃうぅぅぅッ!」

 ぞぞぞぞっ、と背筋に悪寒が走ったのが先か、突然頭が真っ白になり、雅は枕の中にぐしゃりと顔を埋めた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「だから嫌だったのにッ! だから、止めて、って言ったのにッ!」

「そう怒るなよ。お漏らししたぐらいで何をそんなに怒ってるんだ……」

「ぐらい、じゃない!」

 雅の喚き散らす声が、真っ新なシーツの奥から逢坂を責め立てていた。

 逢坂の全てを受け入れた後、雅は、リビングに置かれたソファーの上で目を覚ました。
 新しいTシャツに新しいスウェットパンツ。
 逢坂が身体を拭いてくれたのか全身がさっぱりと気持ち良く、行為の後の独特な臭いもしない。
 シャワーを浴びていたのだろう。逢坂は、上半身裸にボクサーパンツ一枚で床の上に胡座をかいて座り、濡れ髪をわしゃわしゃとタオルで拭いながら、目を覚ました雅を、額に下ろした前髪の隙間からチラと見ていた。

『しばらくベッドは使えねぇからそこで寝てろ』

 言われ、雅は、自分がベッドを汚してしまったことを理解した。

『それにしても派手にお漏らししてくれたもんだ。マットレスの交換代もテメェの借金に追加しとくからそのつもりでいろよ』

 最初に、恥ずかしさ。次に、悔しさと腹立たしさが込み上げた。
 だから、嫌だ、と言ったのに。
 嘲笑うような逢坂の目を見た瞬間、堪えていた涙がブワッと噴き出し、雅は、慌ててシーツを引っ被り、逢坂に背を向けるように寝返りを打った。

『なんだ、なんだ。ようやく起きたと思ったらまたオネンネか。こっちはテメェの後始末で大変だったってのに、たいした御身分だなぁ』 

 言い返したい言葉は山ほどあるのに涙に邪魔されて何ひとつ声にならない。
 逢坂は、雅の様子など気にもかけず、弱い者イジメをするいじめっ子のように嬉々とした顔で雅に詰め寄った。

『恥ずかしくて起きれねぇのか? ま、あんだけド派手にイキゃあ顔も見せられねぇわな。しかも、イクときゃイクッって言えってあれほど言ったのにまた勝手にイキやがって、挙句、失神とか、マジであり得ねぇわ。俺も、色んな奴とやったけどお前みたいに手の掛かるヤツは初めてだ』

 人を小馬鹿にしたような笑い。やけにはしゃいだ声。シーツの上から雅の頭を揶揄うようにコンコンと小突く拳骨の感触。

『なんとか言えよコラ。ひょっとして拗ねてんのか? 解ぁったよ。笑わねぇからこっち向けって。もともとお前にゃ俺のはちとデカすぎたんだ。そんでも全部入ったんだから、お前にしちゃあ上出来だ』

 典型的なガキ大将。いつの時代もクラスに一人はいる、他人の失敗を鬼の首でも取ったみたいに、面白おかしく騒ぎ立てるヤツ。

『ほら。いい加減こっち向かねぇとマジで怒るかんな。あと10数えるうちに起きなきゃテメェがお漏らししたこと皆んなに言いふらす。ほら、いーちぃ、にぃーいぃッ……」

 最低最悪。
 嫌だと言ったのに。あれほど、やめて、と言ったのに。
 絶対に許さない。
 力では敵わないと知りながら、それでも胸の底から突き上げる激しい衝動を抑えることは出来なかった。
 雅は、

『触るなッ!』

 叫び、勢いよくソファーから飛び起き、枕元にしゃがみ込む逢坂を思い切り突き飛ばした。
 我慢がついに限界を超えた。衝動的な行動だったが、雅の反撃は逢坂の意表を突き、逢坂は、怒りに目を血走らせる雅を、床に尻餅をついたまま面食らったような顔で見上げた。

『お前、何、泣いてるんだ』

 泣き虫呼ばわりされるのは我慢ならない。しかし、本人の意識とは関係なく、雅の泣き顔は、涙に弱い逢坂の弱点を突き、逢坂を一瞬にして萎えさせた。

『嫌だ、って言ったのに! やめて、って言ったのに!』

『待て待て。なんで俺が逆ギレされてんだ。俺は別に……』

『うるさいッ!』

 形勢逆転。
 おろおろと取り繕う逢坂を振り払い、雅は、再びシーツを頭から引っ被り、拒絶するように逢坂に背を向けた。

「お漏らしぐらい、じゃないッ! こんなの俺だってあり得ない。あんなに嫌だって言ったのにッ! あんなに頼んだのにッ!」

「ケツの穴まで舐めさせといて何言ってんだ。糞でも漏らしたんならいざ知らず、ションベンのひとつやふたつ今更……」

「バカぁッ!」

 頭にカッと血が昇り、怒りとともに涙が噴き出した。
 逢坂への許せない気持ちが身体をワナワナと震わせる。叫ばずにはいられない衝動に駆られ、雅は、感情のままぶちまけた。

「そういう問題じゃ無いッ! あんたにはデリカシーってもんが無いッ!」

「デリカシー、って……」

「もういいッ! 触るな! あっち行けッ!」

 シーツを被ったまま、逢坂のいる方向へ脚を蹴り上げる。
 ズキン、と身体の奥に鋭い痛みが走り、反射的に脚を引っ込める。逢坂に責められた部分が息が止まりそうに痛い。痛みとともに逢坂との行為の記憶が甦り、雅は、悔しさに唇を噛み締めた。

「お前なんか嫌いだ! 大ッ嫌いだ!」

 わめき続ける雅に、逢坂は、いよいよお手上げ、とばかり声を上げた。

「わぁーったよ! 謝りゃいいんだろ! 謝りゃ!」

「謝って済む問題じゃない!」

「なら、どうしろっていうんだよ」

 雅は、ふと自分の心に意識を向けた。
 謝ってもらいたいわけでは無い。
 俺はただ。
 思った瞬間、自分でも知らないうちに、ひとりでに言葉が漏れていた。

「怖かったんだから……すごく……」

 逢坂が言葉を無くしている様子が、背後にハッキリと感じられる。
 どうしてこんな泣き言を言ってしまったのか。すぐに後悔したが、一度出た言葉は元へは戻らない。
「怖かった……?」と、問い掛けるようにオウム返しをする逢坂を背に、雅は、自分でもよく解らない感情に頭を軋ませた。

「俺の何が、怖かった、って言うんだ……?」

「…………」

「俺が乱暴にしたからか? 俺がお前の言うことを聞かなかったからか?」

 答えを言うならどちらもイエスだ。しかしだからといってそれが全てというわけでは無い。雅の中には、ひと言では片付けられない複雑な思いがあった。
 確かに、どちらも怖かった。
 しかし今は、それ以上に痛くて苦しい思いがある。
 借金を背負わされ、親に捨てられ、風俗に売り飛ばされ、それでも、どうせ逃れられないのならと運命を受け入れ素直に従った。それなのに、渾身の願いも聞き入れられず、無理やり犯された挙げ句、耐えられないほどの辱めを受ける。
 今更謝られたところでこの胸の痛みは無くならない。むしろ、謝って済まそうとしている逢坂に腹が立つ。
 しかし、ならどうすれば良いのかと聞かれたら、正直、雅にも上手く答えられなかった。
 怒りをぶつけたいのか。反省させたいのか。何をどうして欲しいのかも解らないまま、ただ逢坂を許せない気持ちだけがドロドロと胸を這う。どうにもならない気持ちを抱えながら、雅は、シーツの中で身体を丸めてしゃくり上げた。
 逢坂は、雅の枕元に座り込み、雅の、呼吸するたびヒクヒクと震える背中を仏頂面で眺めていた。

「黙ってちゃ解らねぇよ。あれでも俺なりにずいぶん優しくしたつもりだぜ? お前が嫌がってンのは知ってたけど、あン時の喘ぎ声なんてまともに聞く奴ぁいねぇ。それにお前だってアソコ勃ってたし、てっきり俺はお前も気持ち良くなってるもんだとばっかり。……それに、だいたい……」

 途中まで言ってふと黙り、気持ち声のトーンを落として逢坂は言葉を続けた。

「だいたい……これから売春ウリやろうって奴が、あんなことぐらい我慢できねぇんじゃ話になんねーだろ。向こうさんは金払って来てるわけだし、ンな、恋愛ごっこみてぇな優しいセックスなんてしてくれるわけが無ぇんだから……」

 だから何をしても良いって言うのか。
 雅は咄嗟に思ったが、逢坂に、「なんてのはただの言い訳だな」と先を越され、喉元まで出掛かった言葉を引っ込めた。

「すまん。お前が 売春ウリをやるのとこれは関係無ぇ。そんなもんは理由にならねぇな。N企画うちの客が特殊だからって、俺がお前を酷い目に遭わせていい、ってわけじゃ無ぇ」

 逢坂にしては珍しく落ち着いた声だった。

「だが、これだけは言わせてくれ。俺は別にお前を酷い目に遭わせたかったわけじゃねぇ。強引にしちまったのは、ちょっと調子ン乗ったっつーか。……その……お前が、あんまり良かったから」

「え……」と、雅は咄嗟に耳を澄ませた。

「今、なんて……」

 寝返りを打ってシーツから顔を出す。
 逢坂は、雅を見て一瞬驚いたように目を見開き、すぐに、思い詰めたような真剣な表情で雅を見た。

「だから、お前が、良かったから歯止めが効かなくなっちまって……」

 ポトリ、と、雅の凝り固まった心に、逢坂の言葉が、目覚めを促す一滴の雫のように落ちた。

「あり得ない、って言ったくせに……」

「あ……?」 
 
「お漏らししたから…あり得ない、って」 

「ああ、ありゃ……」

「また勝手にイッた、って。勝手にイッた挙げ
句、失神とか、マジであり得ねぇ、って……」

「だからそりゃ」

「お前みたいに手の掛かるヤツは初めてだ、って……」

 涙が次から次へと頬を伝うのに、不思議と胸のつかえがどんどん落ちていく。
 押し込めていた思いを吐き出しながら、雅は、自分の胸に渦巻くどうしようもない感情の正体が、逢坂に言われたことに対するショックであることを唐突に理解した。
 恥ずかしさも悔しさも勿論ある。しかし、雅を一番傷付けたのは、逢坂からの否定の言葉だった。

「俺、頑張ったのに……。あんなに大変な思いして、あんたの言う通り、あんたを全部……」

「だからアレは……」

「俺のこと笑ったくせに。俺のこと馬鹿にしたくせに……」

「解ったから、ちょっと待て」

「俺のこと馬鹿にして……からかって……」

「わあーったから、ちょっと待て、って!」

 ラチの開かない状況に、逢坂は、落ち着けとばかり、シーツで涙を拭う雅の両手を取った。
 そのままソファーに身を乗り出し、掴んだ手を雅の頭の両側で押さえ付ける。スプリングが軋んた反動で至近距離まで顔が近付いたが、逢坂は雅を離しはしなかった。
 雅は、涙でぐしゃぐしゃになった顔を隠すことも出来ず、羞恥に顔を歪めながら、視界の先にある、逢坂の、怒ったような困ったような顔を見上げた。

「クソッ! 一体どう言ゃいいんだよ。とにかくありゃ冗談だ。てか、ちょいとはしゃいじまっただけだ。本心じゃ無ェ。気分が良くてつい調子に乗っちまった。お前もそんぐらい解ンだろ?」

「解らないよ……」

「とにかく、お前をバカにしたつもりも、けなしたつもりも無ェ。むしろスゲェと思ってる」

「凄い……?」

「ああそうだ。お前は良く頑張った」

 たったこれだけの言葉が、雅の胸を打った。
 気持ちが表情に現れていたのだろう。同時に、雅を見詰める逢坂の口元が柔らかく緩み、瞳が優しい慈しみの色を浮かべた。

「俺……」

「いいからもう泣くな。酷いことを言って悪かった。お前はなんも悪くねぇよ」

「……本当に……?」

「本当だ。ついでに言うと、お前のありゃションベンじゃ無ェ。むしろ男が泣いて喜ぶ代物だ。だから自信持て」

 逢坂の厳つい顔が、別人のように優しい顔で笑う。
 目を閉じたのは涙が溢れるのを隠すためだった。
 しかし、直後、逢坂の唇に唇を塞がれ、雅は反射的に目を開けた。

「雅……」

 軽く触れ合ったのも束の間、逢坂の唇が唇をこじ開け舌を差し入れる。
 ねっとりとした、質感のある舌。熱いのはシャワーを浴びたせいばかりではない。振り掛かる吐息も熱く湿り、繰り返される呼吸が、心臓の鼓動の速さを映し出すように、荒く小刻みに鼻先を突く。
 興奮している、と言う以外に、雅は、この状態を表す言葉を知らなかった。
 雅が動揺している間にも、逢坂は、雅の緩んで少し開いた唇を舌の先で広げながら内側に舌を忍ばせ、奥に縮こまった雅の舌を自分の舌で絡め取って丹念に舐めほぐしていく。
 いつもの乱暴なキスが嘘のような繊細なキスだ。
 いつもはなんの躊躇もなく前歯をこじ開けて押し入ってくる舌が、今は、ゆっくりと雅の歯の隙間から滑り込み、上顎を舐め、舌を吸い、口の中の感触を味わうように隅々まで優しく舐めます。
 慣れない感触に頭がぼぉっとする。
 思わず声を漏らすと、逢坂がふいに唇を離した。

「やべぇ。勃っちまった……」

 一瞬、自分のことを言われたのかとドキリとした。

「まさかお前も……?」

 その、まさか、に、雅は慌てて逢坂から視線を逸らした。

「あんたがこんなキスするから……」

「お前がねだったんだろう?」  

「ねだってなんか……」

「目を閉じたじゃないか」

「あれはただ……」

 いいから黙れ、と再び唇を塞がれ、抵抗できなくされたところへ、逢坂が本格的に身体の上に覆い被さる。
 官能的なキスの影響か、逢坂がTシャツを捲り上げただけで、雅のピンク色の乳首が薄っすらと赤みを帯びて硬く盛り上がる。喜んだのは逢坂だ。

「美味そうな乳首だ。小さいが、綺麗な色だし、舌の上で転がる感じがエロくて良い…」

「気持ち悪いこと言うな……」

「褒めてるんだ。素直に喜べ」

 胸の上まで捲り上げて完全に乳首を露出させると、逢坂は、雅の胸に這いつくばって乳首に吸い付き、舌の先で転がした。

「あぁんッ!」

 激しく吸ったかと思えば、乳輪の柔らかい部分を唇で揉んだり舌の先で舐めたりしながらじわじわと責め立て、反対側の乳首を親指と人差し指で摘んで、すり潰すように揉み、指先でピンと弾く。
 緩急をつけた刺激に身体の奥がキュンと痺れ出し、下半身がどんどん熱くなる。
 雅の熱に誘われるように、逢坂の舌が、熱い吐息を吐き散らしながらみぞおちへを滑りヘソの下へと降りていく。
 下着に手を掛けられた気配に気付いて頭を起こした時には、雅の下着はスウェットパンツと一瞬に膝まで引き下ろされ、勃起したペニスが逢坂の目前に晒されていた。

「身体、しんどいだろうから後ろには入れねぇから……」

 膝に溜まった下着とスウェットパンツを足首から素早く抜き取ると、逢坂は、突然ソファーから降りてバタバタと寝室へ駆け出し、ローションを握り締めて戻ってきた。

「女ならこのまま雰囲気で行けるんだろうが、男は色々面倒だな」

 やはり逢坂は逢坂だ。優しい愛撫に惑わされてしまったが、ガサツな本質は変わらない。
 戻るなり、逢坂は、ボクサーパンツを脱いで完全に勃ち上がった男根を露出させ、雅を抱き起こしてソファーの上に後ろ向きに膝立ちにさせた。 
 ただこれだけの動きが辛い。雅の身体には、まだ、逢坂とのセックスの痛みがそこかしこに残っている。
 背もたれに掴まると、すぐに腰を掴まれお尻をグイッと手前に引かれた。
 声を上げる間もなく、ローションの冷たい感触がお尻の割れ目を流れ、雅は咄嗟に腰を引いた。

「うっ、うしろは使わない、って言ったじゃんかッ!」

「使わねぇよ」

 再び腰を戻され、股の間にローションをたっぷりと塗られる。太ももを外側から押されて脚を閉じさせられると、逢坂の硬く張った先端が太ももの隙間にぬるりと入ってきた。

「やっ、なにッ、これッ」

「素股だ。やったこと無ェのか?」

「あるかよ」

 ローションで滑りやすくなった太ももの隙間を逢坂の熱く滾った男根がズチュズチュと卑猥な音を立てながら往復する。
 硬い先端が、後孔の入り口の際どい部分に当たる。うっかりすると入ってしまいそうな微妙な角度だ。
 逢坂が腰を振るたび、逢坂の猛り勃った男根が、後孔の表面をなぞり、会陰と睾丸を擦りながら股間を突き上げる。
 股の内側に感じる逢坂の大きさと熱さに頭がぼぉっとする。
 入れていないのに、入れられているような感覚。感じたことのない奇妙な興奮。

「嫌だ……これ……なんか、変……」

 じわじわと押し寄せる甘い疼きに背中を仰け反らせると、逢坂の手が脇腹をくぐって股間に伸び、雅のペニスを手のひらに握り込んだ。

「あッ、やぁッ!」

 冷たいローションの感触にペニスがピクンと跳ね上がる。
 驚いたのも束の間、逢坂の節くれ立った手が、手のひらに絡めたローションをペニスにまんべんなく伸ばして激しく扱き始める。

「すげぇ、ガン勃ち。すぐにでもイッちまいそう」

「やだァ、もう……」

 そうでなくとも、普段攻められることのない会陰と睾丸を執拗に擦り上げられ、雅のペニスはこれ以上ないほど猛々しく盛り上がっていた。

「扱いてやるけどまだイクなよ」

「そんなァ……ッ……」

 ローションと先走りでぬめる雅のペニスを扱きながら、逢坂は自身の腰の動きをどんどん速めていく。
 赤黒く反り返った逢坂の男根が、後孔をかすめながら雅の白い脚の間を出たり入ったりする。卑猥なビジュアルに頭がぼぉっとする。扱かれる刺激と見た目のいやらしさに、否が応にも射精感が高まっていく。

「まだイクな。もうあと少し……」

 親指で先端の溝をグリグリと撫で回されたら一巻の終わりだった。

「だめっ、もうッ!」

 イクッ! と言ったのか、言わなかったのか。自分でもよく解らないまま、どこから出しているのか解らないような悲鳴を上げながら、雅は、前のめりにソファーの背もたれに射精した。
 逢坂は、雅がイッた後も雅のペニスを握ったまま腰を振り続け、やがて雅の背中に唇を押し付けながら射精した。

「ソファーもダメんなっちまったな……」

 鳴り止まない鼓動と荒い息遣い、絶頂の余韻が身体の隅々に波紋のように広がっていく側で逢坂の声が、湿った吐息とともに雅の背中にしっとりと絡み付いた。
 イクときゃ言え、とは言われなかった。
 逢坂は怒っていない。
『バカ』『クソ』『カス』とも言われなかった。
 妙な感じだ。
 しかしそれ以上に、逢坂の機嫌を気にする自分が妙だった。
 怒っていたのは自分の方なのに、逢坂が怒っていないことにかすかな安堵を覚える。
 妙な感じ。
 フッ、と雅の唇から嘲笑めいた吐息が漏れた。
 
「なに笑ってんだ、このクソガキが」

 間髪入れず、逢坂が、握ったままの雅のペニスをキュッと握り、雅は、「いてて」と苦笑した。
 
 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 逃走防止用の足枷は、後ろに長いチェーンが付けられリビングに特設された支柱に繋げられている。チェーンは、部屋の中やトイレを使うぶんには充分な長さだが、玄関とベランダにはどうやっても届かない長さに調節されており、違う意味で雅の関心を引いた。
 うなぎの寝床のような縦長のワンルームならいざ知らず、部屋数もそこそこあるマンションでどうやってこれを設計したのか。最初に支柱を決めて鎖を繋いだらたまたまこうなったのか、はたまた鎖の長さを測ってから支柱の場所を決めたのか。
 逢坂に尋ねると、『知るか』と素っ気ない返事が返ってきた。
 この部屋は、雅のようなモデル候補に性技を仕込むための専用部屋で、逢坂の自宅ではないらしい。
 どおりで逢坂には不似合いな部屋だと思った。  
 柄じゃないという以前に、自分の部屋にしてはまるで使いこなせていない感じ。例えばそれは、大きなソファーがあるのにわざわざ地べたに座るところや、エアコンの風量切り替えに手こずるところ、シャワーの強弱が上手く調節出来ずに苛々するところなどに現れ、たびたび雅を困惑させた。
 丸山との電話の様子から、逢坂が一番下っ端の組員で無いことは何となく察しはついている。とはいえ、こんな小洒落たマンションに住めるほど出世しているようにも見えなかった。
 丸山からは、成功者特有の金持ちそうなスマートな匂いがプンプン漂うが、逢坂からは泥臭いチンピラの臭いしかしない。
 ソファーより地べたの方が合うし、柔らかいベッドより煎餅布団のほうがしっくりくる。夏の熱帯夜に、畳の上にはみ出しながら大の字に寝転がり、シャツの裾を捲り上げて腹を掻いているオッサンのイメージそのままだ。
 想像したら笑いが込み上げた。
 思わず、プッ、と吹き出すと、ベランダにいる逢坂がサッシ越しに、雅を、シッ、シッ、と手で追い払った。

「あ……すみません。ガキが邪魔するもんで……。はぁ。なんべん言っても解らねぇクソガキで困りますわ。ええ。あっちの方もさっぱり。と言うか、狭くてまともに入らないんですわ。え? いやいや、ちゃんとやってますって。……それより、先にケツを永久脱毛しなきゃマズいんじゃないでしょうかね。今どき顔が良いだけじゃ太客はつきませんから」

 もう二日。
 逢坂と感情的なセックスをしてからもう二日が経っていた。
 あんなことがあったからと言って表立っては何も変わっていない。
 逢坂は相変わらずガサツで乱暴な性格のまま雅を雑に扱い、雅は、泣き喚いて逢坂に対抗した。
 セックスも、以前の一方的なセックスに逆戻り。二日前の、優しい、けれども、頭が蕩けてしまうような濃厚なセックスが嘘のように、まるで何事も無かったかのように、強引で自分勝手なセックスに戻ってしまった。
 もちろん、口の悪さも。

「しゃくりですか? 普通には出来るんですが、イラマがまだ……。すぐ嘔吐えずいちまうんですわ。ええ。確かにそういうのを好む客もいますが、アイツの場合はしゃくってる時の顔も不細工で……。はぁ……。厳しく指導してますが、まだまだ客を取れるレベルでは。……え? いや、そんなことは断じて。あっ、いや、手コキはバッチリなんですよ。なんなら足コキも仕込みます。はい。いえ。大丈夫です。はい。大丈夫ですんで俺に任せてといて下さい」

 いい加減な事を。
 雅は、足枷の鎖が届くギリギリのところで、電話を終えた逢坂が部屋に戻るのを仁王立ちで待ち構えた。

「誰が、『まともに入らない』だって? あれから普通に入れてるだろ!」

「盗み聞きか」

「盗んでねぇわ。丸聞こえだっつーの!」

 サッシを開けた途端噛み付かれ、逢坂が、野良犬を追い払うように雅を振り払う。
 
「逃げんなよッ!」

 引き止めることが出来たのは逢坂が手加減していたからだ。証拠に、雅がすれ違いざまにTシャツを掴むと、逢坂は、たいして抵抗もしないまま、予めそうなることが解っていたかのように大人しく立ち止まった。
 
「誰が逃げるか」

「解ンねぇよ。あんた嘘つきだもん」

「俺が、嘘付き、だ?」

「なにが、『ケツを永久脱毛』だ! 俺のケツは綺麗だわ!」

「見たことあるのか?」

「はぁ?」

「自分のケツをじっくり見たことがあるのか、って言ってんだ。悪いが、俺はお前よりお前のケツを見てるんだ。お前は綺麗だと思ってるかも知れねぇが、世の中にはお前より綺麗なケツをしたヤツはごまんといる。まともにケツが使えるようになったからって調子ン乗って、自惚れてんじゃねぇよ」

「またそれか。てか、ケツ使えること認めてんじゃん!」

 逢坂が、チッ、と舌打ちをする音が冷たく響く。
 艶の無い瞳。
 熱くなる雅とは対照的に、逢坂は、どんどん冷めて行っているようだった。

「いいからお前はもうこれ以上口出しするな……」

 独り言のように呟くと、逢坂は、雅の足元に身を屈め、足首に嵌られた足枷を外した。
 ジャラリ、と鎖がフローリングの床に落ちる。

「晩飯の時間だ」

 グズグズしていたら食事を抜きにされる。
 しかし雅は、その場から動かず、起き上がった逢坂の腕を掴んだ。

「なんだよそれ。わけ解んねぇ」

 逢坂は、雅の方を一切見ずに、雅の手を振り解いた。

「大人の話しにこれ以上口を出すな、と言ったんだ」

「もう十八だ。子供扱いすんな」

 逢坂は、「まだ、十八だろ?」と、ようやく雅の瞳に視線を向けた。

「ガキには解らねぇ事情があンだよ。ちょっと前まで学校でオベンキョーしてた奴が偉そうに口を挟むんじゃねぇ!」

 突き放すような視線に、雅の胸がズキンと痛む。
 この前はあんなに優しかったのに。
 ふと思い、そんなことを思う自分に愕然とする。
 俺は一体なにを。
 逢坂は、眉間に重苦しいシワを作りながら、「もう何も言うな」と激しく目で訴えかけている。
 厳しい視線。
 雅の思いを拒絶し跳ね返すかのような強い視線に、雅の中ですぐそこまで出掛かった答えが、再び胸の奥へと引き返す。
 代わりに訪れたのは、どう受け止めて良いのか解らない、胸が萎むような淋しさだった。

「俺……」

 収拾のつかない思いが頭をぐるぐる巡り、息が詰まるような緊張が身体を包む。
 逢坂は、潤んだ目を痛々しいほどに見開く雅を、自分の方が傷付いたような暗鬱な目で見返した。

「お前は何も解っちゃいねぇ……」

 重苦しい空気が辺りに立ち籠める。
 沈黙に耐えきれず目を閉じると、ふいに、逢坂に搔き抱かれるように胸元に引き寄せられ、雅は再び目を開けた。

「みやび……」

 名前を呼ばれたのは気のせいか。
 逢坂が何か言ったような気がしたが、心臓の音が邪魔をしてよく聞こえなかった。
 雅は、ただ、逢坂のポマードの匂いとタバコの匂い、男臭い汗の匂いの入り混じった匂いを嗅ぎながら、逢坂に抱き竦められるまま身を預けた。
 
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