元社畜の転生者は魔導士になりたい~魔王を倒す為に、訳アリ女の子と冒険者になります

めれ

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転生者は冒険者になりたい編

5話 ワイバーンと戦う

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「ぬおおおおおおあああ!!!!」
 
 雄たけびが鳴り響く。
 
 砕けた赤い鎧の彼は、禍々しい巨大なワイバーンに突撃をする。
 
 サーシャの魔法バリアを纏う彼の後ろから、俺は魔法を発動する。
 
 「ライトニング!」
 
  牽制の意味と雨で濡れている体に電気が通るかもしれないという意図で放つ。
 
 その雷光はワイバーンに着弾するも、効果が表れているとは到底思えない。

 何事もなかったかのように佇んでいるのだ。
 
 ワイバーンの目線は、向かってくるであろうバスタさんに向けられる。
  
 バスタさんはワイバーンの射程に入ると跳躍し、それと同時に両手に握られている剣は発光を始める。
 
 「剛一閃!!!!」
 
 首元目掛けて平斬りをかますバスタさん。
 
 ガキン

 と刃物を思い切り金属にぶつけたような嫌な音が響く。
 
 腕と翼が一体となったそれは、バスタさんの渾身の一撃を防ぐ。
 
 「ぐおおお!!」
 
 その翼を払う動作と共にバスタさんは吹き飛ばされ、バリアは簡単に砕け散った。
 
 吹き飛ばされはしたが、うまく防いだのかダメージは軽度な様子で、着地しよろける程度であった。
 
 「もう一度バリアを張ります!」
 
 サーシャは再び、杖を構えバスタにバリアを張る。
 
 俺は水色の魔法陣を展開し、フリーズランスをワイバーンに射出した。
 
 雨が降っているからか、着弾面は凍結しているようだったが、体を揺すする動作と共に砕氷した。
 
 勝てるビジョンが浮かんでこない。
 
 その後も、切りつけては跳ね返され、バリアを張りまた斬りかかる。

 これの繰り返し。
 
 ワイバーンからしたらもはや相手にされていない。

 赤子の手をひねるようなものだ。ダメージが通っているようには到底思えない。
 
 違う、遊んでいるのだ。

 自分より遥かに格下の、取るに足らない雑魚相手に絶対的な余裕。

 そう、大人が子供に殴られても平気な様に、子供がだんごむしで遊ぶように。それだけの格差。

 要は舐めプレイだ。
 
 斬る、弾く、斬る、弾く。

 翼で、尻尾で、頭で、咆哮でいなされる。

 この繰り返しは、バスタさんの体力を消耗させ絶望感だけが俺たちを襲う。
 
 再びバスタさんがワイバーンに斬りかかる。すると、怪物は剣を右翅で払う。
 
 バキン。
 
 その動作一つで、唯一の希望であるバスタさんの剣はへし折られた。
 
 そして、ワイバーンの口から黒い火球が繰り出され、バスタさんに直撃する。
 
 「バスタさん!!!」
 
 俺は叫ぶ。
 
 吹き飛ばされたバスタさんは、サーシャの横まで飛ばされる。
 
 「か、回復します!」
 
 バスタさんは生きていた。

 バリアのおかげで威力が軽減されたのだろう。しかし火傷と傷だらけの身体は立つのもやっとだ。
 
 サーシャはヒールでバスタさんの身体を回復するが、疲労が溜まっているのだろう。治りが遅い。
 
 それでもバスタさんは、ふらふら立ち上がろうとする。
 
 バスタさんが口を開く。
 
 「あぁ、ああ、俺は死なない。そう、死ねない。仲間が、家族が待ってる。こんなことで、はぁ、、負けられない。生きるんだよ、、、!!!」
 
 バスタさんは泣いていた。

 ベテラン冒険者と言われ、ここまで生き残ってこれた証も、プライドもこうも簡単に砕かれたのだ。
 
 「畜生、すまねえ、ベテランの俺が不甲斐ない・・・」
 
 あの元気と笑顔を向けてくれていた彼は、今ここにいない。
 
 「バスタさんは悪くありません」
 
 戦えるのは、俺しかいない。

 俺は前に出てワイバーンに右手を向ける。
 
 だが、絶望と恐怖そして放棄。悪感情が俺の中を渦巻く。

 そう思うと、上げた右手が思わず下がってしまう。
 
 ベテランと言われる冒険者を、遊ぶような化け物相手に俺は何ができるって?

 俺の魔法を喰らっても何も変わらないのに?
 
 無駄、無力、無意味、この言葉が頭に浮かび上がってくる。

 怖い、逃げたいの言葉も付随して。
 
 俺、気づいたら死んで、
 魔王を倒すために蘇らせられて、
 神から力をもらったと思ったらうまくいかなくて、
 冒険者にならないといけなくなって、
 それで、
 それで?
 
 普通の社畜だった俺が、こんな非常識な場所に来てうまくいけると思ったのが烏滸がましかったんだ。
 
 体が変わっても、俺自身は変わらないわけだしな。もう考えるのも面倒になってくる。
 
 何が魔法だ、
 何が転生だ、
 何が冒険者だ、
 何が魔王だ。

 なにもかも無駄。
 
 雨が諦めろと言わんばかりに強くなり、体が重くなるのと同時に精神を地に堕としていく。
 
 右手は既に下りていた。
 
 ごめんサーシャ、せっかく誘ったのに。
 
 ワイバーンは飽きたのか、空へ飛ぶ。

 そして、口を大きく開けたかと思うと口元には目に見えて、禍々しい魔力を溜めていた。

 その様は自分の力を誇示するかのようだった。

 お前らとでは格が違うのだと。
 
 そこら中を吹き飛ばすのだろうか。
 
 俺の人生って結局なんだったんだ。

 これで死んだら、どうなるのだろうか。

 地獄に行くのか、運よくまた前に居た世界に新しく生まれ変わったり。
 
 諦めよう。結局

 「俺は」
 

 




 「ヤナギさん!」
 
 はっとする。サーシャだった。
 
 雨に濡れた銀髪の彼女はバスタを治療しながら、俺に向かって叫んだ。
 
 「わたし、ヤナギさんにあの時、誘われてびっくりしましたけど、でも、嫌だなんて思っていません!」
 
 急に何を言い出すんだ。
 
 「会って、間もないですし、ヤナギさんがどんな人かも、わかりません」
 
 ・・・・・・・
 
 「だから!これから、あなたの事を教えてください!生きて!あなたの事を知りたい!」
 
 ・・・・・・
 
 「諦める前に、動いて、考えて、ミスしても繰り返すんです!」
 
 ・・・
 
 「それが人生だから!」
 
 あ・・
 
 「そんなものですよね!!!」



 ああ、思い出した。
 
 誰かに言ったことがある。
 
 慰めるときに、なんとなく言った臭い言葉。
 
 会社にいた時、俺に同行していた1年で辞めた後輩がやらかして、俺が上司に説教くらった時だ。
 
 「私、向いてないんですよ多分。先輩にいつも迷惑かけて本当に申し訳なくて・・・」
 
 新人なんだししょうがないといつも言ってはいたが、繰り返すとやはりつらいのだろう。

 俺はあまり気にしないタイプだったけど。
 
 「まぁ、新人なんだししょうがないって」
 
 「でも・・・諦めて会社辞めた方がいいんですよもう」
 
 「うーん、俺だって最初の頃まったく使えなかったし、めちゃくちゃ怒られてたけど、その怒ってきた上司だって最初そんな感じだったって他の人が言ってたらしいし、みんなそうなんだよ多分。とりあえず諦める前に動いて、考えて、ミスして繰り返してくとちょっとずつでも変わってくるもんだよ、大体。人生だってそんなもんじゃない?」
 
 新人に辞められたら困るから、とりあえず言ってみた言葉だった。

 でも
 
 「・・・そうなんですかね」
 
 彼女の顔は見えなかった。
 
 本人に響いたかどうかは分からない。結局辞めたし。
 
 でも、一番諦めていたのは俺だったんだよな。
 
 会社も、
 上司も、
 転職も、
 人生も、
 全部

 諦めていた、全部何しても無駄だって。
  
 物事に悪態ついて、自分の事を棚に上げて被害者面して、他責して、しょうがない、めんどくさいって。
 
 でも、こんな俺の事を初めて励ましてくれる、勇気づけてくれる、期待してくれる、

 会って間もない彼女。

 俺が誘ったくせにすぐに諦めてどうする。

 新しい人生なんだから。
 

 


 「そうだな」
 
 俺は激励の主旨に伝えた。
 
 「ちょっとずつ変わるかもしれないからね」
 
 「ヤナギさん!」 
 
 パンっと両手で自分の頬を叩き、ワイバーンに向き直った。
  
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