元社畜の転生者は魔導士になりたい~魔王を倒す為に、訳アリ女の子と冒険者になります

めれ

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転生者は冒険者になりたい編

4話 森で魔物と対峙する

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 俺たちは今、『ジュラン』の中を進んでいる。
 
 意外にも森の中は、青木ヶ原樹海の散策コースのような道がつづいており、そこまで歩くのに苦労はしない。
 
 それに、森が生い茂っているとは思えないほど明るいこともあり、若干安心感がある。
 
 そして今のところモンスターは全然見当たらない。隠れているのだろうか、もしくは息を潜め準備をしているのか。
 
 改めて、俺たちの依頼は2点。1つ目は薬草の採取。

 この森に生えている『アカナツメモドキ』を1つ採取するとのことで、奥の方に行けば結構生えているうえ、花が赤く目立つため比較的低難易度らしい。
 
 そして2つ目はスライムの討伐1体。

 スライムを倒し、スライムだと分かるものを証拠としてギルドに持ち帰る必要がある。討伐の際はバスタの協力は借りず、俺とサーシャで仕留めるわけだ。
 
 簡単な依頼らしいのだが、いざ見られていると緊張するものだ。授業参観の気分だ。
 
 「まあジュランのモンスターはそこまで強くない。むしろ弱いと言ってもいいかもな!初心者の為の森ってことだ!」
 
 都合良すぎないか?とは思うが、むしろこの生息分布だからこそ近くに『冒険者の街ローグ』があるのだろうと勝手に解釈しておく。
 
 サーシャは俺の横で、花を探しているのか周囲を見回しながら歩いている。
 
 そんなサーシャに俺は「見つかった?」と聞くと、サーシャは「見つからないですね」と返す。
 
 「周りを見てはいるんですけど、花より先にスライム見つける方が早そうですよね。はは・・・は」
 
 サーシャの話は途中で終わり、口を開けたまま一点を見つめたままだった。それにつられてサーシャの見ている方角を見る。
 
 「こいつ、スライム?」
 
 「あぁスライムだな!ちょうど1匹みたいだ」
 
 俺たちの進行方向には、青い水がそのまま丸く固形化したような、しかし触るとぶよぶよしそうな見た目の物体が現れた。

 これがスライムか、思ったより大きい。大体足から太ももくらいの大きさだろうか。
 
 初のモンスターとの戦闘、画面の中でしか見たことのない異形の姿。これから俺たちはこいつらと戦うことになるのか・・・
 
 「さて、対象を討伐してくれ!俺は見ているからな!」 
 
 「「わかりました」」と俺たちは口を揃えた。
 
 さて、と俺は考える。どの程度、どんな魔法が効くのかだ。

 さっき岩に向けて撃った「フレイムショット」を思い出すが、見た目が水のモンスターに火が効くのだろうかということ。

 そして一番は、ここが森であるということだ。森の中で火属性魔法を使った場合、誤って木に着火したとなると森林火災の危険性がある。となると・・・
 
 「来ます!」とサーシャの声が聞こえたと同時に、スライムはこちらに気が付いたのか、こちらに向かってくる。

 しかし、そこまで足は早くはない。
 
 俺は向かってくるスライムに右手を向け、構える。
 
 「フリーズランス!」と俺は唱えると、右手から水色の魔法陣が展開される。

 魔法陣からは握りこぶし2つ分ほどの氷塊が生成され、スライムに向け発射。
 
 見た目が水っぽいから凍るだろうと安直な考えで選んだわけだが、とりあえず様子見・・・
 
 ぎょっとした。あろうことかスライムは、水?で形成された自分の身体の一部を、矢のように3発こちらに撃ってきたのだった。
 
 「まじかよ」
 
 俺は呟く。

 スライムに魔法が着弾したところで、放たれた水の矢は容赦なくこちらに向かってくるだろう。
 
 どうする、撃ち落とすか。

 しかし、軽い疲労で隙が生じ魔法の発動が間に合わない。やばい。
 
 その時だった。
 
 「バリア!」
 
 その声と同時に、俺の目の前にはガラスのような障壁が現れ、べちゃッという音と共に三本の矢は壁に当たり弾けたのだ。
 
 「無事ですか!?」
 
 声の主はサーシャ。どこから出したのかは分からないが、いつの間にか身長より少し短いくらいの杖を持っていた。
 
 杖は銀色を基調とし、先端には青い水晶のような宝石と土星の環のような装飾が水晶を中心に浮いている。マジでどっから出したんだ?
 
 「助かった!ありがとう!」
 
 と俺はサーシャの方に顔を向け感謝を述べると、「無事でよかったです」と返ってきた。
 
 そしてスライムを確認すると、見事にスライムは氷結し大きな氷塊となった。
 
 こいつにとどめを刺すため、一呼吸を置き右手から黄色い魔法陣を出現させる。
 
 「ストーンフィア」の掛け声とともに岩石が発射され、スライムだったものは見事に砕け散った。
 
 なんとか仕留めたみたいだ、適度に疲労感を感じる。
 
 モンスターを初めて倒したんだ。あまり実感がなく、嬉しい気持ちは無くはないが、サーシャがいなければやられていたことを思い出し、多少の恐怖が頭をよぎった。
 
 一連の動きを傍観していたバスタさんは、ふぅと息をつく俺達に近づき口を開いた。
 
 「初討伐お疲れ!腰が据わってなかったし、十分じゃないか?ヤナギは火力としては申し分ないし、サーシャの援護もいいタイミングだった!だが、反省点もあるな」
 
 とバスタさんは少し真面目な雰囲気を出し続ける。
 
 「まず、スライムの発見が少し遅れたな。モンスターがいつ出てくるかも分からない以上、常に周りを警戒することだ。

 あと、スライムの攻撃だが、ヤナギは違和感に気づかなかったか?」
 
 俺に話を振ってきた。ただこっちに近づいてきただけだと思っていたが、何かあっただろうか。
 
 「いえ、気づきませんでした」
 
 「スライムはこちらに近づきながら、体を少し発光させていた。これは恐らく魔力をためていたのだろう。
何が言いたいかというと、戦闘時は相手の出方をうかがうことと、少しの違和感でも見逃さないように観察すること。そして、気づいた時の判断、行動が大事になる。 俺たちの事を待ってくれるほど、モンスターは優しくはない。

 やられるのに言い訳は通用しないからな、そこを念頭に置くように、だ」

 言ってることは分かる、いつ死んでもおかしくはない状況だ。正直なところ、俺はスライムだと思って油断していたのかもしれない。

 でも、初心者だし分からんよなぁと思わなくもない。俺が悪いんだけど・・・
 
 しかし、魔力をためると言っていた。魔力ってためられるのか、俺にもできるのだろうか。
 
 「はい、ありがとうございます。勉強になります」と俺はお辞儀をした。反論なんて余地はないし、面倒だし。

 サーシャも続けて「ありがとうございます」と感謝を述べる。
 
 「まあ、こういうのって経験だからな!これから吸収していけばいいさ!俺だって最初の頃なんて全然だったしな!さて、次は薬草採集だな!」
 
 ニカっとバスタさんは笑い、慰めをくれた。
 
 できた人だ。大体仕事で失敗したときは、上司からの理詰めと説教と始末書の3重苦ばかりで、いい人なんていなかったのに。

 目上の人にやさしくされるとはなんとも不思議な感覚だ。
 
 俺はスライムだったものの破片をポケットに突っ込み、バスタさんの後に続いた。しかしふと、思った。
 
 「サーシャそういえばさ、その杖ってどっから出したの?」
 
 そう、気が付いたらサーシャは杖を持っていたのだが、どっから出てきたのか気になっていたのだ。
 
 「これですか?感覚で出したりしまったりできるんです。こうやって」
  
 サーシャの両手で持っている杖は、光の粒子のように形をなくし消えた。なにそれ、すごい。
 
 へぇーと感心して見ていると、サーシャはえっへんと言わんばかりに得意げな顔をしていた。後で教えてもらおう。
 
 見たところ先ほど魔法を使ったサーシャであったが俺みたいに疲れている様子はない。

 俺と一緒で駆け出しだと思っていたが、魔法を扱うのは慣れているのだろうか。若干のジェラシーを感じてしまう俺だった。
 
 「おーい!早く来い!」とバスタさんは俺たちに声を掛けてきた為、急いでバスタさんの後を追うのだった。







 
 俺達はジュランの中を相変わらず進んでいた。
 
 薬草を探そうと周りを見渡すもそれらしいものはない。結構生えていると言っていたが本当だろうか?不安になってくる。
 
 その不安を助長するように、雲行きは怪しくなり森は陰りを見せ始めた。

 雨降りそうだな、濡れたくないんだけど。
 
 「もう少し先を歩くと開けた場所がある。そこに生えていることが多いから、もう少しだな!」
 
 バスタさんはそういって俺たちの方を向いた。

 やっと群生地にたどり着くわけか。目がおかしくなりそうだったから助かるなぁ。
 
 言う通り歩いていくと、森の中とは思えないほど開けた空間が目の前に飛び込んだ。
 
 かなりの広さの広場といった方が説明しやすいだろうか、広場というよりは草原といった方が近いだろうか。

 森の中にいたときの窮屈感がすっと消え、開放感が心の余裕を生んでくれるようで、俺は思わず「おおー」と声を出してしまった。
 
 「いいところですね、広々して森の中じゃないみたいです。あ、あれじゃないですか?」とサーシャは指を差した。

 差した方向には、花畑と差し支えないほどの様々な草花が生い茂り、その中には異様に目立つ赤い花があちらこちらに確認できた。
 
 「あれがアカナツメモドキだな!一輪でいいから取ってくるといいぞ!」
 
 はぁやっとか。見つけるのに3時間はかかった。雲行きも怪しいし、とっとと持ち帰りたいところだ。

 帰ってからも色々あるだろうしね。
 
 俺とサーシャは花畑の方へ行き、一輪花を摘むとサーシャは花を粒子にして消した。それ俺もやりたいんだけど・・・
 
 「ヤナギさん、これで任務完了ですね!」
  
 「ほんとね、帰ってから寝床も探さないといけないし、早く帰ろうか」
 
 しかし、ふと気配を感じる。

 スライムとは違う別の気配だ。
 
 どこだろう、周りにはモンスターの姿は見当たらないし・・・
 

 「空だ!」

 
 俺は声を張り上げる。
 
 空には3体のモンスター。

 禍々しい翼とその先端にはすべてを切り裂く2本の爪。

 鱗が生えているのか、灰青色のテカテカとした体に長い尻尾と2本のやけに筋肉質な脚。

 指は前に3本後ろに1本と異様な姿を観察できる。地上からではおおよそだが、体長は3メートルくらいだろうか。

 そうかこいつらは・・・
 
 「ワイバーンだ!」
 
 そう声を上げるバスタさんは既に気付いていたようで、すでに右手には剣を握りしめ戦闘態勢に入っていた。
 
 モンスターの迫力は凄まじく、背筋が凍るような感覚に襲われながらもなぜか目が離せない。

 それは好奇心なのか恐怖心なのか、俺の身体を固まらせた。
 
 それはサーシャも同じようで、体を少し震わせているように感じる。
 
 「ワイバーン3体だと!?こんなところに出てくるような奴らじゃないんだが・・・
 そうか、だから普段よりもモンスターの姿を見かけなかったわけか。ヤナギとサーシャは俺の後ろに!想定外の事態だ、俺が相手をする!
お前らにはまだ早すぎる!」
 
 バスタさんの掛け声とともに、俺たちは急いで彼の後ろに向かう。
 
 ワイバーン共もこちらを認識しているようで、大きな口は半開きになり、なんでも嚙み切れるような鋭い歯をこちらに見せつけてくる。
 
 バスタさんの後ろに着くと、「よし!」と一声し俺たちに言った。
 
 「大丈夫だ、ワイバーン3体くらいなら俺だけでなんとかなる!お前たちは見ているだけで大丈夫だから、手出しをするんじゃないぞ!」
 
 と俺たちに言い放った。その一言の心強さたるや流石ベテランといったところだ。
 
 先に動いたのは3体のうち中央にいたワイバーン。

 そいつは獲物を狩るがごとく滑降し、こちらに向かってきた。
 
 バスタさんは中腰で抜刀術のような姿勢になり、しかし相手から目を離さない。すると、剣は発光を始めた。
 
 「衝破斬空剣っ!!」

 技名を唱え空を斬るように、左から右へ剣を横なぎに振るう。その軌跡は半月の衝撃破となり、ワイバーン目掛けて飛んでいく。
 
 その鋭利な衝撃波はあろうことか、ワイバーンの身体を真っ二つに分割し一撃で仕留めたのだ。
 
 「すげえ」俺は思わず呟いてしまった。

 あの異様な怪物の1体を、剣一振りで倒してしまったのだ。ベテランの貫録を感じざるを得ない。
 
 空に佇むワイバーン2体は、仲間がやられたことを認知したのか、聞いたことのない甲高くおどろおどろしい奇声をこちらに発し、威嚇してくる。
 
 それを気にすることはなくバスタさんは、両足に力を込めた後、ワイバーン目掛けて超跳躍し接近する。

 人間じゃねえだろこんなん。
 
 剣を両手で握ったバスタさんは、ワイバーンがいるところまで一瞬で到着し、1体のワイバーンの腹を突き刺したと思うと、突き刺したワイバーンの腹を踏み台にもう片方の敵に跳躍。

 そして、両手で握った剣を上から振り下ろし、一撃で仕留めた。
 
 強すぎでは?

 こんだけ強い奴でも魔王の眷属にやられるっていうんだから、この世界の魔物って相当な強さなんだと実感してしまう。

 勝てる気がしねぇ・・・
 
 空からは、ワイバーンの死体と一緒にバスタさんも落下しており、ドスンと着地をした。

 骨折れないんだ・・・

 「な!大丈夫だったろ?」
 
 そういうとニカッとこちらに笑顔を向けたバスタさんは、こちらに近づいてきた。怖いのはあんたの方なんだけど・・・

 「す、すごいですね、一瞬で・・・」
 
 サーシャも今の光景を見て驚いている。
 
 「あのくらいの奴らなら朝飯前さ!お前らも、いつかこんくらい強くなるさ!アハハ!」
 
 なれる気がしねぇ・・・と思いながらバスタさんを見ていると、バスタさんは握った剣でワイバーンの爪を剥ぎ取り、持ってくる。
 
 「一応持ってって、ギルドに報告すると報酬もらえるかもしれないしな!一応だ!さて、ローグに戻るぞ!」
 
 そういってこちらに向かってくるバスタさん。
 
 ドン!

 と大きな着地音が鳴る。バスタさんの後ろだ。
 
 「バスタさん!!うしろ!!!」
 
 「なっ!!!」
 
 俺の声掛けも虚しく、彼は俺らの方向に吹き飛ばされた。
 
 「大丈夫ですか!手当を!ヒール!」とサーシャは倒れたバスタさんに一瞬で取り出した杖を向け、魔法陣を出す。回復魔法なのだろう。
 
 バスタさんの赤い鎧は破壊され、むき出しの皮膚は軽くえぐれている。相当な威力なのだろう、俺は攻撃してきた奴の方を見た。
 
 唖然とした。

 見た目はワイバーンであるのだが、10メートルはあるだろう大きさで全体的に禍々しく尖っているように見える。

 体は黒光し、濃い紫のオーラを纏っているようだった。

 同じワイバーンのはずなのにさっきの奴らとは明らかに格が違う。なんなんだこいつは……
 
 ワイバーンは、大きな口を開けこちらに奇声を発する。大きすぎて耳を閉じないと頭がおかしくなる。
 
 「悪いドジした・・・ぐっ!」
 
 回復を終えたのか、バスタさんは立とうとするが片膝をついてしまう。
 
「無理をしないでください!まだ回復に時間が掛かります!」
 
 サーシャは息を切らしながらも立とうとするバスタさんを止めに入ろうとする。しかし、バスタさんはいらないとばかりに手で払い無理やり大地に立った。
 
 「あいつは恐らく、魔王の眷属だ。明らかに他の奴と違う。
いいか、お前らは逃げろ、俺がここで食い止める。」
 
 そういうバスタさんは剣を両手持ちし、力を入れる。無理だ、あのバスタさんを軽くあしらったんだ。
 
 勝てるわけがない。
 
 「バスタさん俺らも戦います!」
 
 「やめろ!お前らがいても変わらん!未来のある若者をここでやらせるわけにはいかない!逃げるんだ!」
 
 俺の提案は却下される。

 確かに、駆け出しの俺達がいても意味ないかもしれない。

 でも、1人でなんて行かせることが許せない。
 
 その時だった。

 魔王の眷属であろうワイバーンは雄叫びを上げるとともに、魔法陣を展開したかと思うと黒い炎を空中に放つ。

 それが俺たちの退路を塞ぐかのように、俺たちの後方に降り注ぎ、黒い炎が広がり始めた。

 俺たちは退路を断たれたのだ。
 
 「ぐっ・・・クソ、仕方がない。俺が前に出る、お前らは後方で援護を!」
 
 「「はい」」と俺とサーシャは、バスタさんの指示に返答する。
 
 俺が今使えるのは、
初級?魔法の火属性のファイヤーショット、
氷属性のフリーズランス、
地属性のストーンフィア、
 そして雷撃を放つ雷属性のライトニングの4種類だ。

 ほかの魔法は浮かんでこない。しかも、そう何発も撃てないことは体で分かる。
 
 サーシャが回復と防御の魔法を使えることは分かったが、頼りすぎると魔力切れを起こしてしまう。
 
 俺の中には、恐怖よりも若干の諦めを感じてしまった。

 バスタさんが一撃で吹き飛ばされたときにもう、無理だなと気付いてしまったのだ。
 
 その諦めを助長するかのように空からは雨が降り注ぎ、身も心も重くなっていく。
 
 そんな雨でも黒い炎は消えない。
 
 
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