元社畜の転生者は魔導士になりたい~魔王を倒す為に、訳アリ女の子と冒険者になります

めれ

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転生者は冒険者になりたい編

3話 ベテランおじさんと任務に行く

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 俺たちは今北門にいて、ベテラン冒険者とやらを待っているところだ。さっき俺を止めた男はおらず、人が代わっていた。
 
 門を出入りしている人たちを見続けて30分ほど待っただろうか、それらしき人物はまだ見えない。そもそも、どんな人か知らないし。
 
 「ヤナギさんあの・・・」
 
 話しかけてきたのはサーシャだった。俺は「ん?」と返事をする。
 
 「冒険者ってもっと自由になれるものだと思ってたんですけど、厳しいんですね・・・」
 
 「俺も思った。それくらい、今ギルドが危機感を持ってるってことなんだろうね。魔王軍の眷属にベテランがやられてるって話だし」
 
 ベテランとその眷属がどれくらいの強さなのかは分からない。ギルド的にやばいと思うくらいには、ある程度強いと思うんだけど。
 
 しかも、魔王「軍」って言ってるくらいだ、勢力は測り知れない。こんな奴らと俺たちが戦うって、無理難題では?と少し不安がよぎる。
 
 しかし、一応神様から能力をもらっている以上、魔王軍に匹敵するにはなり得るよな?というか、まだ魔法使ったことないんだけど。
 
 「そういえばヤナギさんって、どんな魔法が使えるんですか?」
 
 サーシャから答えの難しい質問が来た。俺もそう思う。
 
 「いや、俺もまだ使ったことなくて……」 
 
 そういうとサーシャは「え?」と少し驚いていた。
 
 ここで疑問が生まれる。果たしてサーシャに俺が異世界から来たから使ったことがないと伝えた方が良いのだろうか、ということだ。試しに言ってみようか。
 
 「実は俺、、、」
 
 言葉が出なかった。正確には、言葉を発する瞬間に喉を締められる感覚だ。意味が分からない、何故?
 
 転生に際して、天使が何か俺にしたのだろうか。すると俺が転生を知られることで、不都合が?別にこのくらい大丈夫だろと思うのだが、言えないものは仕方がない。
 
 「実は親からの言いつけで、幼少期から今まで魔法を封印してたんだよ。強すぎるからかな?でも、この年になって冒険者になるって言ったら魔法を使うことを許可してくれたんだ。あはは……」
 
 くっそ苦し紛れだった、もし俺だったらなんだこいつって思う。
 
 「そうだったんですか・・・なんというか、大変だったんですね」
 
 サーシャは意外にもすんなりと信じてくれたようだ。純粋なのか、違和感を察して流してくれたのか。どちらにしろめちゃくちゃいい人だ。
 
 すると、俺たちに近づく影を感じた。 ハッと俺たちが振り向くと、そこにはガタイが良く赤い鎧を身に纏い、腰には剣を装備し、顎髭を蓄えた40代の男性がリュックを背負って立っていた。この人か?
 
 「君たちが仮任務の冒険者見習いかな?」
 
 赤い鎧の男性はニッっと笑い、気さくに話しかけてきた。間違いないようだ。
 
 「はい、あなたがベテランの方ですか?」俺はそう聞くと口角をさらに上げ答えた。
 
 「あはは、そんなベテランなんて大層なもんじゃないさ!ただ歴が長いだけのおっさんだよ」
 
 すごく明るいおじさんだった。しかも謙遜してる当たり、いい人そうだ。
 
 「俺は、バスタ!いつもは『獣狩りの頂』ってパーティに所属してる剣士だ。よろしくな!」
 
 バスタさんはそう挨拶をすると握手を求めてきた。マジでいい人そうだ。
 
 俺は男性に握手をし、自己紹介をする。
 
 「俺はヤナギって言います。えーと、魔法職です。色々とご迷惑かけると思いますけど、よろしくお願いします」
 
 「ヤナギか、よろしくな!そんなかしこまらなくていいって、気楽に気楽に!そこのお嬢さんは?」
 
 と次はサーシャに声を掛けた。サーシャは少しもじもじしてるようだ。人見知りか?
 
 「あの、サーシャです。回復とか補助?です。よろしくお願いします・・・」
 
 「サーシャか!かわいらしい嬢ちゃんじゃないか、俺のところに来ないか?って冗談だよ!あはは!」
 
 明るいが、正直ちょっとうざい。今までの人生でこんな人見たことないんじゃないかってくらい熱い。会社の上司は大体目が死んでたので、ある意味新鮮に感じる。
 
 「さて、じゃあいくか!基本俺は教えはするが、よっぽどのことがない限りは戦闘に参加はしない。まあ、そこまで難しい依頼でもないから肩の力を抜いて冷静に、だ!」
 
 バスタさんは歩みを始め、その後を追うように俺たちも歩き始めた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 俺たちは今、『森林ジュラン』に向かっており、草原を歩いていた。
 
 バスタさん曰く、『ジュラン』は比較的危険度の低いモンスターしか生息していないらしく、まだ日の浅い冒険者がよくここに来るとのことだった。そこに生息しているスライムも無論例外ではない。
 
 あと、バスタさんが言っていたのは仮任務についてだ。実は仮任務自体ギルドでは久々とのことで、そもそも仮任務は初心者冒険者が新しくパーティを発足するときに執り行われるのであまりない事例だという。
 
 ほかの人はどうなのかというと、初心者は他のパーティに入れてもらう為手ほどき等はパーティ内で事足りるし、新しくパーティを作るのは所属パーティから独立して補充する人が多いそうだ。  

 説明を受けると、まあそうかと納得はするがそういうのって受付が最初に説明することだよな?妙に腑に落ちない。
 
 「今って冒険者になる人が少なくなってるって聞いたんですけど、本当ですか?」
 
 「そうだな、昔に比べたらだいぶ減ったなあ。今と違って昔は毎日パーティが発足されるくらいには賑わっていたもんだな!だが、今はちらほら新人がパーティに加入するくらいで、自分からパーティを立ち上げるなんて珍しくなったよ。お前ら、よく自分たちで立ち上げようと思ったよな!」
 
 バスタさんは感心しているかのように顔を俺に向けた。
 
 「そうですね、俺ら魔王の討伐をしたくて冒険者やろうと思ったんですけど、受付の人が今のパーティは魔王討伐に消極的だと言っていたので、パーティに入るより自分で立ち上げた方が効率的かなと思いまして・・・」
 
 「魔王討伐か!壮大な夢だな、敬服だ!確かに、魔王討伐しなくても生活はできるしある程度報酬も厚い。被害が出ていると話は聞くが、自ら命を捨てる覚悟で立ち向かうやつも少ないのだろうな」
 
 やはりそうなのか、言わんとすることは分かる。彼らにも生活がかかっているし、家族とか守るものがあると、迂闊に危険なことに首を突っ込めないのだろう。
 
 被害が出ていることは知っていても、遠方の事だと自分のことのように感じられないのもまた事実だと思うし。
 
 するとバスタさんは「あっ」と思い出したように足を止め、誰も居ない左の方向を向いた。
 
 何かと思い俺も目線の先を見ると、10メートル先くらいに俺の身長の倍はあるだろう岩が不自然に佇んでいた。岩がどうしたのだろうか。
 
 するとバスタさんは俺の方を向き、口を開いた。
 
 「ヤナギは魔法を使うんだったよな?森に入る前に見ておきたいんだが、あの岩に魔法を撃ってみてくれ。どんなもんか見ておきたい」
 
 確かに、ここまで一度も俺の能力を使ったことがなかった。これから魔物と戦うんだ、今のうちに使っておかないと流石にまずい。
 
 「わかりました、やってみます」と俺は岩の方向を向いた。
 
 「あれ?」
 
 不思議だった。魔法を使うとなると、体が覚えているように魔法の使い方がわかるのだ。食事をとるとき何気に箸を持てるのと同じように、体に染みついてるような感覚。
 
 そして、どんな魔法が使えるのかも頭に入っていた。
 
 俺は右手を岩に向け、狙いを定める。すると、手のひらに手と同じサイズの赤い魔法陣が出現した。そうこれから撃つのは火属性魔法。
 
 「フレイムショット」
 
 魔法陣から野球ボール程の火球が出現し飛ぶと思うと、狙った方向に火球が高速で飛んでいった。
 
 火球はあっという間に10メートル先の岩に着弾し、ドゴンと大きな爆発とともに岩が半分に粉砕された。
 
 これが魔法か・・・すげえ、とても言葉で言い表せない感動がこみ上げてくる。
 
 それを見ていたバスタさんは「ほほう」と顎に手を当て感心しているそぶりを見せた。
  
 これ、魔法って疲れるな。放った瞬間に50メートルダッシュしたくらいの疲労が体を襲う。え、魔法って無限に使えるんじゃなくて?
 
 「うむ、駆け出し冒険者にしてはなかなかの威力だな!しかし、拾う具合から見ると魔法を使い慣れていないな?」
 
 とバスタは俺に声を掛けてきた。いや、今初めて魔法を撃ったんだけど、、、納得いかない。
 
 「魔法ってこんな疲れるんですね、、、」
 
 「そら、慣れてないとそうだろう!普段から使わないと力加減だとか変に力が入ったりだとかな。俺は剣士だから専門外なんだが、パーティの魔導士曰く魔力は水を貯蔵する樽、魔法を使うときは樽についている蛇口を必要量に応じて捻るイメージだそうだぞ。蛇口を捻ると当然水が出てくるだろう?魔力を水と置き換えて話すと、魔法を使い慣れていないやつは、蛇口を捻るときと水が流れ出るときに、体に負担がかかるそうだ。そして、仮に蛇口を無理にこじ開けたとき、当然体には大きな負担がかかる。これはもう訓練と慣れでどうにかするみたいだな!」 
 
 なるほど、わかりやすい例えだ。そしたらめちゃくちゃ強い魔法を使うとなると、相当体に負担がかかると。いや、思ってたのと違うんだけど、、、
 
 無限の魔力を使って隕石降らすレベルの魔法をずっと撃ち続けるみたいな、そんなイメージをしていたのに現実がこんなに厳しいとは、、、
 
 「まあ要は経験だ!練習だ練習!」
 
 とバスタさんは笑顔で俺に言った。
 
 「ちなみに無理やり大きい魔法を使ったらどうなるんですか?」と俺は聞いてみた。
 
 「上級魔法のことか?あー、昔俺の仲間が、ワイバーンの群れを一網打尽にするって言って覚えたての雷魔法をぶっ放したんだが、撃った瞬間にぶっ倒れて気絶してたなぁ。2日くらい寝てたんじゃないか?無理に上級魔法を使った反動と魔力切れで相当体に負担がかかったんだろうな、起きた後もずっと具合が悪そうだったぞ!懐かしいなぁ!ハハハ!!」
 
 バスタさんは笑いながら昔の話を教えてくれた。
 
 つまりあれか?タバコ吸い始めたときはニコチンクラクラと咳が出るけど、吸い続けると慣れてなんともなくなって重い煙草も吸えるようになるみたいな、そんなイメージだろうか?
 
 何気なしにサーシャの方を見てみると、たまたま大きな目と目が合う。目が合うと彼女はニコッと笑った。
 
 「ヤナギさん魔法すごいですね!なんというか、頑張ってください!」
 
 「ありがとう、でもこの調子だとそんなに何度も撃てなさそうだし、練習するよ」
 
 俺に気を使ってくれたのだろうか。
 
 兎に角、これでは実践の時にあらゆる隙を生じてしまう。何とか考えないといけないな。

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 俺たちは森の入り口前まで来ていた。ローグからそんなに遠くもないものだったな。
 
 すぐに森に入るのかと思っていたのだが、前を歩いていたバスタさんが足を止め、俺たちの方へ振り返った。
 
 「ここから森に入るが、『ジュラン』に入るとモンスターと遭遇する。ここで少し休憩して飯を食おうか!」
 
 そういうとバスタさんはその場に座り込んだ。確かに、この世界に来てから飯を食っていない。あまり腹は減っていないが、スタミナをつけることに越したことはないだろう。
 
 でも俺飯なんか持ってないんだけど・・・
 
 「すいません、私たちごはんなくて・・・」とサーシャが俺の代わりに言ってくれた。ありがたい。
 
 「大丈夫だ!俺の弁当を分けてやる、というか多すぎるから食ってくれ!」
 
 するとバスタはリュックから四角三段の弁当箱を取り出した。バスタが開けると、三段全て卵サンドであった。この量のサンドウィッチを用意するって相当根気があるだろ、てかこの世界にサンドウィッチあるんだ。
 
 「さあ、食ってくれ!」とバスタはサンドウィッチがぎっしり詰まった弁当をこちらに差し出してくれた。
 
 「すみません、お言葉に甘えていただきます」
 
 先に手を伸ばしたのは意外にもサーシャだった。相当空腹だったのだろうか、気が回らず少し罪悪感を覚えた。社会人だったのに恥ずかしい。
 
 「ありがとうございます、頂きます」と俺もサンドウィッチの群れに手を伸ばし、頬張った。
 
 結構サンドウィッチうまいな。俺の世界みたいな添加物マシマシの食い物に比べると味は薄いが、全然良い。むしろ胃もたれの心配が無さそうだ。
 
 「これうまいですね、バスタさんが作ったんですか?」と俺。サーシャは横で小さな口でサンドウィッチを頬張りながら、「うんうん」とうなずく。
 
 「いやいや、俺の嫁が作ったんだよ!任務の時はいつもこの弁当なんだ!アハハ!」
 
 「奥さんいらっしゃるんですか?」
 
 「あぁ、見るか?」
 
 バスタさんは1枚の写真を取り出した。そこには正装の男女が座っており、女性の腕の中には赤ん坊がいる。奥さんとお子さんだろう。結構美人だ。
 
 「うわあ、お綺麗ですね、この子はお子さんですか?」とサーシャは写真を覗き込みバスタに質問をした。興味津々みたいだ。
 
 「そうだ、ロイって言ってな!写真が5年前だから今は5歳だ!男だからかもう元気すぎてな、嫁も手を焼いてるよ」
 
 「ロイ君っていうんですかぁ、男の子いいですね~。ゆくゆくは冒険者に?」
 
 「ハハハ!どうだろうなぁ。俺はあまり冒険者にはなって欲しくはないが、まあ本人次第だなぁ」
 
 バスタさんは写真を見ながら微笑んでいる。まあ、父親としては自分の息子が、命に危険が及ぶようなことをして欲しくないよなぁ。前の会社の先輩も、子供には公務員にさせるって言ってたっけ。
 
 俺はサンドウィッチの3個目に手を伸ばしながら適度に相槌を打ちながら話を聞いている。反対に、サーシャはサンドウィッチを両手に持ちながら前のめりになっていった。女性としては、やはり家族とか、そういった話が好きなのだろうか。結婚願望があるのか、俺には分からない。というか、サンドウィッチ減るの早くないか?気が付くと2箱目の半分まで無くなっていた。
 
 「嫁はもともとギルド受付に勤めていてな、俺が猛アプローチしてやっとこさ折れてくれたんだ、ありがたい話だよな」
 
 「バスタさんからなんですねぇ、なんか素敵です」
 
 「ん?お前らはできてるんじゃなかったか??」
 
 !?

 何ってんだこのおっさんは!どっからその話が、と思ったがもしかしたら俺がサーシャに頭を下げた件か?でも、あの時俺はちゃんとパーティにって言ったし、いやいや。
 
 それを聞いたサーシャは俯いてしまった。ごめんって。
 
 「いや、俺らそういうのじゃ!てかどっからその話が!」
 
 「違うのか?噴水のところでプロポーズしたんだろう?話広がっているぞ?ハハハ!」
 
 やはりプロポーズだと勘違いされているみたいだ、違うんだけど。俺が訂正しようとするものの言葉を被せてくるバスタさん。
 
 「まあまあ!いいじゃないか!それに守るべきものがあった方が、生存率はぐんと高くなるからな!」
 
 「そうなんですか?」
 
 「ああ、俺の経験則だけどな!パーティとか家族とか、そいつらを守るんだって自分の動機づけにするんだ。そうするとどんな逆境でも苦難でも、不思議と力が湧いてくるもんだ。覚えていた方がいいぞ」
 
 普段なら内心、恥ずかしい話だとふてくされているところだが、本人は至って真面目なようだし、なによりベテランという肩書きがある以上妙に説得力がある。
 
 「だから、ヤナギもサーシャの事を思って励むんだぞ!ハハハ!」
 
 「いや、だから・・・」と訂正しようとするも、バスタは聞く耳を持たない。もういいや、面倒になってきた。サーシャもなんか言って欲しいのだが、未だ俯いたまま、しかし飯は食っていた。実はこいつかなり腹ペコ属性なのだろうか。

 「さて、そろそろ森に向かうか!気を引き締めろよ!」
 
 5分ほど経ち、バスタさんは弁当を片付けその場に立った。

 俺らは同じように立ち、バスタの背中を追うように『森林ジュラン』へと入っていった。
 
 サーシャ結局1人で弁当1箱半食ったんじゃないか?それでもけろりとしている様子を見ると、ある意味関心を覚える。よく食えるな、その小さな体のどこに飯が入っているのだろうか。

 これは、俺の中での永遠の謎なのかもしれない。
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