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怪しい彼女と謎編
18話 初めの一歩
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夜が明けると、俺の体は若干の違和感を残しながらも、ほぼ回復に近い状態になっていた。
前回の時はもう少し症状が長引いてたんだけど、日頃の鍛錬で身体に魔力が慣れて来たって事なのかね?
昨夜の一件でサーシャは、俺に対する態度は軟化したように見え、普通に?話せるくらいにはなっていた。
ちょくちょくサーシャは口ごもったり下を見たりするのだが、昨日の告白を気にしているのだろうか?
リリナの方は、俺を見て何故かクスクス笑っているのだが、もうこいつは良いかなって思っている。
そんなわけで、俺たちは管理長に挨拶をし採掘場に行く許可を改めてもらった。
護衛兵の人達にも挨拶を交わしたのだが、1人いなくなっていた。
聞くところによると、新人を探しに行ったとの事で、どのくらい時間がかかるかは分からないとの事だった。
人に迷惑をかけてダメな新人だなぁと心の中で思っておく。
「道は広いけど、採掘場って結構暗いとこなのね」
「そうですね、灯りはないですし、魔道具がないと進めませんよ」
で、現在俺たちは採掘場の奥へ向けて進んでいるところだ。
最深部までは、割と道の広い洞窟になっており、また一本道であるため迷う事はない。
前に魔道具屋で買ったカンテラで足元を照らしながら進んでいるのだが、これが割と明るい。
しかもこのカンテラ結構長持ちするもんだから、灯りを点す魔鉱石には感謝だな。
日本にもあればよかったのに。
「ちょいちょい魔物がいるけど、襲ってこないのね」
『ブラックバット』を何回か見かけたリリナは、「へー」と何やら感心したように呟いた。
「基本的にここら辺の魔物は襲ってこない事が多いんだよね」
「じゃあ昨日の魔物はなんだったのよ」
「わたしたちもあんな魔物、初めて見ましたよ。明らかにここら辺の魔物では無いですね」
あんな海にいそうな甲殻類の魔物なんて、こんな所にいる方が妙だ。
奥に何かしら発生する原因があるか、もしくは誰かが意図的にこちらへ連れて来たか、謎は深まるばかりである。
「あ、もう少しで最深部ですよ」
「結構すぐ着くのね」
洞窟から見える採掘場最深部に入る、大きめの入り口を抜け、俺たちは中に入った。
「はえー、ひっろいのね~」
俺たちも初めて来た時、同じ感想だった。
なんでも全長は2.3ヘクタール程度で、かなり広い。東京ドームで言うと半分の大きさだ。
魔鉱石自体が発光しているためなのか、採掘場内部は比較的明るく感じ、プラネタリウムを思わせる。
俺たちの目の前には大きな穴があるのだが、球場の客席のように段々で下る事ができるため、比較的安全である。
「襲ってくる魔物もいないし、こんな安全だったら別にあたしらが来る必要ないんじゃないの?」
「あれ見てみ?」
穴からすぐの段には『ストーンモーグ』の姿があり、なにやら岩壁を掘っているようだ。
「あいつが何よ?」
「あれ今魔鉱石掘って食う所なんだけど、あの状態で近づいたら襲ってくるからね?しかも、結構硬い」
「え、あんなんが?」
「うん、加えてあいつ討伐禁止になってるから気絶させるしかないし、すごい面倒なんだよね」
「見てる分には可愛いんですけどねぇ・・・」
「とりあえず、迂回しながら降りて行こう」
俺たちは『ストーンモーグ』に注意を払いつつ、穴を下りていく。
俺たちが進んでいる大きな穴も同様に、魔鉱石が眠っている影響だからか、ポツポツと仄かに明るく、幻想的な気持ちにさせてくれる。
「すごい綺麗ね~、妖精の国って感じ?」
「え、リリナってそんな感性だったの?」
「あんた殴るわよ?」
「ま、まあまあ・・・」
俺とリリナの口論に割って入るサーシャ。
そんな下らない話をよそに、足元に気をつけながら、徐々に降りていき底まで来たのだった。
底といっても狭いわけではなく、軽く公園の野球場くらいの大きさはあるのではないだろうか?と言うくらいには広い。
まだ発掘されていない魔鉱石が眠っているがゆえ、これがめちゃくちゃ明るい。
しかし、ここまで来ても特に異常は感じられなかった。
「特に何もなさそうですね」
「そうね、綺麗だけど、何かあるわけでもないし、いきましょうか」
そう言って戻ろうとした時、俺は違和感を感じた。
その違和感の正体を探る為、俺はある部分に近づいた。
「ヤナギさん?」とサーシャは俺の名前を呼び、サーシャとリリナは俺の方へ寄る。
「なんだこれ」と俺は思わず呟く。
そこには、地面を掘った跡があった。
「これが何よ?」
「おかしくない?この岩盤硬いんだよ。なのに手で掘った跡がある。しかも、魔鉱石みたいな破片が散らばってるじゃない?これ多分、握って砕いてるよ」
「あの魔物が食った跡じゃないの?」
「いえ、掘った跡が全然違いますし、こんな破片なんて残りませんよ」
通常、俺たちは魔鉱石採掘の時は、武器屋で作ってもらったつるはしを使って採掘する。
魔鉱石自体が硬い為、つるはしが魔鉱石にあたっても、俺らの腕力では砕けることはない。
そんな中で、誰かが素手で掘り、握力で握りつぶしたとなると、とてもではないが人間業とは思えない。
「これ、一応報告したほうがいいですよね・・・」
サーシャは怪訝そうな顔を覗かせ、提案をした。
「・・・そうだね。この破片一応持っていくよ」
俺は砕けた破片をポケットに入れ、管理長とギルドに報告する事にし、俺たちは採掘場を後にした。
「本当にごめんなさい!」
大きな声は、街にこだました。
俺たちは今ローグの街におり、リリナがダンに謝罪をしているところだ。
俺とサーシャは先にギルドに報告するからと言って、リリナに謝罪するよう促したのだが、気になって後をつけ、木陰に隠れている。
ダンの家の前にいる男女の空気は重く、少し遠くにいる俺たちにまで伸し掛かってくる。
「・・・」
ダンは黙って、一部始終の説明をし終えて頭を下げるリリナを静観している。
彼は握り拳を固く握りしめている。
相当怒っているのだろう。
無理もない、自分を騙して金を貢がせていたやつだ。
そう簡単には許せないだろう。
「リリナさん大丈夫でしょうか」
木から顔だけ覗かせる俺の下にいるサーシャが、小さい声で俺に呟く。
「ダン次第だけど、許してもらえたらラッキー程度で納めておこう。そんくらいやばい事してるんだから」
日本だったらまず捕まってる事案だからね。
すると、握り拳を固めていたダンから手の力と肩の力が抜け始める。
「リリナちゃん、顔上げろよ・・・」
リリナは恐る恐る顔を上げる。
ダンの顔は、怒りというよりは、悲しみと困惑が入り混じったような、複雑な表情でリリナを見ていた。
「薄々だが、俺なんとなく気づいていたんだ。こいつは俺のこと好きじゃないんだろうなってな。俺を騙してるんだろうなって」
リリナは俯きながら、ダンの話を聞いている。
「じゃあ何故、金品だの金だのをやってたか。それは、お前の話してくれた家庭環境の話に、嘘がないからだと思ったからだ。もちろん、俺はリリナちゃんのこと好きだったけど、同情もあったんだよ」
リリナは肩を振るわせる。
俺たちも話を聞きながら息を呑む。
そうか、ダンは気づいていたんだ。
リリナの嘘に気づいていた上で、提供していたという事なのだ。
いいやつ通り越して、聖人だろ、あいつ。
「俺にやったことは、正直許せない。今にも手を上げそうだ。でも、そんなんじゃ解決なんてしない。憲兵に突き出す事もしない」
リリナは少しだけ、顔を上げダンを見る。
「俺があげたやつは返すな。戒めとして持ってろ。その代わり、いずれ出世払いでいいから、同額かそれ以上を俺に寄越せ」
「え・・・」と思わず声が出てしまうリリナ。
俺たちも「えっ」と小さく声が出してしまう。
「その時には、お前よりももっといい女捕まえて、これでもかってくらい、自慢してやる。俺を騙した事を後悔するくらい、幸せになってやるよ。」
リリナはスカートの裾をグッと掴み、体を震わせる。
その様子を見ている俺たちは、心なしかテンションが上がっており、若干はしゃいでいた。
「そうなった時、お前のことは友達くらいには思ってやるから、覚悟しろ。というか、元々は騙される俺も悪いんだ。だから、そんな顔すんなよ。俺も辛くなっちまう・・・」
リリナの表情は髪の毛のせいで、ここからでは見えない。
彼女は一体どんな表情をしているのだろうか。
しかし驚いた。強面でガタイの良いダンがこうも優しい男で器のでかい人間だったとは。
これから、ダンに対しての接し方を改めたほうがいいかもしれないな。
「・・・ありがとう」
リリナは声を震わせながら、ダンに感謝の言葉を贈る。
何はともあれダンの優しさに助けられ、なんとかなったようだ。
俺は溜め込んでいた息を吐き出し、深呼吸をする。
「よかったですね。ダンさんが優しいお方で。あんな男性なかなか居ないですよ、いいですよね~」
「ほんとね、なんとかなって良かったよ。サーシャはやっぱ、ああいう優男が好み?」
俺はサーシャに聞いてみた。
女性的には、やっぱ、優しい人なのか。はたまたヤンチャな人なのか。
女性経験が無い俺としては、参考にしたいと思ったのだ。
サーシャは、じとーっと俺のほうを見続け、その後軽く俺の頬を引っ叩いてきた。
なんで!?
女性にこの質問はしてはいけなかったのだろうか。
女心は難しい。
「ヤナギさん、もうちょっと人の心に目を向けたほうがいいと思いますよ」
えー・・・
怒られてしまった。
納得はいかないがそういうものなのだろうと理解しておく。
「おい!」とダンが大声で誰かを呼ぶ。
「ヤナギさん、ダンさんが誰かを呼んでますよ」
「俺らじゃあるまいし、誰だろうね?」
ダンと目が合う。
バレた?
「お前ら!ずっと見てただろ!説教してやるからこっち来い!」
リリナも気付けば、両手を腰に当て、こちらを睨みつけていた。
俺たちは後悔した。
これから俺たちは怒られるらしい。
心配だっただけなのに・・・
俺とサーシャは観念して木陰から身を出し、重たい足取りでダン達のほうへと向かう。
しかし、2人の顔は心なしか、涙を流しながらも笑っているように思えた。
リリナにとっての、ダンにとっての第一歩を、踏み出し
前回の時はもう少し症状が長引いてたんだけど、日頃の鍛錬で身体に魔力が慣れて来たって事なのかね?
昨夜の一件でサーシャは、俺に対する態度は軟化したように見え、普通に?話せるくらいにはなっていた。
ちょくちょくサーシャは口ごもったり下を見たりするのだが、昨日の告白を気にしているのだろうか?
リリナの方は、俺を見て何故かクスクス笑っているのだが、もうこいつは良いかなって思っている。
そんなわけで、俺たちは管理長に挨拶をし採掘場に行く許可を改めてもらった。
護衛兵の人達にも挨拶を交わしたのだが、1人いなくなっていた。
聞くところによると、新人を探しに行ったとの事で、どのくらい時間がかかるかは分からないとの事だった。
人に迷惑をかけてダメな新人だなぁと心の中で思っておく。
「道は広いけど、採掘場って結構暗いとこなのね」
「そうですね、灯りはないですし、魔道具がないと進めませんよ」
で、現在俺たちは採掘場の奥へ向けて進んでいるところだ。
最深部までは、割と道の広い洞窟になっており、また一本道であるため迷う事はない。
前に魔道具屋で買ったカンテラで足元を照らしながら進んでいるのだが、これが割と明るい。
しかもこのカンテラ結構長持ちするもんだから、灯りを点す魔鉱石には感謝だな。
日本にもあればよかったのに。
「ちょいちょい魔物がいるけど、襲ってこないのね」
『ブラックバット』を何回か見かけたリリナは、「へー」と何やら感心したように呟いた。
「基本的にここら辺の魔物は襲ってこない事が多いんだよね」
「じゃあ昨日の魔物はなんだったのよ」
「わたしたちもあんな魔物、初めて見ましたよ。明らかにここら辺の魔物では無いですね」
あんな海にいそうな甲殻類の魔物なんて、こんな所にいる方が妙だ。
奥に何かしら発生する原因があるか、もしくは誰かが意図的にこちらへ連れて来たか、謎は深まるばかりである。
「あ、もう少しで最深部ですよ」
「結構すぐ着くのね」
洞窟から見える採掘場最深部に入る、大きめの入り口を抜け、俺たちは中に入った。
「はえー、ひっろいのね~」
俺たちも初めて来た時、同じ感想だった。
なんでも全長は2.3ヘクタール程度で、かなり広い。東京ドームで言うと半分の大きさだ。
魔鉱石自体が発光しているためなのか、採掘場内部は比較的明るく感じ、プラネタリウムを思わせる。
俺たちの目の前には大きな穴があるのだが、球場の客席のように段々で下る事ができるため、比較的安全である。
「襲ってくる魔物もいないし、こんな安全だったら別にあたしらが来る必要ないんじゃないの?」
「あれ見てみ?」
穴からすぐの段には『ストーンモーグ』の姿があり、なにやら岩壁を掘っているようだ。
「あいつが何よ?」
「あれ今魔鉱石掘って食う所なんだけど、あの状態で近づいたら襲ってくるからね?しかも、結構硬い」
「え、あんなんが?」
「うん、加えてあいつ討伐禁止になってるから気絶させるしかないし、すごい面倒なんだよね」
「見てる分には可愛いんですけどねぇ・・・」
「とりあえず、迂回しながら降りて行こう」
俺たちは『ストーンモーグ』に注意を払いつつ、穴を下りていく。
俺たちが進んでいる大きな穴も同様に、魔鉱石が眠っている影響だからか、ポツポツと仄かに明るく、幻想的な気持ちにさせてくれる。
「すごい綺麗ね~、妖精の国って感じ?」
「え、リリナってそんな感性だったの?」
「あんた殴るわよ?」
「ま、まあまあ・・・」
俺とリリナの口論に割って入るサーシャ。
そんな下らない話をよそに、足元に気をつけながら、徐々に降りていき底まで来たのだった。
底といっても狭いわけではなく、軽く公園の野球場くらいの大きさはあるのではないだろうか?と言うくらいには広い。
まだ発掘されていない魔鉱石が眠っているがゆえ、これがめちゃくちゃ明るい。
しかし、ここまで来ても特に異常は感じられなかった。
「特に何もなさそうですね」
「そうね、綺麗だけど、何かあるわけでもないし、いきましょうか」
そう言って戻ろうとした時、俺は違和感を感じた。
その違和感の正体を探る為、俺はある部分に近づいた。
「ヤナギさん?」とサーシャは俺の名前を呼び、サーシャとリリナは俺の方へ寄る。
「なんだこれ」と俺は思わず呟く。
そこには、地面を掘った跡があった。
「これが何よ?」
「おかしくない?この岩盤硬いんだよ。なのに手で掘った跡がある。しかも、魔鉱石みたいな破片が散らばってるじゃない?これ多分、握って砕いてるよ」
「あの魔物が食った跡じゃないの?」
「いえ、掘った跡が全然違いますし、こんな破片なんて残りませんよ」
通常、俺たちは魔鉱石採掘の時は、武器屋で作ってもらったつるはしを使って採掘する。
魔鉱石自体が硬い為、つるはしが魔鉱石にあたっても、俺らの腕力では砕けることはない。
そんな中で、誰かが素手で掘り、握力で握りつぶしたとなると、とてもではないが人間業とは思えない。
「これ、一応報告したほうがいいですよね・・・」
サーシャは怪訝そうな顔を覗かせ、提案をした。
「・・・そうだね。この破片一応持っていくよ」
俺は砕けた破片をポケットに入れ、管理長とギルドに報告する事にし、俺たちは採掘場を後にした。
「本当にごめんなさい!」
大きな声は、街にこだました。
俺たちは今ローグの街におり、リリナがダンに謝罪をしているところだ。
俺とサーシャは先にギルドに報告するからと言って、リリナに謝罪するよう促したのだが、気になって後をつけ、木陰に隠れている。
ダンの家の前にいる男女の空気は重く、少し遠くにいる俺たちにまで伸し掛かってくる。
「・・・」
ダンは黙って、一部始終の説明をし終えて頭を下げるリリナを静観している。
彼は握り拳を固く握りしめている。
相当怒っているのだろう。
無理もない、自分を騙して金を貢がせていたやつだ。
そう簡単には許せないだろう。
「リリナさん大丈夫でしょうか」
木から顔だけ覗かせる俺の下にいるサーシャが、小さい声で俺に呟く。
「ダン次第だけど、許してもらえたらラッキー程度で納めておこう。そんくらいやばい事してるんだから」
日本だったらまず捕まってる事案だからね。
すると、握り拳を固めていたダンから手の力と肩の力が抜け始める。
「リリナちゃん、顔上げろよ・・・」
リリナは恐る恐る顔を上げる。
ダンの顔は、怒りというよりは、悲しみと困惑が入り混じったような、複雑な表情でリリナを見ていた。
「薄々だが、俺なんとなく気づいていたんだ。こいつは俺のこと好きじゃないんだろうなってな。俺を騙してるんだろうなって」
リリナは俯きながら、ダンの話を聞いている。
「じゃあ何故、金品だの金だのをやってたか。それは、お前の話してくれた家庭環境の話に、嘘がないからだと思ったからだ。もちろん、俺はリリナちゃんのこと好きだったけど、同情もあったんだよ」
リリナは肩を振るわせる。
俺たちも話を聞きながら息を呑む。
そうか、ダンは気づいていたんだ。
リリナの嘘に気づいていた上で、提供していたという事なのだ。
いいやつ通り越して、聖人だろ、あいつ。
「俺にやったことは、正直許せない。今にも手を上げそうだ。でも、そんなんじゃ解決なんてしない。憲兵に突き出す事もしない」
リリナは少しだけ、顔を上げダンを見る。
「俺があげたやつは返すな。戒めとして持ってろ。その代わり、いずれ出世払いでいいから、同額かそれ以上を俺に寄越せ」
「え・・・」と思わず声が出てしまうリリナ。
俺たちも「えっ」と小さく声が出してしまう。
「その時には、お前よりももっといい女捕まえて、これでもかってくらい、自慢してやる。俺を騙した事を後悔するくらい、幸せになってやるよ。」
リリナはスカートの裾をグッと掴み、体を震わせる。
その様子を見ている俺たちは、心なしかテンションが上がっており、若干はしゃいでいた。
「そうなった時、お前のことは友達くらいには思ってやるから、覚悟しろ。というか、元々は騙される俺も悪いんだ。だから、そんな顔すんなよ。俺も辛くなっちまう・・・」
リリナの表情は髪の毛のせいで、ここからでは見えない。
彼女は一体どんな表情をしているのだろうか。
しかし驚いた。強面でガタイの良いダンがこうも優しい男で器のでかい人間だったとは。
これから、ダンに対しての接し方を改めたほうがいいかもしれないな。
「・・・ありがとう」
リリナは声を震わせながら、ダンに感謝の言葉を贈る。
何はともあれダンの優しさに助けられ、なんとかなったようだ。
俺は溜め込んでいた息を吐き出し、深呼吸をする。
「よかったですね。ダンさんが優しいお方で。あんな男性なかなか居ないですよ、いいですよね~」
「ほんとね、なんとかなって良かったよ。サーシャはやっぱ、ああいう優男が好み?」
俺はサーシャに聞いてみた。
女性的には、やっぱ、優しい人なのか。はたまたヤンチャな人なのか。
女性経験が無い俺としては、参考にしたいと思ったのだ。
サーシャは、じとーっと俺のほうを見続け、その後軽く俺の頬を引っ叩いてきた。
なんで!?
女性にこの質問はしてはいけなかったのだろうか。
女心は難しい。
「ヤナギさん、もうちょっと人の心に目を向けたほうがいいと思いますよ」
えー・・・
怒られてしまった。
納得はいかないがそういうものなのだろうと理解しておく。
「おい!」とダンが大声で誰かを呼ぶ。
「ヤナギさん、ダンさんが誰かを呼んでますよ」
「俺らじゃあるまいし、誰だろうね?」
ダンと目が合う。
バレた?
「お前ら!ずっと見てただろ!説教してやるからこっち来い!」
リリナも気付けば、両手を腰に当て、こちらを睨みつけていた。
俺たちは後悔した。
これから俺たちは怒られるらしい。
心配だっただけなのに・・・
俺とサーシャは観念して木陰から身を出し、重たい足取りでダン達のほうへと向かう。
しかし、2人の顔は心なしか、涙を流しながらも笑っているように思えた。
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2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
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