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怪しい彼女と謎編
18.5話 リリナの謝罪と俺のこれから
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ダンの説教を受けた俺とサーシャ。
リリナとダンの関係は解消され、真っさらとはいかないものの、とりあえずは事が済んだのだった。
説教を受けた後、俺はダンにリリナと俺たちの軌跡を話し、その上で彼女が俺たちのパーティに入る事を伝えた。
ダンからは「そうか、頑張れよ」とリリナを応援された後に、詳しく話を聞きたいからと、俺の奢りでダンと飲みに行かなければならなくなった。
俺は一応身体は未成年だけど、飲んでいいものなのか?
法律がわからん。
そんなこんなで、俺とサーシャ、リリナの3人で現在ギルドにいる。
村に居た謎の魔物、そして採掘場の調査結果をギルドの受付嬢に全て伝えたところだ。
「調査、お疲れ様でございました。後ほど、調査報酬をお渡しします。しかし、先ほどのことが本当であるならば、村の強化は勿論。各国に未知の事例が起きたことを、お伝えしなければなりませんね」
「そうですね、俺達が対峙した謎の魔物も気掛かりだし、採掘場の件も不自然な事だらけです。
あ、ちなみにこれが魔鉱石の破片です。あと、魔物はちょっと俺たちでは判断できないので、ベテランの方に死骸を見てもらいたいんですけど・・・」
「かしこまりました。まずはこの魔鉱石の欠片をお預かりいたします。そして、『獣狩りの頂』様に、魔物の調査を委託いたします。調査終了後に会議をいたしまして、改めて『明けの明星』様に追加報酬をお渡しいたします」
「マジで?」
「これってもしかして、結構な金額の金を貰えるんじゃないか!?」
「あんた、汚いからヨダレ拭きなさいよ」
「こんな時くらい許せよ」
リリナが俺に毒を吐いてくる。
なんだよ、サーシャだって同じじゃんか。
俺と違って目を$にしてチラシ握り締めてんだから。
「あ、そうだ。すいません、この人をパーティに入れたいんですけど・・・」
「この人って何よ」とリリナの戯言をよそに、受付嬢に彼女のパーティ追加申請を行った。
俺とサーシャは仮任務を受けたけど、リリナの場合はどうなるんだろう。
「パーティ人数の追加ですね、通常であれば同パーティの方々で依頼を受けていただいて、見極めをして頂く所ですが、今回の一件で多大な成績を収めていただいたとのことですので、免除といたします」
免除か、そうすると改まってリリナを連れて試験するみたいな事はしなくていいらしい。
ギルドの温情に感謝だな、と言いたいところだけど、あんなもんと戦ったのにダメですなんて流石に言えないわ。
「ですので、こちらのパーティ追加申請書にお名前をご記入頂きまして、受理といたします」
「良かったですね、リリナさん!」
「ヤナギに見極めさせられるとか、腹立たしいから良かったわ」
なんだとこいつ、明らかに俺の事舐め腐ってんな。
「つきましては」と受付嬢が説明を続ける。
「今回の魔物の一件におきまして、魔物の生態調査の結果次第では、『明けの明星』様のパーティランク昇格を検討しておりますので、報告をお待ちください」
昇格!?
うわ嬉し!
1ヶ月でランク3になるって、とんでもない事なのでは?
これでまた、魔王討伐への段階が1つ上がったというわけだな。
「わ!わわ!や、ヤナギさん!リリナさん!す、すごいですね!任務を受ける幅が広がって!ほ、報酬が!報酬が!!」
「いや落ち着きなさいよ」
興奮しているサーシャをリリナが抑える。
サーシャって前から思ってたけど、この人多分銭ゲバなんだな。
それとは違い、リリナはあまり金に対しての執着はない様に思える。
ダンから宝石だなんだもらってた割には、意外である。
食い扶持をつなぐ為以外の用途としては、もしかしたら金に対して、そこまで興味がないのかもしれない。
騒いでいる俺たちに対して、受付嬢は「コホン」と咳払いして、1枚の茶色い紙と万年筆を取り出した。
「こちらの書類にサインしてください。名前と職業と、これからなりたい自分をご記入して頂きましたら、受付終了となります」
「なりたい自分??」
リリナは万年筆を持ち、首を傾げる。
俺もそれ初めて聞いたんだけど・・・
なんか会社の面接でよく聞かれる、将来どう役に立ちたい?みたいな、あんな感じか?
「簡単にで大丈夫ですよ。例えば「パーティを支えたい」とか「最強になりたい」とか、色々ありますね」
俺はそれを書くことによって、なんの意味があるのだろうかと、本気で思ってしまう。
しかし、案外リリナは真剣に考えている様子だ。
彼女は根が真面目なのかもしれない。
「うーん」と悩みながら書くリリナの横から俺は、何を書いてるか覗こうとした。
しかしリリナは手で書類を隠し、「覗くなスケベ」と怒ってしまった。
無神経だったかもしれない。
リリナが書いている間は暇な為、俺はサーシャに聞いてみた。
「サーシャだったら何書く?」
「わたしですか?うーん、『家内安全』とか『金運上昇』とか出すかね?」
それ初詣の御守りじゃない?
「ヤナギさんは何かあります?」
彼女は大きい目を覗かせ、身体を傾けながら聞いてくる。
「『魔王討伐』とか、あとはー『ランクを上げる』とか?」
「いざとなると、全然思いつきませんね・・・」
「あ、でも一番は思いついたかも」
「おお、何ですか?」
「『魔導士になりたい』かな?今のところね」
「・・・ヤナギさん、もう魔導士じゃないですか?」
「・・・そうだね」
◇◆◇
「ではコチラで終了となりますので、明日改めてギルドにいらっしゃって下さい。あと、今回の調査報酬をお渡ししますね」
ドサっと頭陀嚢に入った貨幣の集合体をもらう俺達。
「今回の報酬っていくらでしたっけ?」
「30万ティアになります」
すごい、前の会社のボーナス6回分の金額だ・・・
しかし、この報酬を使ってこれからダンに奢らなければならないとなると、胸が痛い。
報酬を眺める俺に、サーシャは声をかけてきた。
「ヤナギさん、お願いがあるんですけど・・・」
サーシャは両手を後ろで組み、上目使いで俺の事を見てくる。
「なに??」
「この報酬あるじゃないですか、あのー、欲しいものあって・・・」
どうしたんだろう、生活雑貨か何かだろうか。
「ん?何欲しいの?」
「えっと・・・その・・・」
どうも歯切れが悪い、そんなやましいもの買うってことか?
するとリリナはサーシャに近づき、サーシャの手に持ってるチラシを覗き始めた。
俺の目の前でリリナは「どれどれ~」と聞き、サーシャがある部分に指を差す。
リリナは「え!いいじゃんこれ!」などと盛り上がりを見せ、若干の疎外感を感じる。
その後、リリナは俺に近寄ってくる。
「買ってあげなよ~、報酬入ったんだからさ~」
俺は少し考える。
この報酬を飲み代に当てたとしても、かなり多くて10万程だろう。
残る金額は20万、よほどのものでない限りは手元に残るだろう。
倹約家のサーシャが、そこまで高いおねだりをするとは思えない。
それに採掘場での一件もあったし、お詫びの意を込めてプレゼントするのは、正直アリだろう。
「いいよ、サーシャがおねだりなんて滅多にない事だし、買おうか!」
俺がそういうとサーシャの顔はパァと明るくなり、目を輝かせていた。
え、可愛い。
「そ、それじゃあ早速いきましょうか!」
俺達は受付嬢に一礼してから、サーシャの連れられるまま目的地に向かうのだった。
「え~これも可愛いんじゃない?」
「い、良いですね!これも可愛いです!」
俺は今、猛烈に帰りたい。
「こっちのは?サーシャに似合うんじゃない?」
「え、そ、そうですか?」
俺は今、めちゃくちゃ帰りたい。
「店員さーん!この娘に試着ー!」
「あ、すいません。お願いします・・・」
あー、なんでこうなったかなぁ。
ここは今アクセサリーショップ。
以前俺とサーシャがダン達を尾行した時に見つけた、あの店だ。
外壁からではわからなかったのだが、中に入ると結構きれい、というか高級感がエグすぎて、目が痛い。
俺、今まで彼女いた事なかったし、ましてや女の子とデートなんてした事無かったから分からなかったけど、男がこういう店に入るのって、結構勇気いるんだな。
店に入る時の緊張感といい、キラキラした内装の中で待つ場違い感といい、すげぇソワソワする。
付き合ってる男連中って、みんなこんな感じなの?
とりあえず俺は、あの2人のテンションについていけないので、ケースに入っているアクセサリー類を眺める様に見ていた。
おかしい、なんでこんな小指の爪より小さいものが5万だの7万だのするんだ?
エロゲですら1万くらいなのに・・・
などと考えていると、少し奥からリリナが俺に向かって「ほらー!出番よー!」と大声を出す。
大声やめろ恥ずかしい。
俺は2人と店員さんの近くに歩み寄る。
決まったと思われる商品を見てみると、それはネックレスだった。
本当に小指くらいの大きさの青い宝石が真ん中にあり、それを円で囲む様に砂くらいの透明な宝石が付いている。
え、いくらだろうこれ・・・ショーウィンドウの物を見た感じ、こんなやつが10万とかだったよな・・・おぞましい。
「店員さん、これいくらですか?」
恐る恐る聞いてみた。
心拍数が上がっていく。
店員さんはニコニコと営業スマイルで、リリナは相変わらずニヤニヤしており、サーシャは赤らめながら俯く。
店員は笑顔で答える。
「こちら30万ティアになります♪」
俺は鈍器で後頭部を殴られた様な衝撃を受け、天地が反転する様な目眩を覚えた。
胃が痛い。
は?これが?30万!?
こんな、河原に落ちてそうな石の寄せ集めが!?
俺のボーナス6回分!?
俺の飲み代は!?
・・・しかし、背に腹は変えられない。
もし今後、俺に彼女が出来たら、この様な事が起こるやもしれない。
買うと言ってしまった以上、男として逃げるわけにはいけない。
覚悟を決め、30万が入ったずだ袋を店員に渡す。
「・・・一括で」
「一括以外の方法はありませんよ♪」
◇◆◇
俺たちは店を出た。
はぁ、俺今日の飲みはお小遣いから出さないといけないのか・・・と思うと胃腸が痛い。
俺は女子たちを見る。
なんかよく分からないけど、すっごい盛り上がっている様子だ。
ネックレスに付いている宝石を太陽にかざしたり、お互い付け合いっこみたいな事をしていた。
これで本当に良かったのか?俺は・・・
天を仰ぐ。
俺ってこの世界に来て、魔王を討伐しに来たんだったよなぁ。
なんでこんな事で一喜一憂しているのだろうか。
・・・そうだ、こんな事をしている場合ではない。
早く力をつけ、魔王を圧倒できるくらいの魔導士にならないといけないのだ。
そうと決まれば修業を・・・
「あの、ヤナギさん」
空を見上げていた時、サーシャの声が聞こえてくる。
俺は顔を下げ、声がした方に顔を向ける。ける。
「に、似合ってますか?」
「うん、すごい可愛い思う」
サーシャは、俺が買ってあげた30万のネックレスを身につけ、俺に見せてきたのだ。
あーなんか、この眩しい笑顔を見たら、どうでも良くなってきた。
明日から頑張ろう。
リリナとダンの関係は解消され、真っさらとはいかないものの、とりあえずは事が済んだのだった。
説教を受けた後、俺はダンにリリナと俺たちの軌跡を話し、その上で彼女が俺たちのパーティに入る事を伝えた。
ダンからは「そうか、頑張れよ」とリリナを応援された後に、詳しく話を聞きたいからと、俺の奢りでダンと飲みに行かなければならなくなった。
俺は一応身体は未成年だけど、飲んでいいものなのか?
法律がわからん。
そんなこんなで、俺とサーシャ、リリナの3人で現在ギルドにいる。
村に居た謎の魔物、そして採掘場の調査結果をギルドの受付嬢に全て伝えたところだ。
「調査、お疲れ様でございました。後ほど、調査報酬をお渡しします。しかし、先ほどのことが本当であるならば、村の強化は勿論。各国に未知の事例が起きたことを、お伝えしなければなりませんね」
「そうですね、俺達が対峙した謎の魔物も気掛かりだし、採掘場の件も不自然な事だらけです。
あ、ちなみにこれが魔鉱石の破片です。あと、魔物はちょっと俺たちでは判断できないので、ベテランの方に死骸を見てもらいたいんですけど・・・」
「かしこまりました。まずはこの魔鉱石の欠片をお預かりいたします。そして、『獣狩りの頂』様に、魔物の調査を委託いたします。調査終了後に会議をいたしまして、改めて『明けの明星』様に追加報酬をお渡しいたします」
「マジで?」
「これってもしかして、結構な金額の金を貰えるんじゃないか!?」
「あんた、汚いからヨダレ拭きなさいよ」
「こんな時くらい許せよ」
リリナが俺に毒を吐いてくる。
なんだよ、サーシャだって同じじゃんか。
俺と違って目を$にしてチラシ握り締めてんだから。
「あ、そうだ。すいません、この人をパーティに入れたいんですけど・・・」
「この人って何よ」とリリナの戯言をよそに、受付嬢に彼女のパーティ追加申請を行った。
俺とサーシャは仮任務を受けたけど、リリナの場合はどうなるんだろう。
「パーティ人数の追加ですね、通常であれば同パーティの方々で依頼を受けていただいて、見極めをして頂く所ですが、今回の一件で多大な成績を収めていただいたとのことですので、免除といたします」
免除か、そうすると改まってリリナを連れて試験するみたいな事はしなくていいらしい。
ギルドの温情に感謝だな、と言いたいところだけど、あんなもんと戦ったのにダメですなんて流石に言えないわ。
「ですので、こちらのパーティ追加申請書にお名前をご記入頂きまして、受理といたします」
「良かったですね、リリナさん!」
「ヤナギに見極めさせられるとか、腹立たしいから良かったわ」
なんだとこいつ、明らかに俺の事舐め腐ってんな。
「つきましては」と受付嬢が説明を続ける。
「今回の魔物の一件におきまして、魔物の生態調査の結果次第では、『明けの明星』様のパーティランク昇格を検討しておりますので、報告をお待ちください」
昇格!?
うわ嬉し!
1ヶ月でランク3になるって、とんでもない事なのでは?
これでまた、魔王討伐への段階が1つ上がったというわけだな。
「わ!わわ!や、ヤナギさん!リリナさん!す、すごいですね!任務を受ける幅が広がって!ほ、報酬が!報酬が!!」
「いや落ち着きなさいよ」
興奮しているサーシャをリリナが抑える。
サーシャって前から思ってたけど、この人多分銭ゲバなんだな。
それとは違い、リリナはあまり金に対しての執着はない様に思える。
ダンから宝石だなんだもらってた割には、意外である。
食い扶持をつなぐ為以外の用途としては、もしかしたら金に対して、そこまで興味がないのかもしれない。
騒いでいる俺たちに対して、受付嬢は「コホン」と咳払いして、1枚の茶色い紙と万年筆を取り出した。
「こちらの書類にサインしてください。名前と職業と、これからなりたい自分をご記入して頂きましたら、受付終了となります」
「なりたい自分??」
リリナは万年筆を持ち、首を傾げる。
俺もそれ初めて聞いたんだけど・・・
なんか会社の面接でよく聞かれる、将来どう役に立ちたい?みたいな、あんな感じか?
「簡単にで大丈夫ですよ。例えば「パーティを支えたい」とか「最強になりたい」とか、色々ありますね」
俺はそれを書くことによって、なんの意味があるのだろうかと、本気で思ってしまう。
しかし、案外リリナは真剣に考えている様子だ。
彼女は根が真面目なのかもしれない。
「うーん」と悩みながら書くリリナの横から俺は、何を書いてるか覗こうとした。
しかしリリナは手で書類を隠し、「覗くなスケベ」と怒ってしまった。
無神経だったかもしれない。
リリナが書いている間は暇な為、俺はサーシャに聞いてみた。
「サーシャだったら何書く?」
「わたしですか?うーん、『家内安全』とか『金運上昇』とか出すかね?」
それ初詣の御守りじゃない?
「ヤナギさんは何かあります?」
彼女は大きい目を覗かせ、身体を傾けながら聞いてくる。
「『魔王討伐』とか、あとはー『ランクを上げる』とか?」
「いざとなると、全然思いつきませんね・・・」
「あ、でも一番は思いついたかも」
「おお、何ですか?」
「『魔導士になりたい』かな?今のところね」
「・・・ヤナギさん、もう魔導士じゃないですか?」
「・・・そうだね」
◇◆◇
「ではコチラで終了となりますので、明日改めてギルドにいらっしゃって下さい。あと、今回の調査報酬をお渡ししますね」
ドサっと頭陀嚢に入った貨幣の集合体をもらう俺達。
「今回の報酬っていくらでしたっけ?」
「30万ティアになります」
すごい、前の会社のボーナス6回分の金額だ・・・
しかし、この報酬を使ってこれからダンに奢らなければならないとなると、胸が痛い。
報酬を眺める俺に、サーシャは声をかけてきた。
「ヤナギさん、お願いがあるんですけど・・・」
サーシャは両手を後ろで組み、上目使いで俺の事を見てくる。
「なに??」
「この報酬あるじゃないですか、あのー、欲しいものあって・・・」
どうしたんだろう、生活雑貨か何かだろうか。
「ん?何欲しいの?」
「えっと・・・その・・・」
どうも歯切れが悪い、そんなやましいもの買うってことか?
するとリリナはサーシャに近づき、サーシャの手に持ってるチラシを覗き始めた。
俺の目の前でリリナは「どれどれ~」と聞き、サーシャがある部分に指を差す。
リリナは「え!いいじゃんこれ!」などと盛り上がりを見せ、若干の疎外感を感じる。
その後、リリナは俺に近寄ってくる。
「買ってあげなよ~、報酬入ったんだからさ~」
俺は少し考える。
この報酬を飲み代に当てたとしても、かなり多くて10万程だろう。
残る金額は20万、よほどのものでない限りは手元に残るだろう。
倹約家のサーシャが、そこまで高いおねだりをするとは思えない。
それに採掘場での一件もあったし、お詫びの意を込めてプレゼントするのは、正直アリだろう。
「いいよ、サーシャがおねだりなんて滅多にない事だし、買おうか!」
俺がそういうとサーシャの顔はパァと明るくなり、目を輝かせていた。
え、可愛い。
「そ、それじゃあ早速いきましょうか!」
俺達は受付嬢に一礼してから、サーシャの連れられるまま目的地に向かうのだった。
「え~これも可愛いんじゃない?」
「い、良いですね!これも可愛いです!」
俺は今、猛烈に帰りたい。
「こっちのは?サーシャに似合うんじゃない?」
「え、そ、そうですか?」
俺は今、めちゃくちゃ帰りたい。
「店員さーん!この娘に試着ー!」
「あ、すいません。お願いします・・・」
あー、なんでこうなったかなぁ。
ここは今アクセサリーショップ。
以前俺とサーシャがダン達を尾行した時に見つけた、あの店だ。
外壁からではわからなかったのだが、中に入ると結構きれい、というか高級感がエグすぎて、目が痛い。
俺、今まで彼女いた事なかったし、ましてや女の子とデートなんてした事無かったから分からなかったけど、男がこういう店に入るのって、結構勇気いるんだな。
店に入る時の緊張感といい、キラキラした内装の中で待つ場違い感といい、すげぇソワソワする。
付き合ってる男連中って、みんなこんな感じなの?
とりあえず俺は、あの2人のテンションについていけないので、ケースに入っているアクセサリー類を眺める様に見ていた。
おかしい、なんでこんな小指の爪より小さいものが5万だの7万だのするんだ?
エロゲですら1万くらいなのに・・・
などと考えていると、少し奥からリリナが俺に向かって「ほらー!出番よー!」と大声を出す。
大声やめろ恥ずかしい。
俺は2人と店員さんの近くに歩み寄る。
決まったと思われる商品を見てみると、それはネックレスだった。
本当に小指くらいの大きさの青い宝石が真ん中にあり、それを円で囲む様に砂くらいの透明な宝石が付いている。
え、いくらだろうこれ・・・ショーウィンドウの物を見た感じ、こんなやつが10万とかだったよな・・・おぞましい。
「店員さん、これいくらですか?」
恐る恐る聞いてみた。
心拍数が上がっていく。
店員さんはニコニコと営業スマイルで、リリナは相変わらずニヤニヤしており、サーシャは赤らめながら俯く。
店員は笑顔で答える。
「こちら30万ティアになります♪」
俺は鈍器で後頭部を殴られた様な衝撃を受け、天地が反転する様な目眩を覚えた。
胃が痛い。
は?これが?30万!?
こんな、河原に落ちてそうな石の寄せ集めが!?
俺のボーナス6回分!?
俺の飲み代は!?
・・・しかし、背に腹は変えられない。
もし今後、俺に彼女が出来たら、この様な事が起こるやもしれない。
買うと言ってしまった以上、男として逃げるわけにはいけない。
覚悟を決め、30万が入ったずだ袋を店員に渡す。
「・・・一括で」
「一括以外の方法はありませんよ♪」
◇◆◇
俺たちは店を出た。
はぁ、俺今日の飲みはお小遣いから出さないといけないのか・・・と思うと胃腸が痛い。
俺は女子たちを見る。
なんかよく分からないけど、すっごい盛り上がっている様子だ。
ネックレスに付いている宝石を太陽にかざしたり、お互い付け合いっこみたいな事をしていた。
これで本当に良かったのか?俺は・・・
天を仰ぐ。
俺ってこの世界に来て、魔王を討伐しに来たんだったよなぁ。
なんでこんな事で一喜一憂しているのだろうか。
・・・そうだ、こんな事をしている場合ではない。
早く力をつけ、魔王を圧倒できるくらいの魔導士にならないといけないのだ。
そうと決まれば修業を・・・
「あの、ヤナギさん」
空を見上げていた時、サーシャの声が聞こえてくる。
俺は顔を下げ、声がした方に顔を向ける。ける。
「に、似合ってますか?」
「うん、すごい可愛い思う」
サーシャは、俺が買ってあげた30万のネックレスを身につけ、俺に見せてきたのだ。
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