元社畜の転生者は魔導士になりたい~魔王を倒す為に、訳アリ女の子と冒険者になります

めれ

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不憫なエルフ編

プロローグ2

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「リリナ!前だ!」

「分かってるってば!」


ゴスロリ服のリリナは、目の前でトグロを巻く、紫色に気味の悪い柄が入った、馬鹿でかい大蛇の魔物『バジリスク』に応戦する為、防御体勢に入った。

地面から生えている、草や枝によって足を取られそうになり、うまく足元に力が入らない。


「こいつ、絶対毒持ってるでしょ!やばいんじゃないの!?」

「リリナさん!わたし、解毒の魔法が使えるので!大丈夫ですよ!」

「やられる前提の話はやめてよね!」


白い修道服のような格好をしたサーシャは、冗談で言っているのか、真面目に言っているのか、反応に困る台詞を吐いた。
 
大蛇は体を縮め始め、今にもこちらに飛んできそうな勢いだ。

眼光は明らかにリリナへと向けられており、閉じているはずの口元からはチロチロと舌が出入りしている。


「リリナ!俺がまず魔法を撃って体勢を崩す。崩したところに一撃を決めて欲しいんだけど!」

「簡単に言ってくれるわね!ヤナギこそスカるんじゃないわよ!」

「もしヤナギさんの魔法が外れても、私の魔法で、ある程度防ぎますから!」

「え、サーシャ?もしかして俺の事信用してない?」

「保険をかけるに越した事はありませんよ!」


俺は足下に魔法陣を展開し、迎撃体制に入る。


「来るわよ!」


リリナのひと声によって、俺達は身構える。

そして『バジリスク』は、4本の鋭い牙を覗かせるかのように大きく口を開け、バネの力を利用して恐ろしいスピードで突っ込んできた。


「『デュアルバリア』!」


サーシャが魔法を唱えると、リリナの目の前には二重のバリアが展開される。

サーシャの後に続いて俺は、氷属性の中級魔法を唱えた。


「『アイスバルグ』!」


氷結は、飛んで来る大蛇に向かい、地を這っていく。

そして、魔物の胴体と地に潜む氷結が重なった瞬間、地面から急激に現れる氷山。

その氷山はおぞましく長い大蛇の胴体半分を凍らせ、空を切っていた魔物は、急激な重さの変化と速度の鈍化により地面に叩きつけられ、地を削りながらこちらに近づいてくる。

リリナの前に張ってある二重のバリアは、『バジリスク』の頭を強打させ、呻き声を上げながら背を曲げる。


「うるさいわね!黙ってなさい!!」


魔物よりも高く跳躍したリリナは、全体重と自慢の腕力を振るい、持っていた大盾で大蛇の頭に強烈な一撃をお見舞いした。

リリナは華麗に着地をすると、『バジリスク』はもはや、動かぬただの死骸となっていた。

着地をしたリリナは、ゴスロリミニスカートをパンパンと払い、「ふぅ」と一息をついた。


「俺たち、結構息合ってきたんじゃない?」

「そうですね、連携もちゃんと出来てますし!」

「あたしの負担が大きいんですけど??」


せっかく喜びを分かち合おうとしているのに、何故こうも悪態をつくのだろう。

人の心は分からない。


「とりあえず、先に進みましょ?日が暮れたらたまったもんじゃないわ」


周りに生い茂る木々を見回しながら、リリナは歩みを進めようとする。


「でもさ、ここって何処らへん?」

「目的地に近づいているとは・・・思うんですけど・・・」


俺とサーシャも周りを見回す。

黒い球体からコンパスの針のような矢印が出ている、ギルドから借りた魔道具は、指針がぐるぐると回転している。

これは、迷子って事じゃないか?


「こんなところで寝るとか、あたし勘弁よ!ここを抜けるくらいは進まないと!」


リリナは駄々をこねる。

無理もない、いつ魔物が襲ってくるか分からない、人間が通った痕跡もない所で一晩を過ごすとなると、危険度合いが青天井だ。


「まあ、進んでいきましょう。わたしも今聴覚強化魔法で周りの気配に気を配りますから・・・」
・」

「あんま無理しなくていいよ、何があるか分からないし、体力温存しておこう」


なぜ俺たちが今迷子なのか、今から2日前に巻き戻る。













「ヤナギ君、パーティランクが星3になったんだってね?おめでとう!」

「ありがとうございます!」


俺は今、黒いローブを着用した金髪オールバックメガネのハウクスさんと修業をしている。

魔鉱石の一件から1週間以上が経過しており、久々に魔導士の師匠と会う事が出来た。


「私としても鼻が高いよ。課題もクリアしてくれたし、魔法の応用まで身につけてくれるとは。全く恐れ入ったね」

「いえ、ハウクスさんとリリナのお陰ですよ」


俺は正直に言った。

リリナのヒントが無ければずっと同じ事を繰り返して、全く進まなかったかもしれないからだ。
 

「リリナさん?は、最近『明けの明星』に入った新人の女の子だよね?」

「はい、口の悪さに目をつぶれば出来る奴ですよ。ほんと、口だけは」

「ははは!それでもパーティ人数が増えて良かったじゃない。戦略も広がるし手数も増える。おまけに美人さんなんでしょ?」

「顔『だけは』ですよ・・・」


リリナの加入は、ギルドで話題になっていると同時に、俺に対して揶揄する人が増えて困る。

それは何故か、俺が可愛い子2人を引き連れてこいつはなんだ?と周囲からからかわれているからだ。

同じ星3パーティの人たちにも俺に対して「ハーレムでも作りたいの?」とか「3人でヤッてるの?」とか散々言われてしまう。

しかも、俺が童貞だと知っててイジってくるので、なおのことタチが悪い。

次は男が加入してくれればいいのに・・・


「周りの人達も俺が両手に花でハーレムだってイジってきて、溜まったもんじゃないですよ・・・」

「それは贅沢な悩みだね、私も一度言われてみたいものだよ」


こういうのは、当事者にしか分からないんだよなぁとしみじみ思うのであった。


「あ、そういえばハウクスさん。俺、最近新しい事ができるようになったんですよ」

「新しいことかい?」


いよいよメンタルがつらくなり、話題を変える。

俺は「はい」と答えた後、右手から糸を出していく。

そして、そこら辺に転がっている石に、魔力の糸をくっつけ、そのまま引き寄せて石を掴んだ。


「こんな感じで、糸を伸ばして物を動かせるようになりましたよ!」


ハウクスさんは「おー」と言った後に、俺に向けて拍手をしてくれる。


「あやとりは無駄じゃなかっただろう?」

「なんとなく、意味がわかった気がします」

「魔法の戦闘においては、ただ高火力を叩きつけるだけではない。そんな事したら魔力切れを起こしたり、新米の魔導士は魔力損傷で倒れてしまうからね」


俺じゃん。

毎回バカみたいに魔法連発して動けなくなる、俺への皮肉みたいな言い草だ。

とりあえず何も言わずに黙って聞いておこう。


「ヤナギ君も思い当たる節があるんじゃないかな?まあ、そもそも私が付きっきりならそんな事態にはならないんだけどね」


俺の顔から何かを察したのか、俺が考えていた事を小突かれる。

俺って表情に出やすいのかなぁ。


「正面から打つ、大魔力をぶつける、それもいいけど、ヤナギ君が今使ったような糸を出して不意をついたり、意外なところからの攻撃をする事って、戦略の一手としてかなり有用だと思わない?」


これは多分、魔物相手の事だけではなく、対人や魔王の眷属などの、知能がある相手と戦う時の話だ。

大きな力で正面から戦う方が見栄えがいいし、力関係を分からせる事ができる。

では、自分よりも強い相手や未知数な相手と対峙した時はどうする?

自分の手の内をさらさず、対策を練られる危険性を考慮して先制攻撃を与えたり、相手の意図していない所から攻撃を当てるといった具合だ。

相手の戦略を崩すと同時に、こちらが有利になる状況を作り出すということだと、ハウクスさんは言いたいのだろう。


「第一歩がその糸だね。今はまだ目に見えるけど、これを研磨して、もっと細く、もっと丈夫にすると、文字通り『見えない攻撃』が可能になるわけだね、ワクワクするだろう?」

「正直興奮してきましたよ!・・・でも、ハウクスさん見ましたよね?麓村の固い魔物。あんなのが出てきたら通用するかどうか」


俺は、先日戦ったクリスタルの魔物の事を思い出していた。

俺達がギルドに伝えた正体不明の魔物を、ベテランパーティ『獣狩りの頂』がが調査をしにいったのだ。


「あんな魔物、私も初めて見たよ。外殻の構成物質がまさか魔鉱石だなんてね、そりゃ硬いわけだよ。魔鉱石なんて、人の手でそんな簡単に割れるものでもないし」


あれにヒビを入れたリリナって、身体強化されてたとはいえ、もしかしたら人外なのかもしれない。


「まあ、あんなのが出てきたら、潔く同じ箇所に大火力をぶつけ続けるしかないし、諦めようか。あんなのがワラワラいるわけでもないだろうし」

「そうですよね・・・」


あんな魔鉱石の塊みたいな魔物が、大群で押し寄せたらと思うと、ゾッとする。


「今考えても不自然だよ。外側はしっかりしている割には、中身の構造はめちゃくちゃ。適当に何かを無理矢理くっつけたとしか思えないね。だからあくまで想像だけど、あの魔物は『人工的に作られたのではないか』って思うね」

「人工的にですか?そんな事可能なんですか?」

「少なくとも、私は今までそのような事象を聞いたことがない。魔物を作り出す、合成するなんて事は神様でもない限り、今の技術では不可能だよ」


魔物を人工的に作り出す、か。魔王が絡んでいる筋を考えると、眷属がいるくらいだし不可能ではないだろう。

しかし、作り出す必要性は?戦力増強?それとも・・・


「とりあえず今は、最善の注意を払いつつ、自分の戦力強化に努める事が先決かな?ヤナギ君もいちいちぶっ倒れたくないだろう?」

「耳が痛いです」


あれこれ考えていても仕方がない。

まずは、目の前のことに意識を向ける他ないのだ。


「という事で修業を開始します。ヤナギ君には2つの中級魔法を、今日で覚えてもらうから頑張ってね」

「え、一日でですか?」

「大丈夫、前覚えた中級魔法と似た様なものだからね」


俺が成長していくにつれ、ハウクスさんから発せられる期待の眼差しが強くなっていくことと比例して、魔法の修行もスパルタになっていくみたいだ。

俺は今日も、自分の身体に鞭打ち、魔導士への道を進むのであった。











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