21 / 22
六、龍の祝福
20.
しおりを挟む
あたしは両腕を空に掲げ、身体を伸ばしながら澄んだ空気をお腹いっぱい吸い込むと、不意に欠伸が出て、更に空気を吸い込むのは無理ってくらい、吸い込む羽目になった。
「ふぁー……」
澄み渡った青い空だったはずが、欠伸で涙がにじんで何度か瞬きをするうちに、どんどん曇り始めた。
曇ったかと思ったら、雲に大きな渦が巻き始めて、あたしは欠伸で開いた口がそのままぽっかり開いたままになってしまった。
「おい! レム、屋根からすぐ降りろ」
「う、うん!」
下からかかったレレの声に家の屋根の上だったことを思い出して、あたしは急いで梯子を降りた。
ごごごごご……。
びゅーびゅー唸るような音と共に、地響きのような振動も伝わってくる。
何事かと家の中から出てくる者、畑仕事の手を止めて空を見上げる者たちもいた。
腰を抜かして座り込む者もいて、突然の空の異変に誰もが逃げ場はないことを悟る。
雲の大渦は、口を開くように徐々に丸く大穴を開け始めたかと思うと、そこから放たれた金色の光が辺りを包みこんでいった。
それを動じず睨みつけるレレ。
「―――――」
不快じゃない程度に金属を引っ掻くような音と、低い振動のような音。でも何かの言葉のようにも聞こえるものが響いた。
「俺を呼ぶのは誰だ?」
レレがそれに答えるように口を開いた。
私はレレにくっついて、後ろに隠れるようにして空を見上げる。
気付くとその後ろにリトも涙目でブルブル震えながらくっついていた。
「珍しく同じ地に留まっているようだが、土地神めぐりはどうした?」
今度はハッキリと低い声が聴こえた。
頭に響くような声だ。
もう金属音のような音はしない。
「何のことだ? そしてお前は誰だ?」
レレが問い返している。
すると空からにじみ出るように翼を広げた大きな金色の生き物が姿を見せ始めた。
巨大なドラゴンだ。
「うへー! なんだありゃ!」
リトが震える声を上げてへたり込んだ。
「何の冗談だ。ダンケル。片割れを忘れたとは」
「片割れだと?」
「ふむ……。やはり先日のあの波動が原因か。エルフが我らの息吹を受けた鉱石を利用していることは知っていた。その1つを何がしかが破壊したことも」
「……」
レレが難しい表情をしているのが分かる。何か考え込んでいる様子だ。
「我らは万物を創生し、破壊してきた。こね回して作った人形どもが好きに動く様を眺める我に対し、一緒に行動してみたいと言ったのはお前ではないか。時には予想もせぬことが起こる事さえも、面白いとは思うが、自らが我を忘れては元も子もない」
難しい話すぎてさっぱりわからない。人形遊びの話?
不意に光がレレの元に集まって、弾けた。
何かが割れるような軽い衝撃が走った気もしたけれど、うまく表現できない。
ちょっと目眩がして、ふと見ると、レレが倒れている。
見上げると空は真っ青に晴れ上がり、大きな金色のドラゴンの姿は跡形も無くなっていた。
それと同時にリトも何処に行ったのか、姿が見えなくなっていた。
気を失わなかったのは私だけ?
どうやらこの日は、村中の人達が、一種の記憶喪失になっていたみたいだった。
誰も金のドラゴンのことは知らなかった。
「ふぁー……」
澄み渡った青い空だったはずが、欠伸で涙がにじんで何度か瞬きをするうちに、どんどん曇り始めた。
曇ったかと思ったら、雲に大きな渦が巻き始めて、あたしは欠伸で開いた口がそのままぽっかり開いたままになってしまった。
「おい! レム、屋根からすぐ降りろ」
「う、うん!」
下からかかったレレの声に家の屋根の上だったことを思い出して、あたしは急いで梯子を降りた。
ごごごごご……。
びゅーびゅー唸るような音と共に、地響きのような振動も伝わってくる。
何事かと家の中から出てくる者、畑仕事の手を止めて空を見上げる者たちもいた。
腰を抜かして座り込む者もいて、突然の空の異変に誰もが逃げ場はないことを悟る。
雲の大渦は、口を開くように徐々に丸く大穴を開け始めたかと思うと、そこから放たれた金色の光が辺りを包みこんでいった。
それを動じず睨みつけるレレ。
「―――――」
不快じゃない程度に金属を引っ掻くような音と、低い振動のような音。でも何かの言葉のようにも聞こえるものが響いた。
「俺を呼ぶのは誰だ?」
レレがそれに答えるように口を開いた。
私はレレにくっついて、後ろに隠れるようにして空を見上げる。
気付くとその後ろにリトも涙目でブルブル震えながらくっついていた。
「珍しく同じ地に留まっているようだが、土地神めぐりはどうした?」
今度はハッキリと低い声が聴こえた。
頭に響くような声だ。
もう金属音のような音はしない。
「何のことだ? そしてお前は誰だ?」
レレが問い返している。
すると空からにじみ出るように翼を広げた大きな金色の生き物が姿を見せ始めた。
巨大なドラゴンだ。
「うへー! なんだありゃ!」
リトが震える声を上げてへたり込んだ。
「何の冗談だ。ダンケル。片割れを忘れたとは」
「片割れだと?」
「ふむ……。やはり先日のあの波動が原因か。エルフが我らの息吹を受けた鉱石を利用していることは知っていた。その1つを何がしかが破壊したことも」
「……」
レレが難しい表情をしているのが分かる。何か考え込んでいる様子だ。
「我らは万物を創生し、破壊してきた。こね回して作った人形どもが好きに動く様を眺める我に対し、一緒に行動してみたいと言ったのはお前ではないか。時には予想もせぬことが起こる事さえも、面白いとは思うが、自らが我を忘れては元も子もない」
難しい話すぎてさっぱりわからない。人形遊びの話?
不意に光がレレの元に集まって、弾けた。
何かが割れるような軽い衝撃が走った気もしたけれど、うまく表現できない。
ちょっと目眩がして、ふと見ると、レレが倒れている。
見上げると空は真っ青に晴れ上がり、大きな金色のドラゴンの姿は跡形も無くなっていた。
それと同時にリトも何処に行ったのか、姿が見えなくなっていた。
気を失わなかったのは私だけ?
どうやらこの日は、村中の人達が、一種の記憶喪失になっていたみたいだった。
誰も金のドラゴンのことは知らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる