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モノローグ2
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「ガキ、そこを動くな」
声をかけた瞬間、あいつはビクリと肩を震わせ、その場で固まった。ゆっくりと壁に背をつけ、スカートの前を両手で必死に押さえている。
「はっ。お前……また品性のカケラもない下着を、俺に黙って買ったのか」
何か言い訳を叫んでいるが、聞く気はない。
「手をどけろ。嫌なら、さっさと履き替えてこい」
まだ確認していないが、この態度を見る限り、また下品なやつを穿いているに決まっている。
「ちっ……こっちに来い」
腕を掴んで強引に引き寄せ、そのまま俺の部屋へ連れていく。鍵を閉め、壁に押し当てた。
視線を落とすと、赤く染まった頬、固く結んだ唇、そして潤んだ瞳が俺を見上げてくる。
……ああ、興奮する。
空いた手でスカートの裾をめくり上げる。小さな悲鳴は無視して、指先で下着に触れた。
こいつ、また……。
「……俺が用意した下着にしては、布が足りないんじゃないか?」
妙に大人しい態度に違和感を覚え、顔をのぞき込む。不安と期待が入り混じった瞳が、まっすぐ俺を見ていた。
履き替えるよう命じて、俺は部屋を出た。
ああ……くそ。……かわいい。
あいつ、自分の見た目を分かっててやってるんじゃないだろうな。
とりあえず、あいつのことはメイドに任せて執務室へ向かう。机には、昨日までの作業報告や日報が積まれていた。ざっと目を通していると、一枚で手が止まった。
「お嬢様への婚約申込書を受け取ったため、旦那様へご報告を兼ねて送付しました」
旦那様に直接……俺に一言もなくか?
対応した使用人を呼んで事情を聞くと、あいつに婚約申込書を直接渡したが、受け取らなかったらしい。……だからって旦那様に送るとは。どう受け取られるか分からないだろう。あいつが結婚を望んでいるように思われたらどうする。
とりあえず、あいつと仲のいいメイドを呼び、婚約についてどう考えているのか探るよう指示したが――
「それは、シズカ様が直接ご確認されたらいかがでしょうか」
……。
「むしろ、シズカ様のお考えをお伝えして差し上げるべきではありませんか?」
こいつ、こんなに生意気だったか……?
「ああ、もういい。分かった。俺があいつに聞く」
「それが宜しいかと」
「……はあ」
ため息をつき、執務室を出た。あのメイドの言い方のせいで、なぜかあいつと話すのに少し躊躇してしまう。
あー、くそ……。
部屋の前で服を整え、軽く咳払いしてからノックする。返事を待ち、声をかけた。
「俺だ。開けるぞ」
部屋に入り、あいつの目を見て淡々と告げる。
「……お前、婚約申込書が昨日届いたらしいな。で、その書類は旦那様に送られたらしい」
あいつが驚いたように目を見開く。
「そいつは、お前が受け取らなかったのを“断り”と受け取らず、旦那様に送ったらしい」
コロコロ変わる表情をじっと観察する。……良かった。あの野郎との結婚を望んでいるわけじゃない。
「なら、俺から旦那様と……その送ってきたヤツに断りを入れる。構わないな」
あいつが頷くのを見て、胸の奥がじんわりと軽くなる。あんな家の男に、こいつは勿体なさすぎる。
「分かった」
背を向け、部屋を出ようとした瞬間――ふわりと、あいつの香りが強くなった。
振り返ると、背後から腕を回されていた。
「おい……なんだ、いきなり」
平静を装って問いかける。
「シズカは、私がその人と結婚したいって言ったら……どうしてた?」
真っ直ぐな瞳。期待を含んだ視線。……弱い。こういうのに、俺は本当に弱い。
どうしてた、じゃない。何がなんでも破談にしたに決まってる。
「あの令息には、お前を任せられない。それだけだ」
再び出ようとするが、あいつの腕は緩まない。
「おい、なんの真似だ」
軽く叩いても離れない。
「……一度離せ」
ようやく腕が緩んだので、振り返り、今度は俺の方から抱きしめてやる。
「……ガキ。言いたいことは、ハッキリ言え」
部屋を出ると、さっきのメイドと鉢合わせた。
「なにしてるんだ、こんなドアの前で」
「お邪魔かと思いまして」
……。
「そうか。お前の仕事の邪魔して悪かったな」
「お嬢様に、婚約のお話はされないのですか」
誰の、とは言わない。こいつ……なんで知ってるんだ。
「旦那様は、あいつには好きな男と結婚させたいと言ったんだ」
「……性格悪いですね。見て分かるでしょうに」
ほんと、こいつはなんなんだ。
「いいんだよ」
そう言って執務室に戻る。
どんな令息と比べても、あいつに一番釣り合わないのは俺だ。だからといって諦める気もないが……分は弁える。
俺の大切なお姫さま。俺以外、選べないくらい惚れさせてやる。
Fin…
声をかけた瞬間、あいつはビクリと肩を震わせ、その場で固まった。ゆっくりと壁に背をつけ、スカートの前を両手で必死に押さえている。
「はっ。お前……また品性のカケラもない下着を、俺に黙って買ったのか」
何か言い訳を叫んでいるが、聞く気はない。
「手をどけろ。嫌なら、さっさと履き替えてこい」
まだ確認していないが、この態度を見る限り、また下品なやつを穿いているに決まっている。
「ちっ……こっちに来い」
腕を掴んで強引に引き寄せ、そのまま俺の部屋へ連れていく。鍵を閉め、壁に押し当てた。
視線を落とすと、赤く染まった頬、固く結んだ唇、そして潤んだ瞳が俺を見上げてくる。
……ああ、興奮する。
空いた手でスカートの裾をめくり上げる。小さな悲鳴は無視して、指先で下着に触れた。
こいつ、また……。
「……俺が用意した下着にしては、布が足りないんじゃないか?」
妙に大人しい態度に違和感を覚え、顔をのぞき込む。不安と期待が入り混じった瞳が、まっすぐ俺を見ていた。
履き替えるよう命じて、俺は部屋を出た。
ああ……くそ。……かわいい。
あいつ、自分の見た目を分かっててやってるんじゃないだろうな。
とりあえず、あいつのことはメイドに任せて執務室へ向かう。机には、昨日までの作業報告や日報が積まれていた。ざっと目を通していると、一枚で手が止まった。
「お嬢様への婚約申込書を受け取ったため、旦那様へご報告を兼ねて送付しました」
旦那様に直接……俺に一言もなくか?
対応した使用人を呼んで事情を聞くと、あいつに婚約申込書を直接渡したが、受け取らなかったらしい。……だからって旦那様に送るとは。どう受け取られるか分からないだろう。あいつが結婚を望んでいるように思われたらどうする。
とりあえず、あいつと仲のいいメイドを呼び、婚約についてどう考えているのか探るよう指示したが――
「それは、シズカ様が直接ご確認されたらいかがでしょうか」
……。
「むしろ、シズカ様のお考えをお伝えして差し上げるべきではありませんか?」
こいつ、こんなに生意気だったか……?
「ああ、もういい。分かった。俺があいつに聞く」
「それが宜しいかと」
「……はあ」
ため息をつき、執務室を出た。あのメイドの言い方のせいで、なぜかあいつと話すのに少し躊躇してしまう。
あー、くそ……。
部屋の前で服を整え、軽く咳払いしてからノックする。返事を待ち、声をかけた。
「俺だ。開けるぞ」
部屋に入り、あいつの目を見て淡々と告げる。
「……お前、婚約申込書が昨日届いたらしいな。で、その書類は旦那様に送られたらしい」
あいつが驚いたように目を見開く。
「そいつは、お前が受け取らなかったのを“断り”と受け取らず、旦那様に送ったらしい」
コロコロ変わる表情をじっと観察する。……良かった。あの野郎との結婚を望んでいるわけじゃない。
「なら、俺から旦那様と……その送ってきたヤツに断りを入れる。構わないな」
あいつが頷くのを見て、胸の奥がじんわりと軽くなる。あんな家の男に、こいつは勿体なさすぎる。
「分かった」
背を向け、部屋を出ようとした瞬間――ふわりと、あいつの香りが強くなった。
振り返ると、背後から腕を回されていた。
「おい……なんだ、いきなり」
平静を装って問いかける。
「シズカは、私がその人と結婚したいって言ったら……どうしてた?」
真っ直ぐな瞳。期待を含んだ視線。……弱い。こういうのに、俺は本当に弱い。
どうしてた、じゃない。何がなんでも破談にしたに決まってる。
「あの令息には、お前を任せられない。それだけだ」
再び出ようとするが、あいつの腕は緩まない。
「おい、なんの真似だ」
軽く叩いても離れない。
「……一度離せ」
ようやく腕が緩んだので、振り返り、今度は俺の方から抱きしめてやる。
「……ガキ。言いたいことは、ハッキリ言え」
部屋を出ると、さっきのメイドと鉢合わせた。
「なにしてるんだ、こんなドアの前で」
「お邪魔かと思いまして」
……。
「そうか。お前の仕事の邪魔して悪かったな」
「お嬢様に、婚約のお話はされないのですか」
誰の、とは言わない。こいつ……なんで知ってるんだ。
「旦那様は、あいつには好きな男と結婚させたいと言ったんだ」
「……性格悪いですね。見て分かるでしょうに」
ほんと、こいつはなんなんだ。
「いいんだよ」
そう言って執務室に戻る。
どんな令息と比べても、あいつに一番釣り合わないのは俺だ。だからといって諦める気もないが……分は弁える。
俺の大切なお姫さま。俺以外、選べないくらい惚れさせてやる。
Fin…
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