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第5章
真実 04
しおりを挟む「入るぞー」
ノックもそこそこにドアを開けると、扉に背を向けるようにデスクの椅子に座っていた亜矢は、パッとこちらを振り返った。
「ど、うしたの……?」
「いや、宿題、見てやろうと思って」
亜矢はいきなり顔を真っ赤にして狼狽えた。
「い、いいよ!自分で出来るからっ、出てって……!」
「何で焦ってんだよ」
「テストでも隠してんのか?」と言いながら、ふと亜矢のデスクの上を見ると、ある物が目に入った。
「これ……」
それは、俺が大学進学で一人暮らしをする前の写真だった。おそらく姉がこっそり撮ったものなのだろう。カメラ目線ではなく、自然に笑い合う幼い亜矢と俺が、綺麗に写真立ての中に収まっている。
「ふ、懐かしい。こんなの飾ってんの?」
「……う、ん」
亜矢は気まずそうに頷いてから下を向いた。その姿を横目で見やる。長いサイドの髪からちらと覗く両耳は、痛そうなほどに赤かった。
「さっきから、めちゃくちゃ顔真っ赤なんだけど。それ、何?」
俺はその横顔に訊いた。
「え、えっと……あの……うれし、くてっ」
「嬉しい?」
「うん……千尋兄にまた会えたから」
そう言って、顔をさらに火照らせて俯く亜矢を、じっと見つめる。
赤い頬と対照的な、真っ白なうなじ。上から見ると長い睫毛が扇になっているのがはっきりと分かる。
あの子供が、こんなに大人になったのだ。綺麗で、あどけなさの中に僅かな色香を纏って。それでも純粋なまでに感情を表に出す。
思い違いでなければ、おそらくこの表情のわけは――
「それなら、もうちょっと嬉しそうな顔しろよ」
「え?」
「ほら……」
柔らかな頬に手を添えて、前髪のかかった額に唇を寄せる。
顔を離して亜矢を見ると、身をすくめギュッと目を瞑っていた。
からかったつもりだった。
その反応に一気にばつが悪くなり、軽く頭を撫でると、潤んだ瞳に見つめられた。
思わず視線を逸らす。
「千尋兄」と軽く袖を引っ張られ、促されるように亜矢を見た。
陽だまりのように暖かく、愛くるしい笑顔が目の前にあった。
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