【完結】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?

廻り

文字の大きさ
26 / 27

26 ミシェルの環境

しおりを挟む
 殿下は「遅かったな」とセルジュ様に声をかけました。

「とどめを刺さないように戦うのも、大変なんだぞ」

 面倒くさそうな声をあげながらセルジュ様は、私たちの前に引きずっていた彼を転がしました。

 やはり彼は、下位クラスの委員長で間違いないようです。
 転がされて傷に響いたのか、委員長は小さくうめき声を上げました。
 彼の衣服はボロボロに裂けていて。セルジュ様の風属性攻撃を受けたことが伺えます。
 捕らえるのが目的だったのなら、そこまでしなくてもセルジュ様なら彼を拘束できたのでは……。

「あの……、これは?」
「彼はアデリナの共犯者。っというよりは、アデリナを利用したと言うべきかな」

 委員長に向けた殿下の視線は、怒りに満ちているように思えます。

 殿下の説明によると、委員長の家は第三王子派だそうで。
 アデリナ殿下の思惑を知った委員長は、彼女に私を始末する方法を提案したのだそうです。
 けれど委員長の目的は私を始末することではなく、助け出すためだったようで。
 アデリナ殿下が私のHPを低く見積もっていたのは、委員長の助言によるものだったようです。

「なぜ委員長が、わざわざそのようなことを?」
「彼は不可侵協定を悪用して、ミシェルを長年に渡り孤立させてきたんだよ」
「え……」

 委員長は、男子生徒にのみ有効なはずの不可侵協定を、下位クラスの女子生徒にも厳守させていたそうです。

 素材をクラスに配った日。殿下が不可侵協定を守っていないことを知った女の子たちは、もうあの協定は無効なんじゃないかと思ったのだと、マリーちゃんが殿下に話したそうです。

「孤立させたいほど、私は委員長に嫌われていたのでしょうか……」

 下位クラスで唯一私の相手をしてくれていた彼に、まさかそのようなことをされていたとは思いませんでした。
 いつもため息をつきつつ私の面倒を見てくれていましたが、そこまで嫌われていたなんて悲しいです。
 私と関わりたくないのなら、はっきりとそう言ってくれたら良かったのに……。

「俺がいるから、もうミシェルに寂しい思いはさせないよ」

 殿下は私を慰めるように、優しく抱きしめてくれました。
 嫌われ者の私でも、殿下は変わらずに接してくれるようです。安心感を得ていると、シリル様が咳払いをしました。
 
「殿下、都合の悪いことを伏せるのはフェアじゃないのでは?」

 どういう意味かと思って殿下の顔を見上げてみると、彼は苦虫を噛み潰したようなお顔をシリル様に向けていました。

「ミシェル嬢の想像とは真逆です。彼は貴女を独占したいがために、そのような行動に出たんですよ」

 シリル様のお話によると、私をクラスで孤立させて、委員長だけを頼るように仕向けたのだそうです。
 委員長が「中位クラスへ編入する」と言い出したのは、それを継続させたかったからなのでしょうか。

 先ほどはアデリナ殿下が去った後に、ヒーローの如く登場して私を助けるつもりで近くに潜んでいるところを、セルジュ様が阻止したそうです。

 「歪んだ愛だ」と、呆れたようにシリル様は委員長を蹴りました。
 いつも穏やかなシリル様らしからぬ行動に、思わずびくりと殿下の服を掴んでしまうと、殿下は小さく笑いました。

「彼を捕らえる機会を、ずっと伺っていたんだ。俺のミシェルを独占するなど……、死罪にしても気持ちが収まらない」

 どうしましょう。殿下が先ほどのクロード殿下よりも、悪いお顔になっています……。

「そのようなことで、死罪は困ります……」
「俺にとっては、最重要問題なんだけど。ミシェルは彼の肩を持つつもりなのかな? もしかして、俺より彼が好きなの……?」
「まさかっ。長年お世話になりましたが、特に深い感情は持っていません」
「本当に? それなら、ミシェルから直接言ってほしいな。ミシェルは誰が一番好きなの?」

 答えなどわかっているようなお顔で、嬉しそうに聞かないでほしいです。

「でっ殿下が、一番好きですっ。二番目以降は、いませんっ」

 クロード殿下までいるのに恥ずかしくなりながらもそう答えると、殿下の可愛い笑顔と共に、なぜかため息が二つほど聞こえてきました。

「そこは社交辞令で良いので、二番目は僕にしてほしかったです……」
「シリルは三番でいいだろう……。幼馴染に対する義理くらいあっても良くないか?」
「セルジュは、はっきりとフラれたんでしょう? いい加減に諦めたらどうですか」
「諦めたけど、それとこれとは話が別だろう。シリルこそこの期に及んで二番になろうなんて、往生際が悪いぞ」

 シリル様とセルジュ様がぼそぼそと話をしているところへ、「そうだな」と殿下が口を挟みました。

「シリルのためにも、ここははっきりさせるべきだ。ミシェルお願いできるかな?」
「あの……、何をですか?」
「シリルはミシェルにフラれていないから、次に進めないようなんだ。彼のためにも、はっきりと断りを入れてくれないかな?」

 殿下は、従者を思いやる素晴らしい主のような雰囲気で、そう提案しました。
 けれど私はそもそも、シリル様から告白を受けていないのですが……。

 どうしたら良いのか困っていると、殿下は悲しそうなお顔で私を見つめました。

「まさかとは思うけれど、ミシェルはシリルのことが……」
「ちっ違いますっ。やらせていただきますっ」

 殿下は心配し過ぎです。
 これ以上あらぬ疑いをかけられるまえに、ここは素直に従うしかなさそうです。

 シリル様に視線を向けると、彼は何とも言えない表情で私を見つめました。

「あの……。シリル様のお気持ちはわかりかねますが、私は殿下のことが好きなので……。その……、ごめんなさいっ」

 このような断り方で合っているのか、甚だ疑問ですが。殿下は満足したご様子で「ありがとう」と私を抱きしめました。

「悪魔だな」とセルジュ様が呟き。
「殿下は王座より、魔王を目指したらいかがですか?」とシリル様が提案し。
「さすがは兄上です!」と、クロード殿下がルシアン殿下を褒めちぎる中。

「ジルも必要か?」

 殿下にそう声をかけられたジル様は、関わりたくないとばかりに私たちから視線をそらすと「間に合っています」と呟きました。




 後日。アデリナ殿下はクロード殿下に婚約破棄され、国へ強制送還されました。

 殺人未遂の罰としては軽すぎるのかもしれませんが、私が外交面で禍根を残さないようにしてほしいとお願いしたので、婚約破棄という形になったようです。
 いずれ殿下が治めるかもしれないこの国の将来に、負担をかけたくはありません。私はこのような結果になり、良かったと思っています。

 婚約破棄の理由は教えてもらえませんでしたが、彼女は自国へ戻ったら修道院で暮らすことを望んだそうです。
 どういう心境の変化なのかわかりかねますが、婚約破棄についてはクロード殿下が主導してくれたようなので、これ以上はあまり考えたくはありません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『働いたら負けだと思ったので、何もしなかったら勝手に勝ちました』

ふわふわ
恋愛
王太子から一方的に婚約を破棄された公爵令嬢、 ファワーリス・シグナス。 理由は単純。 「何もしようとしない女だから」。 ……だが彼女は、反論もしなければ、復讐もしない。 泣き叫ぶことも、見返そうと努力することもなく、 ただ静かに言う。 ――「何をする必要が?」 彼女は何もしない。 問題が起きれば専門家が対処すべきであり、 素人が善意で口出しする方が、かえって傷口を広げると知っているから。 婚約破棄の後、 周囲は勝手に騒ぎ、勝手に動き、勝手に自滅し、 勝手に問題を解決していく。 彼女がしたことは、 ・責任を引き受けない ・期待に応えない ・象徴にならない ・巻き込まれない ――ただそれだけ。 それでも世界は、 彼女を基準にし、 彼女を利用しようとし、 最後には「選ぼう」とする。 だがファワーリスは、 そのすべてを静かに拒み続ける。 働いたら負け。 何もしないのが勝ち。 何も背負わず、何も奪わず、何も失わない。 「何もしない」という選択を貫いた令嬢が手にしたのは、 誰にも邪魔されない、完全な自由だった。 これは、 戦わず、争わず、努力もせず、 それでも最後に“勝ってしまった” 一人の令嬢の、静かなざまぁ物語。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

処理中です...