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ずっと一緒にいたいから
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ホテルに滞在し始めて、数日が経った。今日は、寧々の誕生日だ。本来なら成人となっためでたい日。ベッドの上で、俺の隣に眠る寧々の髪を撫でた。いい意味で記憶に残る一日にしてやりたいが、そうもいかなさそうだ。
ベッドを抜け出して、テレビをつける。音を消してしばらく見ていると、朝のニュースが始まった。
エンタメ枠になると、『人気モデル・宮坂梢、婚約者と破局』『婚約者の浮気が原因か』『浮気相手は同じモデル事務所の後輩』といったテロップが流れた。俺についての情報もいくつか出されているが、一般人ということもあって企業名や名前までは伏せられている。
問題は、寧々の名前が出てしまっていることだ。屋敷の方にもマスコミが集まっているようで、秋彦やお手伝いさんたちの様子が、顔をぼかして撮られていた。未だ気持ちよさそうに眠る寧々には、絶対に見せられない内容だ。
溜め息が漏れる。あれから、梢が自身のブログで大々的に寧々の名前を挙げ、『自分は被害者だ』と訴えた。そのため、テレビを賑わす恰好の的となっている。世間では、寧々に対しても俺に対しても、厳しい意見ばかりが飛んでいる。
「ん……」
寧々が身動ぎした。テレビを消してベッドに向かうと、ゆっくり開いた目と視線が交わる。
「おはよう、寧々」
「おはよ……豪さん、起きるの早いね」
「誕生日、おめでとう。寧々」
「! あ、そっか……ありがとう」
「忘れてた?」
「うん」
寧々はぎこちなく笑った。いろいろなことがありすぎて、それどころではなかったはずだ。そのうえ、このホテルに来てからは、寧々はろくに外に出られず、部屋に籠もりきりだ。スマホの電源も切っているから、誰とも連絡がとれずに寂しい思いをしている。
俺はといえば、連日宮坂家に足を運び、梢の両親に頭を下げていた。未だに許してもらっていない。梢の心だけでなく名声まで傷つけたことを、彼らは心底怒っている。梢も俺に会うことはせず、マスコミを使って俺たちを追い込もうとしていた。
「全部終わったら、ちゃんとお祝いしよう」
「……ありがとう」
「早くお預けも解禁してほしいし」
「っ! だから、それは……」
全てがおさまるまで、身体を重ねることはしない――寧々はここに来た初日にそう言った。とてもじゃないけれど、そんな気分にはなれないということだった。秋彦に聞いたのだが、梢に凄まじい剣幕で罵られたことが、尾を引いているらしい。
俺もそれには納得したつもりだった。でも、隣にいながら触れないというのは、生殺しに近い。早く、触れたい。
「冗談だよ。俺も頑張るから」
「うん……」
「今日は秋彦がここに来てくれる。事務所に連れて行ってもらって、仕事を辞めてくるんだよね?」
「そうするつもり」
「ひどいことを言われるかもしれないけど、耐えられる?」
「うん。頑張ってくる」
「よし」
成人女子特集で表紙を飾ったのが、寧々の最後の仕事になってしまった。もっとモデルの仕事を続けたかったはずだ。悲しい顔をする寧々の頭を撫でて、自分の胸に抱き寄せた。
あと少しの辛抱だ。全部許してもらえるとは思わないけれど、最善を尽くそう。
ベッドを抜け出して、テレビをつける。音を消してしばらく見ていると、朝のニュースが始まった。
エンタメ枠になると、『人気モデル・宮坂梢、婚約者と破局』『婚約者の浮気が原因か』『浮気相手は同じモデル事務所の後輩』といったテロップが流れた。俺についての情報もいくつか出されているが、一般人ということもあって企業名や名前までは伏せられている。
問題は、寧々の名前が出てしまっていることだ。屋敷の方にもマスコミが集まっているようで、秋彦やお手伝いさんたちの様子が、顔をぼかして撮られていた。未だ気持ちよさそうに眠る寧々には、絶対に見せられない内容だ。
溜め息が漏れる。あれから、梢が自身のブログで大々的に寧々の名前を挙げ、『自分は被害者だ』と訴えた。そのため、テレビを賑わす恰好の的となっている。世間では、寧々に対しても俺に対しても、厳しい意見ばかりが飛んでいる。
「ん……」
寧々が身動ぎした。テレビを消してベッドに向かうと、ゆっくり開いた目と視線が交わる。
「おはよう、寧々」
「おはよ……豪さん、起きるの早いね」
「誕生日、おめでとう。寧々」
「! あ、そっか……ありがとう」
「忘れてた?」
「うん」
寧々はぎこちなく笑った。いろいろなことがありすぎて、それどころではなかったはずだ。そのうえ、このホテルに来てからは、寧々はろくに外に出られず、部屋に籠もりきりだ。スマホの電源も切っているから、誰とも連絡がとれずに寂しい思いをしている。
俺はといえば、連日宮坂家に足を運び、梢の両親に頭を下げていた。未だに許してもらっていない。梢の心だけでなく名声まで傷つけたことを、彼らは心底怒っている。梢も俺に会うことはせず、マスコミを使って俺たちを追い込もうとしていた。
「全部終わったら、ちゃんとお祝いしよう」
「……ありがとう」
「早くお預けも解禁してほしいし」
「っ! だから、それは……」
全てがおさまるまで、身体を重ねることはしない――寧々はここに来た初日にそう言った。とてもじゃないけれど、そんな気分にはなれないということだった。秋彦に聞いたのだが、梢に凄まじい剣幕で罵られたことが、尾を引いているらしい。
俺もそれには納得したつもりだった。でも、隣にいながら触れないというのは、生殺しに近い。早く、触れたい。
「冗談だよ。俺も頑張るから」
「うん……」
「今日は秋彦がここに来てくれる。事務所に連れて行ってもらって、仕事を辞めてくるんだよね?」
「そうするつもり」
「ひどいことを言われるかもしれないけど、耐えられる?」
「うん。頑張ってくる」
「よし」
成人女子特集で表紙を飾ったのが、寧々の最後の仕事になってしまった。もっとモデルの仕事を続けたかったはずだ。悲しい顔をする寧々の頭を撫でて、自分の胸に抱き寄せた。
あと少しの辛抱だ。全部許してもらえるとは思わないけれど、最善を尽くそう。
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