育てて、壊して、甘く愛して。

枳 雨那

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窮地を助けてくれるのは?

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 豪さんと秋彦さんからは、早めに休んだ方がいいと促された。私は、その言葉の通り、屋敷に帰り着いてすぐ部屋に戻った。飲まされたアルコールは、事件のおかげかだいぶめたのに、それでも足元がふらつく。

 私の派手な服装については、二人とも言及しなかったけれど、それはある意味、触れたくないということなのかもしれない。結局、こんな露出の多い服装は私には似合わないし、年齢的にもまだ早いということだ。

 着替えようと服を脱ぐと、あの男たちに好き放題触られたことを、ありありと思い出してしまった。私の意にそぐわない、気持ち悪い手の感触を、擦って落としたくなる。疲れているけれど、せめてお風呂に入りたい。

 もう一度服を着て、クローゼットから着替えを取りだし、部屋を出た。すると、すぐ目の前の廊下で、秋彦さんに出くわした。秋彦さんも、私が出てくるとは思っていなかったのか、目を丸くしている。

「寧々様、どうかされたんですか?」
「あ……お風呂、入りたくて」
「そうでしたか。身体を拭くものがあった方がいいかと思って、タオルをお持ちしたんですが……風呂に入れそうですか?」

 秋彦さんの手には、湯気の出ているタオルが乗っていた。せっかくの気遣いを無駄にしてしまうようで申し訳ないけれど、どうしても身体を洗いたい。

 質問に対して頷くと、「お湯を張り直しますね」と言って、秋彦さんはきびすを返した。普通に接してくれているように見える。でも、その広い背中は、私と話したくないと言っているようだ。

 幻滅されたのだろう。十年かけて築いてきたものが、こうして崩れていく。悲しくて、私は秋彦さんを呼び止めた。

「あのっ、秋彦さん」
「はい」
「今日は、本当に、その……」
「そのお話は、もう終わったはずです」
「でも、こういうふうに、ぎこちないのは……嫌で」
「……俺だって、優しくしたいですよ」

 秋彦さんが振り返る。少し苛立っているような、苦いものを噛みしめているような表情をしていた。こんな顔をさせてしまうなんて。どうしたら、いつもの笑顔に戻ってくれるだろうか。

「あの時は、投げ飛ばしたり、気絶させたりするのが賢明だと思いましたが……本当は再起不能になるくらい、あいつらをぼっこぼこにしたいと思っていました」
「……へっ?」

 秋彦さんの口から出てきたのは、意外な言葉。今苛立っているのは、私にではなく、あの男たちに対してだ。

「この家の大切なお嬢様を……寧々様を、こうやって傷つけて。絶対に許せません」
「でも、それは……私が悪くて」
「望んで襲われに行ったわけではないでしょう? 騙して襲うだなんて、卑怯ひきょうなことをする人たちが一番悪い」

 秋彦さんは、かつてないほど、凄まじく腹を立てているようだった。

「寧々様が傷ついているのを見ると、俺も辛いんです。だから、今日はもう俺に近づかないでください」
「え……」
「抱きしめてしまいそうになるから」

 その言葉に、ドキッとする。真意を聞こうとしたけれど、「お風呂場へは十五分後にお願いします」とだけ言って、秋彦さんは去って行った。

 明日、いつもの秋彦さんに戻っていますように。そう淡い期待を抱きながら、部屋に戻って十五分を待った。
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