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57.名前呼ばないからってそんな危険を…!
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「部長」
「名前で呼べ」
「っ……なんで命令口調なんですか」
人が話をしようって時になんでそう……とムッとして顔を向けると、部長はスッと視線を送って口角を上げる。
「口調は性格だからな。
呼んでくださいって言ったら呼ぶのか?」
なんで今そういう話になるんですか……てか、口調は性格ってなんですか。
話の腰を折られ過ぎて、顔を背けため息を落とした。
「呼びません。
部長は部長、もしくは杉村部長です」
そういえば昨日も名前で呼ばれたがってたなぁ……結局呼ばなかったけど。
むしろその後の記憶が曖昧過ぎて、部長のことを呼んだのかも覚えてないや……。
「あーそう……」
「……ん!?」
少し低い声がしたと思えば、身体が不自然に動いて目の前に影が出来た。
腕をグッと引き寄せられて瞬時に唇を奪われたのだと、唇に触れる少し冷えたそれで分かった。
ひんやりしているのに柔らかくて、引き寄せる腕に籠る力の割に、キスだけはいつも優しく、そっと触れる。
普通のキスがどんなものかは、私は知らないけれど、部長のキスは、まるで労わるように繊細で……気を吸われているなんて、とても思えないほど胸の奥が温かくなる。
チュ、クチュ、と僅かにリップ音がするだけで、不思議と身体が火照り出す。
初日はそれでも吸われている異変に身体が拒否反応を示したのに、最近はすぐこれだ。
キスへの免疫力が付いて来たのだろうか……それとも、これも催眠術の1つーーいや、待て!
無意識に目を閉じていることに気づいて、ハッと覚醒し、状況を把握した。
ここ、高速道路なわけで、部長は前見てないわけで……!!
思考がいつも以上に早く回転し、顔中から血の気が引いて、バッと彼を押した。
「んっ! 前! ちょっと! 前見て!!」
「フッ……名前で呼ぶよな?」
あろうことか、未だに顔こちらに向けて、後ろでハンドルに人差し指1本添えただけで車を走らせている部長の脅迫的口調に、自分でも顔が青ざめていくのが分かった。
ガガガ……と車線の上に当たる振動で車が揺れて、姿勢を正した。
「はい! 呼びます! 呼ばせていただきます!」
「フッ……分かればよろしい」
命を弄ぶように悪魔の笑みを浮かべたこの吸血鬼は、満足げにのんびりと身体を戻し、少し車線からズレた(多分わざと)車体を道路に戻した。
ホントに……この悪魔は……!
いくら直線道路だったとはいえ、脇見運転も甚だしい!
この人とのキスが気持ちいいなんて、そんなわけない!
常に命からがらの、危険なキスだ。
胸を撫で下ろしながら、ハーッと息を吐いた。
キスの時だけの、催眠術に、惑わされてるだけだ。
「名前で呼べ」
「っ……なんで命令口調なんですか」
人が話をしようって時になんでそう……とムッとして顔を向けると、部長はスッと視線を送って口角を上げる。
「口調は性格だからな。
呼んでくださいって言ったら呼ぶのか?」
なんで今そういう話になるんですか……てか、口調は性格ってなんですか。
話の腰を折られ過ぎて、顔を背けため息を落とした。
「呼びません。
部長は部長、もしくは杉村部長です」
そういえば昨日も名前で呼ばれたがってたなぁ……結局呼ばなかったけど。
むしろその後の記憶が曖昧過ぎて、部長のことを呼んだのかも覚えてないや……。
「あーそう……」
「……ん!?」
少し低い声がしたと思えば、身体が不自然に動いて目の前に影が出来た。
腕をグッと引き寄せられて瞬時に唇を奪われたのだと、唇に触れる少し冷えたそれで分かった。
ひんやりしているのに柔らかくて、引き寄せる腕に籠る力の割に、キスだけはいつも優しく、そっと触れる。
普通のキスがどんなものかは、私は知らないけれど、部長のキスは、まるで労わるように繊細で……気を吸われているなんて、とても思えないほど胸の奥が温かくなる。
チュ、クチュ、と僅かにリップ音がするだけで、不思議と身体が火照り出す。
初日はそれでも吸われている異変に身体が拒否反応を示したのに、最近はすぐこれだ。
キスへの免疫力が付いて来たのだろうか……それとも、これも催眠術の1つーーいや、待て!
無意識に目を閉じていることに気づいて、ハッと覚醒し、状況を把握した。
ここ、高速道路なわけで、部長は前見てないわけで……!!
思考がいつも以上に早く回転し、顔中から血の気が引いて、バッと彼を押した。
「んっ! 前! ちょっと! 前見て!!」
「フッ……名前で呼ぶよな?」
あろうことか、未だに顔こちらに向けて、後ろでハンドルに人差し指1本添えただけで車を走らせている部長の脅迫的口調に、自分でも顔が青ざめていくのが分かった。
ガガガ……と車線の上に当たる振動で車が揺れて、姿勢を正した。
「はい! 呼びます! 呼ばせていただきます!」
「フッ……分かればよろしい」
命を弄ぶように悪魔の笑みを浮かべたこの吸血鬼は、満足げにのんびりと身体を戻し、少し車線からズレた(多分わざと)車体を道路に戻した。
ホントに……この悪魔は……!
いくら直線道路だったとはいえ、脇見運転も甚だしい!
この人とのキスが気持ちいいなんて、そんなわけない!
常に命からがらの、危険なキスだ。
胸を撫で下ろしながら、ハーッと息を吐いた。
キスの時だけの、催眠術に、惑わされてるだけだ。
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