95 / 106
94.自分の気持ちが分からない
しおりを挟む
「凛……なんで泣いてる?」
「え…?」
匂いがしたのだろうか。
部長が少し驚きの声を上げて顔を離したと思えば、ひんやりした指先が頬を撫で、こぼれていた一滴を掬いあげる。
「これは…違…!」
「何かあったか?」
頭に手を乗せられて、優しく撫でられれば、胸の奥がギュッと傷んで、涙腺が緩むのをグッと堪えながら、頬に落ちた涙を拭う。
あーもう。
運命なんて煩わしいと思ってたのに…。
私を3日間も放置してた、最低男なのに。
どうして、この人の腕の中で泣いてるのだろう…?
どうして、突き放せないのだろう?
どうして、こんなにも居心地がいいんだろう?
刻印の相手だから?
それだけ?
「違うんです…これは……」
「……凛」
いつにも増して優しい声音に、ふと顔を上げれば、細められた彼の黒真珠のような瞳が私をジッと見つめ、そっと距離を詰める。
この瞳は、知ってる。
きっと、逃れられない。
彼の長いまつげが降りたのを見届けて、私も無意識に瞳を閉じた。
ひんやりとした吐息を一瞬感じたと思えば、柔らかい感触が自分の唇にそっと触れる。
最初の頃に感じた指先から冷えていく感覚に加えて、触れるたびにピリピリと電気が流れるのを感じる。
角度が変わるたび、部長の吐息がほんのりと唇を湿らせる。
そうして気づけば、自分の呼吸は荒く、鼓動は早くなっていた。
これは、気を吸い取られている人間の身体の、おそらく防衛本能。
吸われたエネルギーを補うために、必死に活動してる証拠。
でも、この胸の痛みは、何?
こんなの、今まで無かったのに。
『あんたの身体はもう一華を求めてる』
あの男の声が頭を掠めて、胸が痛んでグッと抑えた。
私の感情は、みんな偽物?
この胸の痛みも、部長との刻印が原因なの?
「ん……!」
薄く目を開くと、澄んだ黄金の瞳がすでに私を見つめていた。
ドクンと、心臓が大きく鼓動を刻む。
後頭部に回っていた掌が、また頬を優しく撫で、また零れた涙をそっと拭い、また角度を変えて唇を重ね、瞳を閉じた。
何よ…さっきまであんなに怒ってたくせに。
言いたいことはたくさんある。
責める方法なんていっぱい浮かぶ。
それでも突き飛ばせないのは、本当に刻印のせいなの?
愛されてるように感じるのも、偽物なの?
私の今の感情は、この想いは……?
本当の私は今、どう感じてるの?
「え…?」
匂いがしたのだろうか。
部長が少し驚きの声を上げて顔を離したと思えば、ひんやりした指先が頬を撫で、こぼれていた一滴を掬いあげる。
「これは…違…!」
「何かあったか?」
頭に手を乗せられて、優しく撫でられれば、胸の奥がギュッと傷んで、涙腺が緩むのをグッと堪えながら、頬に落ちた涙を拭う。
あーもう。
運命なんて煩わしいと思ってたのに…。
私を3日間も放置してた、最低男なのに。
どうして、この人の腕の中で泣いてるのだろう…?
どうして、突き放せないのだろう?
どうして、こんなにも居心地がいいんだろう?
刻印の相手だから?
それだけ?
「違うんです…これは……」
「……凛」
いつにも増して優しい声音に、ふと顔を上げれば、細められた彼の黒真珠のような瞳が私をジッと見つめ、そっと距離を詰める。
この瞳は、知ってる。
きっと、逃れられない。
彼の長いまつげが降りたのを見届けて、私も無意識に瞳を閉じた。
ひんやりとした吐息を一瞬感じたと思えば、柔らかい感触が自分の唇にそっと触れる。
最初の頃に感じた指先から冷えていく感覚に加えて、触れるたびにピリピリと電気が流れるのを感じる。
角度が変わるたび、部長の吐息がほんのりと唇を湿らせる。
そうして気づけば、自分の呼吸は荒く、鼓動は早くなっていた。
これは、気を吸い取られている人間の身体の、おそらく防衛本能。
吸われたエネルギーを補うために、必死に活動してる証拠。
でも、この胸の痛みは、何?
こんなの、今まで無かったのに。
『あんたの身体はもう一華を求めてる』
あの男の声が頭を掠めて、胸が痛んでグッと抑えた。
私の感情は、みんな偽物?
この胸の痛みも、部長との刻印が原因なの?
「ん……!」
薄く目を開くと、澄んだ黄金の瞳がすでに私を見つめていた。
ドクンと、心臓が大きく鼓動を刻む。
後頭部に回っていた掌が、また頬を優しく撫で、また零れた涙をそっと拭い、また角度を変えて唇を重ね、瞳を閉じた。
何よ…さっきまであんなに怒ってたくせに。
言いたいことはたくさんある。
責める方法なんていっぱい浮かぶ。
それでも突き飛ばせないのは、本当に刻印のせいなの?
愛されてるように感じるのも、偽物なの?
私の今の感情は、この想いは……?
本当の私は今、どう感じてるの?
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる