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入れ替わってる!?……いやいや冗談抜きで

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「オレは……!」ドスッ!!

っ~~~!!

あまりの痛みに、頭を抱えた。

ポンポンポン……といつも聴いているボールの音が聞こえる。

「あ、先輩。
すみません、手が滑りました」

完璧なまでの棒読みで、平謝りで、亜貴がボールを拾いに来た。

こいつ……わざとだな!?

てか、自分の身体に躊躇ねーのかよ!!


「おい、てめー調子に乗ると……」

「武田先輩、こんにちは」

「こんにちは。名前知ってたんだね!」

ちゃっかり先輩に挨拶して、オレをスルーする。

ホント、ムキになればなるほど、バカらしく思えてくる。

「うちの学校の有名人ですから。
で、京野先輩はバスケ部の体験入部でしたっけ?」

………は?

「あ、そうなの?
もしかして、今日この子に会いに行ったのは、そういうこと?」

え、いやいや。

「そうらしいです。
元バスケ部だとは知りませんでしたが」

は?
オレ……いや亜貴ってバスケやってたの?

「制服で来ちゃったならしょうがないですが、ちょっと、来てください」

「は!?いや、オレは……!」

「はは!結構強引なんだね!
じゃ、僕も部活戻るわ」

腕を力一杯引かれていくオレを、手を振って見送る先輩。

うわー!
先輩に強引な女だと思われたぁー!!

……マジ、沈む。

「……なんのつもりだよ」

「文字通り、体験入部」

「っざけんなよ!
なんでオレが……!」

亜貴は振り返って、ニヤリと笑う。


「バスケ、やりたいんだろ?」


っ………!

あーもう!!
どーせ女バスには混ざれないし、意味無いんだ。
1日でもやらないと腕が鈍るし、今日ぐらい……!

「……ぜってーバスケ部入んなよ?」

「さぁ?
今後のあんた次第だと思うけど?」

チッと舌打ちしつつも、コートに入る。

ちょうどブザーが鳴って、みんなが休憩に入った。



「体験入部……ね。
まぁ、いんじゃない?ちょうど休憩だし」

テキトーにうっていいよと言われ、誰もいないコートで、ボールをつく。

やっぱり、腕の力が強い。


ポローン………ポローン…… 


ドリブルの加減が、いつもと違う。

高さもあるから、幅も大きい。

いつもの、ドリブルの高さに合わせる。


ポロン……ポロン……ポロン……


……うん、このくらいの音だ。

その、音でドリブルしようとすると、と同じ高さまで下げなければならない。


嫌味か!

嫌味かこの身長は!!


そう思いながら、ボールを握り、ワンハンドの構えを取る。

ゴールめがけて放つと、やはり強すぎたようで、ゴールから弾かれてしまった。

この身体だと高さは全然違う。

もっと、優しく。

力を抜いて……


シュッ………


バフッ!!


よし!入った!!


次はドリブルシュート……

ドリブルしながらゴールへ向かい、ボールをゴールに置いていく。

いつものようにジャンプすると、ゴールに指が触れた。

………!

届く……!

シュッ……

いとも簡単に、ゴールした。


ボールが床をポンポンと移動する中、オレはこの身体の身体能力に打ち震えていた。

両手を見て、グーパーする。

なんだよこの長い手足……。

なんでこうも、簡単に……。

こんな身体でバスケしたら、最高だろうなぁ……。


「あんた靴下だけど、やる?」

後ろから自分の声がして、振り返る。

悔しいけど、やりたい。


1on1の勝負。

亜貴が先制。

亜貴の動きは、オレの理想だった。

ゴール下で、止めるのがやっと。

「あれヤバくね?」

「体験入部とか言って京野かなりやるな」

「純もいつもより本気出してんじゃん?」

周りの声が聞こえたが、そんなもんじゃない。

亜貴が上手いんだ。

オレのハンデである身体を見事に使いこなしてる。

ドリブルも、足のステップも。

ボール運びも、俺なんかより全然うまい。


悔しい……!

唯一、オレが、誰にも負けてなかったオレの持ち味が。

こんなやつにそれさえも超えられて。


ビーッ……

休憩終わりのブザーが鳴る。

俺はボールを床に置いた。


「先輩、次……」

「もういい」


これ以上、負けを見たくない。

現実を突きつけられるのが、辛い。


「帰る」


入って来た扉に戻る。

こんな現実、早くなんとかしたい。

元の、何も知らない佐倉 純に戻りたい。
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