入れ替わるようになりまして。

天野 奏

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入れ替わってる!?……いやいや冗談抜きで

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「……何やってんの?」

「……なんで来んだよ」


春先の夜は冷える。

体育座りして身体を震わせたまま、オレはあの地蔵の前で座っていた。


もし、あのお願いという名の呪いまがいなことをしてしまったがためにこんなことになってるなら、あのことを悔い改めて、この地蔵に謝ればいいかと思ってたけど……どうやら違ったようだ。

ここで寝れば、もしかしたらまた起きたら元に戻ってるーなんてことになるかと思ったけど、それも失敗。

ワンチャン、夢なのだということも、同時に潰えた。

もうすでにヤケクソだ。

でも、このままじゃ家にも帰れないし……ホント、困る。


「俺のウチも知らないだろうし、行くとこなくてフラフラしてんじゃないかと思って、探してみた。
ほら、俺の身体で風邪引くつもりか。
帰るぞ」

「別に探さなくていいのに。
てか、お前脂肪無さすぎて寒いんだけど。
マジ凍死する」

「だからほら、行くぞ」

駄々をこねるガキのように文句を言って、腕を掴まれて力のまま立たせられる。

……もう身体が戻らないのは仕方ない、か。

ぶっちゃけ言えば、男の身体なんかウチの3人のアニキ達で見慣れてるし、下だって、まぁ、どうだっていいんだけど……

“オレ”という人間が、必要ないみたいに思えて来て、なんか……。

「で………だったんですよー!」

ビクッ!

「っ!
おい……」

女子の声がして、亜貴を連れてとっさに地蔵の後ろに隠れる。

ここからだと、そんなに見えない、はず。

あんまり、こいつと一緒にいるところを、誰かに見られたくない。

校舎の隙間から覗いていると、チラッと誰かの姿が見えた。

あれは……!

「武田先輩は……ですか?」
「あー、僕は………」

通り過ぎたのを確認するや否や、2、3歩歩いた。

自転車を押しながら歩く美絵と、武田先輩だった。

自転車置き場が体育館より少し離れてるから……

一緒に、取りに行ったんだろうか?

武田先輩は自転車通じゃないもんね……。


なんだ……。

オレのあんな変なお願い事しなくても……

ちゃんと、叶ってるじゃんか……。


「おい?」

「っ………」

後ろに亜貴がいたのを思い出して、また歩き出す。

亜貴も、少し離れてついて来ていた。


「……泣いてんのか?」

「っせーな!
泣くかよ!」

視界が歪む。
手で拭って、また溢れて。
両手で、拭う。

「泣いてんじゃん」

「泣いてない」

「誤魔化せてねーよ」

「うっさい!ついてくんな!」

さすがに人目につくのはマズイから、とりあえず立ち止まって、涙を拭った。

後ろで亜貴も止まる。

でもそのうちしゃくりあげて来て、また!止まらなくなる。

「あーあ。
俺の顔泣かすとか最低」

「っさい!
泣きたくてないてんじゃ…っ!」

「泣いてんじゃん」

「だからしつこいっ!
あーもー……ホント嫌い」

声が小さくなる。
絞り出して少し上ずった声は、亜貴の無神経に届くのだろうか?

「なんで……あんたと入れ替わったんだよ。
なんで?
オレはあんたのことなんか知らないのにっ……なんで……」

こんな、人をおもちゃのように扱うサイテーな男と……

ただの先輩の幼馴染じゃん。

このままじゃオレ、先輩を好きでいられないじゃん。


「オレは、武田先輩が好きなのに……!」

「………….」


「ただ、見てるだけでよかったのに……。
あんなに近くにいたら、それ以上になりたくなって……」


でも男のままじゃ、恋できないじゃん……!


なにか、ちゃんとキッカケが出来るんだとしたら。

もし……亜貴とじゃなかったら。



「入れ替わったのがあんたじゃなくて、武田先輩だったらよかったのに……!」



叫ぶように、声を張り上げた。
誰にも言えなかった思いが、溢れる。

オレ、今凄くサイテーだ。
女の子みたいに、ドロドロしてる。

ホント、このまま、消えちゃえばいいのに。

トンッ………

………!!


背中に、温もりが触れる。

腕が前に回ってきて、ギュッと抱きしめられる。

小さな身体が、冷え切った身体を温める。

ほとんど触れてないところも多いけど……

それでも、全身、温かく感じた。


なんだこれ、凄く……心地よい。


ああ……そっか。

……よかった。

今もし1人だったら。

オレはきっと、この自分のドロドロした感情に、押し潰されてた……。

少なからず、偶然だけど、1人じゃないんだ。



亜貴が、いるんだ。


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