入れ替わるようになりまして。

天野 奏

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男の子は女の子の諸事情を知る。

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そんなこんなで数日経った。

時折1日2回入れ替わることもあったが、その時はまたいつものハグで何とかなった。

亜貴の見解では、「レベルが上がった」とか「会う時間増やすと治る」とか、「ハグで戻るならもっと上のことすればいい」とか……

最終的に「俺の家に泊まれ」で終わるから、いつも聞き流していた。

変態エロクソガキの亜貴と2人っきりで泊まるとか、何されるか分かんないし!!

『そういう好きじゃない』とはいえ、身体は別物とか言い出されても困るし、力が違うからもしもの時に対抗できない。

そんなリスクを犯してまで試すことはできない!

だって、家に行くってことは……そういうことでしょ!?


「……何言ってんの」

「だから、別にもういいって」

「身体、元に戻したいんじゃ無かったの?」


お昼休み。

オレは亜貴を屋上に呼び出した。

風が強く、天気も悪いので人がいない。


「戻したいよ?
でも、今でも結構なんとかなってるし、オレも亜貴と会ってこれ以上周りに勘違いされんの嫌だし…」

付き合ってんのかどうなのか、結構議論がされてるらしい。
妙な噂は尽きないし。

オレが好きなのは亜貴じゃなくて理央先輩だ。
亜貴に会う頻度だって増やしたくない。

「……俺は嫌なんだけど」

「何が?」

「俺、今年受験生だし。
万が一試験中とかに入れ替わったら、あんたちゃんと受けられんの?」

「うっ……」

確かに、亜貴の成績はオレとは真逆なほど良い。

というか、上の上だ。

これからのどの試験も、亜貴にとって今後を左右する大きなものになる。

いくつか授業を受けたけど、3年の授業はチンプンカンプンで全く理解できない。

「まぁ、中の下、もしくは下の上ぐらいの純様にはカンケーないかもしれないけど」

ムカッ……

「わ、分かってるよ!
けど、オレだってオレの人生があって……これ以上お前に引っ掻き回されたくないっていうか……」

「へぇ……まだ分かってないんだ?」

声のトーンがいつもの倍ぐらい低くなったと思えば、亜貴が一本前に出た。

それだけなのに、顔が近づくと威圧感があって、またドキッとする。

「純、1日2回入れ替わる時ってどんな時だか知ってる?」

「……どんなって?」

覗く顔が、ニヤリと笑う。

「純と俺が、1度しか会ってない時」

「!?」

そう言われて、ハッとする。

「だいたい、2回目に交換するのは午後の授業の辺り。
その前に会うとしたら、部室に用があった時とか、購買に行く時とか……」

会うだけなら、何回かあった。
その時はだいたい、目が合ってオレが逸らすことが多い。

でも、それが本当に関係してる!?

「それと、2回目の入れ替わりが始まったのは、純が理央と喋った辺り。
むしろ、それがきっかけ」

「理央先輩……?」

理央先輩が……関係してる?

「で、1週間連絡を絶った時も、入れ替わりは解けなかった」

「えっと、だから、何……っ?」

壁に追い詰められて、ドキッとする。


「鈍感」


「な……っ!?」


顎を手でグイッと引き上げられる。

亜貴は無表情で、ジッとオレを見つめていた。

「あ、亜貴……やめっ……!」

ギュッと目を瞑ると、フッと笑う声がした。

「……何期待してんの?
だから、俺はあんたのことそういう意味で好きじゃないって」

「っ……は!?」

耳まで熱くなったオレの前で、亜貴は口角を上げた。

「ま、そのリアクションは結構面白いけど」

「ちょっ……!?」

ギュッと引き寄せられて、胸に押し付けられて。

亜貴のゆっくりとした心音が、オレのそれと比較されるように聞こえた。

「すご。
好きでもない男にキスされそうになって、そんなドキドキするんだ?
案外やらし…」

「なっ!?
違う!そういうことじゃ……!」

前はあんなにキスしてきたくせに!!
前科者に警戒しないやつが何処にいるか!!

「何?俺のこと好きになった?」

「バカッ!なわけあるか!!」

「ふぅーん……よく逃げずに収まってるな」

「なっ……!」

慌てて離れようとすると、亜貴はすんなり離してくれた。

「……こうやって、入れ替わりが解けてる時に抱き合っても変わらない……けど」

そっと、耳元に顔が近づく。

「……純には効果的」


!?


ど、どどどどういう意味だよ!?!?


「もうさ、理央のことも諦めたら?」

「は!?」

「あんた、俺のこと意識してるよ」


そう言って、フッと嘲笑って、亜貴は出て行ってしまった。

何を言われているのか分からなくて。

数秒考えて、ハッとして、顔が熱くなった。


ない……ないないないないそんなのあり得ない!!!

なんなんだ亜貴は!!!

両手の頬を手で抑えて、その場でしゃがみ込む。

なんでああやってオレのこと乱そうとするんだ!!

オレになんの恨みがあるっていうんだ!!

ドキン……ドキン………!

そう、亜貴に何かされる度に、こうやって心臓が暴れて、胸が苦しくなって……。

でも、それはメスがオスに何かされる時と同じ……でしょ!?

用は亜貴に何かされて、本能的に危機感を感じてるってわけで……!

オレの心が好きな訳じゃなくて……!


亜貴が……亜貴が好きなわけじゃ……ない!



ヴーヴーヴー……

ケータイが大きく振動して、ビクッとする。

画面を開くと、見知らぬアドレスからだった。

“亜貴に手出してんじゃねぇ。
そろそろシバくぞ?”

………は?



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