入れ替わるようになりまして。

天野 奏

文字の大きさ
59 / 100
初めてのデートは嵐の前触れ

2

しおりを挟む
亜貴の家から徒歩20分のところにある大型ショッピングモール。
駅も近くて人が集まりやすい場所だ。


「ご、ごめん、遅くなった!!」

「おせーよ。女待たせんな」


亜貴(オレの身体)は待ち合わせの時計台の下で背をもたれて待っていた。

なんだか、その姿にドキッとする。

着ている服も自分のだし、変わらないといえば何も違わないのだけど……

着こなしが、多分自分と違う!!

「てか!化粧!?
どこでそんな……」

「純が30分遅れで来るから、その間無料でお試し出来るところでやって貰ったんだよ。
女って大変だな。
家に化粧品なんてなかったから、後で買おう」

「いや、いいよ!
オレ、化粧しないし……っ!」

時計台から離れて歩いてきたと思えば、流れるように抱きつく亜貴に、胸が痛くなった。

「俺がさせたいの。
勉強しろ」

顔を合わせているうちに、またいつものグワッという感覚がやってくる。

瞬きした瞬間、目の前には目を閉じた亜貴の姿があった。

綺麗で、隙のない完璧な亜貴の姿に、胸がキャッと反応する。

薄く開いた目が、こちらを認識したと同時に、後ろへ倒れかかった身体をグッと堪えた。

「っと……何?見惚れてた?」

「ち、ちがっ……!」

「フッ……今日は、エスコートするから」

いつもは無表情のくせに、今は少し嬉しそうに、微笑んだ。

ドキッ……。

なんで、こんな、笑い方……。

反則だ……。

言われるままされるままに、オレは手を握られて、モールの中に入っていった。



***



「……で、これは、どういうこと?」

「いいじゃん。
似合ってる」

似合ってるって……

試着室の前で、椅子に腰掛けて膝に片肘を立て、モデルのようにオレを見る亜貴。

そんなヤツに言われても、信憑性に欠けるというか……。

亜貴の見立てで、薄手の青いジーンズ生地のロングスカートに、白いレースの入ったシャツを着てみたものの、ボーイッシュしか着たことないオレには初挑戦過ぎた。

「このカーディガンと……帽子とか合わされば純でもカジュアルでイメージ崩れないんじゃん?
ほら、後ろ向け」

そう言って淡い黄色のカーディガンと、グレーのベレー帽を持ってこちらに来て、袖を通してくれた。

すごい……

なんか、今風の女の子って感じ。

「あと、シャツはインして……」

「あっ、ちょっと……!」

急にウエストに手がかかるから、慌てて手を抑えようとしたが、ただシャツをスカートの中に入れて、スカートの位置を上げただけだった。

「…こうな。
ロングのカーディガンでも今時っぽいけど。
どっちがいい?」

ぽん、と頭に帽子を乗せられる。

鏡に映る自分の頬の色がチークのそれ以上に赤くなっていた。
亜貴の瞳と鏡越しに重なる。

「どっちって…どっちでも……っ」

「そう。
じゃあ、どっちもってことで。
あ、グレーの時は家にある青いニット帽とかがいいと思う」

「う、うん、ありがとう……!」

ふと、耳の後ろの髪を撫でられて、ビクッとした。

「純の髪、ツヤいいし整ってて綺麗だけど、これから伸ばしたら?」
「なっ、なんでそんなこと……邪魔じゃん!」
「縛ればいいじゃん」
「ヤダよ、やったことねーし……部活もあるし」
「長い髪も似合うと思うけどな」
「っ……!」

威勢を張ってるのがバレているのか、ペロッと耳を舐められた。

さっきから囁かれるだけで顔見れなくなってるのに……/////!

「靴はこれとか。
夏はヒールのあるサンダルでも似合うと思う」

こっちの気を知ってか知らずか、振り返ると一緒に選んで来たらしい紐のついた茶色の靴を見せた。

「っ……亜貴。
からかってんの?」
「何?」
「お、オレ…こんな格好したことない。
てか、多分、買っても着れるかどうか……」

だいたい、部活もそんなに休み無いし。
出来る気がしない。

「着れるよ。
てか、着たかったんじゃない?」
「え?」
「純、ファッション雑誌毎月買ってるだろ?多分、1年ぐらい」
「!!」

こいつ…部屋物色したな!?

「ぬいぐるみとかピンクとか、女の子らしいものは全く部屋に置いてないクセに、机の引き出しに隠すみたいにそれだけ入ってんだよねー。
結構、憧れあるんじゃないの?」

……確かに、この格好は、その雑誌の記事に出てたのに似てる。
でも、オレが着ても、こんなショートの黒髪が似合うわけでは……。

「……今日は俺の彼女でしょ?」
「え?」

亜貴はいつもの無表情で、でも少し真剣にオレを見た。

「バスケバカでも、男勝りの高校生でも無くて、俺の純になって。
周りを気にせず、ただ俺のこと意識して振り回されてればいい。
俺が似合うと思ったら純も納得しろ」

………?

「……意味、分かんないんですけど」

「可愛いって言わないと通じない?」

!?

亜貴は小さくため息をついて、そしてフッと笑った。

「じゃ、行こうか」

「え?ん?いや?お会計……!」

「このまま買う」

「え、このまま!?
買えんの!?てか、お支払い……!」

「いいよ。
この前俺が純の金で下着買った時、金はいらないって言われたから、今回でチャラな」

そう言って、大人の笑みでオレを見る亜貴。

あー、やられてしまった。

色んな意味でため息をついたが、握られた手を見て、また少し胸が熱くなった。

『周りのことは気にせず、ただ俺に振り回されてればいい』

もうずっと、ずっと前から振り回されっぱなしだよ、チクショウ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜

沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」 中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。 それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。  だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。  • 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。  • 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。  • 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。  • オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。  恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。 教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。  「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」  鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。 恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!

処理中です...