入れ替わるようになりまして。

天野 奏

文字の大きさ
61 / 100
初めてのデートは嵐の前触れ

4

しおりを挟む
「あ、クレープ!」
「食べたい?」

思わず口に出してしまって、ハッと顔を上げた。

「あ、いや!そう言うんじゃなくて…!」

外の通りにあるクレープ屋に目が止まっただけなのだが、亜貴は有無を言わさず連れ出した。

なんでもお見通しってところなのだろうか?
凄く、大切にされてるような気になって、恥ずかしい……。

「どれがいいの?」
「じ、じゃあ、これで……」
「バナナチョコクレープ1つと、バニラシェイク2つ」
「えっ!?」
「喉乾いてんだろ?オレも飲むし」

う……見透かされてる……!

「てか、クレープは!?」
「そんなに甘いの食えねーよ。
俺はシェイクで十分」
「お待たせしました!先にバニラシェイクになります。
クレープはもう少々お待ちください」

高い売り場から両手でシェイクをもらうと、亜貴はオレに渡した。

「ほら、そっちのベンチで待ってろ。
持ってくから」
「……はい」

ぶっきら棒に言う割に、亜貴にしては優しい顔をするから、また胸が痛くなった。
命令に順応になって歩き出す自分が情けない。
今日の亜貴はいつもと違い過ぎる。

『デートしようか』

あの時は、ただの軽はずみな言動だと思ってた。
子供作る?とか結婚する?とか言っちゃうような男だし。
でも、今の亜貴を見てると…子供っぽいようにも感じるけど、でも、デートを楽しみにしてたんだなぁって、思える。
そんで、今も、楽しい……のかな?
亜貴は、楽しんでるのかな?
さっきからオレの色々に付き合ってるだけな気もするけど……

「やば、あの人かっこよっ…!!」
「モデルか何かでしょ……」

通り過ぎた女の子たちが、亜貴を見てそんなことを呟いている。

チラッと亜貴を振り返る。
黒のテーラードジャケットが、亜貴のスタイルを更に良く見えている。
やっぱ、あの服にしてよかった。

……亜貴は、女の子選び放題だよな。
なんでオレに興味を抱くのか分かんねーし、もしかしたらただのお遊び程度の付き合いで……それぐらいの“好き”で。
オスがメスを求めるように、やることやったら後はいい、みたいな感じだったりするのかなぁ。
……人間の男は本能的に一夫多妻っぽいところ多いし。
オレは亜貴にとって、どれくらいの存在なんだろう?

「はぁ~……」
思わずため息が漏れた。

「でさ、そいつが…っ!ああっ!?」
「あっ!わ!ごめんなさいっ!」

ため息の瞬間、ベンチの目の前で、急に座り始めた男の人たちにつまずき、ぶつかってしまった。
しかも、カップにストロー差しただけだったシェイクを、手が滑って落とし、男とオレのスカートにかかってしまった。

「なんだよてめえ!!
人が座ってるとこに突っ込んできて汚しやがって!!
弁償もんだぞこれ!!」
「えっ、は!?
で、でも、これでなんとか……」

ズボンのシミは直径1センチぐらいの少量で、つい足でなんとかしようとしてしまったオレのスカートの方が汚れている。
オレはポケットからティッシュを取り出して、男の汚れを拭いた。

「はぁ!?
こんなんで済むと思ってんのかよ!
マジふざけんな!!」
「いや、急に前に出てこられてそんな風に言われても、お互い気を付けてなかったのが悪いっていうか……っ」

後ろに下がろうとしたら、後ろにその男の連れが立ち塞がっていた。

え、これ、ピンチ!?

「お互い様みたいな言い方しやがって……!
お嬢ちゃん、良し悪しがどんなことか、としてえてやろーか!?」

男が立ち上がった。

えっ…ええー!?
ちょっと……誰か……亜貴っ!

いつもの威勢が声にならない。
恐くて、ギュッと目を瞑った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜

沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」 中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。 それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。  だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。  • 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。  • 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。  • 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。  • オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。  恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。 教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。  「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」  鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。 恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!

処理中です...